下水の女神
ああ、
下水の女神クロアシナの絵を飾り、
曝気槽の汚水の中に
蔑ろにされたファドを聴く・・
かつてのローマの栄光を
無人の回廊である排水溝は、
ラテン語にも似た
濁流の音と、
ガリシア語に似た
汽車の音の響きで讃えている。
ああ、諸君!!
無名の歌手こそが
ファドを知り、
無名の漁師こそが
海を知るのだ!!
本物の神は、その眞實故に
自ら喉元を切り裂き、
浮世を去っているので、
森の中には祭儀の仮面をつけた
[神の模型]が今日も歩き回る・・
いずれにせよ、
あらゆる実態のあるものは
衰退してしまった。
かつて栄えていたものが
今は忘却に粉砕され、
記憶の劣化した都市部だけが
綿花を糧に
巨大化していく事を
誰も止めはしない。
ユダヤの亡命の旅すら遺物となり、
神の口腔に触れる様な
実体の無い罪に惑う私達は
文盲の田園を置き去りに
[海を知らぬ者達が
鱈の切り身を
呆然と見つめる不健全さ]
を現実と受け入れるのだ。
ああ!!
下水の中に住む者よ!!
淀みの中を蠢く者よ!!
汚水を好む肉ボドよ!!
ボド・サルタンスよ!!
誰も見向きもしない真理よ!!
ああ、
下水の女神クロアシナの絵を飾り、
私は汚水の黒い濁流の前で
ギターラを爪弾く。
その気高い音色は、
物乞い達の生きる誇りであり、
天上に届くミサ・グラドゥアーレにも似て、
荘厳な響きだ。
ああ!!それでも地上の大衆達は
産業革命の灯に向かう。
痛みや、渇きを恐れる。
ああ!!殉教し、
血塗れになりながらも、
あるいは致命的な屈辱
を受けながらも
王族の血管をたぎらせ、
この地で祈る意味を
ファドよ!!教えてくれ!!
肉体を癌に蝕まれ、
痛みに喘ぎながら、
それでも不在を感じる
この世界の絶望と、
塩の中に立つ十字架の
救いの意味を教えてくれ!!