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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
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60話 夢見た錬金術師

幻神歴2960年3月27日


アシュリー工房の新装開店から半月


買い物客の足並みは落ち着いたがコボルトへの物見遊山の客は未だ長蛇の列を作る程で日に日に増しておりルルアでは急遽戦闘職の駆け出しを町の治安維持の為に雇う程人で溢れ返っていた


カレン・アシュリーの素晴らしい発明品に加えて戦争が噂されていたパラミスの無条件降伏に等しい属国化、シャルマーユ全土の税の引き下げと賢者ジルの到達点の解明、そして未知への到達という祝事でルルアに及ばずシャルマーユ全土に祝辞が飛び交う事となる


そんなお祭り気分を跳ねのけ手にした商品を睨んで頭を悩ませるカレン・アシュリー

営業再開以降ルルアの混雑振りに店を閉めてからの市場での買い出しでは殆どの品が売り切れている為ここ暫くはコボルトに起こしてもらい早朝に市場へと足を運んでいた


(オークションに使う予算は決まったけど――素材が届くまでに他の素材用意したいのにめっちゃくちゃ高くなってるわね・・・・・)


その表情はお祭り騒ぎの周囲と打って変わって暗々としていた


手にした素材は以前なら銀貨18枚か、多くても20枚もあればお釣りが有ったのに今では銀貨25枚の値段を提示されカレンは出し渋っていた


星金貨5万の恩賞はその殆どをオークションに使う為既に使った分と合わせて星金貨30枚が残る算段だが魔法組合での出費やここ最近の素材費用で既に手持ちは金貨700枚と星金貨すら残っていなかった。この先の研究素材の出費を考えると少しでも費用は押さえたい所だ


「ねぇ、ちょっと。これ銀貨20枚じゃなかったの?」


「あ~お客さん、今やそれに限らず武具は当然あらゆる食品から日用品に至るまで供給が追い付かなくて物価の上昇は増すばかりですよ。その結晶も明日にはまた値段変動するので買うなら今がチャンスですよ」


露店商の台詞通り今やルルアに限らずシャルマーユ全土であらゆる物資が供給不足で戦争特需並に景気が跳ね上がり日増しに相場も上がっている


市場等の組合に加入している正規の店では市場開きの早朝にその日の凡その相場が決められており大抵の店はその相場を元に値段を決めている。今のシャルマーユでは期限付きとはいえ税の免除もあって過去に類をみないほど相場が跳ね上がっており食品はその筆頭でもある


本国では予想を遥かに超える入国者に頭を悩ませ属国となったパラミス・テリアから急遽物資を徴収するもそれでも全く追い付かない程で式典の準備もあり同盟国から大量に輸入する事になっている

カレンの手にした素材も錬金術か魔法の触媒にしか需要が無いのにこれですら供給不足で銀貨5枚以上の値上がり、そして明日にはまた値上がりする程だ


「銀貨25枚って高すぎじゃない!? ぐぅ・・・10個貰うわ」



その後も市場を見て回るがカレンの求める素材や掘り出し物は見つからず、やっと見つけてもとても手に届かない値段なので泣く泣く諦め食材を一通り購入して帰路に着こうとした所にほろ酔いなのか上機嫌の通りすがりの男性2人の会話がカレンの耳に届く、その話題はカレンに取って聞き逃せなかった


今はどこの飲食店も満員御礼で市場の端では青空飲み屋が乱立しており乱痴気騒ぎの中カレンは入り込んで気になった内容を尋ねる


「ね、ねぇ・・・属国って何? まさか戦争が起きるの?」


「ん? その戦争相手と噂が飛び交っていたパラミスがシャルマーユの属国になったんだよ」


「属国ってのは従える、つまりシャルマーユの従属国になったって事だよ」


「じゅうぞく・・・? 従属? それってまさか奴隷みたいなもの?」


「まぁ間違っちゃいないぜ、あの国は物騒だったからな~」


「全くだよ、同じ属国のテリアと違ってパラミスはかなり厳しい条件を突き付けられるだろうな」


「く、国を奴隷にしたってこと!?」


「奴隷ってのは聞こえが悪いがそんなもんだ。戦争なんて俺達には百害しかねぇのにそれを未然に防ぐ所か従えさせちまうんだから我等がシャルマーユ皇帝陛下は凄いぜ」


「それに加えてジル様の到達点への達成と来たもんだから本当に目出度い事尽くしで嬉しい事だよ」


(奴隷が目出度い!? なんてこと・・・・)



こうして勘違いを突き進んだカレンは半狂乱でリリーに跨り市場を離れアシュリー工房の森へ駆け込む


「アマネ! あまねぇ!!」


森に着いたことでリリーを自由にさせアマネを必死に探すカレン、そんなカレンののっぴきならない声音にアマネがひょっこりと姿を現す


「はいは~い、カレンちゃんどうしま「アマネ! 逃げるわよ!!」


「ふぇ?」


訳も分からずカレンに抱き抱えられアシュリー工房に連れ込まれるアマネ

工房内に入ればコボルトはいつも通りルルア兎に指示を出していたがそんなコボルトに手短に用件を突き付ける


「コボルト!! お金と日持ちする食料用意して直ぐ此処を離れるわよ!!!」


「はぁ?」


コボルトはどういう事かと問い詰める前にカレンは自室へアマネを抱えたまま駆け込んでしまい何事かとコボルトも後を追う

カレンの非常識振りは痛感してるがアシュリー工房を手放すとはただ事では無いとコボルトも不安気になってしまうのだが・・・


「ねえさまねえさま!!!」


「ん? カレンどしたの」


寝起きの紅茶を新設された大き目の机でシャイタンと満喫していると愛妹がアマネを抱えて血相を変えて駆け込んできた


また可愛いトラブルだろうか? まったくどこまでも可愛い妹だとアリスは呑気に尋ねるが次の台詞に手にしたカップを落としてしまう


「あっ、シャイタンさんも丁度いたのね! 良かった、姉様今すぐこんな国から逃げましょう!!」


「へ? ぇ? な、なんで?」


「――カレン様、何かあったのですか?」


シャイタンも手にしたカップを卓に置いてカレンの元へ駆け寄り状況を確認する


「街の人が狂ったのよ! パラミスとテリアって国を奴隷にしたのに目出度いなんて言ってるのよ!?」


涙目でシャイタンに縋りかくかくと揺らしながらもカレンは非常事態を告げるも、シャイタンからしたら涙目の主が愛おしくはあるもその事態に身に覚えが有りまくるのでどうしたものかとアリスへと視線でパスを渡す


「「「「「・・・・・」」」」」


部屋内が一瞬にして沈黙に支配されるが事態は急を要し、家族にまで魔の手が迫るかもしれないとパニックに陥ってるカレンは黙したままの皆を急かす


尚コボルトは時間の無駄だったと馬鹿騒ぎに付き合ってられないと売り場へと呆れながら戻った


「国を丸ごと奴隷にするなんて正気の沙汰じゃないわ!! やっぱりあの陛下とんでもない極悪非道の悪者よ! なにが種族平等よ、同族にそんな酷い事する奴なんて・・・早く逃げましょ!」


「――ぁ~・・・えっと、カレンちゃんそれは勘違いですよぉ・・・・」


シャイタンの前で膝を抱えて蹲ってしまうカレンにつられてここにきてようやっと地に足を付けたアマネがカレンを抱擁しつつも勘違いを正そうとする


聡いアマネはカレンがどう勘違いしてるのかも瞬時に理解しこんな単純な勘違いを解くなどアマネにとっては造作もない


「何言ってるのアマネ! 同族を奴隷にするような極悪人なのよ? あんた可愛いからあいつに何されるか・・・それに姉様も美人だしきっと酷い事されるわ・・・」


そんなアマネの説明も碌すっぽ届かずアマネと姉が心配なカレンはアマネを抱き返しアマネが心配だと心中を零す


――大好きなカレンが自分を心配して涙を見せているのだ、勘違いとかもうどうでも良いとアマネは感極まりカレンのうさ耳を撫でつつ瞳をキラキラさせご満悦だった


「カレン・・・」


そして姉想いの台詞と涙をみせられたアリスは抑々勘違いなど鼻からどうでもよく、アマネに続き反対側から抱擁する、自分を抱き寄せてくれる姉にもカレンは心中を零す


姉と再会してから益々この思いは募っていくのだから


「折角会えたのにもし姉様と離れ離れになって、姉様が酷い目に遭ったら、もう、もう私耐えられないよぉ」


弱弱しく、か細く呟いたその台詞に自分で耐えられずついに年甲斐もなくギャン泣きして姉に縋り付くカレン


「カレン・・うん。うん! お姉ちゃんはカレンと一緒って約束したでしょ? 大丈夫、もう心配させないからどこでも行こう。カレンの行きたい所ならお姉ちゃん何処でも連れて行くわよ!!」


カレンの安住の地の為なら何処の国だろうと幾らでも平定するし、いざとなれば建国すらやってのける意気込みでアリスは力強く断言する


「素晴らしい姉妹愛に涙を禁じ得ません、私奴も何処だろうと付き従います」


麗しい姉妹愛の前に大悪神のシャイタンも胸打たれ果て無く尽くすと優雅に一礼する






但し涙ではなく愉悦の笑みを零しているのだが





そんな一向の喜劇とも寸劇ともいえるものをむざむざ見せつけられる者がこの場には居た


テリアとパラミスを奴隷にした正気でない極悪非道の極悪人のロックンも一緒に朝のお茶を満喫していたらこの様だ


「―――――なんだこれ? 超納得いかねぇ」


(属国もなにもその二国を洗脳した首謀者と実行犯がなんで感動してんだよ。あとそこの馬鹿悪神は涙じゃなくてその薄気味悪い笑みをこっちに向けんなよ! ってかお前ら浸ってないで俺の誤解解けよ!!)


手にしたカップを握り潰さんばかりに憤りが募るロックン


数々の恩賞にこれは感謝されるだろうと気分良くアシュリー工房に来た皇帝陛下ロックは何故か出会い頭にアリスから感謝の言葉でなくお前のせいで仕事する羽目になったと訳の分からない癇癪と愚痴を零され、しまいには2人の気まぐれの所業がどういう訳か自身の悪行と勘違いされる始末


ぶちぎれてグラム振り回してもレギン様も認めてくれるだろうがそこは善皇のロック、先ずは問題児のカレンの誤解を解いてから2人に説教をと試みるのだが・・・・・


「・・・な、なぁカレン? 属国と奴隷は別物だぞ? 後この国の陛下はそんな悪者じゃ・・・」


「何言ってるのよロックン! 従属って事は奴隷でしょ!! こんな物騒な国早く逃げないとロックンも危ないから一緒にテンゲン大樹海に逃げましょ!」


「・・・・」


あ、これ駄目だ。と悟ったロックンは頭を抱えて机に項垂れるも最後の望みにして救い手の神に縋る


「あ、あのアマネ様? アマネ様も何かこう説明してやって・・「カレンちゃんはどこまでも皆を大事にするいい子ですねぇ! 解りましたぁ! テンゲン大樹海でも私頑張って詩いますよぉ!!」


ロックンの台詞等届かないアマネはロックンに見向きもせず新天地でもカレンの為に張り切るつもり満々だった

ロックンは無言で机に頭を何度も叩きつけ夢なら冷めろと現実逃避する


「家なら任せなさい。お姉ちゃんが(犬に命じて)大きな家を造るわよ」


「流石カレンさん、斜め下の勘違いと家族思いを螺旋狂わした素晴らしい阿呆の子振りですね。知らずとは言え皇族に亡命を促すなんて、あはは。でもこれで私のお役目も晴れて御免ですかね?」


ここで新たに別人の台詞が割込みロックンがその発言者へと振り返る


今日も日課の抜き打ち調査に来ていてロックンとも鉢合わせた受付嬢、リールーは事の顛末を呆れ笑いを零しつつ我関せずと他人事のように言葉を漏らす


アシュリー工房の面々のせいというかお陰と言うか肝が鋼になったリールーはカレンの自室でロックンと卓を囲みお茶を嗜むという事も平然とやってのけていた


如何に親しい友人で抜き打ち調査とはいえ本人の居らぬ間に工房内に立ち入るのは厳禁なのでカレンの買い出しを待っていたらこの始末でリールーはこの喜劇の成り行き次第でこの忌まわしい束縛から開放されると嬉々としていた


「・・リールーあれ何とかしてくれんか?」


「ええぇ~・・・・」


陛下、もといロックンの逼迫も判るがリールーとしてはこの流れなら自分は愉快なアシュリー工房の呪縛から解放されると目論み本気で静観を決め込むつもりだった


「頼む、友にして有益者が居なくなるのもだがこんな勘違い耐えられん」


常識何それな姉妹相手に唯一対抗できるお目付けのリールーに縋るロックンだった

そんなロックンを前にリールーは暫し塾考して閃いたと眼鏡をくいっと直し独り言の様に言葉を漏らす


「――――近々両親が越して来て此処でも仕立屋を営む予定なのである程度のまとまった量のフルーラの最上位絹が欲しくて・・・今それに頭が一杯で、ちょっと何を仰ってるのか解り兼ねますね」


「なっ!? お、おま、フルーラの最上位絹って星金貨幾らすると思ってんだよ!」


リールーはしたたかなちゃっかりものだが強欲ではない、カレン一向の騒ぎで詐欺師バージルから何かと懐を潤す結果をもぎ取っているが相手と加減を知っている

だが、今この場合相手は加減の必要など無縁、つまり青天井な御方が相手なのだ。遠慮は一切無かった


「ええ、仰る通りで一市民の私には望外の高望みで困ってるんですよね、あっ、カレンさん達荷造りの準備始めましたね」


お茶を飲み干したリールーは呑気に言い放つがアリスとアマネは地下工房へ荷造りを、カレンは衣装棚から必要最低限の荷を選別し、シャイタンはその後ろに付き従い時たま此方に不遜な顔を向けては視線だけで小馬鹿にしたように成り行きを見守っている


これは拙い、これでは1時間後にはアシュリー工房はもぬけの殻となりひいては自国の賢者筆頭に有益者から少なくない数が離反しかねない


「く・・・荷箱一つ分用意しよう」


「――両親と私の3人で荷箱三つ分が丁度いいと思いませんか?」


「お前皇帝の弱り目にたかるとはほんとに一市民か?」


「はて? 私の目の前に居られるのはロックンさんで陛下はお目見えできませんが? では、私は之で失礼しま「解った! 解ったから、約束するからあいつら何とかしてくれ」


リールーとしてはこの要求が通らなくてもお役御免になるのでどちらでもいい訳で、本気で退散しようとした所にロックンは対に折れ、リールーの腕を逃がすまいと掴んでいた


「はい、期待しておりますね。まぁエナジーポーション無理やり飲ませれば手っ取り早いのでしょうが・・・」


そしてリールーは最早慣れた所作でカレンの元へ行き朗らかな笑顔で話し掛ける


「カレンさんカレンさん」


「何リルル? 今忙しいの、リルルも直ぐに逃げないと危ないわよ。貴女も美人だしきっとあの陛下に手籠めにされちゃうわよ? 友達だしロックンと一緒にリルルも一緒にテンゲンに逃げましょ?」


「それは嬉しくない提案ですが、しかしカレンさんは家族の為に今の立場を捨てるなんて本当に家族思いですね」


「当たり前でしょ、立場なんかと家族比べるまでも無いわよ。リルルも・「でも不思議ですね? そんなカレンさんがシャイタンさんを奴隷と思っていたなんて」


リールーの聞き捨てならない台詞にカレンはうさ耳をピンッと立たせ猛抗議する


「は? なっ!?!? なんてこと言うのリールー! シャイタンさんは奴隷じゃないわよ!! 大切な、大事な家族よ!」


シャイタンは偶に、いや最近は意地悪の頻度が増してるような気がするがそれでも家族なのだから奴隷なんて家族思いのカレンが思いもよらずうさ耳と同時リールーに食って掛かる


「感謝の極みです」


カレンの心からの感想にシャイタンは愉悦の笑みを崩し心からの笑みでカレンに感謝の言葉を述べる

カレンとの付き合いからリールーはカレンにどう接すればいいか知り尽くしている、結果はもう語るまでも無い


「でもシャイタンさんはカレンさんとアリスさんに仕える身、つまり従属関係になるのでは?」


「・・・え?」


「シャイタンさん私何か間違った事言ってますか?」


「ふむ、成程な。間違っていないぞ、俺は主姉妹に仕える身だから従属ともいえるな。カレン様、主の命なら如何な命でも喜んでやらせて頂きますので如何様に」


「何言ってるのよシャイタンさん! シャイタンさんは家族なんだからそんなのは私嫌よ!」


カレンの心からの感想にリールーは手を叩き場の空気を一変させ更に噛み砕いて説明する


「素晴らしいですカレンさん。そんな素晴らしい関係と同じでテリア・パラミス両国の属国とは奴隷ではなくシャルマーユと家族になったのと同じなんですよ」


「そうなの?」


続けてリールーから語られた内容に漸くカレンは落ち着きを取り戻しリールーの話に耳を傾ける


「はい。カレンさん達姉妹とシャイタンさんが素晴らしい家族であるようにこれからはシャルマーユとテリアとパラミスは互いに家族として手を取り合うんです。どうです? 町民の言うお目出度い事でしょう?」


「凄い! 凄くいい事じゃない! 私姉様とアマネに知らせてくるわ」


「「「・・・」」」


リールーの見事な機転によりこの騒動は解決したが説得で語られた家族として手を取り合う・・・

実際の所属国の両国とも洗脳済みでとてもそんな美談な話では無いのだが、ロックンは漸く窮地を脱してお茶のお代わりを一口含み一息付く


「ロックンさん、お約束期待しておりますね」


リールーの笑顔での確認にロックンはフルーラの最上位絹を荷箱三つというとんでもない出費に(公費で落とせるかなぁ・・・)と新たな悩みの種を抱える事になる


「お前をお目付けにして本当正しかったな・・・その調子で俺の誤解も解いてくれんか?」


「それはまた応相談という事で、では私はお役目通り阿呆の子の珍品査察に努めてきます」


ロックンヘ一礼して地下工房へ降り暫くしてカレンと一騒ぎ起こすしたたかな受付嬢リールー

帰り際エナジーポーションを纏めて購入して帰るロックン、シャイタンは終始笑っていた




カレンの勘違いの翌日、工房も閉店となって姉妹仲良くリリーに相乗りしてすっかり慣れ親しんだルーシェの工房へと赴く。


「おお、お前さんらか」


「やっほ~」


「どうも~。ルーシェさんゴーレム有難うございましたっ! 早速役立ってくれてるので助かりました」


アシュリー工房の周囲の森に聖獣等が住み着いたことでルーシェから新たに譲り受けたゴーレムと周辺の守衛隊だけでは数が不安なので新たにカレンとコボルトの資金から加工組合へ依頼して白銀とオリハルコンにアダマンタイトを買えるだけ購入してルーシェに追加で其々のゴーレムを追加してもらい今はアシュリー工房所有の森の中にはアイアンゴーレム200体 ミスリルゴーレム200体 白銀ゴーレム100体 オリハルコンゴーレム80体 アダマンタイトゴーレム65体が巡回しておりそれを指揮するのはレイアードが崇拝する戦神アマネだ。大抵の夜盗集団ならオーバーキルもいい防備振りとなっている


最も件の警護目的の聖獣の中には神獣もいて高位悪魔もいるので夜盗処か軍だろうと余裕で相手どれるのだが・・・


「そうかそうか。また必要な時は素材持ってきてくれれば何時でも作るからな。それで今日は何用じゃ?」


ルーシェも慣れた所作で簡素な机に案内し相変わらず不愛想なマリステラにお茶の用意を指示する


「えと、早速なんだけどオークションの代理で落としてほしい目録持ってきたんだけどお願いしていいかしら?」


「どれどれ―――」


カレンから手渡された目録の記載量に驚きつつも1つ1つ目を通すが次第にルーシェの顔が渋くなる


「ふむふむ。結構な数じゃな、これは開催期間の3日全て掛かるのう。代理で競り落とすのは構わんがこれは流石にちょっと困ったのう・・・」


「ああ、ペルナンサスのアイスルーンワンドなら何が有っても責任は取るから大丈夫よ」


すかさずアリスが例の品が問題と思い至り大丈夫と言い張るがルーシェの懸念はそこでは無かった


「ん? ああ、品は問題じゃないんじゃ、子供なら兎も角カレンは立派な経営と工房を務める大人じゃからな、それに友人とは言え錬金術に関わる事なら詮索もせんよ」


カレンとは互いに感化し合う良い関係を築けているがそれでも錬金術師である以上個人の秘術に問う様な非常識な真似はしない、そんなルーシェにアリスは背中をバンバン叩いて褒め称える


「相変わらず良い男~! 日数が問題なの?」


「いや、儂の目当ての品も3日目に出品されるから日数も問題無い、単純にこれだけの数の競りとなったら星金貨4万から5万規模じゃろ? 荷馬車で5,6台は必要じゃからな・・・儂は元々は相乗りか隊商で向かうつもりじゃったから流石にこれは悪目立ち過ぎるし個人で行かねば問題になる。なにより護衛が必要になってくると思ってな、生憎儂はその辺の伝手が無いからのう・・・」


ルーシェの懸念通り今回の買い物用に荷馬車5台に粗星金貨5万枚詰めて用意するつもりだった

これ程の莫大な貨幣の輸送となれば幾ら隊商とはいえ不埒な輩に目を付けられるのは明白だ

ルーシェの目当ての品は星金貨300枚程なので懐に納めて隊商か相乗りで本国まで行くつもりだったがこれ程の荷となると信用の置ける護衛が必要になってくるが生憎ルーシェは素材採取の依頼もしてないので戦闘職の知古が全く居ないと難色を示す


「護衛・・・あっ! 凄い頼りになるトレハンの方がいますよ。勿論依頼金は払うのでどうかしら?」


護衛と聞いてカレンは真っ先にとあるトレハンを思い浮かべるが、その当のトレハンは以前の騒動もあって話を持ち掛けてもルーシェ同様に苦い顔になるだろうにカレンは気付かず話を進める


「う~む・・お前さんが言うなら腕は確かなのだろうが、金の輸送護衛となると大抵のものは嫌がるし確か組合の許可や審査もあるらしいが大丈夫かのう?」


護衛や討伐依頼と異なり貴重な荷や貨幣の輸送護衛となると戦闘技能だけでなく在籍年数と厳しい審査を受けなければならず、特殊な許可証が必要になる


何せ荷が荷だけにトラブルが絶えないのだ。

それは受けた側だけでなく依頼者にも言える事で貨幣の横領など言い掛かりを掛ける悪徳商人も多く、有資格者でも貨幣の輸送依頼は難を示す依頼となっている


「許可? 審査? どうだろう・・・トレハン組合で確認しないと判らないわ」


「それならカレン。私はここでルーシェと趣味の話咲かせてるから確認してきなさい」


「おっけ~。ささっと行ってきます!」


カレンが颯爽とトレハン組合へ向かった所で早速アリスとルーシェの趣味の談義が始まる

そして間もなくその矛先はマリステラに向かい使用人服はいいけど髪を伸ばしたり色を変えてはどうだと2人してマリステラをもみくちゃにしていた


トレハン組合で常連のシドを指名すると今回も丁度滞在していたようで直ぐに会えたがそのシドの顔はまたもやルルア渓谷への採集かと以前の騒動が過って引きつるがカレンが今回の依頼内容を伝えるとシドの様子が一変してカレンの腕を掴んで組合の隅へ連れて行き、そのような莫大な金額の依頼を往来で口にすると変な輩に付け込まれると注意した上でカレンの依頼への返事を返す


「あ~それでカレン嬢、それは請ける請けいない以前に資格が必要でな、生憎俺はその資格を持ってないので受けれないんだ」


シドの技量と在籍年数なら貨幣の輸送資格は取れるのだが仲間内から散々貨幣輸送のトラブルは耳にしていたので鼻からシドはそれを取得する気は無かった、なにより貨幣輸送となると依頼者への顔合わせでフードを捲らないといけないのでシドの種族柄それは論外だった


「そうなんですか・・・どうしよう」


資格が必要でシドにその資格がない以上無理に頼めず、他の者に頼もうにもシド以外面識も無く困り果てているカレンにシドが更に懸念事項を伝える


「本来なら何処の戦闘職組合でも依頼を出せば有資格者を紹介されるんだがカレン嬢の依頼の場合輸送だけの問題じゃないからな・・・かなり複雑な事になる」


「? どういう事ですか?」


カレンとしては単に往復の護衛のつもりだったがシドの次の言葉で事の重大さに気付く


「その金額の競りともなるとその代理購入者は良くも悪くも目立つだろう。オークション中は公共だけに危険は無いだろうが流石に絶対とは言い切れんし・・・むぅ、一度その代理購入者と会わせてくれんか? カレン嬢とその者が信用してくれるなら依頼で無く私的に往復とオークション中付き合うぞ」


星金貨5万も預けるとなると相手がどのような人柄なのか、カレンの不用心さから詐欺の可能性も考慮してのシドなりの提案だった

本来上級者のシドの護衛となると貨幣輸送以前に相当な依頼金が掛かるのだが私的な用事となればその辺りの問題も解決できる


シドの提案にカレンは1も2も無く飛びつくがシドから追加で意外な提案が出された


悪いがその代理購入者とカレン嬢抜きで合わせてくれ と


カレンは意図が掴めなかったがシドもルーシェも信用の置ける友人なので問題無いだろうと快諾するが流石にルーシェの工房へ勝手に案内する訳にはいかず、後日アマネと良く通う喫茶店で待ち合わせという事にしてルーシェの工房に戻り伝えると、ルーシェも一瞬熟考して意図を察して快諾する


尚出かける前と違ってマリステラの髪型が目元は覆ったままだが長髪になっており三つ編みで赤髪からピンクの髪になってたがカレンは益々可愛いと抱き着いて喜んでいたがマリステラはやはり無表情で無反応だった




そして約束の期日、ルーシェとアリスでお茶を満喫しているとシドが姿を現す


「でかっ! な、何じゃお主・・・巨人の子か?」


シドはシャルマーユ民の平均身長を大きく上回る2m程でフードで隠してるが頭上の狐の耳も相まって市井を歩けば頭2,3分飛び抜けるほど目立つ巨漢だ、ルーシェの反応も当然だった


「ははっその反応も久し振りだな。これでも人間だ。これが俺の身分証だ、生憎貨幣輸送の資格は無いんだが、カレン嬢から紹介されたと思うがシド・ガフリィという者だ。本職はトレハンで上位だが副職のアーチャーは最上位なのでルーシェ殿のオークションにも同行できるのでルーシェ殿が俺で納得してくれるなら依頼でなくカレン嬢の友人として私的に護衛を務めるがどうだろうか?」


シドとルーシェ互いに身分証を見せ合うもシドの身分証を目にしてルーシェは巷の噂を思い出す


「ふむふむ、アーチャーで最上位・・・成程のう。ガフリィ・・・ガフリィ!? 確かミスキア大陸で秘境を発見して聖遺物を発掘したという噂のトレハンか! それはまた有名な御仁じゃなっ」


ミスキア大陸は陸続きではあるものの脅威的な魔獣が蔓延っており未だ未開地も多く、そんな地で秘境を見つけ更には聖遺物まで発掘したとあって生まれ故郷だけにルーシェの耳にも入っていた


秘境もだがなにより発掘された聖遺物がミスキアに古くより伝わる宗派の法典に纏わる物なのでミスキアではシド・ガフリィの名は賢者並に轟いている


「秘境は誇れるが正直聖遺物は偶然の賜物だったので余り胸を張れる事ではないんだがな・・・まぁそれは兎も角、依頼の内容だがカレン嬢から聞く限り行きは兎も角、帰路は間違い無く盗賊の類に狙われると踏んでる。オークション中は恐らくは安全だろうが星金貨5万程の品を競り落として首都を離れるとなったら賊の恰好の的だからな」


「うむ、儂もそれを懸念しておったんじゃがお主なら安心して任せられるのう。儂は戦闘職の技量なんて見分けられんしカレンが信頼しておるなら儂もお主を頼るとしよう」


貨幣輸送の資格を抜きにしても著名なシド、そして紹介者がカレンということもあってルーシェは満足してシドと握手を交わし、それを黙ってみていたアリスも手を叩き2人の背をバシバシ叩いて満足気に浸る


「うんうん。話も纏まった様で良かったわ、こいつなら腕も柄も私も信用してるからルーシェ安心して!」


「これぐらいお安い御用さ。それとは別にアリス嬢とシャイタンには途方もない借りができたからな、せめてこれぐらいはやらせてくれ」


帰郷の際にエルフの襲撃を防いでくれたシャイタンに里を住み心地抜群の金城湯池へとしてくれたマルファスへの感謝の念は尽きず、村長と娘を筆頭に里総出でマルファスを里の守り神として崇めている程だ。但し娘のカンナはどういう訳かシャイタンだけは感謝はしてるが性に合わないとの事で文句も尽きなかったが


「あ~シャイタンから聞いたけど愉快な娘らしいわね。―――所で正規の手続きで護衛を雇ったら幾らぐらい掛かるの?」


アリスもシャイタンからシドの故郷での出来事を説明され、その際シドの娘のカンナについてはシャイタンが珍しく褒めており、どの様な人物か尋ねたら「能力は申し分なく、アリス様とカレン様を足して割ったような性格の気持ちのいい人物です」と聞かされアリスも興味津々だった


「ん? そうだな・・・俺もその手の仕事は無縁と高を括ってたから詳細は知らんが―――確か依頼者の身分が確固、この場合カレン嬢なら確かだな。そして輸送額に応じて有資格者を適した人数見繕うから星金貨5万ともなると・・・恐らく上位の者が5人は付くだろうな、依頼額は有資格者以外知らされてないから詳細な額は知らんが噂では組合の手数料込みで輸送金額の0.5%~1%とも聞くが正確な額は知らないんだ。恐らくその額を5人で頭割りといった所だろうな」


貨幣輸送の資格は組合からの推薦で取得資格があるのでその詳細は一般には知られておらず、有資格者も守秘義務から費用等についての詳細は伏せられている


「資格云々は儂も知らんが依頼額は1%で合っておるぞ。その内更に3割が組合に引かれるが抑々これ程の額の依頼なんぞ先ず無いからな。こんな大金を輸送となれば貴族か大商人で私設の護衛団有してるからのう」


正に実家の商家が私設の護衛団を有してるだけに深みのある台詞でそれで納得したアリスは席を立つ


「そう、ちょっと待ってなさい」


そして5分もしないでアリスは戻ってくるとシドとルーシェ其々に硬貨袋を気軽に手渡す


「それはカレンには内緒で私とシャイタンから2人への手間賃よ。返却は受け付けないから要らないなら寄付なり街中でばら撒くなり好きにして。それじゃカレンの為に宜しくね~」


正確にはアリスは文無しなのでシャイタンのお金なのだが、転移でシャイタンの元へ行き事情を説明すると一も二も無く快諾したシャイタンは一礼して金庫からご自由に幾らでもどうぞ。と言うのでシャイタンの分から星金貨1000枚を其々の硬貨袋に納め2人に支払い、これで用は済んだとアリスは颯爽と妹の工房へと去ってゆく




残された二人は状況から銀貨か金貨かと思い袋を確認すると驚きの余り呆れる程だった


「・・・・・星金貨500枚をぽんと手間賃か、太っ腹通り越して俺の価値観狂ってきそうだ」


「儂も星金貨500枚じゃ・・・あやつ金に価値見出しとらんじゃろ。友人とは言え星金貨5万を預けるなんてのう、星金貨5万ともなれば血を分けた貴族ですら醜い争いをする程なんじゃが」


自分でいうのもあれだと、ルーシェはあえて伏せていたが本来星金貨5万枚もの巨万の富となれば中堅の貴族ですら骨肉の争いで奪い合う程なのだがアシュリー姉妹は誓約書のせの字も出さずに口約束すらせず頼んだとだけいって預けると言う・・・


「俺もそれを懸念してカレン嬢を抜いてルーシェ殿を確認しようと思ったんだが、あのアリス嬢も一目置いてるなら無用の心配だったな。3週間華の無い旅になるが宜しく頼む」


こうして中年男性2人の華の無い3週間の旅が決まった


・・・・・

・・・・

・・・

・・



予定の3週間を過ぎても未だルーシェは戻ってこず、カレンは心配していたのだがそのルーシェから早馬で手紙が届き内容に一喜一憂してしまう


オークションは無事済んだんじゃがやはり帰路でオークションで競り合った相手が雇った盗賊連中に出くわしてガフリィ殿が見事撃退してくれたんじゃがそやつらの連行で馬足が遅れてルルアに着くまであと4日は掛かりそうじゃ



そんな一騒動も有ったが無事ルルアに戻ったシドとルーシェはその足でアシュリー工房へと報告に


「盗賊に襲われたって? 例の秘宝絡み?」


「いや、ルーシェ殿がドラゴンの素材を競い合った貴族の雇った連中だ」


「アイスルーンワンドについてはまぁ予想外というか想定通りというか、やはり誰も競りに参加せんでな、国の偉いさんが体裁を保つ為に一声掛けただけで余裕で落とせたわい。最も注目の的になってしまったがのう」


実際の所アイスルーンワンドについては持ち込んだペルナンサスの大貴族の体裁の手前公共オークションに出展はしたものの、どの貴族もその後ろ暗い背景を察して尻込みをしてしまい、このままでは拙いと財務関係者が名乗り出たが内心ではそんな曰くの品欲しく無ければ万が一にも手にしても政治的に拙いので落札はしたくないということもあってルーシェの更なる名乗りに胸中安堵していた


「荷台に頼まれた品全て競り落として積んであるぞ、それと預かってた予算じゃが秘宝がほぼ開始値で落とせたから星金貨1600枚は残っとるぞい、本来ならもう200枚ぐらいは残る筈じゃったんじゃが流石にドラゴンの素材で貴族連中が躍起になっての・・・一応目録には上限無しで絶対買う! と書いとったから競り落としたがドラゴンの素材3種で星金貨1300枚掛かったぞ」


ペルナンサスの秘宝と打って変わってドラゴンの素材は予想以上に白熱し開始価格の星金貨150枚から10倍近くの値段と大競りとなった


貴族界隈ではドラゴンの素材ともあれば借金をしてでも家宝にしたい品だけに秘宝を除いて大一番の品だった


「全然かまわないわ! ありがとっ!! ルーシェさんの目的の品は買えたの?」


ルーシェから目録と其々の品の購入証明書・余った軍資金を受け取りつつもカレンはルーシェのオークション結果も尋ねる


「ああ、儂の目的はマリステラの核に用いるエーテル波動の活性化を増幅させるマテリアルじゃったからな、競り相手もほとんどおらずに予算内で落とせたわい」


「マテリアル!? ということはついに・・・」


「うむ、錬成陣を構築次第お前さんら姉妹には手伝ってもらいたい」


「「おっけ~!!」」


今回に限りトレハン組合を通さない私的な依頼だったのでトレハン組合に報告の必要はなく、依頼達成とルーシェとシドの二名は馬車を残し工房を後にする。そして工房の住民総出で荷台を確認する。




「ほ~こいつがドラゴンの鱗に眼球と尻尾ねぇ」


戦闘技能が皆無で魔獣等への造士も無いコボルトにとって手にした素材はドラゴンの素材と言われても今一実感が沸かないが落札価格からそれだけの価値はあると大事に一品一品観察するがやはりコボルトには用途も不明の一魔獣の部位にしか思えなかった


「ホワイトドラゴンの幼体だな」


コボルトの身長程の1m程の尻尾を軽々と片手で持ちあげシャイタンがその種を明かす

竜種なら低位であろうとシャイタンでも相手にしたくない相手だがドラゴンとなれば話は別で成体の高位のドラゴンだろうとシャイタンからすれば力のある蜥蜴に過ぎない


「幼体つってもドラゴンなんだからやっぱ強えんだろ?」


「そうだな・・・格で言うなら最上級の魔獣の中でも中位といった所か」


最上級の中堅ともなれば如何な徒党でも遭遇戦ではまず勝ち目は無く、事前に念入りに準備と覚悟を決めた大規模集団での戦闘が必須となる


今回のホワイトドラゴンは運よく本国を本拠地にしている高名な戦闘職の徒党が軍より先にドラゴンの情報を仕入れ見事打倒した産物だ。


「そりゃ貴族様も欲しがるわけだ。おいカレン、こいつは今すぐ錬成する訳じゃねんだろ?」


「当然よ。先ずは研究してどのような魔道具を創れるか、そして錬成陣の構築を追及しないといけないから当分先になるわね」


ドラゴンの素材となれば創れる魔道具の幅は膨大で、ドラゴンの素材を用いた錬成自体数が少ないので研究だけでも相当の月日が必要になる。


かつてカレンが断腸の思いで手放したユニコーンの角の粉末や阿呆の子妖精の魔力入りテンキュウと同様一品物なのだから暫くはドラゴンの素材への研究に没頭する算段だ。


「その間店先に飾っとくか。箔が付くだろうぜ」


こうしてコボルトとシャイタンにより荷馬車の荷は工房内へと運ばれるが兎姉妹だけその場で留まり妹兎がとある品を抱えて恍惚としていた


「それは任せるわ。先ずはこのアイスルーンワンドで・・・・ふへへぇ♪」


「カレン、私も手伝うからね!」


「はい!」


ドラゴンの素材は研究の後に錬成予定だが今抱いてるアイスルーンワンドは直ぐにでも錬成予定だ


「・・・頼むから前みたいに緘口令が敷かれる魔道具の類だけは勘弁してくれよ」


コボルトの警告も届かず・・・そして後日、念願の大規模錬成台による初めての錬成を試みる姉妹兎

素材は言わずもがなペルナンサスの秘宝、アイスルーンワンド―――

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