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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
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07話 震える錬金術師

幻神歴2958年02月07日


薬学組合ルルア支部内 組合長室


カレンが商業組合にも加入を済ませて3日が過ぎた頃、この日、薬学組合の組合長室では普段では考えられない喧噪(けんそう)に包まれていた。


「このような品一個人の商店で取り扱う品ではないだろう!!」


勢い撒いてるのは薬学組合長のレイシス・クエト。

レイシスの前の席には錬金組合長のバージル・ギブソンが、そして2人の中央上座に座っているのはルルアを治める領主シャナード・ガル・ルルア・ゲイツという重鎮のみの緊急会議だ。


「それは理解している…だが実績として提供されない限り組合が口を出せんのも理解して頂きたい」


この緊急会議を開いたバージルも状況が芳しくなく、打開策も無いので苦々しくその場凌ぎしかできずにいた。


「それ以前の問題ですぞ。エーテルの回復などと知れ渡れば他国の引き抜きは間違いなくありましょうぞ」


シャナードの言う通り今回の会議の原因のエーテルポーションは何処の国でも喉から手が出るほど手中に収めたい逸品でその対応策を練るのが今回の会議の目的だ。


「そうだ! パラミスの馬鹿貴族共に知られてみろ、引き抜きかそれが無理でも独占契約して軍で使用されるぞ」


「その場合矛先は間違いなくシャルマーユでしょうな」


レイシスの言葉にシャナードが頷き最悪の想定を口にする

実際エーテルの回復など戦争の形態を変える程の存在なのだ、どこの軍でも前衛が衝突し合い後衛の魔法職が戦術級魔法や召喚獣等の使役獣で雌雄を決するのがセオリーだが一方の軍にエーテルポーションが常備されていた場合その決め手となる魔法を打ち放題という一方的な展開になるのが明白なのだ。

例え強国のシャルマーユといえど、パラミスという中規模の国の軍相手でもエーテルポーションを常備されては戦況が引っ繰り返りかねないのだ。


「やはりこの品は国が管理するべきだろう、下手に他国に渡れば文字通り戦争の火種になるぞ」


「粛清前の馬鹿貴族のように権力で無理やり…などと愚行と言ってられんな、最悪その案も考慮するができれば穏便な解決策を取りたいのだよ。折角の見込みのある若い目を摘みたくないのでね」


レイシスの言葉に今度はバージルが続くが其処には自身への皮肉も含まれており最後の手段としては自身でも愚策と謗る手を取るが可能な限りそのような手は避けたい、これはこの場の3人も同じ思いだ。


「やはり販売権ごと組合が買い取るのが一番では?」


「それこそ無茶というもの、一体星金貨何枚で買い取れというのだ? 貴殿らがこの品を売るとして星金貨何枚求める?」


端から無理と判っての提案だがバージルの問いに誰も返答できずに場は沈黙となる

自身がこの品を手にして販売権を売ってほしいと言われたら―――星金貨数千、万の話になるだろう

当然そのような額を一支部で動かせる訳も無く、領主なら可能だがやはり一領主が抱えるには政敵からの攻撃の口実になってしまうので不可能だった。


余談だがこれはこの場の重鎮3人がこの品の重要性を理解し、カレン・アシュリーのことをまだ理解していない事から互いに大きな齟齬が生じていた。

星金貨数千、万も妥当の品だが当のカレンは金貨数百枚も貰えれば二つ返事で販売権を売るのだが、そんな事予想できる筈も無く重鎮3人は頭を悩ませているのだ。


「ううむ・・・いっその事販売形態に条件を付けて此方で完全に管理するのはどうだろうか?」


「価格と販売数の制限か? 普段ならそれで解決だが品が品だけにかなりの制限を設けなければならないぞ」


独占禁止や市場独占防止の為の策でこれを設けた場合当然見返りも用意しなければならないのだがこれ程の品を制限掛けた場合の見返りも相当なものとなりこれといった見返りが想像すら出来ない一向


「制限に対する見返りか・・・」


「そういえばこのエーテルポーションといったか、この製作者はどのような人物なのだ? 組合に加入したばかりとしか聞いておらんぞ」


少しでも情報を得て見返りの参考にと製作者についてレイシスが訪ねる


「うむ、担当員となったリールー君の話では長年テンゲン大樹海で隠居生活をしていたせいで世俗に疎く、20代の女性錬金術師でなぜか幻獣のコボルトの相方がいますな。本人の能力は当然まだ未知数ですがエーテルポーションに加え、強制没収となったが魔道具の類の制作にも知識があるようで幾つか珍品の錬成品を持参しておったよ。最も名品ではなく迷品の類だったがね」


リールーに独断で没収したと幾つかの魔道具を手に謝罪されたが内情を聞いて呆れはしたもののリールーのできれば衛兵に内密にという願いに頷き組合への実績公表という形で処分となったがその錬成品の品々は効果だけ聞けば素晴らしいの一言だが副次効果が出鱈目で、やはり一癖も二癖もある研究職の片鱗を垣間見せる珍品だった。


「コボルト殿については当組合でも把握している。というか手土産持って挨拶にこられたぞ、最近越してきて工房を構える予定ですので今後末永くご贔屓に。と丁寧なコボルト殿だったよ。どうやら其々の組合に同様に挨拶に回ってるらしい、良き幻獣殿だ」


応対したのはレイシス本人では無く受付員だが、そのような事付けを預かったと知らされ良き商人のように目敏い人格者の幻獣だと薬学組合内の一部では既に噂になっている程だ。


「世俗に疎い・・・か。なら素直にこのような条件を出してみてはどうだろうか?」


・・・・

・・・

・・

・・

・・・

・・・・


「確かにそれなら我々の憂いは無くなりメリットしかない提案だが・・・」


「幾ら世俗に疎いとはいえ、商人を目指している以上は流石に見返りが少なすぎると断られないか?」


「それなのだがリールー君の話を聞く限りどういう訳か主導権はコボルト殿にあるらしい、そこでだ。このような条件を加えてみてはどうだろうか?」


・・・・

・・・

・・

・・

・・・

・・・・


「なるほど! 名案ですな。私はそれで異存ありませんぞ」


正にこの状況を打破する打ってつけの内容でこれなら双方に利益があるので問題無くこれで契約できる名案と3人は頷き合いこれで話を進めていく


「確かにそれなら受け入れてくれそうだな。そうとなれば善は急げだ、薬学組合としてはこんな逸品見せられては組合員に発破をかけてエーテルの回復を視野にいれた研究を始めたい」


「加工組合への出費は合同という形で、根回しは頼みますよ」


「承知しましたぞ。それでは吾輩はお先に失礼しますぞ、色々と手配が必要なので」


「宜しくお願いします」


「―――しかしエーテルの回復か、そのような事着目したことも無かったな」


何百年も前からエーテルについて研究はされているが成果は芳しくなく、正直未だ未知に近い力だ。

当然体力と同様にエーテルの回復も研究されていたが不可能と判断され既にエーテルの回復は魔力同様に一部の召喚獣の力しかあり得ないというのが常識で、生まれた時からそれが常識とされる現在ではそこに目途を付ける者は馬鹿か天才のどちらかだろう


「私もです、先見の明があるといいましょうか、久々の有力な組合員の加入に喜ばしい限りです」


「正直羨ましいよ、うちの組合員は何を勘違いしてるのか錬金術師を下と見下し近年は技術の昇華が疎かになっているからな」


其処には組合長レイシスの顔は無く、1人の薬学職人がおり本音を零し


「これを機に互いの組合がより良い技術の発展を遂げる事を願おうではないか」


やはり組合長ではなく、1人の錬金職人が思いを熱く語る姿があった。



この場に集まった3人、役職も身分も異なる。

組合長は貴族ではないが全組合組織が国営に変化してからというもの、同等の発言権を有するがそれでも本来だと領主程の大貴族相手に公の場ではこのように気軽に意見の言い合い等不可能なのだが、長年ルルアを支えているシャナードは各組合長とより良い町の為にと交流を大事にする有識者で何度も食事会等催しており世間の眼が無い所ではこのように気軽に接しても気にしない大柄な人物だ。


今回の会議も最後までカレンの身を考慮しての話し合いで誰もが我欲に堕ちることなくルルアひいてはシャルマーユの為にと議論を交わし、カレンの預かり知らぬ所で後にこれが英断と首脳部に認められ、3人は莫大な恩賞を賜った。




幻神歴2958年02月11日


商業組合加入から一週間後


コボルトは一刻も無駄にできず、市場を駆け回り関係要所に挨拶周りに余念を欠かさないという駆け出し商人そのものの活動振りで、ルルアまでの道程で採取した花畑の植物を腐らせないよう、酒場で親しくなった酔っ払い魔法師に泥酔中の所へ特上蒸留酒を奢る条件で活性化の魔法を行使してもらい三か月はこれで保てるようになった。

これは予想より錬成台の入手が先になりそうなので素材を無駄にさせたくないコボルトが一計を案じたのだ。

普通に魔法師に永続化や不懐の魔法の行使を頼むと大金が必要だが、それに比べると活性化なら各段に安いので特上蒸留酒で双方が得する結果となった。


そんな勤勉振りとは逆にカレンは宿に引き籠り怠け切っていた。



エーテルポーションの値段の査定が終わるまでスピカ亭での宿代の心配が無用となったことで、宿で食っちゃ寝と引き籠り生活を満喫していたがそろそろ錬成欲も沸々と沸き起こりどうしたものかとベッドの上で寝転がりながらやるせなさを持て余しているとコボルトが吉報を運んできた。


「おいカレン! さっきリールー嬢さんに市場でばったり出くわしたんだがエーテルポーションの値段が決まったから組合まで来てほしいとよ」


「ほんと?! これでやっと進展があるわね。一緒に行きましょう」


ポーションの代金を含めて今後の活動を計算していたのでこの一週間碌な活動もできずにいたのだ。

錬成の要となる錬成台など大きな荷物を活動拠点に置かない事には錬成できないのでそれが進展するとなり、カレンは手早くローブを纏い準備を済ませコボルトと2人して錬金組合へ向かう。



錬金組合に着き中に入ると受付に居たリールーが此方に寄ってきて挨拶を交わすが、リールーの様子が普段と異なり緊張の面持ちだった。


「カレンさん、コボルトさんようこそ。お待たせしてしまい申し訳ありませんでした」


「いえいえ、お構いなく」


「平気よ。それより早速話を聞かせてもらえる?」


コボルトが一早くリールーの様子に気付き遅れてカレンも気付くが先ずは話を、と先を促すと2階の加入手続きを取った部屋へと案内され少し待ってほしいと言われリールーが離れて暫くすると厳かな小箱を手に戻ってきた。

中身の受け渡しと同時に組合長から厳命された事を肝に銘じて心持ちを新たに接する。


「お待たせしました。まず、エーテルポーションの買い取り代金ですが、単価金貨8枚でそれが179本で合計金貨1432枚、此方になります」


「「1400?!」」


小箱が開けられ中から1000枚はとても収まっていないだろう硬貨袋を取り出しカレン達の目の前に差し出す

金額を提示してからさり気なく2人の様子を伺うが驚愕の様子で固まったままで怒ってるのか喜んでるかまだ判断できない


組合長からの命令でこのやり取りで2人の機嫌を損ねること無く無事に契約証に署名してもらうよう機微に対応してくれと何卒頼むと組合長自ら命じられておりリールーは2人の様子を余すことなく観察する


一方カレンとコボルトの2人は予想外の莫大な金貨の枚数に度肝を抜かれ放心していた

2人の思惑ではエーテルポーションは中級のポーションに毛が生えた程度の産物で精々金貨50枚もあれば儲けものと事前に話し合っていたのだがまさかの予想金額の20倍以上の額に2人の脳の処理が追い付かずにいた。


金貨1400枚となれば一般家庭の親子が一生働かずに暮らしていける大金だ。

当然そんな大金が転がり込んだのだから2人の妄想が暴走するのは仕方の無い事で驚愕の表情からじっくり数分掛けてアイマスクの上からでも一目で理解できる程のにやけ顔をリールーは確認してこれなら大丈夫かと続きを促す。


「それだけの価値のある品ですので。ただ…それだけに販売には組合の協議の結果制限が課される事となりまして…此方がその制限についての詳細となっております」


小箱から続いて持ち出された2枚の羊皮紙ではなく高品質な紙を2枚カレンに手渡し、カレンも無自覚に書類に目を通すが内容は全く頭に入っておらず、先の金貨で錬成素材を好きなだけ買い込む妄想の最中だった。


そんなカレンとは異なり制限と聞いて現実に一早く戻ったコボルトは横からカレンの手にある書類を覗き込む。

2枚とも全く同じ内容だ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


エーテルポーションの販売価格は金貨15枚とする事


特定団体の纏め買い防止の為週に25本、1月に100本のみ販売し、生産数を厳守する事

※月末に売れ残ったエーテルポーションは錬金術教導組合が責任をもって在庫を買取価格の単価金貨8枚で買い取る


シャルマーユ皇国及びルルア領主の正式な要請があった場合は優先して生産し、また単価金貨8枚で提供する事

※この条件に限り生産数の制限は無し


ルルアを出る際は錬金術教導組合に事前に伝え、一か月以上離れる場合は錬金術教導組合の許可を得る事


~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「金貨15枚?! 冗談じゃねぇ! そんな値段じゃ一般人が買える訳がねぇ、これじゃ実質組合への卸売じゃねぇか!」


書類を引ったくり二度見して内容に間違いが無いと確認して漸く制限の意味を理解して憤りリールーに詰め寄る。

国や領主の要請云々の下りに異存は無いが価格設定がコボルトには出鱈目としか思えず、体のいい組合の卸買いを疑う程だった。

この一週間市場を駆け回り、ポーションの相場も確認したが下級で銅貨12枚・中級で銀貨6枚・上級で金貨1枚半と市場に出回らない最上級以外の値段は把握しており、こんな価格だとどれだけ効能があろうとまず一般人は金貨15枚など一財産を使えるわけが無いと理解して猛抗議するが隣の当の本人のカレンは未だ心ここにあらずだった。


「金貨1400・・・・・ふへへぇ」


「おい、おめぇもなんとか言え!」


「―――え、ええ。でも、金貨8枚でも十分過ぎるわよ?」


いつまでも締まりの無い顔で呆けているカレンの頭を引っ叩き現実に戻し書類を眼前に突きつけるのだが商人気質のコボルトと異なり商売に未だ実感の無いカレンは目の前の金貨8枚でも十分大金なので不満は無く、なぜコボルトがそこまで憤るのか判らず素直に思ったことを口に出す


「馬鹿かおめぇ! その倍の価値を認められてるんだぞ。それをみすみす半値で売るような条件を商人が飲めるわけねぇだろがっ」


コボルトの正論にリールーはここが手札の切り時と判断して言葉を発する


「あ、あの。コボルトさん、勿論制限を課す以上見返りも有りますのでまずは書類に最後まで目を通して頂けますか?」


元々この役割は重要性から組合長が自ら行うつもりだったのだが、内容を聞きリールーが少しでも2人の気心の知れた自分に任せてくださいと自ら買って出た役割で、それだけにこの手札であれば上手く契約に持ち込める自信もあった。


「どれどれ・・・なんだこりゃ?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


以上の条件を履行する事を組合の名の下契約する事で下記の恩賞を与える


ルルア北部の鉱山の発掘権


ルルア渓谷での採取及び収集の制限と掛かる税の撤廃


上記2つの特権をカレン・アシュリー及び付添のコボルトに与える事をシャナード・ガル・ルルア・ゲイツの名の元保証する


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「鉱山の発掘権って、いつでも好きな時に好きなだけ掘っていいのか?」


「はい。勿論です、ただ発掘の度に事前に加工組合に発掘の申請は提出していただきます。これは盗掘や発掘場での無用なトラブルを避ける為なので必ずお願いします」


自身の存在意義にも関わる鉱石の発掘と知り、クールダウンしてコボルトなりに思案に耽る

性分でルルアに着いてすぐに近くに鉱山があることは判ったので市場で鉱山についての情報もしっかりと仕入れていたがその鉱山は加工組合の専用鉱山で未だ発掘の途中だが岩盤にぶち当たり発掘が一時休止されているという、その鉱山では高級鉱石から需要の高いエーテル鉱石等今まで発掘されており中には銀も含まれているという、そう、銀だ。


「発掘で得た鉱石の取り分は?」


「お二人が発掘した鉱石についての所有権は全てお二人にあります。但し人足を使っての発掘は認められません。あくまでこの権利は団体では無くお二人個々人へのみですので」


この返答でコボルトは完全に陥落し先程のカレン同様に妄想の世界に飛び込んだ。

残るはカレンだが


「ねぇ、渓谷での採取ってそもそも制限があるの?」


今までいたテンゲン大樹海では命懸けではあるが採取したものはそのまま好きなだけ使っていただけに採取に制限が掛かるという発想が無かったのでこの制限について確認する。


「はい。通常はルルア渓谷の安全地帯まではルルア領主様の所有地なので其処での採取品には制限や税が発生します。密漁や密輸は厳罰対象です、ですがこの恩賞では安全地帯は勿論渓谷そのものの採取が自由です。勿論群生を絶やさないよう根こそぎなどは認められませんが」


(うわぁ…知らずに勝手に渓谷いって採取するとこだったわ)


「私としてはエーテルポーションの扱いに不満も無いし、渓谷の採取が自由になるのは嬉しいから文句無いのだけど、あんたはどうなの?」


見事カレンも陥落、最もカレンに限っては既に陥落していたのだが


「ばっかおめぇ、おめぇ……鉱山の発掘権だぞ! しかも好きなだけ銀を掘ってそれを全部自分のものになんだぞ! 不満なんてあるわけねぇ、さっさと契約しちまえっ」


「あんたらしいわ、はいはい」


既に銀に目を付け先程とは反転して契約を急かすコボルトは商人の性分は潜み幻獣のコボルトの本能そのままだった。

コボルトは銀目的だが鉱山ともなれば他の鉱石の原石等も入手できるのでカレンの錬成にも繋がるので満場一致で2枚の契約書に署名してリールーに書類を返すと、ここで初めて肩の力を抜いたリールーが一息着いて充足感に浸る。


(組合長。見事やり遂げましたよ! 有給とボーナス頼みますよ!)


ちゃっかりリールーも強かだった。




「ところでリールー、これ金貨1400枚以上入ってるとのことだけど、見た目からしてその半分も無さそうなのだけど」


「それについては中身をご確認ください、金貨1000枚の代わりに星金貨が収められております」


「――これ、星金貨っていうの? 綺麗…」


カレンが硬貨袋を開け、中を覗くと一枚だけ金貨より一回り大きい金とは異なる初めて目にする物質の硬貨を取り出す。


「刻印も見事だがなんか不思議な力というか、神々しさ? よくわからんが変な力を感じるな」


「星金貨の製造には神器が使用されておりまして、神の加護があると言われるほどで星石(せいせき)とよばれる最希少鉱石で出来ており金貨1000枚の価値があるのですが、その希少性から大抵の人では金貨1000枚揃えた所で換金されることは無いのでそれを所有しているというだけで一種のステータスになりますよ」



こうして密かに国益に関わる程の契約が成され、カレンとコボルトはいよいよ次のステップに進む事になる。

尚カレンの胸の内でだが密かに魅了された星金貨をいつか10枚集めてみようという無謀な夢が追加された。

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