↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ妹にゾンビ(女の子)として死者蘇生されました  作者: ぽんすけ
第3章 「  」ーヒマワリー
32/84

32話 本当に先生みたいね

「本当にごめん!? まさか、お母さんの方が今日友達を呼ぶとは思わなかったよ~!?」


 美柑はスマホを握り締め、ガクッとうなだれている。本来なら、今日の放課後は美柑の家で勉強会をする予定だったけど、どうやら母親の事情があって無理そうだ。


 僕は美柑からそのことを聞き、どこかホッとしてしまっていた。


「まあ仕方ないわよ。それなら、今日は私の家でやる?」


 ましろが美柑を慰めつつ、代わりの提案をしてくる。


「え? いいの!?」


「ええ。両親は先月から海外旅行中だから、今は実質一人暮らしみたいなものなの」


 美柑はましろを神でも崇めるかのように見ている。


「やったね! ましろの家に行けるなんて」


 真希波が嬉しそうにガッツポーズをしている。ましろの家に何かあるのかな?


 ということで、急遽場所を変更して、ましろの家で勉強をやることになった。メンバーは、僕と美柑、ましろと真希波の4人だ。佐藤たちは予定があるとのことで、今回はパスした。


 美柑の家ほどではないけど、ましろの家にお邪魔するのも何かドキドキするな。というより、女の子の家に上がるのが初めてでドキドキしてしまう。


(あ、そうだ)


 すっかり忘れていたことを思い出した。僕はスマホを取り出し、皆で勉強会をする旨のメールを寧に送った。


 ……当然、寧からは怒った反対するメールが送られてきたけど、怖いから僕はそれを無視することにした。



 ましろの家は、駅を3つ跨いだ町に、他の家を凌駕するほどの圧倒的な存在感を放って存在していた。


「……うそ……!?」


 僕はましろの家を見て愕然とした。明らかに他の家よりも何倍も大きいであろう豪邸が、僕の目の前に堂々と鎮座していた。僕の家何個分あるんだ、これ?


「ましろんの家久しぶりに来たよ! お邪魔しま~す!」


 美柑は目の前の豪邸をもろともせずに、普通に家の中へと入っていった。


「いやぁ、いつ見てもこの大きさは憧れるね」


 真希波も感心した様子で中に入っていく。


「蓮、入らないのかしら?」


 固まっている僕に、ましろが声を掛けてくる。


「え? ましろの家ってお金持ちなの……?」


 生前教師をやっていた時にも、ましろの家がこんな豪邸であることは知らなかった。こんな豪邸を前にしたら、誰だって初めは固まってしまうと思う。


「ああ、蓮はそう言えばうちに来るの初めてよね。まあ、両親ともに勤めている会社の社長と、その社長令嬢でね。それでこんな家が建っちゃったのよ」


 ましろは苦笑いを浮かべて見せる。


 す、すごい。そりゃこんな豪邸を持ってるくらいだ。海外旅行も行けるよ。


 僕はおそるおそるといった感じに、ましろの家にお邪魔することになった。



 中も中で外観に負けないくらいの存在感を放っており、高級そうな壺や絵画なんかが至る所にある。どれか一つでも壊したら、僕に弁償できないと思う。そう考えると、それらが途端に狂気に見えてくるよ。


 初めて女の子の家にお邪魔したっていうのに、感じることが色々と複雑すぎるよ。ときめきなんてまるでないし。


 ましろに連れ立ってリビングと思われる広間にやってきた。ひ、広すぎる。ここだけで、僕の家分はあるんじゃないか?


「今飲み物を用意するから、座って待ってて」


 そう言うと、ましろは僕たちを残して飲み物を取りに行った。何だろう、家主がいなくなった瞬間、そわそわしてしまい落ち着かない。


「蓮ちゃん、何だか落ち着きがないよ?」


 真希波が笑って指摘してくるが、初めてこんな家に来て、落ち着けるほうがすごいと思うんだけど。


「ましろんの家おっきいよね! 私も一度はこんなおっきな家に住んでみたいよ!」


 大きい家に憧れる美柑の気持ちはわからなくもないけど、さすがにこの大きさとなると僕は逆に落ち着かないかも。


「お待たせ。それじゃあ、さっそく始めましょうか」


 ましろが紅茶を人数分持ってきた。ましろも寧と同じく、紅茶が好みなのかな。やっぱり、色々と寧と共通点が多い気がする。


 各々教科書やら勉強道具を取り出し、勉強会が始まった。


「う、う~ん……?」


 開始早々、隣の美柑が唸り始めた。早いね。美柑が今やっている範囲を覗かせてもらうと、どうやらつまずいているのは数学の公式問題のようだった。


「こんなのどうやって解けばいいの……!?」


 もうダメとばかりに頭を抱え始める美柑。だから早いって!


「その問題は公式に当てはめて考えるんだよ。ほら、これが公式」


 僕は自分のノートを見せ、解き方を美柑に教えていく。


「これが、こうなって? んん……? わ、わかんないっ……」


 チンプンカンプンというように、今にも美柑の頭から煙が上がりそうだ。


「……うーん。まずはこっちの簡単な問題から解いていこう。基本さえ押さえれば、応用もわかってくるから」


 その後、僕は美柑に付きっきりで数学の勉強を教えた。何度もつまずきながらも、美柑は必死にわかろうと努力している様子がうかがえる。こういう生徒を見るのは、今も変わらずにやっぱり好きだ。


 ある程度の問題を解いていったところで、ふと時計を見た。すでに一時間半も経っていたようだ。


「少し休憩にしない? はい」


 いつの間に持ってきていたのか、ましろはお菓子を僕たちの前に差し出した。


「お菓子!? いただきます!」


 美柑は遠慮なしにお菓子を手に取り、その口いっぱいに頬張り始めた。


「ごめん。こんなに時間経っているとは思わなかったよ」


「別に構わないわよ。それよりも、蓮ってば教えるのが上手いわね」


 ましろが感心した様子を僕に向けてくる。


「そ、そうかな?」


「私もそう思ったよ。聞いててすごい分かりやすかったし」


 真希波も僕のことを褒めてくるため、僕は思わず頬をかいてしまった。直接そう言われると、何だか照れてしまう。


「そえはほうだよ、だうてれんれんほぁ……!? ゴホッゴホッ!?」


 口にお菓子を大量に詰め込んだまま喋ってしまったためか、美柑は苦しそうにむせてしまった。


「何やってるのよ。ほら、水よ」


 ましろが差し出した水を、美柑はすぐに飲み干す。それから一息吐いてから言った。


「にゃはは、ごめんごめん」


「あははっ、無理に喋るからだよ。それで、今何て言おうとしたの?」


 真希波の疑問に、美柑はドキッとした表情を浮かべる。


「い、いや、レンレンは中学の時頭が良かったらしくて、家でも寧ちゃんによく勉強を教えてるみたいなんだよ! ね、レンレン!?」


 美柑が若干引きつった笑みで僕に同意を促してくる。……美柑、危うく僕の正体ばらすところだったよね?


「う、うん、そうなんだ。だからかな?」


 美柑に話を合わせつつ、怪しまれないように誤魔化す。


「なるほどね。けど、本当に学校の先生みたいだったわ」


 その一言に、内心でひやひやしてしまう。みたい、じゃなくて本当に元教師だもんな、僕。


 とりあえず、不意にボロが出てしまわないように、美柑には後で再度注意しておこう。



 時刻が19時を回ったところで、勉強会はお開きになった。


「皆、今日はありがとうね! すっごい楽しい時間だったよ!」


 楽しそうに言う美柑に対し、僕は少しげんなりしてしまった。結局、まともに勉強したのは最初の1時間半くらいで、その後は普通にお菓子を食べながら談笑する会になってしまった。


 前々から思ってたけど、勉強会って結局ただの遊ぶための口実じゃないかな? いや、中にはまともに勉強会してる人もいるかもだけど。


 まあ、ましろと真希波については別に学力の心配はしていない。二人とも、普通に頭がいいほうだ。


 けど、美柑のほうは少し心配だ。……心配だけど、そこまで不安じゃない。だって、覚えようと努力してくれるんだ。そして実際に今日、一つといえども美柑は確かに教えたことを理解して、覚えたんだ。なら、後はそれを続けていけばいい。


 美柑みたいな生徒は、教えがいがあっていいな。


 僕は嬉しくもどこか懐かしい気持ちを抱きながら、自宅まで帰るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。