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ヤンデレ妹にゾンビ(女の子)として死者蘇生されました  作者: ぽんすけ
第4章 九重寧ーローダンセー
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76話 歌ってはっちゃけよう!

 ファミレスを後にしてやってきたのはカラオケだった。ここなら、誰かに聞かれる心配はない。


 軽い注文だけ済ませる。注文の品が来るまで、誰一人として口を開かなかった。やがて店員さんがやってきて、いよいよ話を始めるための準備が整ってしまった。


「えっと、まずは自己紹介をしたほうがいいよね? 私は、真倉美柑です。水鏡高校の1年生です。よ、よろしくお願いします!」


 美柑が先陣を切って自己紹介をしてくれた。おかげで、幾分か雰囲気が和らいだ気がする。


「ありがとう。俺は多々良裕也、社会人だ。よろしく」


 裕也の自己紹介に続いて、安則と康介、安芸も続いて自己紹介していく。そして、僕の番が回ってきた。


「えっと、水城、蓮です?」


 どう答えたらいいかわからず、疑問形になってしまう。そんな僕に、安芸が口を開いた。


「どこから話したらいいかな。……うーん、とりあえず、これだけは蓮に言うね。ぼくは君がぼくたちの高校時代の友達である九重蓮で、そして、なぜそんな姿になったかも知っているよ」


 安芸の口から出た事実に、裕也たちは目を見開いている。僕はそんな裕也たちに気を配っている余裕などすぐなくなり、安芸に詰め寄った。


「でも昨日、安芸は僕が死んだって自分で言ってたじゃないか!?」


「あれはましろちゃんの前だったからだよ」


「いや、ましろは僕の正体知っているよ?」


「嘘!? ましろちゃんも知ってたの!?」


「……っ、そこは寧から話はいってなかったのか」


 間髪入れずに僕と安芸は言葉を飛ばし合う。やがて息が辛くなり、共に一呼吸を置いた瞬間、じっとした視線を感じた。


「……お前、蓮なのか?」


「うっ……」


 裕也の追及するような目に、僕は言葉を詰まらせる。ここに来た時点で、自白しに来たようなものだ。なら、もうしょうがない……。


「そ、そうだよ。僕は正真正銘、九重蓮だよ」


 裕也たちが息を呑んだかと思えば、一様に「嘘だぁ!?」という声が飛んできた。


「皆、信じられないかもしれないけど、本当なんだ。蓮は死んだ後、ゾンビになって蘇ったんだよ」


「何だそのオカルト話は!?」


 眼鏡を割る勢いでツッコミをする安則。そりゃあ、こんな話普通は信じられないよね。


「いやいや、ゾンビの前に、性転換してるよね!?」


 康介が疑惑の目で僕の体を見回してくる。


「み、皆さん! 一度、落ち着いてください! レンレンが困ってます!?」


 美柑の場を切り裂くような声に、一瞬でシンとなった。そして、視線が美柑に集まる。


「えっと、レンレンと、鷹司さん? が言ってることは本当で、これを見たら、皆さんも信じてくれると思います!」


 これ? 美柑は一体何をしようとしているのかと考えていると、美柑は肩に手を当てがった。


(――って、まさか!?)


 気づくのと同時に、美柑は何の抵抗もなく腕を肩から分離して見せた。そのせいで、皆が言葉を失って落ち着くには十分だった。



 それから、裕也たちに事情を全て話した。僕が九重蓮である証拠、裕也たちについて僕が知っていることも含めて。おかげで、しぶしぶといった様子ながらも、ひとまずこの場は信じてくれたようである。


「蓮が、女の子な……」


「高校の時のことも知ってたから、おれたちの知る蓮で間違いはないんだろうけど……」


 安則と康介はさっきからこんな調子で、すっかり気の抜けた状態でいる。


「なあ、蓮は安芸が事情を知っているのは知らなかったのか?」


 比較的順応できている裕也が僕に聞いてくる。


「知らなかったよ。だから、あそこまで驚いちゃったんだよ」


 僕は追及するように安芸を見る。本当、何で知っているんだ?


「はは、まあそこは追々とね。これ以上勝手に喋ると、寧ちゃんにひどい目にあわされる」


 安芸は困った顔をするだけである。この場では、これ以上のことは聞けそうにない。


「よし! 色々頭がこんがらがっているが、こんな時こそ歌おうぜ! せっかくカラオケにいるんだし!」


 裕也は気持ちを切り替えるように大きく手を叩いてみせる。


「そうだな、よし! 一番手はおれに任せろ!」


「じゃあ、その次は僕が行かせてもらおう」


 康介と安則が裕也に同調するように明るい声を上げる。さっそく曲を入れ、康介の歌声が響き渡る。


「にゃはは! 私も歌いたい!」


「おお、いいぞ。ここは俺の奢りだから、どんどん歌ってくれ!」


 裕也は気前よく言い、安則たちが「よっしゃー!」とガッツポーズをしている。そんな皆の様子を見ていると、僕までその気になってくる。


「色々と困らせてごめん。その――」


「今はいいよ。とりあえず、今は楽しもうよ。せっかく、皆でまた集まれたんだし」


 安芸の言葉を遮って僕は言う。聞きたいことは色々とあるけど、それは後でもできる。なら、今は今しかできないことをするべきだ。


 よし! この時間は全部忘れてとことん楽しんでやるぞ! 僕はそんな意気込みとともに、皆との時間を全力で楽しむことにした。



 かれこれ数時間歌い続け、僕の喉はすっかり枯れてしまった。


「げ、限度があった……」


 僕はソファに寄りかかり、水を飲む。美柑と安則たちは今も歌い続けている。


「お疲れ。蓮も喉が疲れたか?」


 隣に裕也がやってきた。見れば、裕也の顔も少し疲れが見て取れた。


「はは、ちょっとはしゃぎすぎたね。でも、楽しい」


「そいつは奇遇だな。俺も、今すごく楽しいよ」


 僕は裕也とともに笑う。こんな風に、また皆と笑い合える日がくるなんて思いもしなかった。


「なあ、そういえば真倉ちゃんってさ、もしかして蓮の彼女?」


「ぶっ!」


 ちょうど口に含んだ水を噴き出してしまう。


「ゴホッゴホッ……な、何を言うんだよ!? 美柑とはそんなんじゃないよ!?」


「慌ててるところが何かより怪しいな。けど、少なくとも真倉ちゃんの方は蓮のこと好きそうだけどな」


 僕は裕也の言葉に驚く。傍から見たら、そんなにわかるものなのか。


「ま、そこはこれ以上詮索はしないよ。そうだ、蓮は今も天体観測を続けているのか?」


「え? うん、そうだね。今通ってる水鏡高校では天文部に入ってるよ」


 まさか裕也の口から天体観測が出てくるとは思わなかった。けど、驚いたのは裕也の方もらしく、目をしばたたかせている。


「天文部に入ったのか。まあ、蓮らしいっちゃ蓮らしいが。それじゃあもう、()()()()()()()()()()()?」


「――――え?」


 裕也の何気なく言ったであろう言葉に、僕は虚を突かれた。


「どうした? 俺、何か変なこと言ったか?」


「い、いや……ねえ、裕也。僕って、前から寧と天体観測をしていたの?」


「していたのって、蓮から言ったんじゃないか。中学の時くらいだったか? そん時から妹と天体観測を始めたんだろ?」


「…………」


 僕は言葉を失った。


(僕は寧と天体観測をしていた?)


 そんな記憶は僕の中にはない。けど、裕也が嘘を吐いているようにも見えない。じゃあ、僕が忘れているだけ?


 いや、それよりも、何で寧までその記憶を覚えていない? もしくは、覚えていないのじゃなく、()()()()()()()? けど、何のために……。


 安芸のこと、それにこの天体観測の記憶。疑心暗鬼になりそうな出来事ばかりに、僕は寧のことがわからなくなってしまいそうだった。



 カラオケで上がった熱を冷ますため、僕たちは外で涼んでいた。


「そうだ。皆、蓮と真倉ちゃんのことは他言無用でお願いね。もし言ったら、きっと恐ろしいことが起きかねないから覚悟しておいてね」


「そんなにこやかに脅しをかけてくるなよ……。それに、言わねえよ。てか、言ったところで誰も信じないと思うぞ」


「そうだね。逆に、僕たちのほうが異常者みたいに見られるかも」


「あー、簡単に想像できるオチだわ」


 この場の誰も口外する様子がないことに僕は安心する。まあ言ったところで、安則が言ったようなオチになるのが関の山だろう。


「それじゃ、今日はここまでな。蓮、それに真倉ちゃんも、また」


「うん、今日はありがとうね、また」


「またねー!」


 裕也たちが歩いていき、僕も美柑と安芸とともに帰路へと向かう。アドレスは交換したから、また会うことはできる。そのことが、僕には嬉しかった。


「それじゃあ、ぼくはここで」


 途中で別れ道に差し掛かり、安芸が手を軽く振る。


「……うん、またね」


「えっと、じゃあね」


 僕と安芸の間にある違和感に気づいたのだろう、美柑が控えめに手を振る。安芸と別れた後、僕は美柑を家まで送り届けた。


「ここまで送ってくれてありがとうね。レンレンの方も、気をつけて帰ってね?」


「うん、大丈夫だよ。それじゃあ、また学校で」


 僕は美柑から何かを追及される前に、足早にこの場を後にした。そのまま駅まで歩き、そこで待っていた人物に声を掛ける。


「待っててくれたんだね、安芸」


「まあ、さすがにこのままだとぼくのほうも寝覚めが悪いしね」


 安芸が困った顔とともに、僕に缶コーヒーを差し出してくれる。僕はそれを受け取り、安芸の隣に背中を預けた。


「で、どこまで話してくれるの?」


 僕がそう切り出すと、安芸はコーヒーを一息に飲み干した後、申し訳なさそうに手を合わせてきた。


「ごめん! 正直、あれ以上はもう話せないんだ。勝手に話すと、本当に寧ちゃんに殺されかねないんだ!?」


 安芸の必死の懇願に、僕はやれやれとなる気分だった。まあ、こんなことだろうとは思ったよ。


「じゃあ、これだけは聞かせて。寧は、いや、寧たちは僕に、何か嘘を吐いている?」


 僕がそのことを問いかけると、安芸は押し黙ってしまった。


 さっき裕也からの話で、天体観測の記憶で寧が僕に嘘を吐いている可能性ができた。それだけじゃなく、寧は僕と美柑の事情を知っているのは、自分と藤原先生だけと以前言っていた記憶がある。でも実際は、目の前の安芸も知っていた。これは、紛れもない嘘だ。


「蓮は、寧ちゃんが嘘を吐いていたら、嫌に思う?」


 重たい口を開くように、逆に安芸が問いかけてくる。


「嫌とかそうじゃないんだ。ただ、もどかしいというか、何でそんな嘘を吐いているのかなって」


 別に嘘を吐くのはいい。人間誰しも、日常的に嘘を吐くことなんてある。問題は、嘘を吐く理由だ。わざわざそんなことを問い詰めるなって思うかもしれないけど、ここまで嘘を浮き彫りにされてしまうと、問い詰めるなと言う方が無理だった。


「そっか。蓮、これだけは言っとくね。寧ちゃんも、藤原先生も、そしてぼくも、蓮に対して少なからず嘘を吐いている。けど、それは全部、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そこだけは、絶対にはき違えないでほしい」


「僕を、想ってのこと?」


 何だ、それ。嘘を吐くことが、僕を想うことにどう繋がる?


「確かに伝えたからね。もし嘘の正体と、それを吐いた理由を知りたいなら、寧ちゃんに直接聞くしかない。それじゃあね」


「あっ、…………」


 呼び止める間もなく、安芸は歩き去ってしまう。この場に、ただ茫然と立ち尽くす僕だけが取り残されてしまった。


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