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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
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06話 物申す錬金術師

幻神歴2958年02月04日


益々人が集まり騒ぎが大きくなる衆人環視の中、いい大人のカレンに抱き着かれ耳元でギャーギャー泣かれる様は流石にコボルトも耐えられず、カレンを引きずるような形でなんとか錬金術教導組合に逃げ込む。


組合内の受付前の備え付けの椅子にカレンを座らせ事情を知ってるであろうリールーに尋ねるために受付に向かう。

受付には別の女性がおりリールーを呼んでほしい旨を伝えてカレンの元に戻り簡潔に要件だけ伝えろと説明を要求するが・・・


「わだじのごれくしょんがぁ~……うぅ、うわあああん!!」


全く要領を得ないので大人しくリールーを待つことにする


(錬成品取られたと言ってたが買取じゃなくて没収されたってことか? どうなってんだ?)


皆目見当もつかないので適当にカレンの頭をポンポン慰めているとリールーが奥の部屋から現れカレンを一目見て溜息を零し、コボルトに視線を向けて苦笑いを浮かべて会話を切り出してくれた。


「あはは、・・・どうも、事情の説明が必要ですよね?」


「私のコレクション返して~~!!!」


リールーはカレンが視野に入らないのかさっきから只管(ひたすら)に返してと連呼してるが華麗にスルーしてコボルトに向き合う。

この対応振りを見ただけで最早辟易するほどに同じ対応を繰り返したのだろうと予想できリールーに同情的になってしまうコボルトだった。


「こんな有様なんで説明のほうお願ぇします、聞いた限りでは錬成品が没収されたとか言ってますがポーションや原石になにか不備でもありましたかい?」


流石に換金用のポーションや原石が何かしらの不備で買取不可となると今後の予定が大きく変わるのでまずそこの所を確認して安堵したいと願う


「いえいえ、原石も香水も問題無く取引もさせて頂きました。ポーションは前例の無い品なので値段の付けようがないので後日組合長が薬学組合の方と価格の設定を相談するので一旦お品は預からせて頂いております」


「なんでぃ問題無いじゃないですか。しかも香水まで買い取ってくれたんですかい、感謝しますぜ。―――ってことはこいつのガラクタが問題か。売れないにしても没収するのはどうかと・・・」


ポーションが前例が無いという事で後回しとなったが話ぶりから買取は可能と判断し、残りは例のガラクタかと察したコボルトはここで漸く話の流れが掴めたのでもうコボルト的にはどうでもいい話となったのでカレンの建前上一応は返却を要望しようとするが…


「危険物準備罪で指名手配されますよ」


「……うぇ?」


リールーの様子が豹変し先程までの慌てふためいた顔つきと異なり目が据わっており冷淡に問題を指摘する


そしてその問題はコボルトにとってもどうでもいいなどと言ってられない大事だった。


「カレンさんの作成された魔道具14点。どれもグレーを通り越して真っ黒な違法兵器の類です、まずエーテルも魔力も不要で誰でも手軽に発動させる事が出来る大規模破壊魔法を使い捨てで使用できる宝玉・周囲のエーテルに干渉して遠視する鏡・いつ爆発するか不明の魔力爆弾・・・」


「あの、すいませんもういいです。ほんとすみませんこの馬鹿には強く言って聞かせるので何卒ここだけの話で・・・」


数年振りに顔中に冷や汗を浮かべ蒼白となってコボルトは大人しく土下座して許しを請う

改めてカレンのガラクタ作成力に呆れながらもリールーには感謝の念しか浮かばず、これがリールーだったからこそ没収で済んだものの他の人だった場合通報間違いない案件だった。


「ちょっとコボルト! 私のコレクション取り返してよ!」


前後の話も耳に入らず只管にコレクションにしか意識の無いカレンは事今に至っても取り返そうとしていた


「どこまで馬鹿なんだおめぇはっ! んな物騒なもん所持が許されるわけねぇだろ。つかいつ爆発するかわからん爆弾って・・・そんな物騒なもんとこの一月共にしてたのかよ・・・」


未だ騒ぐカレンを押さえつけ一緒に土下座の姿勢に入ってリールーに謝罪を続けるも爆弾と一月一緒に過ごした事を想像すると背筋に氷柱を突っ込まれた思いだった。


「売らずに大事に保管するからっ! お願いリールーこの通り、どうか返して~」


コボルトの説得にも耳を傾けず土下座までしてリールーに詰め寄り大切なコレクション(危険物)の奪還を目論むがそんな姿勢で絆される受付員は居らず、リールーもカレンの両肩に手を置いて子供に言い聞かすようにできるだけ噛み砕いて懇切丁寧に説明する。


「はぁ~。カレンさんあのですね、あれらは所持してるだけでとても危ないので違法なんです。お返ししたところで帰りの道中衛兵に見つかったらいい訳無用で即逮捕ですよ。危険物準備罪は国家反逆にも通じますから裁判すら無く即処刑になりますよ」


本来ならこのような武器を所持してるのを見かけた時点で衛兵に知らせなければならないのだがカレンの余りの世間知らず振りと無邪気ゆえの過ちに目を瞑り、組合でカレンの錬成品の実績提供という形で処理したので審査後に多少はカレンの評価が組合で上がる事となる。


武器商人でもなければどの職だろうと許可が無い限りカレンの錬成した危険物の所持は厳禁で、ある意味で凄い品には変わらないので今回のリールーの采配となったのだ。


「……そうなの?」


「はい、確実に」


「うう、わかったわぁ。ごめんなさいね」


漸く落ち着きを取り戻したカレンは未だ意気消沈したままだがなんとかコボルトに支えられながら立ち上がりリールーに謝罪する。


「判って貰えて良かったです。それで預かってるポーションの値段が決まったらお知らせに伺いますので滞在先を教えていただけますか?」


「それなら明後日まではスピカ亭って宿に宿泊予定でさ。明後日以降は不明なのでその時に知らせに来ますぜ」


「スピカ亭ですね。分かりました」


「ご迷惑かけてすいやせんでしたね。こんな奴ですが今後もよろしく頼みまさ」


「ごめんね。今度また香水や紅茶のお話しましょ」


「ええ、楽しみにしております」


食い違いが解けコボルトは握手を交わしカレンはリールーに軽くハグして2.3言葉を交わして組合を退出する。

外に出ると既に人溜まりは霧散しておりリリーがポツンと佇んでいた。


荷台の採取品と先程購入した物資は無事だったのでスピカ亭へと馬車を走行させ、御者台ではコボルトの説教が延々と続いていた…




スピカ亭に着いた頃には夕刻となり一階の食堂は賑わいを見せカレンとコボルトも席に着き夕飯に舌鼓を打ちながらもカレンへの説教は嫌味へと変わり只管にカレンを煽っていた。


「私の努力の結晶をガラクタ扱いしないで! きっとポーションや原石なんて足元にも及ばない高値で売れるわ! だったか?」


「私は自分の作った道具に自信と誇りがあるから平気よ ねぇ」


全く似せる気の無い声真似までして煽り、今日の鬱憤(うっぷん)を晴らし満足したコボルトは止めを宣告する


「今度一週間市場で芸を披露してもらうからな」


「ぐぬぬっ」


結局この日の夕飯のおかずは殆どコボルトに奪われ涙目で人前で芸を披露するという追い打ちまで喰らい散々な目に合い、今日はもう早く休みたいと葡萄酒もそこそこに切り上げ部屋に戻り、コボルトの今日の成果が気になりベッドに横になりながらコボルトに尋ねる。


「そういえばあんたの首尾はどうだったの?」


今日はもうこのまま宿から出るつもりもないのでローブを脱いでピンクの肌着と黒のホットパンツとだらしない恰好になり髪を手櫛で梳いたりしてウサ耳がパタパタと振れ動き開放感を満喫していた。


「おう、取り合えず一週間分の衣服や日用雑貨は買っといた。それとこれを見掛けたからおめぇにやるよ」


今日買い込んだ品を詰めた荷物袋から黒のローブを取り出すとそれをベッドの上で仰向けになってるカレンの上に被せる


カレンが起き上がりローブを見渡すと普段の羊毛の黒のローブとは異なり、絹生地で誂えられており背中一面に銀糸で月と蝶が刺繍されており、二の腕辺りまでケープが付いており袖元は返してあり裏地は紫となっておりそこにも銀糸で花等の刺繍が施されており上質な修道服にも見える品だ。


「…綺麗。高かったんじゃないの?」


下着等は選べるが服となると顔のアイマスクのせいで殆どの服装が不似合いになってしまい魔法師でもないのにローブを纏う事になり外見のお洒落は諦めていたのだが、この町ではローブ1つでも様々な種類があり余裕があるなら自分もローブで着飾りたいと薄々感じていた所での意表を突いたプレゼントに上手く言葉も返せずついつい値段を聞いてしまう


「―――――まぁ、あれだ。おめぇの門出の祝いだ」


カレンの服装事情を知っていたので市場でこれを見掛けた時に値段も確認せずについ手に取り店主に売ってくれと勢いで買ってしまい、コボルトの懐はかなり寒くなってしまったが後悔は無かった。


今でも買って良かったと確信している。

昔カレンが何かの切っ掛けで絵物語を見て登場人物の貴族の姫のドレス姿に姉の服装を連想して自分もお洒落できたらなぁ、と呟いていたのを覚えていたのだ。


「ありがと。大事するわ」


宣言通りカレンは後にこのローブに大金を掛けて魔法師に頼み不懐・永続化の魔法を掛けてもらい後生大事に愛用することになる





「おうよ。それで土地屋で聞いたところ工房として売り物件は3つあって其々の値段を聞いて図面も預かってきたぜ」


「どんなの?」


「まずこっちの召喚師の工房なんだが、建物や家具などそのままで金貨280枚と安いんだが、前の住人が捕まって処刑されたとかで縁起もくそもねぇからこれは論外としてだ」


「ふむふむ」


縁起など当てにしてないカレンだが他所の工房と聞いてあまり関心も沸かないので素直に除外して次に期待する


「こっちは土地だけだが近隣に住民がいねぇし金は割増になるが水場が近くにあって風呂も作れるし農産地が近くて植物の採取ができる。代わりに商業区から離れてるせいで植物以外の仕入れが難点だな。この土地は金貨350枚だ」


「お風呂! いいわね。仕入れはどうせコボルト任せだから殆ど不都合無いじゃない!」


大衆浴場の利用ができないカレンにとって自宅兼工房に自前の風呂があるというのは高評価だ。

ポーションや香水に利用する植物等も農産地から直に仕入られるのも大きい、商業区が遠いというのは面倒だが風呂の有用さに比べると霞んでしまう


「俺っちにもわからん専門的なもんやおめぇが直に目にしないとわからないもんもあるだろうが…」


指摘された通り錬成素材には自分の眼で確かめないと判らない品も多く、そもそも錬金術の知識の無いコボルトだと掘り出し物を見つけるのも無理なのだ、以前の麓の村で仕入れた他国の植物は偶然の産物だったのを思い出し自分で商業区へ通う事も考慮するとこの距離は確かに難点となる


「ぐっ、そ、そうね。次は?」


「こっちが俺っちのお勧めで商業区画の中央にあるだけでもメリットが大きいがなにより前の商店の店がそのまま残ってるから建築費用が浮いて改築費用で済むのが大きい。店の土地の広さ的には先の土地の半分程だがそれでも十分工房としてやっていける広さだ。この土地が金貨470枚だ」


「う~ん、広さ的にはこっちでも十分ね。ただ金貨470枚かぁ…」


立地条件は文句無しで既に建物があるのも確かに大きく、建築費用が抑えられるのは嬉しい点だ

図面には風呂は無いがむしろそれが当たり前なので先の土地の建築費用を考慮するとコボルトの言う通り此方の物件が確かに良いのは判るが…

金貨470枚もの大金となるとエーテルポーションの代金が入ってもとても手が届きそうになくどうしたものか思案する

そんな呟きに反応してコボルトは販売できた錬成品の成果を聞き忘れていたので尋ねる


「そういや、ポーションは不明としても原石と香水は幾らになったんだ?」


「えっとね、原石が金貨55枚と銀貨198枚で香水が金貨40枚と銀貨205枚だったわ」


「はぁ!? どっちも想像以上に高値じゃねぇか! 特に香水そんな価値あんのか!? それなら道中で採取した植物で香水作って売れればいい資金元になるな」


懐から硬貨袋を2つ取り出しベッドの上に中身を広げるとコボルトが歓喜の声を上げ予想外の大収入に珍しく鼻息荒くはしゃぐ


確かに買取価格でこの収入なので自前で販売したら更に利益は上がるのだからポーションの代金+細々と錬成して売りさばけば遠くない内に工房が持てる算段は高い。


「錬成しようにも錬成台や錬成器具、素材が必要だから今すぐは無理だけどね、ポーションのお金が入ったら今後の計画を考えましょ」


「そうだな。今日の売上金は昨日の軍資金に残した金貨25枚と合わせてそのまま温存しとくぜ」


「ええ、お願い」


大きい硬貨袋を取り出し其方に昨日の金貨25枚と今日の売上金の金貨120枚と銀貨403枚を纏めて今度はカレンが管理する事になったので自前のショルダーバッグの整理を済ませバッグの奥に硬貨袋を収める、寝る前にコボルトと一緒にもう一度先程の土地の図面を流し読みしながら土地を買ったら何処を手入れするかなど取り止めの無い話を繰り返していた。


明日は一日宿で休息という予定も決まった所でそろそろ蝋燭を消そうとしたところでカレンが驚愕の声を上げ何事かとコボルトはカレンのベッドに腰掛けてカレンの手にしていた図面を覗き見る。


召喚師の工房の見取り図を見てカレンは固まってる様でどうしたのか呼掛ける


「!? ちょっと! コボルト、あんたこの召喚師の工房、地下があるじゃない!」


「んあ? ああ、二階が無いから召喚獣用に地下を造ったんだろうな。それがどした?」


地下のなにがそんなに驚く事なのか判らず、適当に促すコボルト


「地下工房なんて憧れるじゃない! ここにしましょう!!」


どうやら地下工房という響きがカレンの琴線に触れたらしく、まるで子供の秘密基地を目にしたような興奮振りで、その様を見て逆にコボルトは冷静になれたので説き伏せる。


「いや、おめぇ…前の主人が処刑されたって説明したろ。そんな縁起悪い所で商売始める商人なんかいねぇし、客も気味悪がってこねぇよ」


「構わないわよ、私は錬金術師よ。そんな迷信、地下工房の魅力に比べたら鼻で飛ばせるわっ」


「・・・ちょっと図面見せな――――はぁ、まぁ、おめぇの工房だ。おめぇが良いってんなら此処でいいだろ。ここなら金貨280枚だしな」


前情報で既に除外していたので召喚師の工房の見取り図は正確に見てなかったのでカレンから預かり図面に記載されてる見取り図を観察して考慮する。


この工房は営業はせずに研究に専念していたようで間取りが営業用とは異なるが地上一階建てで地下室があり、見取り図では地下室は何もない空間だが、一階は部屋が3つと浴場と調理場となっており正面玄関の部屋が広いのでここを売り場にすれば奥で生活もできるし間取り図を見る限りではなんら問題は無い。


地下のなにがそんなに気に入ったのかコボルトは理解できないが他の2つの土地では地下室の建造は難しいか不可なので譲歩案として決める前に一度現地を目にしてから再検討ということになった。


「決まりね! 此処を買うのに残りの金貨127枚かぁ。ポーションの代金が入ったら一度土地屋にいって相談してみましょう」


カレンとしては既にこの工房に決まっており地下工房で錬成する未来の自分の様を想像してだらしない顔を浮かべている。

元々はテンゲン大樹海に住んでいた頃から地下工房に憧れていたのだが地下室の建築は地上より費用は勿論のこと必要な建築技能も跳ね上がるので我儘と理解していたので口にすることは無かった。


そんな理想が目の前となり夢心地で蝋燭を消しベッドに潜り眠りに就く。



翌日の正午、食堂で昼食の奪い合いをしてる最中にリールーが訪ねて来て、「昨日はごたついて渡せなくてすみません」と商業組合への推薦状をおずおずと差出してきたのでお礼を述べてリールーも食事に誘い3人で賑やかに食事を再開し錬金術談義に花を咲かせる。


リールー曰く、エーテルポーションの価格について上部の話し合いが長引きそうなのでその間のスピカ亭の宿代は錬金術教導組合が負担するとのことで2人の宿事情の心配は消え、昼食を終えるとリールーは組合に戻り、コボルトは市場の把握へと早々に出かけてしまい、カレンもすることが無いのでそのまま推薦状を持って商業組合へと向かう事にした。



すれ違う住民に商業組合の場所を訪ねながらも辿り着いた組合は同じ組合である筈の錬金術教導組合とは真逆の印象をカレンは感じた。

建物物の規模自体は錬金組合と大差なく、違いは錬金組合とは別の神、商人の神ヤカテクトリのシンボルが看板になってるぐらいだ。

しかし組合内に足を運ぶと違いが目に見えていた。


2度訪ねた錬金術教導組合は2度ともカレン以外の利用客に会わず、受付内にも3人しかいなかったが商業組合は人で溢れ返っており受付員も10人以上おり目まぐるしく組合内を駆け回っており待合室は満室で活気の差に驚きながらも列に並ぶ。


「ようこそ商業組合ルルア支部へ。どのようなご用向きでしょうか?」


受付員の女性は自分やリールーに比べるとまだ幼さが伺え少女といった雰囲気だが希薄な印象だった


「錬金組合の者だけど工房を持って商売を視野にいれてるので組合から此処への紹介状を預かってきたわ」


リールーから受け取った紹介状と身分証を一緒に提示する


「お預かりします。―――確かに確認致しました。詳細は錬金組合から伺ってる様なので身分証の更新をさせて頂きますね。銀貨20枚掛かりますが本日更新なさいますか?」


「ええ、お願いするわ」


「有難うございます、更新中の間に注意事項だけご説明させて頂きます」


代金を受け取った受付員は錬金組合でも見た謎の機械に身分証を差し込み、やはり奇怪な音が奏でられる


そしてそんな道具が気になってしまうカレンは「ねぇ、その道具って買えるの?」と尋ねると受付員が意表を突かれたようで様子を崩すが直ぐに「此方は神器で組合のみ所有が許された物なので個人での所有は認められておりません」と返され残念そうに返事を返す。

しかし混雑振りから少しでも時間を省略したいと気を取り直し続きを促す。


「商売は初めてだからよろしくお願いね」


「はい。一般の商人ですと組合員同士のトラブルや事故についての保証については当組合が請け負うのですがカレンさんの場合は錬金組合が対応されますので商業組合は商品の販売買取が主な利用になると思います。

ただ、錬金組合でも説明されたと思いますが錬成品は全て組合で審査して商品に問題無しと許可が下りたらご自身のお店で販売が可能ですが商品の性質によっては錬金組合か商業組合から販売価格や販売数の制限が掛かる事が有ります。

これは独占禁止法等の理由からくる処置なのでご理解ください」


「判ったわ」


「それと隊商への参加、及び作りたい場合は当組合でのみ受け付けます。つまり当組合以外の隊商は当組合は関与しませんので責任は取れませんのでご注意ください、稀に追剥ぎ目的の偽の隊商の募集がありますのでお気をつけてください」


「了解、まだ先の話なんだけど隊商程の規模でなくて個人で採取する際の護衛なんかもここで頼めるのかしら?」


「個人での護衛依頼でしたら各戦闘職やトレジャーハンターの組合でご自身で直接依頼して交渉する事になります」


隊商は自分には無縁と判断し、より現実的な個人的な護衛について尋ねるが直接依頼はまだしも交渉まで自分でするとは思わず壁に当たってしまい、これは返ってコボルトと要相談と心に注意書きして置く。


「最後に、これは商業組合内での暗黙の戒めのようなものですが。


欲の無い商人は大成せず、強欲な商人は金貨を手に孤立する


商売人である以上、自身の取り扱う商品の価格はご自身で自由に決めて販売する権利はありますが度が過ぎると身を亡ぼすという戒めです」


「有難う、心に刻んでおくわ」


「はい、身分証の更新が済みましたのでお返し致します。それでは、ヤカテクトリ神の加護を」


「ありがと」


身分証明書

シャルマーユ皇国

錬金術教導組合 ルルア支部所属

商業組合 ルルア支部所属

氏名:カレン・アシュリー

年齢:24歳

性別:女性

下位錬金術師

最下位商人師

物質錬成C 生命錬成F 製薬錬成B

商売技能F 交渉技能F


こうしてまた一歩理想に近づくカレン。

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