有名になりたい男。その名は大牙
ーーー横浜市明星町明星南中学校東校舎2階廊下08:25ーーーーーーーーーーー
朝の会前のギリギリの時間鳴神雷電は校舎の中を走っていた。
「やべー。遅刻する!仕方ない」
走りながら雷電はラミエルのカードを使い、筋肉も神経も加速した。
「これで間に合う」
カードの力で先ほどより早くなった雷電は教室に向かって走った。その途中、ふと窓の外を見ると窓の向かいの廊下を見覚えのないの金髪碧眼の美少女が歩いていることに気がついた。
「かわいい…ああっ!」
雷電はよそ見しながら走っていたため廊下の凹みに足をとり転んでしまった。
「あの子は?」
起き上がり先程の場所を見るとその少女は消えていた。
「やばい!今度こそマジで遅刻する!」
ーーー横浜市明星町明星南中学校東校舎2階職員室前08:25ーーーーーーーーーーー
「転校初日で緊張してるかもしれないが、うちのクラスはいい奴ばっかだぞ。まあ、癖の強い奴はいるが……」
「ありがとうございます」
十文字の言葉に先程雷電が見かけた美少女は相槌を打った。
ーーー横浜市明星町明星南中学校東校舎3階2年3組08:30ーーーーーーーーーーー
「美少女がいたぁ?」
「ああ、そうなんだ!遅刻しそうになって、廊下を走っていたら職員室の近くを金髪の美少女が歩いていたんだ!」
「でも、もう一回見たらいなかったんだろ?見間違いじゃ無いのか?」
「いや、いたんだって!」
志門と雷電が話していると、十文字が入ってきた。
「お前ら、静かにしろ。時間だぞ」
生徒達が静かになるのを待って十文字が話し始めた。
「今日からお前達に新しい仲間ができる!入ってくれ」
十文字の声に応えて一人の少女が入ってきた。
「し、志門……。あの子だ」
「あの子だって?」
「だから、あの子がさっき話した子なんだ」
そこには先ほど雷電が見かけた金髪碧眼の美少女が立ったいた。
「じゃあ、トゥルーナ。自己紹介してくれ」
「フランスから来た、マリネ・ラ・トゥルーナです。好きなものは日本のものです。よろしくおねがいします」
「じゃあ、そこの空いてる席に座ってくれ」
マリネは雷電の隣の席に座った。
「あっ、それと次の時間は学活だ。折角の機会だから自由時間にする。トゥルーナにこの学校のことを色々教えてやってくれ。」
やったぜー、イェーイなどとクラスが騒がしくなった。
「でも、一応授業中だから教室から出るなよ」
「「「はーい」」」
クラスメイトの声がこんなに揃うのは珍しい。そう思いながら志門も口を揃えた。
ーーー横浜市明星町明星駅前たい焼きや〈タイヘイ〉15:48ーーーーーーーーーーー
「それでさっき話したけどあそこのたい焼き屋のたい焼きがすごい美味しいの!」
歩きながら時雨はマリネに大声で話していた。
「そうなんですね。私たい焼きは食べたことがなくて」
「なら、絶対あそこのたい焼きは食べとかなきゃ損だぜ」
「雷電の言う通りここのたい焼きはすごい美味いんだ」
志門達四人の視線の先には年季の入ったたい焼き屋があった。
「おやじ!たい焼き4つ!」
「おう、まいどあり!今日も来てくれたのか」
たい焼き屋の店主はそう言いながらアツアツのたい焼きを袋に詰めていた。
「今日も?そんなにこの店に来ているのですか?」
店主の言葉にマリネが雷電に問いかけた。
「ああ、おやじのたい焼きは美味いからな」
「そうさ、俺のたい焼きは日本一の旨さだからな」
たい焼き屋の店長は、日本一の旨さと書かれた幟を指差しながら答えた。
「そうなんですね。ではいただきます。」
マリネはたい焼きを口に運んだ。
「Que c'est délicieux!」
「えっ、なんで言ったんだ?」
「フランス語でなんて美味しいの!と言ったの。」
「そうか。マリネが喜んでくれて嬉しいよ。」
その様子を赤茶色の髪の少年が見ていた。
「ふーん、日本一の美味しさねぇ」
そう言って、少年は立ち去っていた。
ーーー横浜市明星町明星南中学校東校舎3階2年3組08:30ーーーーーーーーーーー
「志門!今朝のニュース見たか!」
「ああ、おやじのたい焼き屋食中毒出たんだってな」
「そうらしい。おやじ大丈夫か心配だぜ」
「そうね。みんなで放課後たい焼き屋に行きましょう」
雷電の心配の声に時雨が提案した。
「私も一緒に行って良いでしょうか?」
「ああ、勿論だ」
志門たちの話を聞き、マリネも行くことを決めた。
ーーー横浜市明星町明星駅前たい焼きや〈タイヘイ〉15:40ーーーーーーーーーーー
「おやじ大丈夫か!」
店が開いていないことに気がついた雷電は裏口から店主に声をかけた。
「店長ー。居るかー」
反応がないことに心配になった志門は中を覗き込むと、台所で手首を切ってぐったりとしていた。
「おやじー!」
「店長!」
「「きゃー」」
店長が倒れていることに気がついた志門たちは駆け寄った。
「どうしよう?志門」
「取り敢えず救急車を…あ!そうだ、パワーカードを使えば!」
救急車を呼ぼうとして、カードのことを思い出して携帯電話を置き、カードを取り出した」
「パワーカード!ユニコーン!」
志門の叫び声に合わせてユニコーンのカードと店長の左手首が光りながら、時を巻き戻す様に傷が治っていった。
「うっ、なんでお前らあの世に居るんだ?」
「ここは天国じゃないわ」
「どういうことだ?嬢ちゃん」
「店長さんは志門のパワーカードの力で助かったのよ」
「パワーカード?」
「このカードには傷を治す効果があるんです」
志門はユニコーンのカードを見せながら説明した。
「そうか、俺は死に損なったのか。何故死なせてくれなかったんだ。この店はもう終わりなのに…」
「貴方が生きてるからだ、生きてればなに事もなんとかなるさ」
「そうか。ガキにこんなこと言われちゃ頑張んないとな」
「おやじの店が食中毒なんて、なんでこんなことに…」
「分からない。でも昨日出たんだ。俺のたい焼きで食中毒が何人も出たんだ」
「その近辺で変なことは起きなかった?」
「そういえば、昨日の朝変な坊主が店の中から出てくるのを見た」
「そいつはどんな奴でしたか!」
志門たちの剣幕に店長は思い出しながら、話し始めた。
「確か年は中学生頃で、髪は赤茶色だった思う」
「わかりました。俺に任せてください。」
「おお、そうか。頼りになるなぁ。」
店主はホッとしたような、申し訳ないような表情をしながら言った。
「赤茶色の髪?」
何かを思い出したかの様に呟いた。
「知っているのか、雷電」
「ああ、金星中学にそんな奴がいるって聞いたことがある気するぜ」
「気がする?」
雷電の曖昧な物言いに疑問の声を上げた。
「だから明日同じ中学のやつに聞いてみるぜ」
ーーー横浜市明星町明星駅前〈樹村亭〉16:30ーーーーーーーーーーー
「おう、聞いてきたぜ。あれ、志門は?」
樹村亭にきた雷電は席にマリネと時雨しかいないことに気がつき当たりを見回した。
すると、奥のトイレから志門が出てきた
「おっ、雷電。どうだった?」
「そうだった、忘れてたぜ」
雷電は聞いた話を始めた。
「それで赤茶色の髪の男の名前は時渡大牙っていうんだってよ。向こうの中学でも目立ちたい目立ちたいってテストで良い点をとったやつとか、大会で良い成績を取ったりした奴によく喧嘩を売っているらしいぜ」
「そんな奴なのか」
「ああ、話を聞く限りそうみたいだぞ」
「とりあえず、明日金星中に会いに行って話を聞いてみよう」
「はい」「ええ」「おう」
志門のこえに三人は応えた。
ーーー横浜市明星町金星中学校前 15:30ーーーーーーーーーーー
「こねーなー」
志門たちは校門前で目的の人物を待っていた。そうすると、見張っていた門の向こうから赤茶色の髪の生徒が出てきた。その生徒に志門は近づき声をかけた。
「あんたが時渡大牙か?」
「そうだこの俺が世界一の有名人になる男時渡大牙様だ!なんの用だ?もしかしてサインもらいに「お前、タイヘイってたい焼き屋の事件、知らねーか?」
大牙の言葉を遮り雷電が強い口調で質問する。いつも温和な雷電のいつもと違う様子は雷電のタイヘイに対する思いの強さの表れが出ていた。
それに対し、大牙は自慢げに答えた。
「あのたい焼き屋が日本一の旨さとかぬかしているから消してやろうとしただけさ。そしてテキトーに犯人に仕立て上げたやつをやっつける。そうすれば俺は有名人になれる。」
大牙の発言に志門達は絶句する
「もちろん仕立て上げた犯人はこれで痛めつければ罪には問われないしな。」
そう言うと大牙は岩座に座る黒い大男のカードをポケットから取り出した。
「お前もパワーカードを持っていたのか!?」
志門は驚きのあまり叫んだ
「パワーカードって言うのか。便利なやつだぜ。気に入らないやつとかを火傷させたりできるんだからな。そうだ、お前らが犯人になって俺にやられてくれねーか?」
「仕方がない。コイツを抑えるためなら。雷電行くぞ」
そう言って志門と雷電はポケットからカードを取り出した。
「サラマンダー「ラミエル」」
サラマンダーの力を使った志門は炎を拳に纏い、大牙に殴りかかる。
「不動明王」
それと同時に大牙もカードの能力を発動し、炎の剣を作り出すと、志門の拳に纏っていた炎を吸収し、炎の剣で志門を貫こうとした。
「ユニコーン」
志門はその剣を咄嗟に発動したユニコーンのカードの力を使って避けた。
「ちっ、避けやがって。お前は俺が有名になるためにやられてればいいんだよ!」
志門たちは大牙のあまりの物言いに思わず問いかけた。
「なんでお前はそこまでして有名になりたんだ!」
「それは何も考えてない。ただ有名になればちやほやされる。それだけだ!」
「「はっ!?」」
大牙の言葉に思わず二人は動きが止まった。
「こんなところで、もたもたしてたら、有名になるのが遠のいてしまう。だからここで撤退するか。」
ーーー横浜市明星町住宅街 21:00ーーーーーーーーーーー
「ふっ、こんな時間に歩いてる俺かっこいい」
頭に手を当て自分に浸っていると、道の向こうから戦我原が歩いてきた。
「君はぁ…。少し聞きたい事がある」
「お前は話題の正義の執行人か?」
「質問に質問で返すな。それに何故僕が最近正義の執行をしていると知っているんだい?」
大牙の疑問に怒気を発しながら質問した。その言葉を聞き近くの木の枝を折り不動明王を発動した。
「お前を倒せば俺は有名人だ。不動明王!」
「だから話を聞きたまえ。フェニックス!」
戦我原はフェニックスのカードを発動して炎になり、大牙の攻撃を避けた。
「避けるなよ!お前を倒せないと有名になれないだろ!」
「君こそ正義の裁きを受けたまえ」
「うるさい!不動明王!」
「フェニックス!」
二人はカードを発動してぶつかり合った。
「手応えがあった。観念しろ!あれ?」
とどめを刺そう大牙が周りを見るが、近くに戦我原はもう居なかった
ーーー横浜市明星町路地裏 21:05ーーーーーーーーーーー
「ちっ、何故だ。攻撃は避けたはず」
戦我原は脇腹を抑えながら歩いていた。
「あいつを逃してしまったが仕方ない、他の犯罪者を逃すわけにはいかないからね。フェニックス」
フェニックスの力で傷を癒やし歩き出すと近くに白い仮面を被った怪しい人物がいた。
「これはこれは正義の執行人さん?先程は大牙くんがお世話になりましたね」
「お前は誰だ!」
「そうですねぇ…」
白い仮面の男が話し始めようすると戦我原がそれを遮った。
「白い仮面の?田代くんを襲ったやつか!フェニックス!」
しかしその攻撃は白い仮面のの男に避けられてしまった。避けた先で彼は話し始めた。
「先程は大牙くんが苦戦していたようでしたので、少し手伝わせてもらったのですよ」
「僕が怪我をしたのは君のせいか。だから避けたはずなのに怪我を負っていたんだね」
「今日は挨拶に来ただけですので、この辺りで失礼させていただきます。おっと肝心の名を名乗っていませんね。改めまして私の名はラファエロと申します、以後お見知り置きを」
そう言い残すとラファエロは羽が生えて飛んでいった。
「ラファエロ…こいつが真相を知っているのかもしれないな。」
そう言うと戦我原は夜の闇に消えていった。
3ヶ月ぶりの投稿です。シンワです。
長く待たせてすいません!リアルが忙しかったもので。
でもそれに見合う出来になっていると思います。
そして新キャラの時渡大牙!このキャラは有名になりたいあまり、周りを考えない人をイメージしてます。
そして彼は今後の展開に置いて重要な存在になっていきます。
それとついに登場した白い仮面の男ラファエロもストーリーの鍵を握っていく存在です。
次回もお楽しみに