66話 幕間 コボルトの充実した一日と…
幻神歴2960年05月08日
ここ最近アシュリー工房の面子が異質過ぎて週末のこの鉱山発掘が趣味と憩いとなってるコボルト
「おっ、コボルトさん今日は鉱山かい?」
露店商の老齢のお爺さんが串焼きを焼きながらも見掛けたコボルトに話しかける
「おうよ! 今日も掘るぜ」
「精が出るねぇ、これ持ってきな」
そう言って串焼きを3本包んでコボルトに贈る
「ありがてぇ、いつも感謝してますぜ」
カレン手製の鉱山弁当もあるがやはり肉はいくらあってもいい、早速涎を垂らしつつも我慢我慢と己を戒める
「な~に、お互い様よ。こっちも商業組合との折り合いに話付けてくれて感謝してるからな!」
この露店商、実は未認可だったのだがコボルトがこの味と値段なら組合に加入しても十分益が出ると間に入って交渉したことで晴れて組合公認の露店となった経緯がある
この市場通りにはそうしたコボルトに何かしらの借りや恩のある者が多い、普段のコボルトの行いの賜物だ
露店通りを通るたびに声を掛けられその都度対応し、偶には物や食べ物を貰いつつもコボルトは北鉱山へ向かう
此処北鉱山では今や200人以上の入坑者がおり破竹の勢いで発掘が進んでいる
魔力とエーテルが混雑し異界化してる事でほぼ無限に採掘できるルルアの名所の1つだ
そんな中コボルトだけ別の発掘箇所を掘ってると見慣れない異質な鉱石を発掘する
「ん? なんだこりゃ」
此処北鉱山で発掘される物は大抵知っているがそれは初めて目にする物だった
新種かと喜びの束の間、その鉱石に心当たりのあったコボルトは思い出し表情が蒼褪めた
「………は?」
(なんでこいつがこんな所に!?)
これは非常に拙いと直ぐに大通りに戻り現場責任者に立ち退きを要求する
これが人の眼に触れると非常に拙い事になるとコボルトは理解していた
「イネッド! すまねぇが今すぐ皆を鉱山から立ち退かせてくれ!! ミルドの旦那には俺っちが説明するし責任は取るから今は何も聞かねぇで頼む!」
コボルトの必死振りからただ事では無いと感じ取った現場責任者イネッドの行動は早く、入坑者に撤収を命じた
そしてコボルトはその新種の鉱石を手に加工組合に駆け出す
「リリス嬢さん!」
「あっ、コボルトちゃんだ~!」
加工組合受付嬢の看板娘のリリスに抱きしめられ歓迎されるコボルトに周囲から嫉妬の眼差しが刺さるが生憎今はそれ処では無かった
「すまねぇがミルドの旦那に会わせてくれねぇか? アポは取ってねぇんだが火急の要件なんだ」
「ん~ミルド様今重役会議中だけどコボルトちゃんは何時でも通すよう言われてるからなぁ、ちょっと待っててね」
「ああ頼みまさ」
個室に案内され待っていると友が駆けつけて来た
「友よ、どうした?」
「旦那急にすまねぇ、北鉱山でトラブルが発生して俺っちの独断で入坑者を引かせた」
「トラブル・・・落盤か!?」
鉱山のトラブルで真っ先に思いつくのが落盤だ
落盤の被害に遭うと怪我人だけでなく発掘も滞り鉱山としては致命的だ
だが、そこはコボルトだった
「いや、それならまだ俺っちでなんとかなるがそれより遥かにやべぇ。俺っちが掘ってた坑道でこいつが出たんだ・・・」
落盤ならコボルトの発掘技能なら難なくぶち抜けるがそれより厄介と懐から先程の新種の鉱石を取り出しミルドに見せる
ミルドはそれを手に観察眼で見極める
「これは・・・初めて見るな。エーテル鉱や魔鉱石のように力を感じるが、まさか新種の力の宿った鉱石か!?」
エーテル鉱や魔鉱石のように力を宿す新種の鉱石が発掘されるとなれば鉱山所有者としてはこれ程嬉しい事は無い
ミルドの歓喜振りに反してコボルトの表情は暗かった
「力は間違いなく宿ってるだろうがその力がやべぇんだ」
「友はこれを知ってるのか?」
「俺っちも実物を見るのは初めてだが幻獣ならどんな馬鹿でも判る、そりゃ宝珠だ」
「宝珠? 聞いた事のない種だな…新鉱石が採れるとなると喜ばしいが・・・友のその様子だと幻獣になにか関係が?」
「・・・そいつは―――――」
コボルトも聞きかじった内容だがその効力を明かす
ミルドの表情も歓喜から蒼褪めていた
「・・・・いかんな」
「ああ、やべぇ。最初は星石とやらかと思ったんだがその力は間違いねぇ」
幻獣のコボルトだからこそいち早く解った物だ
「星石も拙いがこの際星石のがまだ良かった・・・友よ、儂はこれから領主殿に報告に行かねばならん。当然北鉱山は一時封鎖する」
ミルドはこの先の顛末を予想して暗澹とした表情で告げるが結果は火を見るより明らかだった
「一時で済みゃいいんですがね・・・」
コボルトも同様の結果を見据えていた
「・・・・友には領主殿の特権で組合員とは別の発掘権があるんだが、済まないがこの話が着くまで控えてくれんか?」
「あっしも弁えてるんで当然でさ」
こんな物を発掘できると知って発掘する程コボルトは肝は据わってない
ましては手が後ろに回りかねないのだ
「本当に感謝する。その間北鉱山の入坑者は西に回そう、友も西鉱山に、と言いたいのだが領主殿の判断次第では北鉱山の調査に友の力が必要になるやもしれん。いつでも動けるよう工房で待機していてくれるか? 目途が着くまで西鉱山から友への分配分は色を付けて手配するのでこの通りだ」
「旦那水くせぇ、俺っちらはダチなんだから言われるまでもねぇ」
そしてコボルトは趣味にして実益のある発掘がお預けとなってしょんぼりとアシュリー工房に帰って皆に慰めなられた
こうして加工組合長とルルア領主の緊急会合が開かれ、その結果北鉱山は衛視の厳重な見張り付きで出入り禁止に、但し本国への通達と同時にコボルトには北鉱山の調査を命じられ…その結果北鉱山だけでなく西鉱山でも同様だった
シャルマーユ皇国 緊急賢者会議
会議は荒れてるが最終判断は全会一致で隠匿と決まった
だがその宝珠をどう扱うかで会議は意見が幾つも判れた
宝珠
中級以上の幻獣や召喚獣に与えると力が増す宝玉で当然その価値は未知数
今の戦争形態は武装騎士が衝突し、後方で魔法師の戦術級魔法と使役獣の必殺の技で雌雄を決する
つまりこの宝珠があれば戦争で如何な大国だろうと蹂躙できる危険な代物だ
「~~~」
「―――!」
「星石ならば聖国に委ねればいいですが幻獣界の最希少鉱石ともなるとどうしたものやら・・・」
シグルトも普段の冷静さを欠いて事の重大性に困惑している
「隠匿は当然としてその宝珠は具体的にどのような力があるのだ? 有るだけで人間に害はあるのか?」
陛下が真っ先に出た不安を加工組合賢者に尋ねる
「陛下、この鉱石・・・正直宝石かどうかも判りませんし解析不能です」
「解析不能とな? 扱えんのは判るが其方でも詳細を知る術が無いと?」
「お恥ずかしながら未知の物体としか言い様が有りません。現状では分析も加工も全くできず幻獣師や召喚師の使役獣に確認させようかとも思ったのですが・・・物が物ですので迂闊に幻獣界の者に知られると問題かと思い八方手を尽くしましたが今の所その内包された凄まじい力は人間には到底扱いきれない、精々思いつくのが魔法師の媒体か何かしらの触媒としか解り兼ねます」
この場で最も詳しい加工組合の賢者ですら未知と言い張る物体に益々会議は荒れ、どう扱うか決めあぐねる中、傍仕えがシグルトに追加の情報を、と伝える
それを受けたシグルトは見た事が無いほどの間の抜けた顔になった
「へ、陛下、ルルアから追加の情報です―――」
近年まれに見るシグルトの恐々とした表情で傍仕えからの情報を陛下に耳打ちする
「ふむ―――――――――はぁ!?」
公共の威厳も吹っ飛ぶその内容に陛下は素で我が耳を疑った
「「「陛下!?」」」
「如何されました!?」
議会の皆陛下の困惑振りに慌てふためく
そして陛下は内容を明かす…
「――――ルルアの鉱山から新たな新種が2つ見つかった。その内1つはコボルトでも未知で不明だがもう1つが馬鹿げた事に緋緋色金だそうだ・・・・・」
そしてシグルトから受け取った2つの宝石を皆に見えるように机に置く
「ひ、緋緋色金!?」
「以前神々が仰られた神界の最希少宝石という・・・」
議会が更に混沌と化す、緋緋色金は以前神々が降臨された際に話題に出た神界で最も希少で軽く、非常に高度があり色鮮やかな宝石という。それがルルアから発掘されたのだから混迷を極める
「幻獣界の未知の結晶・神界の最希少宝石・・・となるともう1つは・・・も、もしや天獄関連では・・・」
とある賢者が口にした最悪な内容にあながち真実味があって益々議会は消沈する
「「「「・・・・・」」」」
「有り得んだろ…ってかこれもう間違いなくあの馬鹿2人が関わってるだろ!」
威厳もへったくれもない素で陛下は切れていた
陛下の脳内ではアリスとシャイタンがニッコリ笑っていた
「陛下、落ち着いてください」
「人間界全ての国処か神界と幻獣界まで敵に回すかもしれんって時に落ち着いて居られるか!!」
シグルトが窘めるが次の台詞で確かにこの状況で落ち着けるわけがない
だがそこは宰相、まだ打つ手はあると公言する
「た、確かに国難ですがまだ活路は有ります、幸いにも緋緋色金となれば件のルルアにはアマネ様やシャイタンが居ります」
「アマネ様・・・・・陛下、その3種は引き続き隠匿して研究を続けるとして先ずはその2柱様にどの様にするべきか伺うのが宜しいかと」
「確かに、そのような物人知を超えていますからな。下手に扱って幻獣界や神界の怒りを買う前に包み隠さず伝えて最悪鉱山を放棄する形にすれば・・・」
「それしか無いな。ルルアの加工組合にはその間の補填を本国がするとしてあの馬鹿共問い質してくる」
檄おこの陛下が立ち上がり早速ルルアへ出向こうとする
「陛下。付け加えてもう1つ宜しいですか?」
そこへ加工組合賢者が待ったを掛ける
「何だ?」
シグルトの命で傍仕えに陛下に伝えた後に加工組合賢者にもこの情報と未知の宝石3種を伝えるよう申し付けていた
「コボルト殿からの情報によると其の3つとも非常に硬質な層に埋まっていて人間では先ず採掘は難しいとの事、どちらに転ぶにせよコボルト殿に採掘を頼んでみてはどうでしょう。ルルアだけなのか、他の都市にもあるのか、出土からコボルト殿なら判断できるかと思われます」
出土がルルアだけなら隠匿も可能だがこれが全域となるともはやそれすら不可能と加工組合賢者は懸念していた
「ふむ・・・解った。俺の名でルルアの加工組合に命じてコボルトに発掘を依頼してくれ、但し其の3種は組合保管でコボルトにも渡すな。今ここにある現物も合わせて最悪見なかった事になる可能性が高いからな」
そして陛下は早馬を乗り継ぎ最速でルルアへ向かいアシュリー工房へ向かった
今回の事件、あの2人のせいでないと困る。でなければ自然発生したことになる
となればルルアだけで済むと考えるほうが楽観的だ
アシュリー工房に着くとコボルトに挨拶もそこそこにカレンの部屋へずかずかとノックも無しに入り込む
「おい疫病兎正直に答えろ、鉱山に何をした?」
ベッドの上でいつもの扇情的な着物姿で魔導書を呼んでいたアリスはこれがカレンの着替え中だったらどうしてくれるんだとおこだ
「は? 何を藪から棒に訳わかんない事言ってんの? 失礼ね。抑々ノックしなさいよ、着替え中だったらどうしてくれんの。全くこれだから粗野な奴は・・・」
アリスの物言いも気にせずベッドに近づきベッドの上に件の3つの鉱石を並べ追求する
「ルルアにある両鉱山から有り得ない物が発掘された。お前かお前の使い魔ぐらいしか原因は考えられん、何とかしろ。ってかしないとシャルマーユだけでなく人間界が滅びかねん」
人間界が滅ぼびる。
大袈裟でも何でもない、これらが人間界で発掘できるとなれば他国からの侵略以前に幻獣界と神界の怒りを買うのは目に見えているのだから国主としては必至なのも当然だ
だが、そんな陛下と打って変わってアリスは鉱石に見向きもせず魔導書に目を通したまま呑気に答える
「はぁ? 鉱山って犬の遊び場でしょ、私知らないわよ、興味無いし。何が出たのか知らないけど大袈裟ね・・・お前仕事のし過ぎ、少しは休みなさいよ」
「こんなもん聖国以外で採掘できるとなったら世界中に侵略されるわ! 吐け! お前の仕業だろ、むしろ頼むお前のせいであってくれ・・・」
陛下の必死振りが伝わりやっと鉱石を目にするアリスだが身に覚えがないような、ある様な気がする…
だから素直な感想を零す
「なにこれ? ん~見たことあるような、無いような? ・・・良く解んないけど綺麗だし良い事じゃん」
「馬鹿が! それ神界の緋緋色金と幻獣界の宝珠だそうだ、もう1つは不明だがどう考えてもやばい品としか思えん。本当にお前身に覚えがないのか?」
緋緋色金はダイヤよりも硬質で人間界では先ず加工不可能
宝珠に至っては光り輝く結晶で使役獣への扱い以外用途不明
もう1つに至っては結晶体に黒い気体が無限に沸き起こりどう見ても厄介事の種にしかならない
「一億歩譲って鉱山が誰かに滅ぼされて疑われるなら兎も角さぁ、そのなんたらとかいう変なのを私にどうしろっていうのよ。盗掘はできるだろうけどそんな意味わかんない石自然発生させる魔法多分外法でも無いわよ」
「・・・・・そうか、疑って済まなかった。緋緋色金について神の意向を聞きたいからシャイタンを呼んでくれないか?」
此処で初めて陛下は意気消沈して最悪の想定が当たったと、せめて1つだけでも解決をとシャイタンを呼んでもらう
「まぁ良いけど、シャイタン~」
「はっ」
アリスの呼び出しと同時に瞬時に目の前に現れるシャイタン
「なんかロックンが聞きたいことあるってさ」
「・・・貴様、いつから俺を呼べるほど偉くなったんだ?」
アリスへの表情と180度変わって苛立ち気に陛下を睨むシャイタン、だが今はそれに突っかかる気力もない
「説教は後で聞くから助けてくれ。ルルアの鉱山でコボルトがこれらを発掘したんだがどうしたらいい?」
「何? ―――ほう、これはまた。流石アリス様、その御力感服する余りです」
陛下が指差した先に有った鉱石をみてシャイタンは感心するが、アリスも陛下も意図不明だった
「へ?」
「は? どういう事だ? やはりアリスの仕業か?」
「やはりって・・・ロックン友を疑うなんて最低。そんなだと・・「あの、アリス様」
シャイタンが言いにくそうに遮り言葉を続ける
「ん?」
「ルルアに入る際にアリス様がご自身に掛けた制約魔法で代償を此処ルルアの地に転換させたのでその御力で生成されたかと」
「「・・・」」
そんなのやったっけ?
アリスの胸中はそれしかなかった、だが目の前の陛下がぶちぎれてるのは判る
「おい駄目兎、俺の眼を見てさっきの台詞もう一度ほざいてみろ」
陛下の手がグラムに掛けられていた
返答次第で本気で目の前の疫病兎の頭上の片耳ぐらい切り落とすつもりだ
「い、いやぁ・・・そんな凄いのが採掘できるなんて資源うはうはで皇様冥利ね! いよ、漢前! 益々国が栄えるわね!!」
何処までも呑気な疫病兎に呆れ果て陛下は膝から崩れ落ちる
もう人間界終わったわ、すまんティア と脳内で謝罪する陛下
「栄えるも何も滅ぶわ・・・お前なんて事を・・・」
「落ち着け剣聖、希少資源が採掘できるなら喜ばしい事だろう。幾らかはくれてやるが当然カレン様に渡るようにしろよ」
「あ、そうだった! カレンの為にルルアに押し付けたんだった。カレン喜ぶかなぁ♪」
此処に来てようやく当時を思い出したアリス
その異質で強大な力を制するには道具では不可能で代償を押し付けるしか無く、それならルルアへ押し付ければ何か希少な物も自然発生するかもと当時はそんなノリで押し付けた
「ええ間違いなく、緋緋色金に宝珠と死生結晶ともなればカレン様もさぞお喜びになるでしょう」
シャイタンはカレンの喜びようが手に取る様に解り笑顔になる
「し、しせいけっしょう? お前それ知ってるのか?」
名前からしてもう1つの物体しか無いと陛下が顔を上げてシャイタンに尋ねる
「この星には存在しないがかつて別の星で世界を統一していた皇族が独占していた権威を象徴すると言われていたが、また違う星ではそれ1つに一千万の魂を代価に精製する程の思念結晶でな、今では両星とも滅んで天獄の限られた場所でしか見つからん天獄の最重要宝石だ」
本当に賢者の懸念通りとなった、それも遥かに物騒な代物だった
余計頭を悩ませ打開策を練ろうとして諦めた陛下
「本当に天獄関連の物だったのか・・・その3つどう扱えばいい? 神々や竜の怒りを買いたくないから鉱山を閉鎖して見なかった事にするし逆に採掘して神々に献上すればいいか?」
「戯け。カレン様を思ってアリス様の御力で生成した物をなぜ献上せねばならんのだ」
「そうよそうよ! カレンの喜ぶ顔が見れないじゃないの! お前馬鹿だなぁ」
「馬鹿はお前だ! そんな超常の存在が最希少としてるものを人間がおいそれと扱えるか!」
「なんで?」
「もういい・・・シャイタンこの3つの取り扱いについて各所へ伺ってくれんか? 流石に物が物だけに知らずに扱うのは畏れ多くて無理だ」
「貴様も心配性だな、まぁ解らんでも無いが。緋緋色金については俺の名の元自由にして構わん。だが他の2つについてはな・・・」
緋緋色金と違い他の2つは違う世界でシャイタンも好き勝手出来る訳では無い
シャイタンの曇り顔を見てアリスがあっさり解決策を出す
「あ~じゃ私がさくっと聞いてくるわ」
「さくっとって、おいっ!?」
ロックンが止める間も無くアリスは転移してしまう
残った2人は10分程無言で待ち続ける
そして戻ってきたアリスは気軽に言い放つ
「天獄の石は好きにしていいって。幻獣界の石は正規契約してる幻獣や召喚獣に少しでも分け前上げれば後は好きにしていいってさ」
正確に伝えるなら天獄の最高神アヌビスに尋ねたら
「何? あの星で死生結晶が生成? 構わん構わん! ちびっ子の錬成に使うが良い」
幻獣界の統治者竜に尋ねたら
「宝珠を生成とは貴様の力は相変わらず異質だな、確か貴様の妹は錬金術師だったな。正規契約してる獣達に多少なりともくばるなら好きに使え」
との事だった
この返答で陛下は安堵して気が抜け、お茶を一杯貰い急いで皇城に帰還した
そしてアリスとシャイタンの言葉をそのまま告げ、結局どう扱うのか決まった
発掘された5割はカレンの元へ、1割は極秘で自国で研究と追及、1割はシャルマーユ皇国軍に属する使役獣に、そして3割は自国での保管は政治的に危ういとの事でいずれ訪ねてくる聖女に委ねる事を打診する事に決まった
カレンを想い、アリスとシャイタンが生成した宝珠・死生結晶・緋緋色金だが肝心のカレンが名前は聞き知っても未知の物体に用途も不明でどうしようもなく姉の贈り物の聖遺物や神器の山と同じ地下工房にて無駄に積み上げられ埃を被る事と相成った
だがコボルトは希少鉱石が発掘できると大喜びで鶴橋を振るっていた
最下級のコボルトには宝珠は使えないのだが…




