表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

●序章 ~ ハイ、不審者です

はじめまして。まゆずみかをる、といいます。

初小説を再編集いたしました。

初小説のため、稚拙で、ツッコミどころは満載かもしれませんが、ご容赦願います。

比較的スピーディーに読めると思いますので、隙間時間によろしければご覧ください。

ちなみに、【稀能者】という単語は造語です。

この度はお読みいただきありがとうございました。

また、このような発表する場所を与えてくださったことにも深く感謝いたします。

王都カナガから馬車で一日ほど離れた、小さな町、オダワ町での出来事。

その町の平屋の一室にあるベッドで、ひとりの男性が横たわっていた。

名はダイナー。この町で食堂を経営している。

普段は快活で、大柄で豪快な店主で、荒っぽいが、面倒見のいい性格から町の人々からも愛されている存在だ。

だが、そんな彼が今、原因不明の病に侵されて、ここ数日全く動けずにいる。

今まで、子供のころから病気らしい病気は全くしたことがなく、見た目は筋骨隆々で、健康だけが取り柄であり、大概のことならば、一晩寝れば回復していた。

だが、今回は違った。何日たっても一向に熱はひかず、体調は悪化するばかりであり、今はベッドから起き上がることもできない。

医者にも診てもらったが、原因不明のため、対処のしようがない、と言われた。

「おれ、死ぬのかな?」

ダイナーはふと頭に浮かんだ質問を口にした。自分に問いかけたのだが、答えが出るわけでもない。

だが、そのダイナーの質問は的を射ており、このままの状態であれば、明日には確実に死ぬことになる。

「死にたくない…。」

ダイナーは、全く変化のない木の天上を見つめながら、真情を吐露した。


「こんばんは」

突然、ダイナーの目の前に、顔の上半分を黒い仮面で覆った男の顔が飛び込んできた。

「うわ!」

ダイナーは思わず、のけぞりベッドから転げ落ちそうになった。

「あ、あんたいったい誰だ!」

全身真っ黒な衣装に身を包み、ベッドのわきに立っている男(不審者)に向かって、ダイナーは震えながら質問をした。

「通りすがりの不審者です」

「あ、そこは自分で言っちゃうんだ。で何のようだい?」

男が不審者と名乗ったことで、何の心理かよくわからないが、逆に安心したのか、ダイナーは落着きを取り戻し、話をすすめた。

「もしかして、今の「ようだい」はあなたの容態の悪化にかけていますか?」

「かけてねーよ!だからなんの用だよ!不審者!」

不審者のジト目での指摘に、思わずダイナーはツッコミをいれた。

「趣味で、死にかけている人の治療を行っています。で、ダイナーさん、あなたまもなく死にますよ。」

「聞きたいことが山ほどある言い方だが、とりあえず一番重要なところだけ聞いておこう。『趣味』ってなんだよ?」

「あ、一番重要なところってそこなんだ。趣味は趣味です♪一番重要なところって、『まもなく死にます』ではないんですね?」

「そんなこと、なんとなく察しているわ。でもなんで、そんなことが不審者さんにわかるんだ?」

ダイナーは自分の死が間近いことがなんでわかるか質問した。ある意味当然である。

「そーゆーことは、どーでもいいので」

「あ?不審者?人の家に勝手に入ってきて、『どーでもいい』はねーだろ。言えるところまで言えや。」

不審者の答えに釈然としないダイナーが、不審者の胸ぐらをつかみ、さらに問い詰める。

「うーん、わたしにはわかる、ということで勘弁してください。」

不審者はまともに質問には答えずはぐらかした。

「あんた、もしかして【稀能者】か?」

ダイナーが不審者に向けて言った【稀能者】という言葉だが、

この世界には、ほんのわずかだが、【稀能者】と呼ばれる、特殊な能力をもった人間が存在する。

その能力は様々で、能力を明らかにしているものもいれば、自身が【稀能者】であることを隠している者、さまざまである。


「ところで、ダイナーさんは、生きたいですか?」

不審者はダイナーの質問には受け答えせず、ダイナーに質問した。

直球の質問に対して、ダイナーは少し面食らったが、

「ああ、生きたいよ。」

と即答した。そして、

「もてないし、金持ちでもないし、男前でもないし、彼女もいないし、結婚もしていないし、まだやりたいことだらけだしよー。こんなところで人生終わりたくないよー。」

と、聞いてもいないことを言い出し、泣き始めた。

不審者としては、生きたいか、そうでないか、だけ聞ければよかった。死にたい人に治療を施しても、意味がないので。

「あ、そーゆー、質問以外のことは、どーでもいいので。」

【どーでもいい】、これがこの不審者の口癖だ。


「で、いくら払えばいい?」

涙で顔をグチャグチャにしたダイナーが、率直に聞いてきた。

「あ、お金はいりません。先ほども言ったように趣味なので。それにどうせお金持っていないでしょ?持っていない人から搾取するのは気が引けますし。」

「あんた、サラリと失礼なこと言うな。ああ、確かにオレは金持っていねーよ。」

不審者の毒が入った答えに対して、ダイナーはぶっきらぼうに返した。当然である。

「で、どうやって治してくれるんだ?痛いのは嫌だぞ。」

と、言った瞬間、ダイナーが白目をむいて意識を失い、ベッドに倒れこんだ。

不審者が、常人では追いきれない速さで、ダイナーの首筋に針を打ち込み、意識を失わせたのである。


「スイマセンね、これから先のことは企業秘密なので見てもらいたくないので。」

そういうと、不審者はダイナーの胸のあたりを凝視した。

不審者以外には見えないが、ダイナーの胸の心臓が位置するあたりに、ピンポン玉くらいの光体を確認した。

そのあと、不審者は長さ15cm、太さ1mmほどの全体が黒い針を取り出すと、ダイナーのその光体に軽く打ち込んだ。

すると、とたんにダイナーの顔色がよくなり、呼吸も安定し、熱も引いていった。

原因不明の病が、不審者が針を刺しただけで、一瞬にして回復したのである。

「ハイ、これで大丈夫です。おだいじに。」

はたから見たら、奇跡にも近いほどのことが起こっていたのだが、不審者は涼しい顔をして、眠っている(正確には気を失っている)ダイナーに一言告げて、その場を後にし、暗闇に消えていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ