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無名頂上種の世界革命  作者: 福部誌是
5 怪物のヴァーテクス
42/119

5ー■

 

 私はテラシア。


 怪物のヴァーテクスとして恐れられた存在。



 私は大切なものを2度、失くしている。

 ……そんな気がする。



 1度目の事は、もうよく覚えていない。

 それでも、命より大切なものを失くしたと胸の奥が叫んでいる。

 だから、きっと失くしたのだろう。



 2度目のことは、よく覚えている。


 私はあの子の事を本当の娘のように、想っていたのだから。

 彼女を守るため、私はバジレウスの命令に従った。

 従って………。

 あの子と一緒に生きていたはずの時間を失った。



 ずっと、苦しかった。

 それでも耐えてきたのだ。


 ヴァーテクスを傷付ける怪物を生み出し、ここを守らせて………。


 ずっと、堪えてきた。

 怖かった。苦しかった。

 それでも、あの子を失うことだけはどうしても許せなくて。


 だから、600年という長い時間を耐えることが出来たのだ。


 この想いが、どれだけあの子に届いたのかは、分からない。


 ……ちゃんと、伝わっただろうか?



 あの子を勝手に本当の娘のように想っていた。

 最初から最後まで、母親らしいことは何も出来なかったけど。



 私は虚ろに腕を伸ばす。


 私が生きてきた世界が崩れる音だけが響いている。

 周りにもう人の気配は感じられない。



 命の灯火が消える刹那、私は何かを掴もうとして……。

 何も掴めずに、音もなく。

 その腕は地面に落ちた。





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