第一話 異世界転移
始めまして、アイランディー上陸隊と申します。
初めての小説投稿なので拙く、誤字脱字も多いかもしれませんが温かい目で見守っていただけると嬉しいです。
「ふわぁ〜あ………眠…」
俺こと二杁樹はごく平凡の学校生活を送り、たった今、今日の授業が終わり、帰りのホームルームをしているところだった。
「帰ったら何すっかなぁ〜」
そんな呑気なことを俺が考えていると、
「………ん?なんだ?」
一瞬の違和感を察知する。
次の瞬間、
「こ、これは!?」
教室の床に魔法陣のような光が浮かび上がる。
「これはまさか……うわっ!?」
魔法陣から閃光が放たれ、一教室丸ごと謎の光に包まれる。
一瞬、倦怠感のような感覚が襲う。
俺が目を開けると、そこは石レンガ造りの見覚えのある懐かしい部屋だった。
一緒にホームルームを受けていた周囲のクラスメイト達が突然の現象に戸惑う中、俺は一人冷静に思考を巡らせる。
(あの魔法陣、この部屋、おそらくここは、あの世界だ。ほぼ確実と言っていい。俺の予想が正しければ、おそらく近くに術者が……)
そこまで考えた俺は周囲を確認するために首を動かそうとした瞬間、背後から透き通ったきれいな声が聞こえた。
「やった!成功です!」
「うむ、よくやった」
その声に俺たちは一斉に振り向く。
そこには絢爛なドレスに身を包んだ女性と荘厳な顔つきで玉座に座った男性、その他鎧に身を包んだ護衛6人と魔法陣の術者と見られるローブを纏った魔術師2人がいた。
その周囲の様子を見て俺は理解する。
(………異世界転移ってほんとにあるんだなぁ)
どうやら俺たちは異世界に召喚されたようだ。
次の日。
俺たち転移者の面々は王城内の兵士修練場に来ていた。
俺の右手には木刀。
俺たちは今日、戦闘訓練を行うのだ。
なぜそんな事になっているのかというと、俺たちは昨日の転移後に、この国の王女様であるアリシア=ドレスデンさんから話を聞いた。
要点をまとめれば、他国との戦争だったり魔族の侵略だったりで世界が滅びそうなので助けてほしいんだそう。
正直、めんどいったらありゃしないのだが、俺は断ることはしなかった。
俺は普段、気の乗らない提案には乗らない性格なのだが、今回は珍しく提案を承諾したのだ。
その理由は、俺たちが転移してきたあの部屋と俺のとある記憶が関係している。
部屋の壁にあった、一つの肖像画。
キール=リガーランド=ドレスデン。
ここリガーランド王国初代国王、そして世界の救世主にして、俺の前世となる人間である。
そう、俺は元々、この世界の人間なのだ。
時はおよそ1000年前まで遡る。
◇
キィン! ガキィン! ギィン!
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
剣と剣がぶつかり合い、激しく火花を散らす。
俺と互角の剣戟を繰り広げるのは、魔王ゲルクード。
魔界の王であり、世間では魔王と呼ばれる男。
フィジカルでは互角だが、剣術では俺が上を行く。
一瞬、しかし明らかな隙を見せた奴を咎める。
「我流・月光流[月光閃]ッ!」
「ぐっ……」
俺の放った月光の如き鋭い突きがゲルクードの右肩に突き刺さった。
奴は顔を歪め、たまらず後ろに飛び下がる。が、俺は奴を逃さない。
驚異的な反応速度で奴に食らいつき、俺はもう一撃技を放つ。
「月光流[八咫ノ三日月]ッ!」
「んなっ!?がっ……」
目にも止まらぬ八連撃は奴の頭、首、両肩、腹、両膝、右脇腹に一撃ずつ入る。
かなりいい一撃を入れられた奴は大きく飛び下がる。
(ふむ、いい感じの距離だな)
いい感じに間合いが空いたので遠距離攻撃を仕掛ける。
「炎攻撃魔法【紅炎閃】ッ!」
「くっ………舐めるなぁぁぁぁぁぁ!」
奴は乱雑に剣を振り、なんと俺の放った魔法をかき消した。
だが、この魔法は当てることが目的ではない。
「なっ、どこだ!?」
「目眩ましだ」
俺は魔法を隠れ蓑に奴の背後に素早く回り、全力の居合をぶっ放す。
「月光流[斬月]ッ!」
サンッ………
「ぐはぁっ……」
俺の凄まじい速度の剣は奴を上半身と下半身で両断し、奴の上半身が鈍い音を立てて地面を転がる。
俺が奴の泣き別れた上半身に近づくと、なんと奴はまだ生きていた。
「………まだ生きてるのか。不死鳥並みの生命力だな」
「ふ、ふっ………舐め、るで、ないわ……貴様ら、人間、如きの……生命力、程度と………一緒にするで、ないわ………!」
そうして笑う奴は、なぜか楽しそうに笑う。
「………さっきから気になってたんだが、どうしてお前はそんなに楽しそうにしている?自身の命の危機なんだぞ?」
俺の問いに対して奴はニヤリと笑うと、こう答える。
「貴様も…武人、であるの、なら……分かるだろう………一生涯の、最後に…貴様のような、実力者と……やり合えた…のだから、な」
そう言う奴は、一瞬とはいえ人間に見えてしまうほど、人間味に溢れていた。
(コイツ……ゲルクードは、こんなにも人間のようなやつだったのか)
「……ゲルクード、すまない。俺は、どうやら偏見に囚われすぎていたようだ。お前が魔王であるというただの肩書きに、惑わされてしまったようだ」
俺の言葉にゲルクードは嬉しそうに笑う。
「ふはは、良いのだ………我が、魔王である、という時点で、偏見を…持た、れるという……のは、分かりきって、いたことだ………お前…だけ、でも…気づいて、くれた、のが、嬉しい………貴様、名は…何という…?」
「そういえば言ってなかったな。俺は、キール=リガーランド。人間界では勇者と呼ばれてる」
「ふむ……よい名前だな」
「ははっ、ありがとう」
そうして誤解の解けた俺たちは、すっかり打ち解け、時間の許す限り、互いの過去を楽しく語り合っていた。
しかし、俺の回復魔法で延命しているとはいえ、ゲルクードの傷は、決して癒えるものではない。
彼がこの世から去ってしまう時間は、だんだんと迫っていた。
「ふぅ……キールと話すのは本当に楽しい……もしも、もっと早くに出会えていたら、運命は変わったのかもな……」
「そうだな……」
しばらくの沈黙が降りる。
そしてしばらく経った後、その沈黙を破ったのは、ゲルクードだった。
「キールよ。我からの、最後の頼みを聞いてくれるか?」
「何だ?何でも言ってくれ」
そうしてゲルクードの口から放たれたのは、衝撃的な頼みだった。
「我が死んだ後……キール、主に、この魔界の王、次期魔王として、その手腕を振るってほしいのだ」
「んなっ」
かなりの衝撃を受けるが、俺はすぐに冷静を取り戻し、その訳を尋ねる。
「……どうしてだ?」
「我は、今ある人間と魔族の偏見を取り払い、交流を持たせたい。そこで、その橋渡しとして、主に、この世界の王を務めてほしいのだ」
「だが、それでは、人間側は俺がどうにかできるとして、魔族側からの反対が出てくるだろう?」
そう、互いに偏見を持っているからこそ、争いが絶えないのだ。
人間側の英雄である俺がどうにかできるのは人間側のみ、魔族側はどうにもならない。
俺がどうするのかと問うと、それにゲルクードが答える。
「問題ない。少し待て」
そう言うと、ゲルクードは魔法で紙とペンを生み出し、何かを記入する。
記入が終わると、その紙を筒状に丸め、帯で縛ってからこちらに渡してきた。
「………これは?」
「それは次期魔王を推薦するための推薦書だ。魔族の有力な者たちには、次期魔王を推薦する権利が存在するのだが、我の推薦書だけは特別でな。我の推薦した者は、確実に次期魔王に就任できるのだ」
ゲルクードは続ける。
「今回は、それに主の名を書かせてもらった。我の推薦した者であれば、誰であろうと文句を言う輩はおらんだろう。それに、主であれば、襲撃など簡単に捩じ伏せられるだろう?」
「なるほどな。こんな制度があったのか」
「それで、受けてくれるか?」
俺はそう尋ねてくるゲルクードに、笑顔で言い放つ。
「任せろ!」
そうして俺は、魔界の次期魔王に就任。
それと同時に、魔王を討伐したとして人間界でも、長い間領有権不明地であった大陸の西側を、俺の国“ドレスデン王国”として貰ってしまった。
しかし、これはゲルクードの遺言を達成する上でかなりの好都合。
まずは魔族と人間の交流を図り、全世界への魔界との関係改善宣言のために、魔界に存在する魔王学園と王国に新たに設立した勇者学院の生徒の交流を図った。
最初こそ、偏見から険悪な空気であったが、俺が何とか橋渡しに徹することで、次第に温和な空気になっていった。
次に、先ほどの二つの学校に加えて、魔界から3校、人間界から4校、合計9校の交換留学を行なった。
これに関しては、前回の交流よりも偏見が少なくなっているからか、反発もそこまで出なかった。
三つめは、人間社会と魔族社会の部分的接触だ。
具体的な内容としては、物流の一部接続や、労働力の派遣など、さまざまな繋がりを増やしていくことに重きを置いた。
結果として、国の物流は潤い、ドレスデン王国は急成長を遂げた。
こうして、さまざまな改革を推し進めていった結果、5年も経つと、ドレスデン王国は魔族と人間の物流の拠点となることでかなりの利益を誇り、互いの交流の要となる国として世界に君臨した。
そして、ドレスデン王国の成長を見届けた俺は42歳という若さでこの世を去った。
ご愛読ありがとうございます。
趣味の範囲で書いているので、更新は不定期ですが、なるべく早めにしたいと思います。
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高めの評価をしていただけると作者は諸手を挙げて発狂します。
これからも本作をよろしくお願いします。