誕生
この作品はフィクションです。史実と違いますので、その点、ご理解ご了承ください。
あと、アンチコメントはおやめください。
作者はまだ中学生なので、この小説は投稿不定期で2週間に1回ほどの投稿頻度になります。その点を了承した上で、ゆっくりしていってください
天文10年(1541年)9月 丹波国 多紀郡 八上城
突然、目が覚めた…ささくれた天井だけが目に映る…
ここは何処か、そう声を上げようとするが、それは言葉にならない…まるで赤子のような…いや、自分の手を見てみると、本当に赤子の手をしていた…
そのとき、視界の端で襖が開き、誰かが入ってきた…
入ってきたのは和服…素襖を着た若い男と打掛を着た若い女だった
「千熊丸!!おい!千熊丸が息を吹き返したぞ!」
「千熊丸!母の言葉が聞こえますか!?」
その大声に驚き、俺は大声で泣き出してしまった。おかしい、感情を制することが出来ない…
にしても、ここは戦国時代?そして千熊丸?もしかして俺、三好長慶に生まれ変わった?
だが、おそらく俺の父と思われる男の素襖に描かれた家紋を見ると、その家紋は丸に抜け十字…波多野氏のものだった…
そうして俺は悟った…あ、多分俺が転生したのは波多野秀治だ…と
確かに同じ千熊丸だし、なんなら三好長慶と波多野秀治は叔父と甥の関係だけども…
波多野秀治、ぶっちゃけ家臣の籾井教業(丹波の青鬼)と同盟者で義弟の赤井直正(丹波の赤鬼)の方が有名だし、最後は光秀に負けて信長に弟達もろとも殺されるという悲しすぎる武将…歴史好きの俺ですらこんな認識なんだから歴史を知らない人からしたら『誰それ?』となるに決まっている…マイナーな上に悲惨すぎる武将…
うん…考えるのをやめよう…
さて、そんなことを考えている間にも俺の両親は俺の世話をしている…俺はされるがままに服を着替えさせられたりしていると、また足音が近づいてきた
「義兄殿!千熊丸が息を吹き返したそうですな!」
そう言って入ってきたのは、父と同じくらいの年頃の顔の良い男が入ってきた。にしても義兄殿?もしかして三好長慶?…いやまさか…だってたかが甥が死にかけているだけで三好長慶が訪れてくるか?
だが、千熊丸の予想は外れ…
「おお、これは筑前殿!何故貴殿がここに!?」
ん?筑前殿?筑前守といえば三好長慶…え!?じゃあこの人がやっぱり…
「なに、可愛い甥が危急だと妻に言われましてな…単身摂津から駆けてき申した」
「おお…妹が失礼し申した…これ、千熊丸、お主の叔父になる三好筑前守範長殿じゃぞ」
ああ…やっぱりか…
そんな俺に対して範長殿は
「お初にお目にかかる、千熊丸殿。儂は三好範長、幼き時はお主と同じく千熊丸と呼ばれておった。以後よしなに」
そう挨拶をした範長殿はとても礼儀が良く、落ち着いた声をしていた…
「ところで筑前殿、右京大夫様の様子はどうなんじゃ?」
父が言う右京大夫というのは、おそらく細川晴元のことだろう。そういえばこの時期には範長殿は木沢長政とドンパチしてたはずだけど…そんなことを考えていると範長殿は
「ああ、管領様なら今は京にいらっしゃる。左京亮(長政)めの動きが怪しいと何回も儂も政長も河内の遊佐殿も言っておるのだが聞き入れてくださらぬ…」
「ははっ…もしもの時は儂も筑前殿に与力いたそう」
「おお!それはありがたい!」
今盛大なフラグがたったな…そういえば10月には長政が謀反を起こすんだったな…あ、よく考えたら俺が喋れたらこのことを伝えて恩を売れたじゃん!クソっ!!そんな考えが顔に出たのか、父が俺に対して
「これ、千熊丸。そのような面をするでない。心配せんでも、もしもの時は儂らが左京亮めを誅してくれよう!」
嗚呼…またフラグが…
その後、しばらく父と範長殿は2人だけで話をした後、範長殿は帰っていった
そして10月、史実通り木沢長政は謀反を起こし上洛し、右京大夫様や公方様(足利義晴)達は敗走した。その知らせを受け、父は範長殿の救援に向かい、翌年、木沢長政は討たれたのであった