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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王伝

作者: サルト

其は世界滅亡の萌芽。

それは摘もうと、或いは無視しようとも、確実に滅びを世界にもたらす。

 魔王、それは世界の理から外れし者。神が定められたその摂理に背く、それは即ち特異点であることを意味する。

 例えば物体の速度が光速を超える周知の特異点ブラックホール。そこには既知の物理法則が当て嵌まらない、超重力による治外法権が起こっている。

 それと同様、魔王には物理法則だけでなく魔法すらも無いも同じ。打ち消すことや避ける行動を魔王が取るまでもなく、あらゆる攻撃は効かない。そもそもダメージを受ける仕組みが無いのだ。



 魔族がいた。魔神によって戯れに創られ、神に滅ぼされることが定められている憐れな種族だ。


 しかし、魔王がいたことで事情は変わった。


 魔族を絶滅に追い込もうと神に遣わせられた勇者でさえ、魔王は敵として見ていなかった。攻撃が効かないのだから当然だ。しかしその無敵の英雄を見て、魔族は魔王を神として崇めた。


 魔神は自分を崇めない被創造物を不愉快に感じた。だから魔王を滅ぼそうとした。そして、魔神は死んだ。あらゆる全力の攻撃が効かず、焦って接近したところで未知の攻撃に依って滅ぼされたのだ。



 神は魔神という御身の重鎮が滅んだことで、初めて魔王を目に留めた。矮小な存在、吹けば飛ぶような貧弱さ。魔神が何故このようなちっぽけな存在に滅ぼされたのか理解出来なかった。


 派遣した御身の垢で創った勇者はとうの昔に魔王によって殺されており、遣わしたそれに魔王とは何者かを聞くことは出来ない。


 そもそも魔王とは何だ。神は世界を創った時、そのような存在が生える事など考えていなかった。神は先ず、他の神の干渉が行われたのではないかと疑った。神はその痕跡が無いかを隈なく探した。だが、それは見つからなかった。


 他の神の干渉がない状況で現れたイレギュラー。それは魔王が神のシナリオを無視して現れたウイルスであることの証明に繋がる。


 ウイルス除去は、創造神の仕事の一つだ。神は魔王討滅に向けて準備を始めた。そして魔族が支配する星に到着した。


 かの星は人間が住んでいた頃よりも寧ろ快適になっていた。魔族にとって、だが。


 そこで魔王は文字通り魔族の王であった。さらに魔王は神として奉られていたが、法則の外側にある彼にとって魔族の従者は不要。かえって魔族の害になるので、魔王は誰も引き連れずに暮らしていた。


 神が討伐に訪れたのは、魔王が名もなき渓谷で佇んでいる時であった。互いに存在を認め合い、魔王がおもむろに息を吸おうとした瞬間、それは始まった。


 先手必勝とばかりに強烈な必殺技を叩き込む神。星は跡形もなく吹き飛んだ。余波は空間を構築する次元素粒子にまで及び、世界が壊れて無が拡がった。しかし、魔王には効かない。そもそもダメージを受ける仕組みが無いのだから。


 神は魔王の消滅を確信し、立ち去ろうとした。だが、振り返った空間に魔王がいた。ダメージの痕跡など無い、無傷を体言した堂々たる出で立ちであった。


 それを見て、ようやく神は思い出した。無敵の存在、真の魔王、そして神の殺戮者。この目の前の矮小な存在は、神の中で怖れられている化け物ではないのかと。何故魔王が生えてきたのか、知る術は無い。だが神は知っていた。


 それと戦端を拓くことは………神といえど、最上位の神たる時空創造神といえど、滅びを意味すると。


 そして神は死んだ。それと同時に世界の縮小が始まり、短い間に一つの世界が泡末の如く消え去った。


 イレギュラー、それは時として神すら滅ぼす。


 魔王は人類が御しきれていると思っているこの世界、地球にも存在しているかもしれない。神すら滅ぼすそれに、人類は武力に頼らず会話で交渉しなければならない。さもなくば、人類に訪れるのは昏い明けない夜だけだ。

万客よ、思考せよ。

けして流されること勿れ。

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