敬長の真意
天文16年(1547年) 10月
山城国 愛宕郡 妙覚寺
「義兄殿!孫四郎殿、よく来てくださった!」
妙覚寺に到着すると、寺の玄関付近で筑前殿が出迎えてくれた。
その顔はどこかやつれているようで、ますます嫌な予感がしてきた。
そうして俺たちは奥にある一室に通されたが、部屋に入ったのは俺たち親子と筑前殿と久秀の四人だけ…まさに密談という雰囲気だった。
「筑前殿、此度は如何な用件じゃ?」
そう親父が問うと、筑前殿は一呼吸置いた後、とんでもないことを口にした。
「御二方、落ち着いてお聞きなされ………我が家は、晴元を裏切り申すっ!」
…そうか…そういえば再来年の話だったな……
そう、史実では天文18年(1549年)、三好長慶(1548年に改名)が細川晴元に反旗を翻し、そこから三好の天下が始まる。
そろそろ今年も終わる、こんな大計画なら相当前から用意しておかなければならない。
そして俺と親父を呼んだということは、十中八九その計画への協力を求めるため…
「……今のは拙者の聞き間違いでないな?筑前殿…」
親父も信じられないという顔をして筑前殿に尋ねてる……根回しも無しか…
「…ええ、御二方も知っているでしょう。あの忌まわしき男が何をしてきたのかをっ!!」
そう言われて親父の顔が歪んだ……あぁ…親父も被害者だったのね…
「しかし筑前殿、謀叛などを起こせば、悪逆非道との誹りを受けることになりますぞ」
「その点においては心配御無用に御座る…霜台、あの御方をお呼びせよ」
そうして体感で1分ほどで、久秀が一人の男を連れて戻ってきた。
男は身なりの良い、いわゆるイケオジで、どこかで見た覚えがある……どこでだ?
「義兄殿、孫四郎殿、こちらが我が家の新たな主君、細川次郎氏綱様に御座る」
ああ、細川氏綱か、そういえば舎利寺で見たな…って細川氏綱!?…そういえば氏綱の身柄は筑前殿が握ってたんだった…
「義兄殿、孫四郎殿。これでおわかりでしょう?全て準備は整っているのです。どうか与力願いまする」
…どうやら、もう外堀は埋まってきているらしい…
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