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第196話 両手に薔薇は薔薇は?

196

「ああっ、天使様! ありがとうございます!」

「主よ! あなた様の御心により、我らは救われました!」


 竜たちを撃退したグラシアンたち天使に、町の人々がいっせいに感謝の言葉を捧げる。天に向かい涙ながらに笑顔で祈りを捧げる彼らは、なんというか、信者なんだなって感じだ。


「ふぅ。思ったより大したことなかったですね」

「やんなぁ。おかげでちょっとばかし楽に力が戻ったわ」


 まあ、グラシアンがあれだからね。他の天使たちももう少し強いって想定で、竜の戦力を測るのは分かる。

 ていうか私もそうしてたし。


「末端ってこともあるだろうけどね。実際、あれで末端なら種族としては大したものだよ」

「ですね。私の眷属たちでも、最下級は一般天使より弱いです」

「吸血鬼はどうしてもね。血に関する能力も爵位で大きく変わるし」


 まあ、それでも魂力に関する能力はないみたいだけど。

 伝承の関係なんだろうね。


 天使の方にはそれらしい力があったことを思うと、どんな種族でも最終到達点は個人の資質の限りどこまでも高くなるんだろう。


 ただ、私たち龍は生まれながらにして魂力を視認し、そして干渉できるという点からすると、夜墨が竜を格下に見るのも分かる。

 そもそもあんなに大量発生するほど簡単になれる種族じゃないし。


「竜の王らはそれぞれグラシアンはんくらいには強いみたいやから、安心し」

「なら嬉しいね」


 彼クラスなら、多少私の制限が緩むだろうことを踏まえても遊び相手以上にはなる。

 龍帝みたいに拍子抜けなのが一番悲しい。


「あ、噂をすればグラシアンさんからです。本拠地に移動するから、先にさっきの迷宮に戻っててほしいそうです」

「ん、了解。民衆の心の支えってのも大変だねぇ」


 今も空で祈られてるし。

 

 あ、でも私も中国とか日本の一部地域じゃ似たような感じになるな?

 だいたい無視してるけど。


 ところで、ユドラスだっけ。彼はなんであんなに苛ついてるんだろうか?

 態度の上では隠してるけど、魂力にはダダ漏れだ。私がビビられてた時くらいから顕著になった気がするね。


 まあ、なんでもいいか。

 何かあればこの後紹介されたときにでも聞こう。



 伝言の通り迷宮で合流して、天使たちの本拠地に移動する。グラシアンと一緒にいたのはユドラスだけだ。

 彼は赤い髪と同じ色の瞳に似合った、いかにも血気盛んそうな雰囲気を纏っている。こういう髪型は、ウルフカットでいいんだったかな?

 彼はウィンテと令奈に挨拶をしたあと、私に胡散臭げな視線を向けてきた。


 二人は幹部組とももう挨拶済みか。実力についてもさっき横で戦ってたし。

 そこに見知らぬ白いヤツが増えてたらそりゃ胡散臭いよね、うん。


 何も言ってこないし、私も放置でいいや。


「今幹部たちを集めているところだが、一日はかかる。それまでは好きに過ごすといい。寝床は用意ができたら伝える」


 ふむ、自由時間か。

 私としてはこの大迷宮らしき拠点内にも少し興味がある。なんか宮殿っぽい感じで、面白そうだ。


 建築様式についてはざっくりとした知識しかないし、ぱっと見て分かるほどでもないからどこの宮殿かは分からない。でもなんとなくフランク王国周辺なんじゃないかなって感じはする。フランスとかドイツとか。


 まあでも、ここで生活することになるんだろうし、先に外かなぁ?

 いや、うん、外だわ。強制イベントだ。


「分かったからウィンテ、ニッコニコで無言のまま腕捕まえるの止めない? うん、令奈まで悪乗りしなくていいんだよ?」


 別に逃げたりしないからさ? 私も両手に花で喜ぶお年頃ではないからね?

 とりあえず、下手に怖がられないように人化はしておこうか。髪と目は、わざわざ変えるの面倒だしそのままで。


 美少女二人に挟まれたまま迷宮の階層間転移魔法陣を使って外に出ると、そこは何の変哲もない住宅街だった。

 ヨーロッパ感は、一応あるかな? 並木道が続いていて散歩するのには良さそうだね。

 

 でもこれじゃあどこか分からないし、二人に言って空へ上がる。ちょっと先に見えたのは、ずいぶん古風というか、歴史のありそうな町並だ。

 人間の視力じゃまず見えないくらい遠くには塔がある。あれは、エッフェル塔かな?


 するとここはパリのあたりか。で、さっきまでいたのはヴェルサイユ宮殿が元になった大迷宮っと。

 なんだか男装の麗人を探したくなっちゃうね。


「それで、配信はどうします?」

「んー、無しかな。敵さんも見れちゃうし、あと面倒」


 会話の仕方にも気を付けないといけなくなっちゃうからなぁ。

 私たちさえ分かればいい、の状態で気楽に観光したい。久々なのもあるし。


「ほな、せっかくやし、あっこ見えとるエッフェル塔でもめざそか」

「いいね! 一度行ってみたかったんですよねー」

「うん、それはまあいいんだけどさ、いつまでこの体勢なの?」

「レッツゴーです!」


 ああ、はい、スルーと。まあ八割くらい変温動物化してるし、気候的にも暑すぎるってことはないんだけどね?

 まったく、懐かしいね、この感じ。何十年ぶりなのやら。


 まあ、楽しもう。

 どうせなら後でそれっぽい格好に着替えるのもいいね。パリだし。



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