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謁見と褒美

天文15年(1546年) 12月

近江国 滋賀郡 日吉大社


「漸く会うことが出来たの、千熊丸…いや、晴秀よ」


「はっ、誠に嬉しく存じます」


俺は今、足利義藤に謁見している。部屋は密室で、義輝の要望で中にいるのは俺と義藤、それと小姓の孫平太と、さっき元服したばかりの若者…といっても俺たちよりは年上だが…の細川与一郎(藤孝)殿の4人だけだ。


「なに、そのように畏まらなくとも良い。この場には我らしか居らぬ故な」


そういって義藤は豪快に笑った。しかしそうは言われても相手は次期将軍、無礼は許されない。


「若様、晴秀殿が困っておりますぞ。それにもう少し次期公方だという自覚を…」


お、与一郎殿が俺の言いたいことを全部言ってくれた。でも義藤は少し苦い顔をしている。いつもの事なんだろうな…


「そのような事より本題に入ろう」


お?本題?なんのことだ?


「余の家臣になってくれぬか?晴秀よ」


それは、余りにもど直球な勧誘だった。しかしこれは絶対に断りたい!俺は大名になってスローライフを送りたいんだ!殿中で魑魅魍魎の相手は御免なんだよ!


とりあえずここは上手いこと言って言い逃れるか…


「これは異な事、我らは皆、将軍家の家臣に御座るぞ」


「そうではない。余の直参として仕えてほしいのだ。余は武辺や軍略に富む者を家臣としたいのだ。」


ああ、やっぱり……でも諦めるわけにはいかない!


「しかし若様、拙者はただの国衆の嫡男に御座る。まだ父からも家督を譲られておらず、まだこのことを決めることは…」


「ほう、つまり家督を継げば余に仕えてくれるのだな」


おおう…諦めが悪いなこの若君。まあ、俺が家督を譲られるのはまだ先の話だろう。(史実だと1566年から1570年の間に家督を譲られている)


その頃なら義藤も永禄の変で死んでるだろう。

なら、いいか…


「はっ、拙者が家督を継いだ折には、将軍家に忠を捧げる所存に御座いまする!」


「よう申した!さればこれを受け取ってくれ」


そう言うと義藤は用意していたのか、与一郎殿に仕舞っておいたのであろう錦の袋に入った一本の長い棒、おそらく刀をこちらに運ばせた。


なんだろう?義藤からの刀なら少なくとも下手なモンじゃないだろう。個人的には三日月宗近か大般若長光、二つ銘則宗、骨喰藤四郎のどれかが欲しいけど、多分無理だな。それによく思い出してみたら大般若は筑前殿が貰ってたな。


そんなことを考えていると義藤は袋からやはり刀を取り出した。それは豪華な装飾が施された太刀だった。


「これは大原五郎大夫(安綱)の作、名物『童子切』じゃ」


え!?童子切安綱!?天下五剣じゃん!でもよく考えたら天子達の機嫌が悪くなりそうだな。


「そちの領国である丹波に縁のある刀じゃ。それにお主も源氏の末裔(波多野氏は源頼朝の弟、範頼の末裔)、この刀を振るった源頼光公の様に、余に仇なす悪鬼どもを斬ってくれ!」


…はぁ…ここまで言われちゃしょうがないな。


俺は童子切を受け取り

「は!この命に代えましても!」


と叫んだ。その後、謁見は少しの世間話をした後終わり、俺達は丹波に帰っていった。




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