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一路摂津へ

天文16年(1547年) 5月 

丹波国 多紀郡 八上城大広間


「孫四郎、そちが筑前殿の援軍に行ってくれんか?」


ああ、やっぱりね…俺はそう諦観の笑みを浮かべながらそう思ったのであった。


しかしなんで俺?ダメ元で理由を聞いてみてもししょうもない理由だったら断りたいんだけど?


「父上、何故某なのです?某ではなくとも与兵衛尉殿や美作守殿がいるではありませんか」


俺の言葉に対して親父は苦笑しながら


「いや…実は筑前殿からお主を寄越してくれとの要望があった故な」


と言ってきた。


嘘でしょ筑前の叔父上!なんでこんな子供を呼ぶのさ!


「まあ、当然じゃろうな。今のお主なら五百騎程の兵を動かせるじゃろ」


ああ、そうか、腑に落ちた。今の俺なら確かに七百の常備兵とまだ父には教えていないが、大江山衆の戦闘員百五十人の合わせて八百五十人を動かせる。


これは大体三〜四万石そこらの大名並の戦力だ。そりゃ筑前の叔父上も勧誘するか…


「承知しました。それでは領地に戻り、準備をした後出立致します」


「うむ、補佐として美作守と兵三百をつける。筑前殿の越水城にて合流せよ」


「では左様に。それでは先を急ぎます!」


俺はそう言い残すとすぐさま踵を返し、自分の領地に蜻蛉返りしていった。


その様子を見ていた晴通は


「美作守よ、どうやら儂は近々奴に家督を譲る事になるかもしれんな…」


と隣に居た美作守に、どこか遠い目をしながら言ったのであった。


天文16年(1547年) 6月

摂津国 能勢郡


自分の領地から出発して大体二刻(4時間)、漸く丹波を抜けて摂津国に入った。もっとも筑前殿の居城がある武庫郡は大阪湾沿い、ここからまだ距離がある。とりあえず今日は野営をすることになりそうだ。


にしても…


「天子、どうした?何やら落ち着かない様子だが」


そう、天子…というより大江山衆全体に落ち着きがないような気がする…


「いえ、この能勢郡は源頼光(ヤツ)の末裔の多田源氏の本拠地故、警戒を…」


ああ、そういえば源頼光は摂津源氏の祖だったな…でも多田氏はもう没落してるし、ちょっと警戒しすぎじゃない?


そんなことを考えながら馬に揺られていると、前方からうちの斥候の兵が駆け寄ってきた。何かあったのか?


「如何した?」


俺がその兵に聞き終わる前に、その兵はことの些細を告げた。


「申し上げます!二里(8キロ)前方に軍勢!旗印は対い松と二つ引き。細川氏の軍勢と思われます!」


ああ、どうやら俺には野営をする余裕すらないようだ…


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