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無名頂上種の世界革命  作者: 福部誌是
7 賭けのヴァーテクス
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7-7

「………………信頼は得られたかな?」


 声のトーンがいつもより低く感じる。

 表情も真剣なもので、その視線が「おふざけは終わり」だと告げている。


「…………まぁ、多少は」


「あっはは、多少か」


 流れてきたカルケリルの思考を思い返す。


 バジレウスを倒すために、これから先、カルケリルはバジレウス側に戻ることになる。

 スパイとして、俺たちに情報を流し、外側と内側からバジレウスを攻撃する。

 つまり、バシレウスを崩すための癌となるつもりなのだ。


「…………分かったと思うけど、僕は本気だよ」


「それは伝わったよ。でも…………」


 俺は最後の言葉を濁す。

 なぜなら、俺たちと接触した時点で、カルケリルの計画は破綻しているからだ。


「ん、どうしたんだい?」


 俺の異変に気付いたカルケリルが首を傾げる。


「……………えっと、すまん」


 先に謝っとく。

 カルケリルはこの計画にかなり自信を抱いている。だからこそ、計画の破綻を伝えるのが申し訳なかった。


「カルケリルのこの計画は、もう破綻している」


 勇気を出して、しっかり伝える。

 カルケリルは表情を固定させ、しばらく間を開けて………。



「―――――はぁ!?」


 怒りが混じった、驚きの声が夜空の下に響いた。








 カルケリルの計画が破綻している訳を、俺は掻い摘んで説明する。



「裏切り者!?」


 カルケリルの驚く声が再び響く。


「あぁ。だから、すまん」

 俺は開き直って、両手を目の前で合わせる。


 カルケリルの計画が破綻している理由。それは、俺たちの中に裏切り者がいるからだ。

 俺たちの情報はバジレウス側に流れている可能性が高い。現に、俺たちにしか知り得ないはずの情報を、ユースティアは獲得していた。

 つまり、カルケリルが俺たちと接触した時点で、カルケリルがこちら側であるとバジレウスにバレている可能性があるのだ。



「…………そうか、裏切り者かぁ」

 重いため息と共に、肩を落とすカルケリル。


「…………伝えるタイミングが悪かったな」


「いや。タクミからしたら、僕が信頼出来るかはしっかり判断すべきことだ。このタイミングになってしまったのはしょうがない。

 それよりも、裏切り者が既に潜り込んでいるとは、さすがに予想外だったな」


「くそぅ」と言い捨てて、何かを考え込むカルケリル。


「で、どうするんだい? 僕の方で解決しようか?」


 その言葉は、俺にとって予想外のものだった。


「………解決出来るのか?」


「まぁ、金を使えば」


「………………いや、遠慮しておくよ」


 丁寧に断る。

 別にカルケリルを信頼してない訳でもないし、金なんかで解決したくない、というわがままでもない。

 たしかに、この問題を解決するのはなるべく早い方がいいのは事実だ。


「……………なにか解決策はあるのかい?」


「まだ思いついてないけど、これは俺たちの問題だから、俺たちで解決するよ」

「まぁ、迷惑はかけるかもしれないけど」と付け加える。


「もうかかってるんだけど」


 辛辣な言葉が飛んでくる。何も言い返せないから、苦笑いを返す。


「………じゃ、計画は練り直しだな」


「あ、その事について、前から考えてたことがあるんだけど………」


 俺の言葉に、カルケリルは耳を傾ける。





















「…………たしかに、一理ある。でも、バレたら終わりだぜ?」



 俺の話を聞き、カルケリルはそう言った。


「そうだな。でも、賭ける価値は十分にあるだろ?」


 俺の微笑みを見たカルケリルはニヤリと口の端を大きく上げた。

「たしかにな」


 俺の考えた作戦は、よくあるタイプのものだ。

 ありふれて、使い回された手段。


 でも、そういうものこそ効果は大きい。


「じゃあ、直ぐに行動に出よう。先ずは全員を集めないとだな」


 そう言って、歩き出すカルケリルは少し進んだところで足を止めて、こちらを振り返った。


「あ、そういえば。僕がアンジェリカを助ける理由なんだけど」


 なんの前触れも無く、今まで避けられてた問題の解が告白される。


「君と同じ理由だぜ」


 ニヤニヤと笑みを浮かべ、ウインクを残してカルケリルは進み出す。


「―――――――」


 その場にひとり取り残された俺は、突如告白された内容を飲み下し…………。

 完全に思考が停止したのだった。



 突如として、ライバルが現れた。



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