73話 驚く錬金術師
幻神歴2960年07月17日
ミスキア地方最西部の僻地テルランド
世界三大魔境の1つで只管に広大な荒地が拡がる其処には上級、最上級の魔獣が跋扈しており幾つかの廃棄された砦には国が危険視してる最低でも3000人は所属してると予想される犯罪組織も潜んでおりミスキアの首脳陣を悩ませていた。 いや・・・正確には潜んでいた
そんな危険個所にて本日何百回目かの弩級の爆発音が轟く
魔法に通じる者がこの光景を見ればこう思うだろう「何処の国と戦争してるんだ!?」と
何せ半刻程前から轟くその魔法の数々は戦争時にのみ使用許可されているありとあらゆる戦術級魔法のオンパレードだった……
そんな常識が通じない3人は上空で集合して各自満足気に結果報告する
「シャイタン~フラミー、こっちは167個用意できたわ」
「私奴は335個程用意出来ました」
「ふむ、私は600個程用立てました」
「シャイタンもだけどフラミーもすっごいわね」
数もだがフラミーの手際が余りにも良すぎてアリスがつい見惚れていた程だった
「いえいえ、以前にも申した様に私は魔法は不得手でして、得手不得手が激しいのですよ。ただこの星の戦術級魔法程度ならなんとか行使できるので後は権能の応用ですよ」
破壊の権能を有するフラミーにとっては正にこの手の行為は得意分野だ
重大な条約違反を平然と破って各々が蒐集していたのはガスタル結晶だった
その戦果はガスタル結晶1100個と国家間大規模戦争時並みだ。被害は三大魔境の1つがクレーターだらけとなって全ての砦は見事に討滅し名も出なかった犯罪組織は文字通り全滅しあらゆる魔獣は死滅と惨憺たる結果だ。
「他の素材についてはテリアの蒐集品で幾らでもあるのでこれでかなりの数は挑戦出来るかと」
目的の品の他の素材はかつての剣聖との契約で得たテリアの錬成品でシャイタンの時空掌握に数えきれない程ある。
「そうねっ! 今回もカレンと合作で大規模錬成台で凄いの挑戦してみるから期待してなさい」
アリスがうさ耳をピンッと立たせ慎ましい胸を反らせる
ガスタル結晶で錬成・・・そう、以前シャイタンがルードの情報から得たカレンのノウス(本人は名も忘れた)の大量生産や改良、更には雪以外の様々な気象兵器を創ろうと3人は結託してこの奇行に及んだ
・・・・・もっとも当の本人は酒の残りで覚えて無いが緘口令破って普通に陛下の前でアリスとシャイタンに話していたのだが
「はい、それはもう心から期待しております」
気象の類の権能を有さずとも代償も無く気象を操れる魔道具等、心底愉悦を満たす神器の完成にシャイタンは心から期待していた。
「私も期待しておりますので是非頑張ってください」
シャイタン同様にフラミーも同じく犬顔でも判る程笑っていた
土曜日の夜
アリス達3人は用事があると言って出掛けたので折角の休日を満喫しようとカレンとアマネは日課の街へ食べ歩きのデートへ、コボルトは今日は午前は北鉱山、午後からは西鉱山の発掘へと大忙しだった。なにより西鉱山では未然に鉱毒汚染防止をコボルトがしたため両鉱山でコボルトは尊敬されている。
本来コボルトの採掘権は北鉱山だけなのだが西鉱山でも例の3種が発掘され、またコボルトで無いと発掘できないとあって今では北と西両鉱山に入り浸ってコボルトは嬉しい悲鳴を上げている。
夕餉も終わり食後のデザートも済んだ所でアリスが話を切り出す
「カレンカレン、以前話してた雪降らす魔道具。あれの追加研究しましょ、それも大規模錬成台で」
カレンの腕にしがみ付きアリスが可愛くおねだりする・・・最もそのおねだりの内容は国の首脳が頭を抱える規模なのだが
「大規模錬成台で!? 是非やりたいです!! あっ、でも・・・」
姉が何故雪降らしの魔道具の事を知っているのか? そんな些細な事は姉と一緒に大規模錬成台で挑戦できるという事の前に吹き飛んで快諾しようとするが、うさ耳がピンッと立ったものの言葉尻と共に徐々に中折れに戻って表情に影を落としてしまうカレン
食卓を囲う皆アリスの発言に期待して胸を膨らませるが、コボルト唯一人だけ厄いネタに無言で頭を抱えてしまう
「ん? どしたの?」
「あれの錬成陣の改良には素材が必要で、特にガスタル結晶は戦術級魔法の副産物だから滅多に手に入らないんです・・・」
星金貨10枚で売れた魔道具を、あの知的欲求を満たしてくれた魔道具の更なる追求をカレンがしない訳もなく、緘口令を出されようが関係無くカレンは追加研究を行っていたがガスタル結晶が手に入らず空論で断念していた。
上位の位に昇格してガスタル結晶を含む一部の禁制品、更に本人は知らされてないが最上位となった今殆どの禁制品が解禁されているのだが肝心のガスタル結晶が戦争時の副産物品なので納入の許可があろうが絶対数が少ないので基本公的機関に優先され個人だと先ず手に入らない、アシュリー工房は知名度と売り上げ数で大規模商店並だが、それでも個人商なので公的機関には及ぶべくもない
だが・・・そんな背景等関係無いとアリスは立ち上がり慎ましい胸を反らせてふんすと愛妹に宣言する
「ふっふっふ。お姉ちゃんを誰だと思ってるの? これを見なさい!」
予め予想していた妹の反応にアリスは時空掌握から本日の戦利品のガスタル結晶をせっせと取り出し机に積み上げる。
「こっ、これは!?」
姉の取り出した物が一目で何か悟ったカレンは興奮して立ち上がり姉妹してうさ耳は歓喜でふるふると揺れていた
コボルトはアリスが積み上げる厄品を見て(こいつどこぞで暴れたんだろうな)と一早く理解してもうどうにでもなれと古代酒で自棄酒を煽った。
「す、凄いっ! 凄い凄い!! ガスタル結晶がこんなに一杯!? どうしたんですか?」
「ふふ~ん。それはねー、お姉ちゃんとシャイタンとフラミーが頑張って集めて来たのよ。そう、カレンの為に!」
アリスちゃん妹想いですねぇ~というアマネの頓珍漢な感想を背にコボルトはこいつらも共犯かよ・・・と自棄に拍車をかける
カレンは勿論コボルトですら存ぜぬ事だがガスタル結晶の利用はどの職でも上位・最上位なら許可されているが入手経緯からガスタル結晶は下手な最希少金属より高額だ
だが・・・カレンはその価値等に興味無く、ただ素材として目の前のガスタル結晶を見ていた。
「が、ガスタル結晶を私の為にこんなに!?!? あ・・ありがとう。姉様、シャイタンさん、フラミーありがとねっ!!!」
感涙の涙を見せアリス・シャイタン・フラミーに其々抱き着いて歓喜を現すカレン
アリスとフラミーは御機嫌だがシャイタンだけ少し照れていた
「いえいえ、私奴もカレン様の魔道具の完成が心より待ち遠しいのでこれぐらいは協力させてください」
神の権能で気象を操る等幾らでもある。だが逆を言えば権能が無ければ神と言えど難しい、それをカレンの魔道具は代償無しで可能とする。それもさらに改良が見込めるのだ。シャイタンとヘルメスの期待は増すばかりだ
最近ではヘルメスも相手が永久評議神のシャイタンということも頭の片隅に置いて会いに行けば真っ先にカレンの資料を要求する辺り根っからの研究肌だった
「私は使い魔ですからね、仰ってくれればいつでもこれぐらいは」
フラミーは当初アシュリー工房で働く際に集客と資金集めが目的なら洗脳して人を集めようかと言葉を濁して先輩に打診したがその案は一蹴された。
「おめぇの気持ちは嬉しいがあいつのガラクタ以外の商品はれっきとした価値を認められた品だ。そんなことしないでも客の入りは上々だし、なによりだ。そんな手段使わないでもあいつの品は売れる。まぁ破産寸前になったら頼むかもなけけけっ」
このやり取りでシャイタンが先輩と認めるだけのある方だとフラミーも認めたのだ
「皆有難う! 姉様早速研究・・・あ、そうだった、天毛クウハイ・思念鉱石・学草キルルも必要でこっちはお金で買えるけど今物価めっちゃくちゃ高いからなぁ・・・・そうだっ!」
学草キルルはルルア渓谷で採取できるが今は魔獣が跋扈していて危険だ。最もアマネに頼めば余裕で豊穣できるのだが。そして今のルルアの物価は相場の何倍となっており懐に銀貨数枚とアマネの内緒のお小遣いしかないカレンでは先ず買えない、そこで閃いた。
「ねぇねぇコボルト様~」
コボルトに擦り寄り頭をこれでもかと撫でつけ猫なで声で金の催促をする
いつもならにべもなく一蹴されるが前回は星金貨10枚で売れたのだ。先行投資としては申し分ない筈とカレンは踏んでお金を借りようと必死だったが…前回の沙汰を覚えてるコボルトが貸す訳も無くやはり一蹴してしまう
「アリスが関わる以上もう何言っても無駄だろうから止めはしねぇが、おめぇに金貸すぐらいならギャンブルに突っ込む方がまだ有効的だ。何せ僅かでも帰ってくる確立が有るからな? つまり絶対貸さねぇ」
「カレンちゃんそれなら「アマネ?」
コボルトのきっぱりとした拒絶にアマネが顔をほころばせそれなら自分がと言おうとした所でコボルトに睨まれる
未だカレンへのお金の貸し出し禁止令は解けて無いのだ。
「あうぅ・・・」
「何よ! コボルトのケチッ」
アマネがしょぼくれしてまい、カレンはうさ耳を逆立たせて腹いせにコボルトの長毛をもみくちゃにしてると凄く耳通りの言い声か掛かる
「ふむ。カレン様、良い話があるのですが」
シャイタンがいつの間にか席から立ち上がっておりこれまで見た事の無いほどの笑顔でカレンに良い話があると言う
その笑顔には愉悦だけでなく覚悟もあった
「――――シャイタンさんのその意地悪顔でいい話・・・絶対碌な事にならないから聞かないわ!」
散々シャイタンに意地悪を受けたカレンは話を聞くだけで駄目だと判断してジリジリとシャイタンから距離を取りうさ耳を抑えて蹲る。
そんなカレンの様子にシャイタンはこれまたわざとらしく肩を落とし首を振ってフラミーに用件を使える
「左様ですか。ふむ、残念だ。フラミー折角主の為に用意したこの天毛クウハイ・思念鉱石・学草キルルは無用らしいから処分しておけ」
「はいシャイタン様」
シャイタンの意地悪顔にフラミーの犬顔でも判る意地悪顔。それでもシャイタンの台詞は聞き逃せなかったカレン
「ぇ? 待って。待って待って、い、一応主だからねっ話位は聞くわ」
うさ耳をピコピコと前後に揺らして言葉とは裏腹にシャイタンにしがみ付き聞く気満々のカレンだった
「おや、左様ですか。実はそこにあるガスタル結晶全てを研究し尽くす程の天毛クウハイ・思念鉱石・学草キルルがあるのですが・・・・」
普段のシャイタンの物言いと違い言葉尻が弱くなるがカレンは気づかず目の前のガスタル結晶を全て研究出来ると聞いて瞳を輝かすが、カレンも散々意地悪されて学んだのだ。ここで乗ってはならないと
「なんですって!? 是非欲し・・・はっ!? 危ないいつもの魔の手には乗らないわよ」
といいつつも頭上のうさ耳は正直でピコピコと揺れていた
最近ではアリスもシャイタンの細やかなカレンへの意地悪が微笑ましいと思う程になっていた
「魔の手とはなんのことやら・・・ただこれをお譲りするからかわりに多少の我儘を聞いていただけないかと」
「シャイタンさんの我儘・・・・非常に聞きたくないけど、一応聞くわ」
「では選択肢を3つほど。1番、この話は無かった事にしてこの先数ヶ月か数年か掛けて自力で素材を集めるか」
(まだまだ物価も上がるしそれは避けたいわね)
「2番、私奴に命令してこれらの素材を無償で受け取るか」
(そんな酷い事出来る訳無いでしょ)
「そして3番―――今度私奴に1日時間を頂き逢引して頂けないでしょうか?」
(・・・・・へ?)
当のカレンもアリスもコボルトもアマネもフラミーもその案に呆気に取られた
そしてアマネは薄々感じてはいたがこの提案でシャイタンがカレンに好意を寄せていることに確信した、そしてアリスが反対しないことからアリスも公認なのだろうと、なら大好きなカレンと友神のシャイタンの恋路を応援しようとアマネは決意する。
(シャイタン様はやはりこの手の事に不慣れの用ですな)
フラミーはシャイタンの意を汲んだ、このような選択肢を出さずともカレンのシャイタンへの様子から普通に誘えば色よい返事は出るだろうに少しでも否定の可能性を潰す為にこのような選択肢をだしたのだろうとフラミーは微笑む
数秒か数分、固まったカレンは顔を真っ赤にしてシャイタンに食って掛かる、うさ耳も照れから前面に垂れてしまう
「な、な、な・・・何その選択肢!? シャイタンさん酷いっ 一者択一じゃない!!」
「おや、という事は2番でしょうか?」
「そんなことできる訳無いでしょ。 ・・・さ、3番よ」
「―――本当に、3番で宜しいので?」
シャイタンがじっくりとカレンの様子を伺い恐る恐る確認する
シャイタンの胸の内は姑息な手だと自覚している、それでも少しでもカレンと逢引できる可能性を上げる為この手段を取った。結果は最上だ
「むしろシャイタンさんにしては驚きの提案で逆に驚きよ。でも、その、私でいいの? 魔力も無い、玉兎の私なんかとで? 人間みたいな逢引は出来るか判らないわよ?」
てっきりどんな意地悪かと思えば意地悪でも何でもない突拍子の無い提案だった
家族には玉兎は玉兎同士で無いと恋仲になれないとは伝えている、それなのになぜ玉兎の自分と逢引なのか?
シャイタンは男としては小柄でその中性的な姿形はぱっと見麗人と言えるほどの女性にもみえ、ずば抜けて容姿が優れていると言えるだろう。それでも自分で今言った様に照れや恥ずかしい等の感情はあっても恋愛感情は別物なのに何故なのか?
気になったがシャイタンの心からの笑顔にそれを聞くのは憚られた。
「ええ、ええ。勿論です。魔力の有無なんて関係なく、玉兎の、貴女様であるカレン様と逢引したいのです。それが心からの私奴の望みです」
心から一礼してシャイタンは感謝を告げる、無垢なカレンの事だ、逢引とはいえ普通のお出かけになるだろうとはシャイタンも心得てる。それでも逢引には違いないのだ
ゆっくり、それでも一歩を踏み出したシャイタン。
「はぁ・・・じゃ、じゃあ来週にでもやってみましょ」
シャイタンのこれ以上無いほどの上機嫌に気圧されてカレンは逆に落ち着いて来週の予定に入れた
そして最後にアリスが「折角の逢引だから相応しい服を用意したげる!」と意気込み、アマネは今から結果が楽しみだと胸を躍らせ、コボルトは余り関心無い様でおめぇらで逢引ねぇと一線引いて冷めていた。
「はい。心より楽しみに、来週をお待ちしております」
そして翌日、カレンは初めての逢引予定に胸をどきどきさせ眠れず、逢引でどんなことをしようかと考え・・・・・
てる訳も無く
地下工房で早速姉妹兎揃って雪降らしの魔道具(気象兵器)の改良・新造に着手していた
今更だがこの魔道具には緘口令が敷かれ口外・研究は即極刑だ
だが緘口令の重大さを知らないカレンと知っていてもどうでもいいアリスにとっては知的好奇心に勝るものなしだ。
「さぁカレン! 早速始めるわよ」
「はい姉様!」
「先ずは以前の雪揺らした魔道具とやらの錬成陣を見せてみなさい」
魔道具と錬成陣ごと販売したので以前の錬成陣を新たに構築するカレン
既にカレンの中では大規模錬成台を用いた改良の草案も出来上がっていた
「ええっと、ちょっと待ってくださいね。作成するので・・・・・はいっ」
アリスは以前述べたように錬金術の才は無い、精々中級ポーションと一部の曰く付き魔道具の作成が出来るだけだ。
ただ、それでも知識を修める事はソフィアに勝るとも劣らない程だ。カレンの提示した錬成陣を一目見て改良点を見つけ指摘する。
「どれどれ――――ふむふむ、成程・・・先ずこれの改良なら素材を足して大規模錬成台で2人でやれば完成しそうね」
「そうですね。私も既に幾つか案は有ります。でも他の雨とか風とか気温とかは素材の消費覚悟で試行錯誤するしかないです・・・」
「そこはそれ! 素材が無くなったらまたお姉ちゃんが蒐集してくるから先ずは今ある分で出来る事から初めてみましょ」
今ある分で満足できなければテンゲン大樹海がテルランドの如く消滅するだけだ。
「はいっ!」
そうして姉妹兎の研究が開始されたが全く予想外の事が起きてここ数日全然進展が無かった。
大規模錬成台でカレンのエーテル操作とアリスのエーテルを全力で注ぎこんでなんとか形だけは形成できたのだが直ぐに瓦解してしまうのだ。
効果が凄まじすぎて素材の強度が足りない、これには姉妹して頭を悩ませ既に素材の3分の1を消費していた
素材を足そうにも錬成陣の作り直しが必要だし、現存する最高硬質の貴金属でもとても耐えられそうにない
加工組合でカレン自身が錬成可能な範囲で最硬質の合金を取り寄せ試しても結果は散々だった
そんな折、カレンは閃いた、閃いてしまったのだ
「ねぇ、姉様? このコボルトが発掘した石、えっとひひいろだっけ? これ素材にしてみたらどうかしら? なんか物凄い固いって言ってたし」
「!? そうだっ! それがあった、さっすが愛妹その閃き素晴らしいわ!」
緋緋色金は神界でのみ採掘される最重要金属で主な神器の素材となる
そんな神の遺物を人間がおいそれと扱える訳が無いのだが・・・そこは阿呆と天才と天災を兼ね合わせたカレンと天災と天才によるアリスの姉妹合作で2日で当初の雪降らしの魔道具の錬成陣が完成した。
ノウスの5倍ほどの大きさの完成予定図で効果は・・・語るまでも無い
早速姉妹揃って大規模錬成台で錬成する
そして見事成功、姉妹して抱擁して喜び合い姉の提案で同じものを後3つ創って1つはコレクションに、もう1つはシャイタンに、そして後の2つはお爺さんの様な上客用に高値で売ろうという姉の提案にカレンも快諾した。
基礎さえ完成すれば改良は2人にかかればお手の物、雪降らしだけでなく合計8個の魔道具(気象兵器)が完成した
その日の夕餉、姉妹合作の完成の報告にコボルト以外は大喜びでコボルトは「効果は聞きたくねぇから言うな」と無視を決めこんだ。
そして夕餉も終わり、コボルトは帳簿を付けに自室へ、カレンとアマネは大量の食器の後片付けに
アリスはというとシャイタンとフラミーを連れて地下工房へ
「じゃじゃ~ん! どうよ!! カレンと合作して大規模錬成台で創ったから効果もぶっ飛んでるわよ」
アリスが自慢気に披露するがアリスがぶっ飛んでるというだけでどれ程か想像もできない
「それは重畳で御座います、して同じものが4つ8種あるようですが?」
「ふふ~ん。雪降らしだけじゃなくて色々な天候を操る魔道具もつくったのよ・・・・チョットヤリスギテツカイヅライケド」
「使いづらい? と言いますと?」
『あの』アリスの非常に小さい言葉尻に興味が勝りシャイタンは尋ねる
「え、えっとね~――――――――――――――って訳」
その可愛い口から発せられた内容は大悪神2柱を絶句させた
「な、なんと・・・この8種全てそうなのですか!?」
「ええ、私はエーテル流し込んだだけだけどカレンの発想力と着眼点はまさに『発明』ね!」
「それはまた予想を遥かに超える品を・・・私奴もですがヘルメスも狂喜乱舞する様が目に見えるようです」
「いやはや魔道具でこれは明らかに度を超えてますな。どうでしょう、カレン様は魔道具に名は関心無いようですがこれからはカレン様の発明品は魔道具ではなく魔を導く道具、という意味を込めて魔導具と銘打っては?」
魔法を極めれば魔導となる、フラミーはカレンの魔道具にそれだけの真価があると見越しての提案だったがアリスもシャイタンも妙案だと乗り気だった。
「魔導具・・・良いわね! フラミーナイスよ。それでいきましょ!!」
「それでアリス様、お約束通りこれらを各種1つずつ頂いて宜しいのでしょうか?」
「ん? 勿論よ。素材の蒐集にお前達も手伝ってくれたしね。各一種はお前達に、もう1種はカレンのコレクションに、そして残りの2種はあの常連に売るつもりよ。これで少しでもカレンの名が上がるといいなぁ」
「これ程の魔導具、アシュリー姉妹のさらなるご高名を高める事になりましょう」
こうして地下工房では3つの影が妖しく揺らめいていた
一羽は妹の喜ぶ様に高揚し、大悪神2柱は極上の愉悦の笑みを浮かべていた…
 




