攻城戦後
天文14年(1545年) 10月
丹波国 桑田郡 篠村八幡宮
「はあ…」
「如何しました若様?そのような浮かぬ顔をして」
「いえ、なんでもない…」
そうは言いながらも、俺は今猛烈に落ち込んでいる…八上城は落とした。なんなら褒美として領地を貰って今の俺の領地は氏綱派の旧領五万石の内桑田郡の一部の一万五千石と数掛山の与兵衛尉殿の転封により更に桑田郡で五千石、それに以前から持ってた多紀郡の領土五千石の合計二万五千石。ただの4歳児が持ってて良い石高じゃない!
だが、困ったことが一つ…
まず、俺の主な家臣を見てほしい…
侍大将級 荒木山城守氏綱 籾井越中守教業
小姓 酒井弥七郎(氏治)(氏吉嫡男)
酒井孫平太(信政)、孫次郎(依信)兄弟
長澤四郎(義遠)
家臣候補 波多野千代丸(秀尚)
そしてこれを見ての感想……家臣、特に文官がいない!!
せめて隣国の丹後の稲富家と若狭の沼田家、あと大和の島左近と柳生家あたりは引き抜きたい…
さて、そんなことよりも今我が家が置かれている状況を整理すると
先月始め、八木城が落ちた。落城した原因は塩見某の裏切りが露見したことによる城内のドタバタ…ということになっているが、真実は違う…
本当は塩見は裏切っていない。まず、俺が久秀殿から借りた細作を使って塩見が裏切ったという噂を流し、城内を疑心暗鬼に陥らせる。その後用意しておいた『偽の』密書をわざと見つけさせ、塩見を殺させた。その後細作に塩見の家臣を煽らせて内藤千勝丸達を殺させた…かなり悪どいことをしたが、これで八木城を落とし、丹波から細川氏綱派を追い出すことに成功した。
そして今、俺は自分の領地の内政を見ている。本当は八木城を拠点にするつもりだったが、攻城戦のせいで城が荒れてるし山城だと不便だからという理由で、今は付近にある篠村八幡宮にお邪魔させてもらっている。
にしても流石は足利家から優遇されまくってる神社。元はそんなに大きくなかったらしいが、今はそんな面影が一切無い…
そして今日も今日とて領地の内情の報告を聞いていると…
「殿!大殿様がお呼びに御座います!」
と孫平太が叫ぶように報告してきた。なんか毎回何か起きる時はコイツが絡んでるな…
だが、そんな考えはおくびにも出さず…
「分かった!今向かう!」
そう返事をして俺は八上城に向かったのであった…
2日後…八上城
「千熊丸、お主鶴(千熊丸姉)の祝言に出席して来い」
「え?姉上の祝言にですか?」
そう、実は俺には6歳上の姉がいる。名前は鶴。父と側室の子だが、俺との仲はそこまで悪くはない…ちなみにかなりの美少女!
にしても姉上に縁談?そんなの来てたか?
「父上、姉上は一体どなたに嫁ぐのですか?」
「おう、そういえば言っておらなかったな。嫁ぐのは赤井家の兵衛大夫(赤井家清)殿よ!」
兵衛大夫…多分赤井家清のことだろ…あれ?赤井家清って確か…
「父上?兵衛大夫殿は確か御年は二十歳では?姉上とは歳が釣り合わないのでは…」
そうなのだ。赤井家清は確か20歳。10歳の姉上と結婚したら炎上…ってよく考えたらこの時代ではあまり問題にはならないか………いや、よく考えたら問題大アリだな…
それにしても赤井か……今のうちに赤井兄弟とは好を通じておきたいな…
そんなことを考えながら、俺は父の話を聞くのであった…
秀尚の幼名は不明だったのでそれっぽい幼名の一族の幼名を引っ張ってきました