鎧と使者
天文16年(1547年) 12月
丹波国 多紀郡 八上城下
「信家翁!」
「おう、なんじゃ坊?左様な鉄板なんぞを持って」
「実は貴殿に、これを使って拙者の甲冑を作って欲しいのです」
「…ほう?」
俺がそう言うと、先程の飄々とした顔とは打って変わって、目つきが鋭くなり、どことなく覇気のようなモノまで漂い始めた…
「坊、その鉄板、ちぃと見せてみろ」
俺はそう言われて、早速その鉄板を手渡させた。
信家翁は鉄板を持った瞬間、目つきが変わり、少しの間停止した後……
「よぅし…わかったわ…何か要望はあるか?」
「なら…出来るだけ軽く、それと俺が成長しても使えるように若干大きめでお願いします。それと兜は……」
そうして俺は鎧のデザイン等の要望などを出し、採寸を済ませた後、一回八幡宮に戻るのであった……
天文17年(1548年) 2月
丹波国 桑田郡 篠村八幡宮
年は変わっていよいよ1548年、あと6ヶ月で何もかもが決まる。
しかしそんなことはおくびにも出さず、俺は今、家臣の山城(荒木氏綱)、越中(籾井教業)、信濃(荒木義村)、飛騨(高山友照)の四人と城の縄張りについて話し合っている。
にしてもコイツら含めてうちの家臣たち〇〇守って名乗ってるやつ多いな…美作守殿とか…
そういえばだが、俺の小姓が増えたんだった…
新しく小姓になったのは荒木弥助くん(村重)と中川瀬兵衛(清秀)の二人で、今は小姓見習いとして孫平太たちが面倒を見てくれている。
っと…今はそんなことより城の縄張りだ。小高い丘の上に建てる予定なので少し山城よりも防御性が下がるが、そこは水堀でカバーしたい…あとは櫓や門の配置とかも考えないとな…
「殿!父上が火急の用があるとして、控えております。また、見慣れぬ者が一名、父上に連れられています」
と、毎度の如く孫平太が知らせを入れてきた。
なんだなんだ?いきなり?
でも筑後守(酒井頼重。孫平太の父親。)は我が家の家老だ。それがいきなり駆けつけるということは相当な大事だぞ?
「わかった。通してくれ」
「はっ…」
そうしてまもなく、筑後守は俺たちのいる書院に入ってきた。
そして、孫平太が言っていたように、一人侍を連れていた。
「おう、筑後守よ。そちらの方はどなたか?」
俺がそう尋ねると、筑後守がその名を告げようとするが、その男に機先を制され、そのままその男が名乗りを上げた。
「お初にお目にかかります。波多野様。拙者、朝倉家家臣、朝倉孫八郎と申す者に御座る」
……どうやら、新年早々面倒なことになりそうだ…
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