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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
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87話 取り戻す錬金術師

幻神歴2961年01月17日


アシュリー工房-地下工房-


カレンとシャイタンで新たに作成した魔導具の感想を互いに零しているとふとシャイタンが閃く


「そういえばカレン様。出会う前の魔導具はどのようなものがあったのでしょうか? 組合に没収されたとは聞きましたが」


出会った当初、カレンは組合に魔道具を没収されまくったと零していたのをシャイタンは思い出し、これまでのカレンの魔導具の効果から過去の産物も使えるのでは? と思い付き尋ねたのだがそれがカレン自身忘れていたコレクション欲を刺激した。


シャイタンの発言でカレンのうさ耳はピンッと直立して興奮の余りピコピコ揺れている


「あっ!! そうだ! そうよ、もう特権で没収されないんだからまた過去のコレクション作ればいいじゃない!」


以前のポーションの数々の実績提供の恩賞でカレンの魔道具の没収は免除になっており、過去に作った大事なコレクションも今なら手元に置いておけると閃き今まで作り上げたコレクションをもう一度造ろうと一念発起するカレン


興奮の余りうさ耳は激しく揺れていた


「ほう、其れでしたらカレン様、再び作成なさるなら私奴にも同じ物を作って頂けませんか?」


良い事を聞いたとシャイタンは愉悦に満ちた笑顔で提案をする

勿論主から無償で受け取る筈も無く、理由を付けて素材を大量に譲渡するつもりだ


「おっけ~」


そんなシャイタンの良い笑顔にも気付かずカレンは呑気に返事をしてしまう


「私奴も素材は幾つか所有してるので提供致しましょう」


シャイタンの時空掌握にはテリアの素材がまだ9割以上残っている

シャイタンとしては全てカレンに譲渡してもいいのだが生憎アシュリー工房に納まらない程なのでその都度シャイタンは意地悪も兼ねて小出ししている


「ありがとっ! 他にも市場で過去の素材探す事になると思うから明日早速一緒に行きましょ!! コレクション用に棚も幾つか仕入れないとね」


「承りました、これも逢引ですね」


「!?! もう、シャイタンさんの意地悪」


シャイタンとの逢引にも徐々に慣れ満更でもないカレンだった


これまで作成したコレクションは思いつくだけで500はくだらない

大きい棚をかなりの数地下工房に設置する事になる

そしてカレン自身気付いて無いが2回の逢引と良く市場に素材求めにシャイタンと2人で出かける事になれた今、シャイタンと2人での買い出しに自然と誘えるようになっていた。


「成程、では明日を楽しみにしております」


翌日、土曜日と幸いにもアシュリー工房は休日なので昼餉を済ませたカレンとシャイタンは市場へ行くと皆に伝えリリーに荷台を1つ繋げて商店街へと向かう。


事前に過去の錬成表から必要な素材をリストアップしてるカレンと、今日に限りカレンから毎月預かってる給金の利用を許可したシャイタンで市場を駆け回る算段だ。


始めに家具屋に行き予め把握したコレクション数に応じて組み立て式の2m程の棚を10個注文してアシュリー工房に届けてもらうよう頼んだ。

その後は錬金組合でリールー・エイシャにリストアップした素材を注文し残りはシャイタンと2人市場で交渉巡りの予定だ。


予めリストをシャイタンに見せると半数は所持してるとの事でそれだけで資金がかなり浮き、錬金組合では事情を説明されたリールーが呆れながらもリストの更に8割が丁度組合に予備があるとの事で星金貨13枚と金貨670枚と銀貨320枚で購入が済んだ。


残る素材は28点


「さぁシャイタンさん! 残りの28個は用途は限られるけどそれほど珍しい物じゃ無いから市場に有ると思うから探しましょ!」


うさ耳と共に気を新たにカレンが意気込み


「はい」


シャイタンも続く


こうして市場巡りが始まったのだが……市場では交渉が当たり前なのにカレンときたら値札のまま交渉も無しにひょういひょい買って行く。更に目移りして他の素材までものほしそうにシャイタンに視線で訴えるがそちらは却下された。


幸い今のシャルマーユは商人の集い場で目的のリストの素材はシャイタンの手持ち・錬金組合・市場で全て揃った。

かかった費用は星金貨15枚・金貨805枚・銀貨20枚・銅貨84枚だった。

元々テンゲン大樹海で作っていたコレクションはコボルトの仕入れた安い素材ばかりなのでこの出費でなんとか抑える事が出来た。


夕刻、帰宅する頃には注文していた棚もアシュリー工房に届いており、明日からシャイタンに組み立てを頼み、カレンは早速過去のコレクションの錬成に取り組む。




更に翌日


幸いな事に一度は錬成し錬成表もあるので凄まじい速度で過去のコレクションを錬成してゆき、その都度シャイタンに効果を説明し、シャイタンは「それは素晴らしい」と何度も繰り返す


既に棚は設置済みでシャイタンへの説明が終わるたびに1つ1つ新設された棚に過去のコレクションが並んでゆく

シャイタンへの説明もあったので丸5日掛ったが7日目


地下工房には中央にそれっぽい陣・隣に大規模錬成台と小型の錬成台・隅に姉からの贈り物(神器と聖遺物の山)・贈り物の隣にコボルトが発掘してくる神界の最希少宝石の緋緋色金、幻獣界の最希少宝石の宝珠、天獄の最重要宝石の死生結晶の山…そして


新たに設置された10個の大きい棚にはカレンの際物コレクション550個が並んでおりその様を見てカレンは恍惚としていた。


「ふへへぇ~♪」


自慢のコレクションが煌びやか? に並ぶ様に自分の力作の山に埋もれて大満足のカレン

しかも550個のコレクションをもう一組作ってシャイタンに送った所、お礼にと最希少素材を山の如く貰い大大大満足の結果だった。


コレクションに囲まれて満足気なカレンと鉱石に囲まれて優雅に暮らすコボルト、似たり寄ったりだった。


「そうだ! コボルトじゃないけど此処に椅子を設置しましょ」


益々コボルトに似通った発言を零すカレンだった。




アシュリー工房-売り場-


「へい、いらっしゃい・・・っと、イスマルの旦那じゃねぇですか」


「どうもどうもコボルトさん」


イスマル

かつてカレンが一週間の罰として露店を行た際に隣接された露店商でカレンは内心ででっぷり店主と呼んでるがアシュリー工房開店後暫くしてイスマルも常連となっていた。主に弁当と果物が購入のメインだが


「今日はどういったご用件で?」


商売の話と踏んで備え付けの机に案内して2人して腰掛けると早速イスマルが主題を切り出す


「いやぁ~此処アシュリー工房のお陰でうちの商店も大儲かりで大助かりなんですが、今日はちょいとさらに踏み込んでみようかと思いまして」


アシュリー工房で取り扱う各種ポーションは戦闘職には必須なので今では他領地に限らず他国からも此処ルルアをホームにする徒党が後を絶たず、当然武具を取り扱うイスマルも濡れ手に粟で大繁盛だ。


そして更なる儲け話を持ち掛けるその様はでっぷり店主らしくその表情は悪巧みが丸判りな表情だった


「へぇ・・・まぁ、名無し、お茶を頼む」


下位妖精と入れ替わりで最上位妖精が加わったが此方も名前は無い様で名無しで統一されており妖精が「あぃあぃ~」と気楽に奥から茶器と茶葉を運んできてコボルトが茶を煎れイスマルを歓迎する


「それで踏み込むってのは?」


商談にコボルトは抜かりなく商人の目付きで詳細を尋ねる


「工房主の嬢ちゃんはわかんねぇがあんたコボルト種だろ? 加工の腕も相当なんじゃねぇですかい?」


「まぁこれでも加工技術は最上位なんで大抵のもんはできやすが・・・」


カレンも加工技能は持ってるがそちらはまだまだ発展途上でランクAだがコボルトの場合種族本能の関係で下位にして既にランクSSでこの星のものなら大抵のものなら加工できるしその完成度は超一級品だ

但し流石に各界の最希少宝石の緋緋色金・宝珠・死生結晶は手に余るが


そんなコボルトの返事に良し来たっ! とばかりに手を鳴らしイスマルが話を進める


「そこでだ。うちの型落ちの剣や鎧をコボルトさんに再加工してもらって再販売ってのはどうですかい?」


武具にも当然流行り廃りがある

新商品や元の素材の経年劣化等々、武具屋は型落ち品は半値以下で叩き売るか鋳潰すのがセオリーだがコボルトの手直し品となればむしろランクが上がるとイスマルは画策していた。


「う~ん・・・俺っちは剣の良し悪しなんて判んねぇからなあ」


イスマルの意気込みとは反対にコボルトは乗り気では無い

理由は武具の知識も無ければ興味も無いからだ、それでも加工するなら手は抜かないがどうしても武具となるとコボルトは一歩引いてしまう


「其処は任せてくれ! コボルトさんが加工した剣を俺が適正額叩き出すんでどうだい?」


イスマルの申し出は素直に助かる

アシュリー工房では武具は扱わない方針なのだ


それでもコボルトは難色を示す


「ふむふむ、しかしそれをやるとなっちゃ本業の時間取られるからなぁ、月に一度が精々ですぜ」


コボルトの卓越した加工技能なら一日でも相当数の再加工が可能となる


「それで充分ですぜ! 明日早速型落ちの剣や鎧と加工用の道具諸々持ってくるんで互いに儲けようじゃないか!」


出されたお茶を飲み干し一足早く商談成立を手を差し伸べるが肝心の話がまだなのでそこをコボルトが攻める


「う~む、一月に一回の作業ねぇ・・・利益の分配率は?」


「元は型落ち品なんだ、ここは均等に50%ずつでどうだい?」


武具の再加工の利益などコボルトには判らないが50%なら均等とコボルトも納得しイスマルの差し出された手を握り返し商談成立となった。

商談証明書にも双方記載し終え互いに武具の話へと移り変わる


「よしっ。商談成立だ!」


こうしてコボルトは着々と商売の掌を拡げてゆく



幻神歴2961年2月01日


この日はアシュリー工房による月一の楽しい給金日

朝餉にコボルトが均等に分配するが先月は祝日があって男性から女性への贈り物として香水が好まれいつも以上に売れたので平均より今月は給金が上がっている。

それに加えて遊技場の感化でアマネの作物と茶葉も客層が増え此方も大いに繁盛している。


「それじゃ分配するが先月は例の祝い事で大儲けだったからな、経費や雑費引いて1人約星金貨18枚・金貨800枚・銀貨352枚・銅貨605枚だ」


各自の取り分は大硬貨袋に予め納めて皆に分配する

大硬貨袋の中身は星金貨の袋・金貨の袋・銀貨の袋・銅貨の袋と小分けされている


そしてカレンにのみ伝えてるが今やアシュリー工房は他地方からの遠客も多く、他国の通貨での支払いも受け取っているのでそれも予め換金商でシャルマーユ硬貨に換金済みだ。


「おお~大儲け出来たわねっ」


袋を受け取ったカレンはホクホク顔で硬貨袋に頬擦りするが…悲しい事になれた今、早速硬貨袋の半分をシャイタンに預けていた


「大金ね~」


アリスは食事の手を止めずに平たく感想を口にしていた


「ありがとうございますぅ」


「感謝する」


「有難く頂戴致します」


アマネ・シャイタンは両手で甲斐甲斐しく受け取り、フラミーは硬貨袋に紐を通しフラミーの首にさげられる


「今回はそれだけじゃねぇ、おいカレン」


いつもならこれでお終いなのだが、今回は更に大事な話がありそれをコボルトが切り出す


「ん? なに?」


「おめぇ古酒や香水今まで以上に大量に生産できるか?」


古酒は値段的にあまり売れないので各種10本ほどの備蓄で香水は植物によってまちまちだがそれでも各種20個そこらの備蓄となっている。どちらも日持ちする物なので倉庫にはまだ在庫が眠っている


「それは出来るけど・・・なに、店舗の品が切れかかってるの?」


「そうじゃねぇ、昨日商業組合から派遣されたキャラバンの頼れる行商人の提案でな、香水と古酒も卸したらどうだって提案受けたんだ」


商業組合のジードに頼まれたキャラバンサライへの卸しに派遣された2人の頼れる行商人の提案でポーションや果実以外にも日持ちのするちょっとした高級品に古酒や香水も仕入れたいとコボルトは頼まれたのだ。


「ん~毎日どれ位?」


カレンの平日の日課は起床後朝餉の支度と数量限定弁当100個を作り、前日にコボルトから聞かされた品切れの品の錬成。それも午前中で終わるので午後は丸々研究or姉とシャイタンとお茶となっている。

コボルトの要望数が多いとその日課が変わってしまうと懸念するが


「古酒が15種類各50本と香水は各種多ければ多い程いいそうだ100個ぐらいか、どうだ、出来そうか?」


「それ位なら夕餉の後に弁当の仕込みと一緒にささっとできそうね。おっけ~」


午前処か弁当の仕込みと同じ感覚で錬成できるカレンだった


「んじゃ決まりだ。5日から毎日朝に仕入れに来るから頼んだぜ」


「ねぇ」


話は終わったがまだカレンの興味は尽きてない

コボルトの元に給金とは別の硬貨袋が2つあるのだ


「あんだ?」


「それはいいけど、そっちのやたら大きい硬貨袋はなに?」


「ああ、こいつは遊技場の売り上げとイスマルの旦那の依頼金だ」


イスマルからの依頼は月一だが二級品や型落ちの武具をコボルトが見事に加工してのけ現役でも使える一級品となって蘇りその売り上げの半分がコボルト個人に渡った。


事前にイスマルの依頼と遊技場の売り上げはコボルト個人の取り分でいいとアシュリー工房では決まっている


「すっごい量ね・・・ちなみに幾らぐらいあるの?」


大硬貨袋2つに興味津々でカレンはうさ耳をピコピコさせ尋ねる


「イスマルの旦那の依頼金は金貨850枚だが遊技場の売り上げはおめぇには言いたくねぇ」


一級品の武具となれば折半で金貨800枚は余裕で行く、が・・・遊技場の売り上げはカレンには伝えたくなく珍しくそっぽを向いてしまうコボルトだった。


「なによそれ!? きっといっぱい儲けてるんでしょ、少しぐらい貸しなさいよっ」


大金と睨んでうさ耳を激しく揺らしながら貸してとせがむカレンにこれだから言いたくないんだとコボルトは溜息を零す


「はぁ・・・だから言いたくねぇんだ」


そんな折シャイタンが会話に混ざる


「ふむ、ティターニアが専用遊技場外でも途轍もない額がやり取りされてると大喜びで言っていたな」


「妖精達も喜んでおられましたな。オェングス様にまた良い話が出来そうで何よりです」


フラミーも上司の友神たるオェングスとは親しいので素直に喜ぶ


「ん~遊技場ねぇ、私も気になるから犬、正直に吐きなさい」


そして……アリスにまで興味を持たれたら正直に吐くしかないとコボルトはボソッと呟く


「・・・・・・星金貨で80枚ほどだ」


「「!?」」


ただでさえ聴覚のいい姉妹兎はその金額に驚きあわあわと震えている


「専用遊技場だとそれ以上なのだろう?」


シャイタンが更に先を切り詰める


「ああ、そっちは星金貨数百枚が飛び交ってるがそっちは商業組合長とシャナード様の領分だからな、俺っちは関与してねぇ」


専用遊技場のリスクリターンは商業長と領主で決め、今や接待で星金貨が飛び交う程でシャナードとしては貴族の接待として最高の舞台と二重の意味で大喜びだった。


「ほ、星金貨80枚ってアシュリー工房の月の売り上げに匹敵するじゃない! 嘘つき! ローリスクローリタンの銀貨数枚での遊戯って言ってたじゃない!! ずるい! 私にも分けて」


気を取り直したカレンが正論を説くが後半自身の欲望駄々洩れだった…


「嘘じゃねぇよ、入場の際に身分証で確認してるし一度の掛け金の最高額の銀貨2枚は守ってる・・・んだが、陛下が直々に建造したルルア公共のカジノってことで凄まじい客入りなんだよ」


元々は赤字経営も覚悟してたのだが陛下が建造、そしてシャルマーユ初の戦後公共遊技場、おまけに人員は皆妖精とあってシャルマーユ中から貴族から小金持ちまで押し寄せ大盛況でローリスクローリタンですら一月で維持費を除いて星金貨80枚の売り上げとなった。


「そうなの?」


「おう、遊技場の客目当てに更に宿の増設が計画されるぐらいにはな。最も遊技場の利益は維持費とトントンの計画だったんだがおかげさんで大儲けになっちまったって訳よ」


今でさえルルアはアシュリー工房のお陰で移住民が爆発的に増えてるのに遊技場がトドメとなっていよいよ領主も公共区を売り払い宿の乱立となっており、コボルト&フェアリー遊技場の周囲には高級宿から中層の宿が既に建造されている


「いいなぁ・・・」


カレンが心から羨望の呟きを零す、その呟きを聞いてコボルトが一計を立てる


「そうだ、丁度今日給金日だし皆でちょっくら遊技場行ってみるか?」


コボルト&フェアリー遊技場は夜の8時から日をまたいで4時まで営業しておりアシュリー工房の面々でも就業後遊べるようになっている


「「賛成!」」


「ふむ、俺もいいだろう」


「私も賛成ですぅ」


「私は何分この姿なので留守番を」


こうして今日の夜、フラミーを除き皆でコボルト&フェアリー遊技場へ向かう事になった

ティタニーアに歓迎され専用遊技場に案内された一向


アリスは文無しなのでシャイタンに星金貨100枚貰い、その際シャイタンにカレン様の逆の眼を張ると面白い事になるでしょうと助言を貰った。


そして始まったアシュリー工房の面子の遊戯

賭けた競技は妖精による的当て競技、此処コボルト&フェアリー遊技場の最も人気の競技だ


結果はカレンは毟る散られ文無し・アリスとシャイタンは大儲け・アマネは金貨20枚の勝ち

コボルトは責任者なので参加はせず、ただカレンがいい鴨だとティターニアと共に目を付けた。

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