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灼炎の転生魔女〜いじめ自殺から最強魔女の娘へ!前世の因縁、全部終わらせます〜  作者: 明鏡止水
3章 ゼスメリア生活・後編

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114.試練の火蓋

 模擬戦の翌日、私たちは再び訓練場にいた。

けれど、昨日とは違う。


誰もがそれぞれの動きに「意味」を持たせていた。立ち位置、視線、魔力の使い方、そして声のかけ方──。


 あの模擬戦で、私たちは「通じた」瞬間を確かに感じた。


「闇使いの影、昨日の軌道を元に再現して。ノエル、地脈の変化を仕込める?」


「いける。今回は、罠に“二重構造”を組んでみる」


 ノエルの声は冷静だった。けれどどこか、昨日よりも心の芯が近くなっているような、そんな気がした。


「ライド、雷を使うときは必ず“陽動”が必要。前後で動きを読まれないように」


「オッケー。昨日のやつに“痺れ”加える。逃げられなくすればいいだろ?」


そして。


「アリア、あなたの炎・・・昨日より制御が効いてる。爆ぜる手前で留めてたでしょ」


「うん。模擬戦のとき、ノエルのバリアでギリギリ守られたとき思ったの。“暴れた力”じゃ、意味がないって」


私はそう答えながら、魔力の流れを意識する。

ただ燃やすだけじゃない。仲間の動きと呼応して、力を“運ぶ”炎にすること。


あの模擬戦は、それを教えてくれた。


 


 三日後の戦略会議では、私たちの隊だけが“戦術分担表”を提出していた。


それを見たカイン先生は、ほんのわずかに口元を緩めた。

今年になって学院に来た彼の、初めて見る、ほんの小さな“笑み”だった。


「第七小隊・・・よく練られている。“穴”を、前提にしていないのがいい」


ティナが小さく頷く。


「足りないものを埋めるんじゃない。“持っているもの”で、戦える形を作る」


「──まさに、それだ」


先生はそう呟くと、全体へ向けて声を上げた。


「他の小隊にも伝える。本番試験では、“与えられた条件”において、最適の陣形を即座に作る力が求められる。それは、魔力量でも属性の豊富さでもない。“理解と連携”だ」


 試験まで、あと十日。

私たちの隊には、緊張もあるけれど、それよりも高まっていくものがあった。


あの模擬戦が、ただの演習ではなかった証拠。

“上には上がいる”──それを見せられて、私たちは負けなかった。


 だから、次は勝ちたい。


模擬戦で見た“闇の影”の動き。

氷のタイミング。

光の照準の取り方。


それらすべてを分析し、真似て、対策する。


そしてなにより、あの瞬間の決断力を、次は自分たちで引き寄せる。


 


 夏の本番試験。

それは、また一つ上の階段。

でも、私はもう怯えていない。


 ──あの闇の中を、確かに越えたから。

私たちは、「今ある力」で未来を切り拓く。


 


 そうしていよいよ迎えた、本番。

空は、まるで春の模擬戦を思い出させるような青さだった。


雲ひとつない快晴。だが、今日の陽射しは冗談みたいに暑い。

試験用の広大な戦闘区画には、すでにいくつもの魔法結界が張られ、まるで小さな戦場のような空気が漂っていた。


「いよいよだな」


 ライドが額の汗をぬぐいながら、誰にともなく呟く。


「本番だよ、アリア」


ノエルが隣で小さく微笑む。

その目にはもう、かつての距離はなかった。今の彼女は、私にとって仲間であり──友達だった。


「・・・うん。絶対、勝とうね」


 私は手にした杖を握りしめた。

魔力を上手く制御するための必須アイテムであり、入学直前に導かれるように手にしてから、ずっと使ってきた大切な道具だ。


四年生の終わり頃から、急激に魔力がまわりの子より高くなってきたのだが、最近は特にそれが顕著になってきた。


故に、魔法を唱える際に杖に流して制御する魔力も増えてきた。

だが、それでもここまで壊れずにいてくれている。


(この杖と、みんなとなら──やれる)




「第七小隊、準備完了」


 ティナの報告が響くと、場内に試験官たちの結界が展開された。

対戦相手の名前が読み上げられる。


「対するは、第八小隊。属性構成──氷、雷、地、風、光、風」


またしても“風”と“氷”がいる。つまり、撹乱と拘束を前提とした構成。

けれど私たちは、怯まなかった。


「前の模擬戦で見た構成に近いね。あれより少し“軽量”な印象」


 ティナが冷静に分析する。


「氷と風で動きを止め、光で仕留める──前と同じ流れだ」


「でも今回は、“その後”が違う」


マシュルが水の波を静かに展開する。


合図が鳴った瞬間、試験区域が震えた。


「行くよ!!」


私は叫んだ。


 地面が跳ね上がり、ノエルの罠が起動する。

風の刃が迫るが、ティナの光が狙撃の角度を狂わせ、シルフィンの精密な火矢が間隙を突いた。


「雷、右から!」


「取った!」


 ライドの雷撃が風の魔法を断ち、マシュルがそこへ水をぶつけて、敵の動線を封じた。


連携が、今までになくスムーズだった。


(いける・・・このまま押し切れば!)


私は炎を収束させ、敵陣へ向けて踏み出した。


「『焔閃陣(フレアリング)』──!」


炎が空間を焼き裂いた、その瞬間だった。


 ガキィン──!!


手の中で、何かが砕ける感触。


「──えっ?」


私の視界が揺れる。掌の中、杖の中央が──砕けていた。


杖が、二つに折れている。


「アリア!!」


 ノエルの声が聞こえたが、間に合わない。


崩れる構え、制御を失った炎が不安定に暴れ始める。

でも、私は倒れなかった。


「ノエル!地で受け止めて!」


「了解っ!」


 地面がせり上がり、私の炎を包むように遮断してくれる。

爆風は封じ込められ、私の体は吹き飛ばされずに済んだ。


だけど──私の、魔力の“導き手”はもうない。


(・・・どうする?)


 一瞬、頭が真っ白になりそうになる。

でも、見上げるとみんながまだ戦っているのが見えた。


倒れない。 諦めない。

私の魔法は、杖だけじゃない。


 炎は、心から生まれる。


「──私が、終わらせる!」


私は折れた杖の下半分を構え、魔力を直接、指先へ流す。


「『紅蓮牙・双斬』・・・!」


 杖無しで魔法を使うのは、魔力の高さ故に制御が難しい私にとっては危険な行為だ。失敗すれば、魔法が暴発し自分が焼かれる。


けれど、迷いはなかった。


 二振りの炎が再び形を成し、私の背中に、誰かがそっと支えるように立っていた。


「・・・最後、決めなよ」


それは、ノエルの声だった。


 


 そして──私たち第七小隊は、勝った。


息が上がり、私は地面に倒れ込む。

折れた杖を抱えながら、空を見上げた。


雲一つない、真夏の空。

熱い、でも冷たい涙が頬を伝う。


「・・・勝った、んだね」


「うん。アリアが、最後決めてくれた」


ノエルが、笑っていた。




 私は、折れた杖を見つめた。

ここまで五年間、愛用してきた道具が・・・壊れた。


(この杖は、折れてしまった。けど──)


私の中にある火は、まだ消えていない。

もっと、強くなる。

仮に杖がなくても、仲間となら。


 


 ──夏の空に、ひとすじの風が吹いた。


 


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