一時帰国
天文16年(1547年) 10月
山城国 葛野郡 妙顕寺
俺たちは今、長い長い“話し合い“を終え、妙顕寺に帰ってきた。
「しかし孫四郎よ。良かったのか?事が露見すれば取り返しがつかんぞ」
「そう言う父上こそ、あの様な事を……」
「何、遅かれ早かれこうするつもりだったわ」
「左様ですか……まあ、とまれ大事は……」
「ああ、一色めを誅することよな」
そう、あの話し合いの結果、波多野家は西に、三好は東に進み、領地を拡大しようということになった。
というわけで一色、テメェには退場してもらう。
恨むのなら赤井に手を出したことと自分の領地の立地を恨め。俺は海と港が欲しいんだ。
開戦理由は十分にある。唯一の懸念点はこのまま攻めて領地を取っても、丹後は飛地になってしまうのだ。
そう、『このまま』ならな。
実は昨日の話し合いで、既に晴元暗殺の日時は決まっている。
予定日は来年の8月11日。その日は丁度1338年に足利尊氏が征夷大将軍になった日。
その日に細川晴元に篠村八幡宮への参拝を進め、その道中で斬らせる。
その後、その責任を取って親父は形だけだが隠居する。
そして、一色氏を晴元を暗殺した下手人に仕立て上げ、丹波にいる旧晴元派の小名どもと一緒に潰す…
ここまでが計画に含まれる。卑怯と思うかもしれない。
確かに戦はどんなことでもして良いというわけではない…だけど、それと同時にどんなことをしてでも勝たなければいけないのだ。
……ということなので、まずは一回領地に戻り、色々準備やら何やらをしなければならない。新しい領地の摂津の内政もしなきゃいけないし、動員兵力も増えるからそれに合わせて装備の調達とかもしないと…
だが、まず朝廷から山国荘に派遣される人物を待たなければいけない…
天子の話だと朝廷でも誰を派遣するか揉めてるみたいだし……帰れるのはいつになることやら……
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