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雨の日の御伽噺  作者: 雨月 千疾
3/50

黒い人

スっと息を吸うと

生暖かい空気が入ってきた

それと共に匂いが入ってきた

嗅いだことのある

決していい匂いと言えない匂い

黒い人からは腐臭がした

この人はこの世の人じゃないのか

僕も違うけど

この人とも違う

今日いる雨の街は死者の街なんだろうか

辺りを見渡しても霧が濃くて

人影はなかった

遠くで悲鳴と金属音が聞こえた

黒い人は微動だにせず

ずっと僕に傘を差し出している

君はここに居ちゃ行けないよ

言葉は通じないが

声をかけた

言ってる事は分からないだろうけど

言いたいことは分かるのか

黒い人はそっと首を振った

僕は大丈夫だから

行っていいよ

それでも黒い人は動かない

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