89話 委縮する錬金術師
幻神歴2961年2月20日
平日、この頃になるとカレンはシャイタンと2人でのお出かけに躊躇なく、気おくれもせずに楽しんで露店巡りを満喫していた。
日頃の日課へとシャイタンを引き連れてカレンが市場を巡っていると怪しい露天商で掘り出し物を見つけた
そんな日常、カレンが目を付けたのは非日常の名状しがたい正体不明の物体だった…
「ねぇねぇ! これ幾ら?」
躊躇なくカレンはそれを手に取り店主に値段を尋ねるが背後でシャイタンは「またか…」と頭を抱えていた
「おっ、嬢ちゃんお目が高いね、それはさる高名な祈祷師が創った術具だよ」
(祈祷師だと? どうみてもこれは旧神の遺物だろうが、この店主相当に気が狂ってるな)
シャイタンだけその正体不明の物体に身に覚えがありどうしたものか悩む
「へぇ~へんてこな形ね。あっ、形が変わった」
不形体の物質に更にカレンは興味を示す。
常人なら気味悪がって即捨てるものだが・・・
「なんでもその形に意味があるそうで、どうだい? 金貨3枚の所金貨2枚と銀貨10枚にまけとくよ」
「ほんとっ!? 買うわ。ねぇシャイタンさんいいでしょ~」
愛するカレンのおねだりには弱い。が、それとこれは別でカレンの手に迫ってるその物体を近くに置くべきかどうか一瞬悩むが…旧神が絡む以上悩むだけ無駄だった。
せめて使い道を問いただす
「は、はぁ・・・その、その不気味な物体は何に使われるのでしょうか?」
珍しくシャイタンは冷や汗を流していた
「判んない! けどきっと発明の手助けになる筈よっ」
答えになってないがシャイタンには十分だった
旧神の遺物での発明など正気を疑う品だが、そこは天災のカレン、きっと愉悦を満たす魔導具になるに違いないと踏んでシャイタンは納得する
「はぁ・・・判りました。その代金は出しましょう」
正直言ってシャイタンはその名状しがたい物体に関わりたくなかった
一度目の逢引の時にも購入した得体のしれないもの含めてどう考えても『旧神』に纏わる何かだと一目で判るからだ。
ただ、此処で拒否しても『旧神』の意味不明な法則でカレンの手に渡るのは明白なので素直に諦め購入代金をカレンに手渡す
「わぁシャイタンさんありがとねっ」
「それもかさ張るので私奴が保管しておきましょう」
それと無く時空掌握に『旧神』の遺物を納める、なにせ常人ならこの物体を視たただけで発狂しかねない物なのだ
「ありがと、次は・・・っ」
次の露店へと足を向けようとしてカレンは止まってしまう
そしてカレンが生まれて初めての衝動に駆られる
(なにあれ!? あれって猫でしょ? なんで? なんでなんで? 怖い怖い、姉様助けてシャイタンさん助けて)
市場通りを行き交うご婦人が抱えてる猫がカレンの視野に入った瞬間、得も言われぬ恐怖を襲い、その恐怖はかつての竜との遭遇を超えていた。
竜との遭遇が死を連想するなら猫との遭遇は恐怖を連想するものだった。
カレンは小水を漏らして恐怖感から一歩も動けなかった。
「カレン様? 如何なさいましたか?」
「――――」
返事が無いがカレンに掛けてる危険時にシャイタンに通達される魔法が発動している
カレンが何かしらの危機的状況に有る訳だ
「カレン様? カレン様!?」
カレンの両肩を掴み安否を気遣う
そんな中ご婦人が抱えてる猫事通り過ぎるとやっとカレンは動けるようになりシャイタンに抱き着く
「怖かったあああああぁ」
涙も汗も鼻水もびっしょりだがお構い無しにシャイタンに縋り付き安堵感を得る
「怖い? 何かあったのですか?」
訳が分からないが取り敢えずエナジーポーションを取り出し主に渡して飲んで貰う
「ぇ、ええ・・・さっきの猫を見た瞬間体が動かなくなって恐怖感で頭が支配されたの」
自分でもなぜなのか判らない、捕食者に遭遇したわけでもないただの愛玩動物相手に何故あれほどパニックに陥ったのか腑に落ちない帰路となる
「猫…ふむ、一先ず家に帰りましょう」
こうして今日の市場巡りは波乱となって終えた
アシュリー工房に帰宅するとカレンは真っ先に着替え、カレンの自室で寛いでたアリスに先の出来事を報告する
主の着替え中との事で途中でノックしてシャイタンも入室し、3人で腰掛けて話す事になった
「あ~カレンも猫見たかぁ」
アリスはかつて幼少の時猫と出会った。
その時の恐怖感は言葉に尽くせないものであれから様々な猫種を調べた
「アリス様、猫とは何か関係があるのですか?」
犬と猫、猫と鼠ならまだ判るが猫と兎等関連性が付かずシャイタンも困惑しつつ問う
「ええ、大有りよ。他の玉兎は判らないけど、私も小さい頃猫に会って恐怖心に頭が駆られて病気で死にかけのカレンの事すらすっぱ抜けるほど恐怖心に支配されたの」
かつての恥ずかしい一面を語る
アリスはこの特性が自分だけなのか他の玉兎族もなのかと調べようとしたがどうしても猫に委縮してしまいその計画は頓挫していまではどうでも良くなっていた。
「なんと・・・」
「姉様なんで猫を見ると有んな怖い思いするんですか? 熊じゃあるまいし・・・」
「さぁ、そこは確認のしようが無いからねぇ。ただ、猫人族や猫の獣人、ネコ科の大型動物は平気なの、小さい猫だけ私達は見たら委縮してしまうの。ある意味一方的な天敵とも言えるわね」
「ふむ、猫といえば愛玩動物。今はルルアでも猫を連れた人が行き交うでしょうから何かしら対策が必要ですね」
先のカレンの怖がり様、そしてアリスの独白を聞いた今、そのままにはしておけないとシャイタンが企てる
「猫の多いフルーラから離れてテンゲン大樹海に来たんだけどねぇ、今はドルシア大陸から猫も大量に輸入されてるだろうし確かに何かしら対策が必要ね」
猫の発祥地はドルシア大陸で愛玩動物として非常に人気が高く、高額で一市民には無縁の動物だ
恐怖心で動けなくなるとなればカレンだけでなくアリスも危うい
シャイタンは思考を巡らしとある一計を閃く
「アリス様、確認なのですが通常の猫の容姿だと恐怖心が沸くのですよね?」
「ええ」
「ふむ、ティターニアと相談してみますがお手数ですがアリス様もお越し頂けますか?」
「ティターニアと? おっけ~」
「私はどうしたらいいの?」
「カレン様はこのまま此処でお待ちください。これから猫の妖精に会うつもりなのでその妖精の容姿でも主姉妹の拒否反応が出るかは未知数なので」
「わかったわ。姉様気を付けて」
神域にて
「おいティターニア」
神樹の上でぐーすかと寝ていたティターニアをシャイタンが乱暴に叩き起こす
「んぐ、んへぇ、っげ! 友神さまじゃないですかぁ」
ティターニアのお腹がポッコリしてる所から相当数エデンの果実を食べたのだろう
「お前に呼んで欲しい妖精が居る」
妖精女王ティターニアなら任意の妖精を呼び出せるので其処に目を付けたシャイタン
「構いませんけど誰です? あっ旦那は駄目ですよ、今別の星で戦争中なので」
ティターニアの旦那ことオベロンは今2405の星で現地住民と交戦中で一方的に蹂躙してる最中だ。
下位の妖精なら自由気ままにふらふらと飛び交うが支配者層となると下位の妖精を守る為戦闘行為もままあるのだ
「オベロンではない。ケット・シーだ」
「へぇ・・・ケット・シーですか? まぁ良いですけど」
ティターニアの許可を得た事で今度はアリスに確認する
ケット・シーは猫とは容姿が異なるとはいえ猫妖精なので猫同様に見ただけで恐怖感が押し寄せる可能性が大いにあるので其処を確認する
「アリス様準備は宜しいですか? 恐怖感を感じたらすぐに転移させますので」
「おっけ~」
そして現れたケット・シー
体長20㎝程の背中には妖精とはまた異なる小さい蝙蝠のような羽が生えており、ティターニア同様ふわふわと浮いている
猫を使役できる中級妖精だ。
当初シャイタンは自分の派閥からくみした人材をと思ったのだが悪魔なのでカレンに説明が出来ず、今回ティターニアにケット・シーの召喚を頼んだ。
「うん、大丈夫だわ。羽も有るし猫と認識されないみたい」
アリスがケット・シーを抱きあげながらも問題無いと告げる
「それは重畳です。これならカレン様も無事でしょう」
「ねぇねぇどういう事?」
「ティタニーア、暫くケット・シー借りるがいいか?」
「いいよ~但し毎日ミルクはあげてね」
再びアシュリー工房に戻りカレンの自室に入るアリスとシャイタン
アリスの胸にはケット・シーが居た。
「カレンただいま~」
「カレン様ただいま戻りました」
「姉様! どうでした?」
「それなんだけど、はい。この子見てどう思う」
早速とケット・シーを抱え上げ眼前まで持ち上げカレンに見せるアリス
一方見せられたカレンは謎の生物に困惑気味だった
「・・・な、何ですこの不思議生物」
ケット・シーは猫の王様ではあるが2足歩行する黒毛の小人にも近い生物だ
「カレン様、それはケット・シーといって猫の妖精です。その者を周囲においておけば猫は自然とカレン様の周囲から離れていきましょう」
ケット・シーがいれば普通の猫を遠ざけたり、逆に招き寄せる事も自由自在だ。
これで主姉妹の猫対策は無事終えた。
「凄い! じゃあこの子も私のペットね、宜しくねケット・シー」
みてくれはふてぶてしいケット・シーだが気にせずカレンは抱きしめる
念の為ケット・シーは妖精なので普段は見えない所に忍ばす方がいいとシャイタンが助言を送り、カレンが一考しケット・シーの定位置はカレンの頭上フードの中と決まった。
こうしてケット・シーに毎朝新鮮なミルクをあげているとコボルトが「俺っちも本来はミルクを要求するとこなんだがなぁ」と零すとカレンは無言で蒸留酒をコボルトに差し出した。
美味しく頂いた。
猫騒動から2日目、朝餉が済んでカレンは地下工房に、アリスはベッドで扇情的な着物を着崩した格好で微睡んでいた。
ノックがして、アリスが返事をするとシャイタンだった
「アリス様、折り入ってご相談があるのですが宜しいでしょうか?」
いつもの悪戯顔でなく真面目な顔つきだった
「何々?」
「カレン様に私奴の身を明かすのはまだ時期少々なので、ここは1つ悪魔について学んでもらおうと思うのですが如何でしょうか?」
カレンに自身の全てを明かすのは添い遂げてからと決めてるシャイタンは先ずは自身の力の一部をカレンに知ってもらおうと提案する
「う~ん・・・まぁいずれお前とカレンが一緒になったら判る事だしねぇ、でもどうやって?」
微睡みから完全に覚醒したアリスが興味を持ちベッドから起き上がり話に食いつく
「適任の悪魔が居ますのでその者に直接話をしてもらおうかと思っております」
「おっけ~面白そうだから私もいこっ」
アリスとシャイタンが地下工房に降りると丁度錬成中のようでカレンは仕事に勤しんでいた
「カレン様、今お時間宜しいですか?」
「あぁ・・・シャイタンさん、今丁度最希少素材が消えた所で時間ならあるわよ」
ドラゴンの素材への足掛かりにと試した錬成は無残にも散ってしまい相変わらずドラゴンの素材研究は進んでいなかった
うさ耳も残念なのか萎れていた。そう、カレンの技量をもってしてもドラゴンの素材は錬成が難しいのだ。
「ふむ、実はカレン様にお話ししたい事がございまして」
「何々?」
「カレン様は悪魔に付いてどれ程ご存知ですか?」
意外な問い掛けにカレンは思いついた通りを口にする
「へ? 悪魔? 悪魔っていうと魔界から来て処女やら魂を要求する怖い奴でしょ」
「半分は有ってますが半分は間違いで御座います」
「へ」
「まず魔界等存在しませんし、悪魔が魂を要求する事は有りますがそれは契約内容によって様々です」
悪魔も清浄なので神界に存在するし魂云々は契約内容でそれもそうとう重い契約内容だ
「はぁ・・えっと急に何? やっぱシャイタンさん悪魔でしたとか?」
急な悪魔話にカレンは警戒しジリジリとシャイタンと距離を取る
「いえ、以前にも仰った通り私奴は悪魔ではありまえん。が、権能で悪魔を有してるので好きに悪魔を僕として召喚できます」
シャイタンは一礼して主に申し上げる
権能とは本来神の力だが此処110の星では神から幻獣契約に身をやつす際に幻獣でも権能があると誤認されている
始めカレンがミューズと出会って権能と聞いた時もそれが原因で神とは結び付かなかった
「権能で悪魔。。。。はぁ、悪魔って実在するの?」
うろんげな表情でシャイタンに質問するカレン、うさ耳も怪しいのかあらぶっている
神は勿論悪魔も信じてないカレンにとっては突飛な話だった。
「はい、そこでこれからとある悪魔を召喚するので直接その者から話を聞いたほうが早いかと、如何でしょう?」
シャイタンかフラミーが説明しても良いのだがどうせなら悪魔本人からのが都合がいいとこの案をカレンに進めるシャイタン
「如何でしょうって危なくない?」
悪魔が来ると聞いておっかなびっくり尋ね返すカレン
「はい、私奴の命令下なので主姉妹に手を出すなどありえません。ご安心を」
シャイタンは安全とは言ったが念の為シャイタンの背後に隠れるカレン
アリスは呑気に待ち構えていた。
「はぁ・・それなら」
グレモリー来い
「御意に」
地下工房に現れたのはラクダに乗った妖艶な女性で以前エキドナに贈った服を更にエキゾチックにした装いの者だった
この者は過去・現在・未来、そして隠された財宝について知り、それを語る。そして女性に愛の力を授けるグレモリーとゆう高位悪魔だった。
「あ、あくま? 人間じゃ無いの?」
ラクダも始めて見て驚くがそれ以上にどんな異形な者が来るかと思えば嫉妬すら沸かない程の人間体の美貌を持った持主だった。
カレンの不意に出た感想にグレモリーは軽く自己紹介する
「私はグレモリーという72柱の1柱、高位悪魔じゃ、悪魔とは姿形は様々だが人の身の悪魔も多い。して、シャイタン様。此度の要件は如何に?」
グレモリーは悪魔の中でも王位に位置する位でプライドが高い
「此方のカレン様が悪魔に付いて詳しくないのでな、御教えさし上げろ」
「なるほど了解じゃ」
シャイタンの端的な命で全てを悟ったグレモリー
悪魔に付いて語る事は決して少ないくないので慣れた物だ
「お主、カレンといったか。悪魔についてどう思う?」
上位者のシャイタンの前なのにラクダに乗ったままなのは失礼に値するがグレモリーとはラクダに乗った悪魔なのでラクダと一身一体なのだ、傲慢不遜にカレンに問う
「ひゃ、ひゃい! 、えっとそれは・・・」
悪魔を前に先の台詞は怒りを買いかねないとおっかなびっくりしどろもどろしてるとグレモリーが気高く先を促す
「怒りはせん、忌憚のない意見を申せ」
「は、はい。えっと、魂や生贄や処女なんかを要求する悪者、としか・・・」
グレモリーは煙管を取り出し紫煙をくゆわせカレンの感想に応える
「ふむふむ。魂を要求、さも恐ろしいな。だが悪魔とは契約によって縛られる存在、その場合魂を代価に何かを得るという事じゃ」
グレモリーのこの台詞でカレンは有る単語が閃く
「―――等価交換ってこと?」
1を差し出し1を得る
あくまのけいやくはそれだ。
例えば悪魔の召喚までは成功したとしても敵国を滅ぼしてほしいという願いを叶えるならそれこそ自国の崩壊をもってしか無理だ、もしくは生贄という手段もあるが非常に稀だ。
「ふむ、主錬金術師か、それなら話は早いその通りじゃ。なにも悪魔と契約したからと言ってそのものが必ず破滅する訳ではない。さる国々では悪魔の力でもって栄華を極めとるしのう」
悪魔といっても害悪を齎すばかりでは無い
シャイタンの支配星等悪魔によって国が栄えているし他の派閥も悪魔と契約し便利に使っている
「じゃ、じゃあ悪魔が皆悪者ってのは間違いなの?」
「残念ながらそれも違う、契約主次第で私欲に塗れた悪行に手に染める者も多い」
「そんな、じゃあやっぱり・・・」
「カレンはナイフを使うじゃろう」
「え? ええ」
「主に料理にか?」
「ええ」
「そのナイフでも人を殺める事は可能じゃ」
「・・・」
言わんとしてる事は判った
使い手、この場合使役者次第という訳だ
ナイフに罪はない、あるのはそのナイフで人を傷つけた者だ
「それとな、人間種にも様々な派閥、主義主張があるように悪魔にも多種多様な思惑がある。人間種に対して過激な思想を持つものも当然おる。だがそれは悪魔に限らずどの種族でも一定数はその手の者はおるものよ。この星でいう堕ちた精霊、エルフなどそれが振り切っておるであろ? 大多数としては殆どの悪魔は人間に好意を持って居る。人の善欲を愛す、人の悪欲も愛でる。聖職者の説法に耳を傾け、独裁者の独善を見守る。往々にして悪魔は人好きなものよ、かく言う私も例外ではない」
「は、はぁ・・・なんか小さい頃に絵物語かなにかで聞きかじった悪魔とは掛け離れてますね―――まるで善悪区別無く人を見守る、そう・・・天使様? みたいな感じですか?」
「くかかっ、主面白い例えをするのう! よく悪魔と天使は対立しておると言われるが実の所そんなことは無く、悪魔は奔放な天使が大好きじゃ、片思いで嫌われておるんじゃがそれがまた愉快でな。まぁ人にとっては悪魔より天使のほうが執行者としては手厳しいんじゃがの」
「あ、やっぱり天使様も存在するんですか」
「うむ、あれらは愛いぞ。主の奇縁からしてそのうち何かしら巡り合う機会もあるであろ。話が逸れたが結論言ってしまえば悪魔とは人間種より異形の者が多い善悪どちらも容認する商売人のようなものじゃ」
「え? 商売人?」
「うむ、悪魔が人前に現れる時は一部の例外を除いて取引により契約を交わした時だけじゃ、契約内容によって善行悪行どちらでも遂行しその代価に契約主から対価を受け取る。それは形あるものから概念等千差万別じゃ」
「成程・・・私でもその契約ってできるんですか?」
「ん? できるもなにも主のその指輪・・・ああ、そういうことか。ふむ――――契約可能かどうかでいうならできる。悪魔の召喚は呼び出す悪魔への予備知識と召喚陣・儀式を手順通り行えば魔力もエーテルも不要で人柄も無視して可能じゃ。だがどの悪魔を呼びどのような契約を望むのかは知らんがお勧めはせんぞ? 主の持前の力があれば大抵の事は自助努力で成し遂げるであろ」
「はぁ・・・」
「どうじゃ。参考になったか?」
再び紫煙をくゆわせカレンに確認を取る
「ええ、悪魔も契約主次第ってことね」
「うむ、話も終わった所で代価を頂こうかの」
カレンの納得も得、話は之でお終い・・・・では無かった
グレモリーは悪魔らしく対価を要求してきたのだ
「え!?」
驚きの余り再びシャイタンの背後に隠れてしまうカレンだった
「何を呆けとる。悪魔に知識を求めたのじゃ、代価は必須であろ」
「ま、ま、まさか魂!?」
胸を隠し抵抗を見せるカレンにグレモリーが叱咤する
「戯け! この程度で魂など要求せんわ。ふむ、そうじゃなカレンの髪を一房貰おうかの」
「へ? 髪? 髪ってこの髪? こんなのどうするの?」
髪と聞いて自身の頭部から生えてるこの髪しか思い浮かばず適当に一つまみして問い返すカレン
「魔女、おっとこの星では魔法師か、魔法師の髪は魔力が宿り様々な対価になり得る」
「でも私魔力は。。。」
「解っておる。それでも主の髪がいいのじゃ、無の髪から何に変貌するか楽しみじゃ」
魔女の頭髪には魔力が宿り様々な代価になる。だがカレン・アシュリーの場合魔力は存在しない
そんなことグレモリーには一目見て見抜いたがそれと同時にカレンの可能性も見抜き、その未知なる可能性を秘めた髪を求めた。
「はぁ、じゃあえっと―――はい」
カレンは適当に乱雑に髪を掴んで30㎝程の房を切りグレモリーに両手で差し出す
「・・・お主切り過ぎじゃ、これでは貰いすぎになってしまうのう、そうじゃ」
グレモリーは精々髪を数十本のつもりだったのだがこれでは逆に貰いすぎと困り果て、丁度良いとある策を講じる
「加護はやれんが愛をやろう」
「あい?」
こうしてカレンの恋心は大きく成長した
「いずれ気付くであろう。ではな無垢なカレン、それではシャイタン様これで」
「ああ、ご苦労だった」
こうしてグレモリーによる悪魔のレクチャーは終わった。




