招かれた者と招かれる者
天文16年(1547年) 10月
山城国 葛野郡
「いやぁ、上手く事が進みましたな!」
「ええ、真に…」
俺と宇津長成…いや、宇津頼重は妙顕寺への帰路に就き、その途中で先程のことを話していた。
「しかし、本当によろしかったのですか?名を捨てて、我が家に従属するとは」
「良いのですよ!元々拙者は無名。それに、失った山国荘の分は、波多野様が出してくれるのでしょう?」
「ははっ…これは一本取られましたね…」
そんなことを言っている間に妙顕寺に到着した。だが寺の入り口前に、何やら30人程の集団が屯していた。
そして、その中には見覚えのある男、荒木信濃守がいた。
俺たちがその集団に近づくと、信濃守も気づいたのか、こっちに駆け寄ってきた。
「惣領様っ!!お待ちしておりましたぞ!」
「信濃守、そちも息災そうでなによりだが……聞いていた数よりも随分と多いな…」
俺がそう言うと信濃守も同様に思っていたのか
「ええ…拙者達が池田家を出奔しようとした際、他の池田家臣もついてきてしまったらしく……」
嘘だろ?池田家の当主そんな人望ないの?しかしコイツらを追い返す訳にもいかんし…
「承知した。ならば彼らも我が家で面倒を見よう」
そう言うと後ろに控えていた者たちも喝采をあげた。
「よし、五日ほど休んだ後、先に我が本拠の篠村八幡に向かってくれ。既に書状は出してある」
「あ…有難う御座いまする!!」
そう言うと信濃守達も宿坊に向かっていった
翌日、俺と親父が今回の件や摂津にできた領地について話し合っていると…
「大殿様!殿!ただいま三好家の方がお見えになっています!」
と、またも孫平太が知らせに来た。
父上も怪訝そうな顔で
「何?すぐに通せ」
と言ったあたり、何も知らないのだろう。
そうして俺たちに会いに来たのは、松永久秀だった。久秀は部屋に入ってくると同時に用件を述べてきた。
「上野介殿!孫四郎殿!我が殿が大至急御二方に三好家宿舎の妙覚寺にご足労していただきたいとのことです」
「松永殿、何か変事か?」
「いえ…拙者の口からは何も……」
「左様か……」
そう言うと親父は俺を見てきた。
「父上、ここは急ぎ向かうべきかと…」
「そうか……よし、では松永殿、案内を頼むぞ」
「はっ!」
にしても筑前守殿からの呼び出し?なんか嫌な予感しかしないんだけど……
その嫌な予感が現実のものになるとは、まだ俺は思ってもいなかった…
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