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世捨て人龍の配信生活~迷宮の底で人型龍になったけれど生活を充実させたいので配信者します~  作者: 嘉神かろ
第4章 天願う物語

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第125話 配信を続ける意味

125

 残されたのは、見覚えのない、茜色の宝玉。


 てっきり天沼鉾(あまのぬぼこ)が残るものかと思ったけども。


 いや、この感じは……。


「……まあ、良いか」


 とりあえず、あれだ。


「うん、疲れた!」


『ういー、お疲れ!』

『我が人生に一片の悔いなし!』

『めちゃくちゃ凄かったです!』

『ハロさんお疲れ様です!』

『やはり龍神様』

『おめでとうございます!』

『お疲れ様です!』


 うん、寝たきり組も満足してくれたみたい。

 良かった良かった。


「本気で疲れたし、さくっと配信終わるとするね。次の配信は、まあ、皆に忘れられる前には頑張るよ」


『あ、百年後とかになるやつだ』

『人族我氏、涙目』

『マジで長命種になってて良かった』


 散々言われてんね?

 日頃の行いか、そか。


「それじゃ、またね。ばいばい」


 はい、配信終了っと。


「ふぅ……」


 改めて、残された茜の宝玉に目を向ける。


「龍神様、か」


 引き継ぐなら、そうあるのも良い。

 世捨て人生活をするのなら、そちらの方が適しているだろうし。

 

 けど、もう少し、人でありたいとも思う。


「我ながら矛盾してるねー、まったく」

 

 宝玉を拾い上げ、その場で胡座をかく。

 これのことは、また後で考えよう。


 先に、今日のリザルトだ。


 累計視聴時間、約三〇〇〇万時間。総視聴者数、約二一三二万人。コメント数は約二億七〇〇〇万。

 で、獲得spは、三億オーバーっと。


 久しぶりに見たなぁ、こんな数字。

 ていうかこの数字、ほぼ皆最初から最後までいてくれたんだ。

 ありがたいね。


 コメント数のボーナスは、誰かが計算してたけど、まあいいか。


 しかし、三億ねー?

 まあ、こんなのは私でも早々無いけど、それにしたってさ。


 配信続ける意味って、正直、spの面ではあんまりないよね。

 貯金は、もう桁を数えるのも億劫なくらいにはあるし、アーカイブだけでも割と収入あるし。


 ぶっちゃけ、世捨て人生活を完成させるなら、引退した方が良い。

 

 それでも配信を続けているのは、人らしくありたいから、なんだけど。


「龍神、かー」


 天井を見る。

 かなり高くて、龍たる私の視力でも、細かい部分はよく見ようとしないと分からない。


 まあ、普通の人間なら、まず暗くて天井の存在も分からないんだろうけども。


 化け物な伊邪那美さんに勝った、龍神。

 コメント欄の色んな言葉を、今更考えちゃう。


「私が人らしく有るって、やっぱり、もう難しいのかねー?」


 んー、あー、おー。


「……まあ、またゆっくり考えよう。時間は、たっぷりあるんだから」


 皮肉なことにね。


 それよりも、今はやんないといけない事がある。


「よっと」


 わざわざ勢いを付けて立ち上がり、周囲を見回す。

 探しているのは、初め、伊邪那美さんが鎮座していた、床の間的な台座だ。


 んー、あ、あった。

 そんなに離れてない。


 歩きながら、ボロボロで際どい感じになってる着物を修復する。

 このクラスになると、魔法での修復は難しいんだけど、今の私なら造作も無い。

 力の流れを整えながら、繊維をつないでいく。


 宗像三女神(むなかたさんじよしん)の力を取り込む前の私は、この力の流れを整えることが出来なかった。

 けど今なら、ついでに強化することだってお茶の子さいさいだ。


 まあ、あの神器を飲み込むやつも、今思えば結構な賭けだったんだけど。

 上手く制御出来なければ、元々の力と反発し合って、私の身体は木っ端微塵になってただろうし。


 制御が出来たとしても、その場限りの力になる可能性の方が高かっただろうなー。

 上手いこと私の魂と融合してくれたのは、まあ、彼女らの意思があってこそなんだろう。


 と、ここだ。


 あれだけの激闘があったていうのに、ここだけは綺麗なものだね。

 綺麗なものといっても、元がボロボロだから分かりづらいけども。


「んー、こうか、なっと」


 よし、開いた。


 一段高くなっている縁を持って持ち上げてみれば、案の定扉になっていて、更に下へ続く階段が現れる。

 こちらは、綺麗な白木だ。


 そこを降りきると、また同じような白木のシンプルな廊下が続く、のがいつものパターンなんだけど、今回は違うらしい。

 

 コアルームまで真っ直ぐ続くのは、予想通り。

 白木で作られているのもそう。

 

 違うのは、そこが渡り廊下になっていて、左右は白い玉砂利を敷いた日本庭園になってるってところ。


 ふむ、これは、大迷宮故なのかな?

 ウィンテと令奈に聞いておけば良かった。


 今からでも聞こうかな?


 えっと、プライベートスレッドは……。


『私の本名、あんたもええ名やって思ってくれとったんやね。おおきに』


 おーん?

 あー……。


 そういえば、配信中に本名言ったかも。

 いや、言ったな。


 ……うん、見なかったことにしよう。


 とりあえず、コアルームへ――


「今隠しボスは、勘弁してほしいかな?」


 コアルームがあるはずの場所から感じたのは、伊邪那美さんに並ぶほどの気配。

 力の総量としては、準じるってくらいだけど、戦闘力って基準なら負けず劣らずだろう。

 下手したら、伊邪那美さんより厄介かも。


 万全の状態なら寧ろウェルカムなんだけどね。

 今戦ったところで、私は全力を出せない。


 全力を出せないなら、意味が無い。


「……敵意は、なさそうだね」


 まあ、行ってみよう。

 候補は二択まで絞れてるし。


 まあ、別の予想と合わせると、実質一択なんだけど。



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