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知らない誰かと記憶の雨
雨音が耳朶を叩く
それが救いで
自分がいると思える
体に当たる雨粒が冷たくて
けど、なにか暖かい
それが分かれば怖くない
空はいつもの様に澱んでいる
いつまでも振り続ける雨は
まだ振りやみそうにも無い
ふと記憶の奥に何かを思い出した
ノイズ混じりの記憶の底で
『綺麗だね』
そう誰かに言われた
その誰かと雨を眺めて
交わした言葉があった気がする
それが誰で
その後僕が何を思って
なんて言ったのかも忘れた
今も記憶の奥で綺麗な雨が降っていた
それだけは忘れられない
またあの場所へ帰りたい
そんな事を思う




