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伊奈地の戦い②

天文16年(1547年) 6月

摂津国 能勢郡 野間の大欅付近 遊佐長教


「御注進!前方に百人ほどの軍勢!旗指から波多野の軍と思われます!」


「なに?それは誠か?」


「はっ、間違いなく」


床几で寛いでおったら、いきなり使番がそう申してきおった…しかし波多野か…左馬之助様の元服式の折、儂に恥をかかせたあの憎たらしい小僧の顔が浮かんでくるわい…にしても立ったの百人…おそらく斥候だろうが、それにしても少ないな…それだけ奴らは弱小ということよな……よしっ!


「されば孫十郎(綱知)殿と内藤家の者に使いを出せ。『波多野の軍を見つけた故出陣をしていただきたい』とな」


「はっ!承知しました!」


そう言い、使番は駆けて行った。にしても、あのような使番、当家におったか?……


そうして四半刻ほどで各家準備が整い、先ほどの使番の案内で、波多野の軍を目指し行軍を始めた。


はたして一里ほど進むと、確かに三町(約300メートル)ほど先に林に囲まれた白い陣幕が見えた。にしても陣幕の周りに兵がおらん……よほど気が抜けているな…ならば…


「皆の者!敵は油断しておるぞ!それ、突っ込め!」


そう兵どもを激励し、儂自ら陣頭に立ち陣幕に向けて突撃を始めた。


波多野の者どもも慌てふためくだろう!儂はそのようなことを考えながら陣幕を破り、陣内に入った。


ところが面妖なことに、陣幕内には兵が一人としておらんではないか。


「おい!どうなってお…」


儂が先ほどの使番を問いただそうとしたら、少し前まで儂の隣におったはずなのに何処にもおらん。


そして突如、ドンッ!!という腹に響くような音が至る所から鳴り響き、儂の額を何かが撃ち抜いたような感覚がした。


これが儂の感じた最後の感覚だった…


天文16年(1547年) 6月

摂津国 能勢郡 野間の大欅 


たった今、内藤氏の隊の最後の兵が倒れ、戦が終わった。


まず、結果から言うと、俺たちの大勝利だった。

先鋒の遊佐長教隊は、俺の仕掛けた偽の使番に誘き出され、陣幕内で動きを止められたところで林の中に隠しておいた鉄砲隊の一斉射撃を喰らい、運悪く被弾し討ち死にした。長教を始め多くの先頭にいた武将が馬に乗っていたため斉射の的となり、弾丸で撃ち抜かれるか落馬で命を落とし、後方にいた足軽たちはその光景を遠巻きに見て逃げだした。


一方それを見ていた中軍の多羅尾綱知隊は遊佐隊とは対照的に綱知の指揮により南の方に撤退していった。


やっぱり寄せ集めの軍は指揮系統がしっかりしてないから、頭立つ者がやられるとすぐにバラバラになるな。まあ、これは寄せ集めの軍じゃなくても言えることか。


そして取り残された後軍の内藤氏の残党は俺に対する恨みからか撤退も降伏もせずに戦ったが、内藤氏単体だと三百人ほどしか兵がおらず、後ろから天子達に挟撃されたのもあってすぐに兵は全滅し、指揮をとっていた武将達は自害し果てた。


指揮をとっていたのは内藤氏の細川氏綱の側に仕えて生き残っていた分家筋の人間だったそうだが、今思うと俺は内藤氏にかなり酷いことをしたな…


だが今はそんなことより越水城に向かわなければ…


俺たちは遊佐長教の首を確認し、半刻の休憩をした後、越水城のある南西に向かって再び進み始めたのであった…

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