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灼炎の転生魔女〜いじめ自殺から最強魔女の娘へ!前世の因縁、全部終わらせます〜  作者: 明鏡止水
2章 ゼスメリア生活・前編

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32.新年初登校

 冬の冷たい空気が、少しばかり緩みはじめた頃。

ゼスメリア魔法学院の始業式の日がやってきた。


私は、制服のローブを胸のところでぎゅっと握りしめる。

──制服に入るラインは、赤。「ルージュ」の魔法使いであることを示す色だ。


かつてこの学院に通っていた母も、これと同じ制服に袖を通していたのだろう。

そう考えると、なんだか感慨深いものがある。



 学院の大きな門をくぐると、懐かしい匂いが鼻をかすめる。

少し湿った石の匂いと、どこか甘い草の香り。

ここで、私はまた1年学び、そして──戦うことになる。


「アリア!」


声に振り向くと、赤い髪を揺らして、シルフィンが駆け寄ってきた。

ショートストレートの彼女は、今日もぴしっと決まっていて、まるで小さな軍人みたいだ。

でも、目元は柔らかく笑っていた。


「おはよう、シルフィン」


「おはよう。新学期、ちょっと楽しみ・・・だよね?」


 私は小さく笑った。

たしかに、怖いことも不安もあるけど──それだけじゃない。

きっと、きっと、この場所でも、私は前に進める。


「うん、楽しみ。頑張ろうね」


「もちろん!」


二人で並んで歩いていると、今度は別の方向から声がかかった。


「おーい、アリア、シルフィン!」


元気な声。

ライドとマシュルが、手を振りながらやってくる。

ライドは、相変わらず陽に輝く金の髪をくしゃっと乱していて、マシュルはその横で、どこか飄々とした表情をしていた。


「おはようさん。・・・はあ。相変わらず元気だよな、こいつは」


「だってさ、新しい授業も始まるし、学院内の決闘試合も増えるって先生言ってたろ?燃えるだろ、普通!」


「お前だけだろ、それ」


マシュルが肩をすくめる。

私は思わず小さく笑った。

──ああ、こうして、また4人で過ごせるんだ。

それが、なんだかすごく嬉しかった。




 学院の中は、新学期独特のざわめきに包まれていた。

あちこちで、ひさしぶりの再会を喜ぶ声が響き、廊下を急ぐ足音が重なる。

春の始まりに似た、でも少しだけピリリと緊張感をはらんだ空気。


私たちも、自分たちのクラス──ルージュの教室に、向かった。




「みんな、着席だ」


 教室に入ってきたのは、私たちの担任であるレシウス先生。

決して厳しくはなく、むしろ優しいまである、若い男の先生だ。


「さて、今日から新しい年が始まる。今日は始業式だけだから、4時間で放課だ」


その言葉に、教室中が喜びに包まれた。


「いよいよ3学期・・・最後の学期が始まるわけだが、まだあと2ヶ月残っている。その間、君たちには新しい試練がたくさん待っている。こんなところだ」


 レシウス先生は、ぱちんと指を鳴らした。

すると教室の壁に、巨大な水晶のようなスクリーンが現れ、文字が浮かび上がる。


《1年次課題──魔法制御訓練 属性特化試練 小規模ダンジョン演習》


「この中で特に重要なのは、小規模ダンジョン演習だ。君たちは入学してから、もっとも基本的なことを学んできた。次は、単独でも仲間とでも“魔法を使って生き抜く”力を身につけなければならない」


 教室がざわめいた。ダンジョン演習とは、本物の魔物と対峙する訓練だ。

簡単なものとはいえ、命の危険がないわけじゃない。


私は胸の奥で、ぎゅっと拳を握る。

異界の門の脈動、聞こえたあの声。

あれを思えば、ここで立ち止まるわけにはいかない。


──力をつけなきゃ。

いつか必ず訪れる“その時”のために。


「大丈夫だよ、アリア」

隣でシルフィンが、そっと私の手を握った。

「私たち、強くなれる。絶対に」


「・・・うん」


私は、小さく、でもはっきりとうなずいた。


 学院での、新しい一年が始まる。

私たちはまだ、何も知らない。

待ち受ける試練も、戦いも──そして、学院の奥深くに潜む、別の異界の影も。


でも、私は信じている。

この手に燃える炎と、この心に宿る願いだけは、絶対に消えないと。




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