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第三話 王都襲撃と従魔

 王城の門から飛び出た俺たちは、まず襲撃者の掃討にかかる。


「来たぞ!」

「やっちまえ!」


 襲撃者数人が叫び、剣を手にこちらに切り掛かってくる。

 それに対して、俺は走りながら腰の刀を一本だけ抜刀、橋は槍を短く片手で構え、伊藤は短剣を逆手に持ち、向かってくる攻撃をいなしつつ、首筋に痛打を見舞い意識を刈り取る。


「炎攻撃魔法【蒼炎柱(フレイムポール)】!」

「氷攻撃魔法【氷柱(アイスポール)】!」


 その時、遠方にいた襲撃者から魔法が放たれる。

 橋は左に、伊藤は右に、俺は上にそれぞれ跳んで回避。それと同時に後方の味方に指示を出す。


紗倉(さくら)国府宮(こうのみや)!」


 俺が2人の方向を見ると、ちょうど詠唱が終わったところのようだ。


「水攻撃魔法【鋼水弾(アクアショット)】!」

「風攻撃魔法【衝撃波(ショックウェーブ)】!」


 音速を超える水の弾丸と烈風を伴う激しい衝撃は、蒼炎の柱と青氷の柱を打ち破り、敵の魔導士を襲う。


「いい感じだ。橋も伊藤も武器の扱いが結構慣れた感じがあるし、紗倉と国府宮も魔力操作がすごく上手い。この調子でどんどん行こう」

「うん!」

「はい!」

「どんどんぶっ飛ばそー!」

「お手柔らかに頼むぞ……頼むから……」


 そこからは一団一団しっかりと潰していき、段々と襲撃者を片付けていく。


 そして、それはその殆どが片付き、他の班と合流しようと、街の中心部を横断しようとした時だった。


「よし、そろそろ他の班と合流しよう。後は任せれば大じy―――」

「―――俺様の計画を邪魔したクソガキはテメェか?」


 上から冷徹な声と殺気を感じ取った俺は刀を抜いて水平に構え、防御姿勢を取る。


 ズドン!


 瞬間、全身を打つ強い衝撃。


「っ〜、らあっ!!」


 それを無理やり押し返して敵を弾き飛ばす。


「ほぉ〜お、やるじゃねぇか、ガキがよぉ」


 俺は顔を上げて奴を視界に映す。

 そこには、身の丈ほどの大刀を担ぎ、不敵な笑みを浮かべる大男がいた。


「……お前がこの襲撃の首謀者か」

「そのとーり。俺様は組織“ダインズヘル”幹部、へリアス=ゴードンだぁ……」


 ご丁寧に自己紹介をしてくれたへリアスは、大刀を構え、こちらを睨む。


「俺様の計画を邪魔しやがったクソガキには、ちょーっと“お灸”が必要なみてぇだなぁ……?」


 俺は、そう言って舌舐めずりをする奴に危険を感じ、後ろの味方を下がらせる。


「……全員、下がってろ。俺がやる」

「樹くん!」


 紗倉が心配そうな声で叫ぶ。


「大丈夫。安心しろ、死ぬ気は無いから」

「でも……」


 尚も食い下がる紗倉に俺は強い口調で言う。


「俺が下がってろって言ったら下がれ。これは班長命令だ」

「……わかった」


 背後の気配が遠ざかるのを確認した俺は、刀を正眼に構え、どのように俺を痛めつけようか逡巡しているへリアスに対峙する。


「へリアス=ゴードン、と言ったか」

「お〜、そうだが?」

「俺はお前を叩き潰さなきゃならん」

「あ?」

「お前はかなりの人数、殺したようだしな」

「はっ!違ぇな!」

「何?」


 奴は不敵な笑みを浮かべ、言う。


「俺はただ進む方向にいた“障害物”をブッ壊しただけだ」


 その言葉には仲間たちも衝撃を受けたようで、絶句している。


「なん、ですって………?」

「イカれた野郎だな………」


 対する俺は、


「………そうか」


 と一言。

 瞬間、俺は地面を強く蹴り、一瞬で奴の背後に回った。


「何っ!?」

「お前とは、モノの価値観が違うようだな。容赦なく行かせてもらう」

「ク、ソ、がぁぁぁぁぁぁあ!」


 俺の圧倒的速さに、尚も喰らい付いてくるへリアスの決死の一撃を俺はヒラリと交わし、奴を殺さない程度に威力を落とした技を放つ。


我流(がりゅう)陽光流(ようこうりゅう)陽光閃(ようこうせん)不殺の剣(ころさずのつるぎ)]」


 刀の峯で後頭部を打ち、その勢いのまま右足で股間を撃ち抜く。


「がへっ……」


 上と下を潰されたヘリアスは意識を明後日へ飛ばし、地面に倒れ伏した。


「す、すごい……」

「素晴らしいですわ……」

「うっわ〜……痛そ〜……」

「今股間がヒュッってしたぞ」


 後ろで見ていた仲間たちは、それぞれ口々に感嘆(?)の声を漏らす。


「コイツがこの襲撃の首謀者か。騎士さん、コイツ任せていいですか?」

「あ、ああ。今応援を呼ぶよ」


 若干遅れて反応する護衛の騎士さん。

 どうやら俺が敵のボスを倒したことに驚いているらしい。


 無事に今回の任務を終えた俺たちは王城前の広場に集まる。


「ふむ、欠員なし、全襲撃者確保、襲撃の首謀者確保。素晴らしい戦果だ。お前たち、よくやった」


 ドンさんは満足そうに頷き、今度は俺の方を見る。


「して、イツキ•フタイリ!前へ出ろ!」

「……?はい」


 何故か俺が呼ばれたので指示通り前へ出る。


「お前、首謀者であるへリアスを倒したそうじゃないか」

「ええ、そうですね」

「よくやってくれた!奴は身体強化魔法の使い手でな。単純ながらその強さに、我々では手も足も出ない状況だったのだ。これで我らは奴らのアジトの一斉捜査が行える。本当に助かった」

「それは良かったです」


 実際は、奴は魔法を使っていなかったのもあるが、実力では完全に俺が上だったのだ。当然の結果である。


 俺たちが戦いの勝利を祝っていると、俺が倒したへリアスが顔を上げ、おかしな事を言った。


「襲撃が、これ、だけだと、思ったか…?」

「………何?」


 瞬間、街の中心部からドス黒い魔力が溢れ出し、空間を引き裂いて一体の魔物が現れた。

 黒い目に金色の瞳、輝く金髪に日焼けしたような黒い肌、極め付けはその頭の黒い角と黒い羽だ。


「あれは、――」

「――魔族(まぞく)


 俺の言葉の後を綴ったのは、ドンさんだ。

 瞬間、ドンさんは大声で指示を出す。


「総員、戦闘体勢!絶対に王城にだけは近づかせるな!」


 その言葉に俺たちは再び戦闘体制に入る。


「……ほう、下等生物共は皆雑魚ばかりだと思っていたが、少しは味のありそうな奴も居るじゃないか」


 奴は何か呟くと、何故かこちらを見て、こちらに歩き始めた。


「弓兵部隊!魔導部隊!撃ち方始め!」


 ドンさんの号令によって、こちらに向かおうとする様子の魔族に向かって無数の矢と魔法が放たれる。


ドドドドドドドド!


 全ての攻撃は魔族に命中。

 しかし、煙の中から姿を現した奴は、なんと無傷だった。


「嘘、だろ」

「そんな、あの数の攻撃を受けて、無傷だなんて………」


 周囲から絶望の声が上がる。

 そのとき、奴は徐に右手を前に突き出す。


「羽虫が邪魔をするんじゃない」


 瞬間、ありえない速度で奴の右手に魔法陣が構築される。


「喰らえ、闇攻撃魔法【精神の闇獄(メンタルブレイク)】」

「空間防御魔法【空間断絶(くうかんだんぜつ)】!」


 発動される攻撃魔法に、俺は間一髪で防御魔法を展開。

 しかし、咄嗟の発動なのでその範囲には限界があり、自分の班を守る程度の大きさの結界しか構築できなかった。


 精神を破壊する闇が吹き荒れ、1人、また1人と騎士とクラスメイトが倒れていく。


「……少しはやるような個体も居るようだな。少しは楽しめそうだ。……貴様、名はなんという?」


 奴は俺に向かって名を聞いてきた。


「………イツキ・フタイリだ」

「そうか。特別に貴様の名前だけは覚えておいてやろう」

「その必要はない」

「何?」

「お前はここで死ぬのだからな」

「はっ、笑わせる。できるものならやってみるが良い!」


 その言葉と同時に、俺と奴は腰から剣を抜く。


「樹くん……」

「紗倉、安心してくれ。俺は死にに行くつもりは無いよ」

「でも、樹くんが居なくなったらって思うと、私……」

「……わかった。それじゃあ、これ、預けて良いか?」

「………これは?」


  そうして紗倉に渡したのは、金色の枠に、赤、青、緑、水、茶、薄緑、黄、白、黒の9色の宝石が埋め込まれたペンダントだ。


「それは、俺が今までで一番大切にしてきたペンダントだ。絶対取りに戻るから、持っててくれないか?」

「……うん、わかった。絶対に勝ってね」

「ああ」


 紗倉たちが離れるのを確認した俺は、再び奴に向かい合う。


「茶番は終わったか?」

「……意外だな。まさか会話中に襲ってこないとは」

「ふん、この戦いに羽虫は要らんのでな」


 その言葉を皮切りに、戦いが始まった。


「はっ!ふっ!せいっ!」

「ぐっ……」


 奴はその羽を最大限に活用して、速度を生かした攻撃を繰り出してくる。

 対する俺は、防戦一方。

 だが、勝負の流れは段々とこちらに傾いている。

 魔族の速度が落ちて行っているのだ。


 おそらく、奴の速度は単なるフィジカルでの速度ではなく、魔力によってブーストをかけた、一時的なものに過ぎないのだろう。

 その証拠として、奴の表情が余裕のあるものから焦りと疲労の混じったものに変わっていた。


(よしよし、良い感じだぞ。このまま奴の魔力切れを狙う!)

(クソ、クソ!何故だ!何故このような虫ケラ如き、瞬殺できないのだ!?不味い、不味いぞこれは!このままでは、魔力が切れ、敗北が確定する!)


 しばらく剣戟を繰り広げた後、焦った奴はさらなる攻勢に出る。


「炎魔豪剣流[爆殺剣(ばくさつけん)]!」


 爆発を伴った鋭い袈裟斬りを、俺は反対からの袈裟斬りで防ぐ。


「なぁっ!?」

「ふむ、お前はその速度に頼るがあまり、剣術を疎かにしたようだな。おそらく、剣術では俺の方が上だぞ?」

「チッ」


 剣術での勝負は不利だと見るや否や、奴は飛び下がり、魔術勝負に出た。


「草攻撃魔法【荊の庭園(ニードルテラス)】!」


 瞬間、辺り一帯から荊が四方八方に生え、逃げ場をなくすとともに攻撃を仕掛けてくる。

 俺はそれに対して、同じく広範囲魔法をぶつける。


「炎攻撃魔法【紫炎の豪雨(バーニングスコール)】!」


 紫の炎の雨は、周囲の荊を燃やし尽くし、灰へと変えていく。


「なん、だと!?」

「驚いている暇があるのか?」


 俺は奴が驚きに意識を持っていかれた瞬間を見逃さず、一瞬で肉薄する。

 そして、俺は速度に力を全振りした居合を放つ。


「我流・月光流(げっこうりゅう)月光斬(げっこうざん)閃光(せんこう)]」


 スパァン!


 音の速度を超える刀は、奴の脇腹に食い込み、心臓を通って左肩へと抜けて行った。


 心臓を破壊された魔族は、その場に倒れ、最後に一言。


「化け、物、め……」


 魔族の意識はそこで途絶え、息を引き取る。


「ふぅ、割とギリギリだったな」


 俺が振り返り、仲間の元へ戻ろうとした瞬間、背後の殺気を察知する。


「樹くん!!」


 必死な紗倉の声。

 それに対して俺は冷徹なまでに告げる。


「月光流[影月(えいげつ)]」

「ぐはぁっ………」


 どこからともなく発生した斬撃が背後から攻撃をしようとした魔族を襲う。

 俺は倒れ伏す魔族だけに聞こえるように言う。


「な、何故、だ……」

「俺がなんの対策もなく背を見せると思ったか?魔族の生命力は知っている。心臓を破壊されたくらいですぐに死ぬ訳がない」

「ふっ、見、事……」


 その言葉を最後に魔族は息絶えた。


「樹くん……」

「言っただろ?俺は死なないって」

「うん……はいこれ」

「おう、ありがとうな」


 俺は例のペンダントを受け取り、未だ立っている4人に頭を下げる。


「お前たちには先に言っておこう。俺はある程度の技と魔法が扱える。この件は、内緒にしておいてもらえないか?」


 それには親友の橋が答える。


「どうしてだ?と、聞きたいところだが、魔族を単騎で撃退する実力を持つお前がそう言うんだ。何か訳があるんだろう?」

「ああ」

「なら、それを俺たちから話すような事はしない。何より、親友の頼みだからな」

「……ありがとう」

「おう」


 俺は仲間たちに感謝しつつ、未だ気を失っている周囲の仲間の治療にかかる。


「草回復魔法【花姫の加護(はなひめのかご)】」


 俺が回復魔法を発動すると、辺りに花々が咲き乱れ、人々の壊れた精神を修復していく。

 治療が終わると、倒れていた仲間たちは1人ずつ起き上がる。


「あれ、俺、何して……」

「確か、へリアスが変なこと言った直後、闇が吹き荒れた記憶はあるけど……」


 みんなが困惑している中、起き上がったドンさんは、状況を冷静に考えて、未だ健在に立っている俺たちに向かって来る。


「お前たちが、あの魔族を倒したのか?」

「ええ、()()()5()()()協力して倒しました」

「お前たち、やるじゃないか!魔族の広域制圧魔法を防ぎ、さらにはそれを撃退、最後には負傷者の治療にあたるとは!これは勲章授与クラスの活躍だぞ!」

「ありがとうございます」


 1人で魔族を撃退したのであれば、反逆の可能性を考慮して俺だけ強制送還、最悪殺されるかもしれないが、5人で協力して撃退したというのであれば、それは転移者ならばあり得る事なので、その可能性もない。


 その後、ひとしきり褒めちぎられ、国王から勲章まで授与された俺たちは、町の復興作業を手伝う。

 その最中、俺は他の人に見つからないように人気のない路地へと入り、魔法を発動する。


「空間魔法【空間移動(ワープ)】」


 瞬間、俺の周囲の風景が一瞬で切り替わる。

 そこは火山、海、草原、森などの様々な環境が1箇所に集まったような空間に転移する。

 俺はそこで指を咥え、ピィーと口笛を吹く。

 すると、各地から赤色の鳥、水色の蝶、黄緑色の蝶、空色の海竜、藍色の狼、岩の巨人、赤、青、黄の三匹の竜、紫の鷹の頭と羽を持つライオンが現れる。


「久しぶり、フェニ、シアン、ライム、シーベ、フェル、ガーディ、フレイ、フロス、エレキ、グーリ」


 俺がそれぞれの名前を呼ぶと、一斉に飛びかかってくる。


『ピィー!』

『ヒュルルルルル!』

『キャン!キャン!』

『ゴァァァァァ!』

「え、ちょ、みんな一斉はむr」


 俺は飛びかかってきた獣たちを受け止めようとするも、みんな俺よりも大きいのだ。

 当然受け止められるはずもなく、押しつぶされてしまう。


「ぢょ、お、おもい、おもいがら、ばなれで」


 俺が何とか声を出して宥めると、素直に離れてくれる。


「全く……まぁでも、久しぶりにお前たちと会えて俺も嬉しいよ。幼少期から面倒を見てるわけだからな」


 さて、紹介しよう。

 この魔獣たちは、俺が前世で手懐けた従魔たちだ。


 ●


 個体名 フェニ

 種族  フェニックス

 ランク S


 個体名 シアン

 種族  ダイヤモンドバタフライ

 ランク S


 個体名 ライム

 種族  エメラルドバタフライ

 ランク S


 個体名 フェル

 種族  フェンリル

 ランク S


 個体名 シーベ

 種族  シーサーペント

 ランク S


 個体名 ガーディ

 種族  エルダーガーディアン

 ランク S


 個体名 フレイ

 種族  フレイムドラゴン

 ランク A


 個体名 フロス

 種族  フロストドラゴン

 ランク A


 個体名 エレキ

 種族  サンダードラゴン

 ランク A


 個体名 グーリ

 種族  グリフォン

 ランク A


 ●


 この10匹の従魔は、俺が前世で卵を発見、孵化させてしっかり成獣まで成長させたものだ。

 おかげでものすごく懐いてくれているし、俺の方もコイツらに愛着がある。

 この世界も、コイツらが伸び伸びと暮らせるように、空間魔法で作り出した擬似空間なのである。


 因みに、俺が転生してコイツらは歳を取らなかったのかというと、何と年は取っていないようだ。

 まぁ、歳を取っても、フェニは不死鳥だし、他の子らも寿命5000年は超えるそうなので特に問題はないのだが。


「長いことここに閉じ込めてごめんな。もうちょっとしたら思いっきり外に出してやれるからな。もう少しだけ我慢しててくれ。それから、フェニも怪我人の治療、ありがとな」


 俺の言葉に10匹は鳴き声で答えてくれる。

 実は、フェニには前に会っていて、今回の襲撃における怪我人の治療をお願いしていたのだ。

 と言っても、突然街中にフェニックスが現れては、さらなる大混乱が巻き起こるので、俺がスキル〈従魔士(じゅうまし)〉の能力《従魔縮小(じゅうましゅくしょう)》で小鳥サイズに縮めていた。

 従魔とは感情が共有できるので、みんなの「気にしないで」という感情が伝わってくる。


「ありがとうなみんな。それじゃあ、あんまりここにいても怪しまれちゃうから、そろそろ行くな。元気でな」


 俺は1匹ずつ頭を撫でてから魔法を発動する。


「またな。空間魔法【空間移動】」


 再び風景が切り替わり、先程の裏路地に戻ってきた。


「さて、可愛い従魔たちからエネルギーもらって頑張るぞー!」


 俺はその後凄まじい勢いで復旧作業を終わらせたのだった。


 ◇


 それからもう二週間。

 俺たちは王城での訓練を終え、王都にある異世界者学校へと入学することになった。

 王城にいられる最後の日。


 俺は襲撃の日から何故か人に囲まれ、今では転移者のリーダー的存在になっていた

 その日の挨拶も俺が代表してすることになった。


「ドンさん、これまで俺たちに右も左も分からない戦闘の指南をしてくださり、ありがとうございました。これからも、ドンさんの教えだけは忘れずに精進していきます」

「うむ。こちらこそ、お前たちと過ごせた日々は面白いものだった。これからお前たちには、色々な災難が降りかかるかもしれんが、お前たちの団結力ならば、きっと乗り越えられると信じておる。お前たちの強さはこの俺が保証しよう。しっかりやってくるのだぞ」


 そのドンさんの激励に俺たちは返事をする。


「「「「「はい!!!」」」」」


 そうして王城を後にした俺たちは、今回入学するグランドスレイ剣術魔法学院へと向かう。


 目的地であるグランドスレイ剣術魔法学院は、王都ではなく隣町クーデリアにある、というか、()()()()が学院なので、少し歩かなければならない。


 グランドスレイ剣術魔法学院は、このドレスデン王国の最高峰に位置する学校の一つ。

 剣術、魔法共に教育の幅が広く、語学、数学、科学、歴史、地理などの文化教育にも力を入れている。

 そして、人々からは“勇者学校”とも呼ばれている。


 一つ、情報を付け足すとすれば、この学院は俺が前世で作ったものだということだろう。


 突如国王となり、自国の急務の課題としたのが先程のような教育で、その先駆けとしてこの学校を作り、校長には自らが就任することで、教育の充実化を図ったのだ。


 そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか学院に着いていた。


「おお、でかい」

「すごく広いわね……」

「まさか街一個とは……」

「東京ドーム何個入るんだ………」


 そう、俺が何故「隣町()()」といったのか。これが答えである。


 グランドスレイ剣術魔法学院は、一つの街丸ごとが学院なのである。

 広さとしては、細かい数字は覚えていないが、東京ドームくらいなら十数個入るし、前の世界のオランダくらいならギリギリ入る面積はあったはずだ。

 何故このようになったのかというと、もともと物資の確保を容易にするために、港町に学院を建設しようとしたところ、大臣の1人が「もう街一個学院にしちゃわね?」と言ったことがきっかけでこうなった。

 その大臣自体、これに関しては冗談のつもりで言ったようで、実際にこうなったことには驚いていた。


 街一個という関係上、一般の人も自由に入れるし、なんだったら住居も建設されているので審査さえ通れば居住もできる。

 ただ、学院の本施設に入るには、学生証か教員証が必要となる。


 因みに、この学院の生徒であるだけで、街の売り物は半額になるなどの特典があったりするのも魅力の一つだ。


 俺たちが学院の門の前で突っ立っていると、門の向こうから1人の女性がこちらに歩いてくるのが見えた。

 そして、俺の前へ来ると、右手を差し出してくる。


「イツキ・フタイリだな?よろしく頼む」

「え、あ、はい、よろしく?」


 俺が突然のよろしく宣言に戸惑っていると、


「まず、自己紹介をしよう」


 そう言って女性は懐から教員証を取り出し、こちらに見せる。


「私はサーシャ=アスタリア。お前たちの担任をさせてもらう者だ。イツキの話はこちらとて聞き及んでいる。大手柄だったそうじゃないか」

「ど、どうも」


 挨拶からいきなり褒められて吃ってしまう。


「こんなところで話しているのも何だ、中に入ってさっさと手続きを――」

「――ちょっと待ちなさい!」


 横から叫び声が聞こえてそちらを見ると、見事な金髪をサイドテールに拵え、そのスレンダーな体をグランドスレイ剣術魔法学院の制服に包んだ美少女が仁王立ちでこちらを見ていた。


「どうしたんだ、エマ。らしくもない」

「突然会話に割り込んでしまって申し訳ありませんわ、先生。ですが、私は正規入学生主席である者として、そこのイツキとかいう奴の強さを知る必要がありますわ。ですので、イツキ・フタイリ!貴殿に決闘を申し込むわ!」

「………展開が急過ぎへんか?」


 どうやらまた面倒に巻き込まれたようだ。

お久しぶりです。島です。

中の人の本業が学生ということもあって、かなり期間が空きましたね。申し訳ありません。

一応書き溜めはしているので、随時投稿していこうと思います。

『いいね』、『ブックマーク』よろしくです。

それではまた次回。

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