表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/202

第163話 晴天に蠢く気配

163

  ひとまず着陸して、生活道らしきところに出る。少し歩けば町に行ける辺りだ。と言ってもこの島自体が小さいから、どこに降りたところで()()()()()()()()()んだけども。長辺で十キロくらいじゃないかな?


 すぐ横、海の挟んだ向こう側の小島も気になるところだけど、一旦は人の町だね。お腹空いたし。


 しかしまあ、殺風景な島だね。木々が少なくて砂と岩って感じなのが凄く地中海っぽい。その分空は広いし、海も綺麗だ。ここに白い建物群が並ぶなら、それはもう美しいんだろう。

 残念ながらここもしっかり人口が減ってるみたいで、廃墟みたいなのがちらほらあるばかりだけど。あたりの魔物の気配からしても、スタンピードはもう起こった後なんだろうね。


 ともかく、名も知らぬ島の探索といこうじゃないか。島の中央辺りに山があったし、あとで登ってみても良いね。天気も良いし、きっと気持ちよいだろう。地中海だけあって日差しは強いけど、日焼けの心配はしなくていいし。湿気はもう少しあっても良いかな。


「配信はどうする」

「んー、もう少し近くまで行ってからでいいかなぁ」


 挨拶なりなんなりしてる間に町到着ってくらいがちょうど良い。それまではのんびりお散歩だ。

 ……おっと、また無意識に逆方向に。この癖は直らないなぁ。そういえば昔、身近な人には私の行こうとした方向と逆に行けば目的地があるだなんて言われてたっけ。しかも何故か本当にちゃんと辿り着ける。土地勘も地図を見たことも無い場所だろうと関係なくだ。本当に謎。


「それにしても多いね。この辺って治安悪いのかな?」

「若しくは過去に紛争でもあったかだな」


 これまでもそういう地域はあったんだけども、どうも引っかかる。向かってる方向にもいくつか気配があって、――ありゃ、これは不味いかな?


「こういう時って助けに行った方が人間らしいよね」


 ついで感覚で助けられる力があって、気付いちゃってて、かつ一般的に敵対種族と言われてる存在が相手ならって但し書きはつくけども。


「ああ、おそらくな」

「おっけ。なら、ちょっと走ろうか」


 軽く地面を蹴り、小高い丘の先を目指す。丘の頂上までは、歩けば十分くらいの距離だ。周囲を破壊しない程度の速度を維持してても数十秒ほどで上りきれる。

 一気に視界が開けた。いくらか下った先に必死の形相で走る青年が一人。鬼役は、異形の化け物数体だ。

 人間をベースに色んな獣や虫を継ぎ接ぎしたようなその姿は、もうすっかり見慣れてしまったもの。あれらの同族が初めて私の逆鱗に触れた日がもはや懐かしい。


 おっと、思い出に浸ってる場合じゃ無いか。早く助けてあげよう。


 地面を蹴る力を少し強める。丘がいくらか抉れちゃったけど、仕方ない。


「もう大丈夫」


 すれ違いざまにそれだけ告げて、異形の化け物、魔族の前に立ち塞がる。異形ではあるけど、やはり人間の要素が強い。気配からしても、まず間違いなく魔人だろう。彼らは訝しげな目を向けてきながらも止まる様子は無い。


「逃げっ……ゴホッケホ」


 あらら、むせてら。すっかり息が上がっちゃってるね。これはギリギリセーフだったかな。ともかく悪い人ではなさそうだ。


「ご忠告ありがとう」


 少し派手にいこうか。

 これ見よがしに拳を振りかぶり、そして振り抜く。まだ少し距離があるし、完全なテレフォンパンチだ。

 でも十分。その拳圧だけで地面が抉れ、魔人達は塵と化す。


 人の身である青年からすれば天変地異の如き光景だろう。この身一つで生み出す現象としては、人間らしさから些か遠すぎる気がしないこともない。けど、今の私にとっては、これくらい朝飯前だ。


 ……はい、嘘です。ちょっぴり魔法を混ぜました。まだ制限が酷くてそこまでできません。

 中国にいた頃より魂力の支配力は上がってるけど、それでもまだ初期値は全力の三割五分あるかどうかなんだよね。魔力出力自体に制限がかけられる以上ある程度は仕方ないんだけど。


 つまり今回もまた、制限解除をしないといけないわけで。ぶっちゃけめんどくさい。でも制限かけられたままなのは腹が立つ。一応、sp集めをスキップする方法もあるんだけど……。


 おっと、まずは青年の方を気にかけてあげないとか。見た感じ、アラサーくらいかな。いや、でも西欧人だし、日本人の見た目基準より若いのはありそう。ギリシャ人にありがちな顔立ちなのは分かる。ただ、アルバニア人系だとかアルーマニア人系だとかその辺の違いはよく分からないな。ウィンテなら淡褐色の瞳とか黒髪のくせ毛とかから染色体の類型なんかを推測できるんだろうけども。


「怪我は無い?」

「あ、えっと、はい。ありがとうございます」


 顔を見てぽーっとして、角をちらちら、尻尾をちらちら。ふむ、私の正体をはかりかねてるって感じだね。ただ魔族や人以外の種族を初めて見たっていう反応では無い。人以外の人間種族にも馴染みがあるのね。

 肩にかけた鞄からは何か植物らしき匂い。重心の偏り的にかなり重そうだから、石か何かも入ってるのかな。指先に染みつき。アルコールの匂いもするけど、お酒を飲んでる様子は無い。薬師とかその辺かもしれないね。


 さっき感じた違和感の正体も分かったけど、それについては何か知ってるかな?

 ともかく、この第一村人を町まで送っていこうか。この辺りは妙に魔族の気配が多いし。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ