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01 貧しき村の名もなき娘

眠いのと空腹のときできたお話です。ほぼ最後まで書けております。

相変わらず酷い設定かもしれませんが、よろしければ暫しお付き合いください。キーワードにお気をつけ下さい。

 物心ついたときからひもじかった。


 常にお腹を空かせていて貧しい家の中で同じように泣き叫ぶ妹のデリラ。


 そして、大声で怒鳴るお父ちゃんとお母ちゃん。


「あんた! またお酒なんて!」


「うるせえ! 稼いでいるのは俺だ。文句言うな!」


「お母ちゃん。お腹空いた」


「ほら、子どもだって言っている。情けないと思わないのかい!」


「うるせえって言ってんだろ!」


 酒に酔ったお父ちゃんは周囲に当たり散らした。


 時によってはお母ちゃんや私が蹴飛ばされたり殴られたりした。


 私は蹴られたところが痛くて、痛くて、でも泣くともっと殴られた。


 だから、両親が喧嘩しているときは近づかなくなったし泣かないようになった。


 そうしたらいつの間にかお母ちゃんまでもお酒を飲むようになった。


「お母ちゃん。お腹空いた」


「ああ? あんた、お姉ちゃんなんだから妹の面倒はあんたが見るんだよ。あーあ、あんた達なんか産まなければ良かった!」


 お母ちゃんはもう私達を見向きもしなくなった。


 私は母や妹のために近所の人にご飯をもらいに行くようになった。


 何度も行くと嫌がられるので代わり交代にしたり、その家のお手伝いしたりするようになった。


 そうすると野菜の屑とかもらえるし、簡単な料理の仕方も教えてもらえた。


 お酒を飲んでない時のお母ちゃんは私の作った料理を褒めてくれることもあった。


 それはとても嬉しかった。昔のお母ちゃんみたいで。


「へえ、あんたでも上手に作れたじゃない」


「もっと上手にできるように頑張るよ。お母ちゃん」


 ――だから、もっと褒めてよ。お母ちゃんの気に入るように頑張るから。そしたら笑ってくれるかな。

 

 だけどお母ちゃんはお酒を探しにふらふらと立ち上がって出て行ってしまった。


 お父ちゃんのように帰ってこなくなったらどうしようと怯えながら妹の世話をして待っていた。


 お母ちゃんが昔のように優しいお母ちゃんになるのを願っていた。


 そんな毎日を過ごしていた。




「今日はマーサさんのところに行こう」


 よくご飯をもらいに行くのは村はずれのマーサさんの家だった。


 マーサさん家は畑が多くて家族も多いから料理もたくさん作っていて私達にもたっぷり分けてくれる。


 お母ちゃんはマーサさんを嫌っているけどマーサさんに逆に叱られてから、私を睨みつけるけれど何も言わなくなった。


 ――正直マーサさん家の子だったら良かったな。


 そんなことを言うとマーサさんが泣きそうになったのでもう言わないことにした。


 これ以上マーサさんを困らせたくないし、お母ちゃんに嫌われたくない。


 それくらいは子どもの私でも分かった。




 そんなある日、マーサさんから野菜やご飯を分けてもらっていると、


「ミリアちゃん。あんた今年八歳になったよね。八歳になると女の子は神殿に行って聖女選別を受けないといけないんだよ」


 マーサさん以外の村の女衆にも言われた。


 気がつけば私は八歳になっていたのだ。


 今まで祝ってもらえたことが無かったので分からなかった。


 お母ちゃんは家で飲んでいることが多いけれど他の女の人は野菜や衣服を洗いに川辺に集まってくるのでお手伝いしていると自然と話をするようになっていた。


 聖女選別とは何かと教えてもらうとそれは八歳になるとこのミレニア国を守る聖なる人になれるかどうかを選ぶという儀式のことだった。


 女の子は聖女で男の子は神官に選ばれる。


 この国だけでなく女神の教えを信ずる国々は行うみたい。


 女神様の教えはまだ良く分からなかったけれど近所の人も良くは分かってなさそうだった。他の子どもそんな感じ。


 でも他の家の子ども達は私を見ると汚いって仲間に入れてくれない。寂しいな。


 家に戻るとお母ちゃんは寝ていて、お腹を空かせて怒っている妹のデリラが出迎えてくれた。


 お父ちゃんは村の酒場で女の人と仲良くなって家にはあまり帰ってこない。


「お姉ちゃん遅い! 何やってたの? お腹空いたよ。今日は何? 体も拭いてちょうだい」


 デリラが怒鳴ってきた。


「マーサさんとこで手伝いをしていたんだよ。あそこは食べ物も野菜もたくさんくれるから」


 私は野菜を置いて、水の準備をしてやる。


「早くしてよね。お姉ちゃんはグズなんだから。お母ちゃんもそう言ってたよ」


「そう……」


 お母ちゃんは妹のデリラには優しい。贅沢はできないけど頭を撫でたり抱っこしたりしている。


 ――いいなぁ。私もいつか、お母ちゃんに抱っこされたいな。


 良い子にしていればきっと私も褒めてくれて抱っこもしてくれるよね。


 毎日、家の事や妹の世話をするため自分のことは後回しになっていた。


 ――それが普通だった。


 それ以外の生き方を私は知らなかった。

お読みいただきありがとうございました。

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