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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
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05話 泣き虫な錬金術師

幻神歴2958年02月04日


コボルトと別れたカレンは錬金術教導組合の一室に一通り荷物を運び込みが完了し、部屋を見渡すと昨日の部屋より簡素な机と対の椅子が4つあるだけだったが机の上と床に持ち込んだ錬成品を置き、一度退室したリールーが再度入室すると両手で抱える程の分厚い目録書を手に改めてリールーから注意事項を説明される。


「昨日の説明でもお話した通り錬成品は全て一度は組合で品質管理され、その後買取、もしくはご自身で販売の許可が下ります。組合への販売の場合、他の商店への販売額より額は下がりますが買取上限も無くオリジナルの錬成品も買取できますので是非ご利用ください」


「今回は全て組合に買い取ってもらうつもりだからよろしくね」


これもコボルトと話し合った結果だが確かにぽっと出の怪しい錬金術師の持ち込んだ品など買い叩かれるのが関の山なのでそれなら組合で多少価格は下がろうと適正で買い取ってもらうほうが良しという話になったので今回は金額を気にせず組合に買い取ってもらう腹積もりだ。


「それでは、早速商品を確認させて頂きますね」


「ええ、まずはこっち。錬成した原石よ」


机の上にあった袋を一旦床に置き別の袋を机に置いて中身を取り出し机に広げる。

大樹海で稀に見つかるクズ原石をコボルトが拾い集め、それを錬成した原石の山だった。

100近くある原石を一つ一つ丁寧にリールーは目録書と照らし合わせながら観察して全て確認し終えると笑顔でカレンに伝える。


「結構な数ですね。―――水晶が38点、シトリンが21点、ガーネットが14点、アメジストが16点、翡翠が19点、オパールが8点。どれも一級品の原石で確かに錬成品ですね、はい、問題有りません。此方の品は店頭で販売予定ですか? 当組合で買取も可能ですよ。原石の供給が少なくて需要が大きいですから高値で買い取らせて頂きますよ」


「全部買取でお願い」


「畏まりました、それでは―――其々の単価ですが水晶が金貨1枚と銀貨8枚・シトリンが銀貨3枚・ガーネットが銀貨7枚・アメジストが銀貨4枚・翡翠が銀貨5枚・オパールが金貨1枚と銀貨3枚となりますが宜しいでしょうか?」


「ええ、それでお願いするわ。それにしてもオパールは判るけど水晶も思ったより高額なのね」


テンゲン大樹海では他の宝石原石より水晶原石が良く見つかり錬成の過程で書物で宝石の需要も調べたが水晶は魔法の行使以外は精々が水に浸して聖水にするぐらいの需要しか無かった筈だが、他の宝石より高く査定されたので疑問をぶつける


「水晶は上級魔法の行使や召喚獣の契約に必須なのですがそれ以上に教会が祈りの度に使用するので需要が跳ね上がり今では原石の中ではダイヤやオパールに次いで高価ですね」


「なるほどねぇ」


教会関係となれば納得の行く話だ。カレンの知ってるだけで宗派は6つはあり其々魔を司る神や豊穣を司る神など様々だが総じて協会に関わる金銭は桁が跳ね上がる。

最もカレンは錬金術を司る神ヘルメス・トリスメギストスも含めてどの神も信奉してないので触らぬ神になんとやら、興味も無いので適当に促しておく事にした。


「お支払いの硬貨の比率は如何しますか?」


「金貨55枚と残り銀貨でお願い」


「畏まりました、では金貨55枚と銀貨198枚になります」


流石買取の上限無しと謳うだけあって代金の支払いも目録書と一緒に持参した大硬貨袋から即金で手渡され原石だけでかなりの収入とホクホク顔でカレンも代金を硬貨袋に収めて次の商品を提示する


「ありがと、次はポーションね。どれも永続化を施した体力とエーテルの両方を同時に回復させるポーションが180本あるわ」


「・・・・・・はい?」


「え?」


原石同様普通に説明したつもりだがリールーは固まってしまい呆けてしまっていた

永続化はポーションの基本でエーテル回復はカレンのオリジナルだが効能は中級程度なので上級や最上級のような飛び抜けた効能は無い代物だが・・・


「―――エーテルの回復?」


「え、ええ」


「・・・見本として一本今使用しますがよろしいですか?」


リールーは震える手で鑑定らしき魔法を行使して中身の安全性を確認する


「どうぞ」


どうしても信じられないが今目の前に持参しておいて偽りの情報を伝える意味も無いのだが念の為と一本前置きして蓋を開けて黄色の水薬を飲み干す


「・・・・嘘、本当に体内のエーテルが活性化してる。ありえない・・・」


半信半疑だったが身をもって実感して効能が本物と知るとカレンを置き去りに1人ブツブツと思考し始める

そんなリールーを気にせず此方も高値で売れるか気になり顔を近付けリールーに尋ねる。


「普通のポーションと区別化の為にエーテルポーションと呼んでるけどどうかしら? 普通の水薬より高くなるかしら?」


「カレンさん!」


「え、な、なに」


先程と一変し驚愕の顔つきで眼鏡も少しずれてるのも気にせず逆にカレンに詰め寄り呑気な本人に状況を捲し立てる


「それ所じゃありませんよ!! エーテルの回復なんて今まで一部の最上級幻獣や召喚獣の回復以外に手段が無かったんですから凄い品ですよ!!」


「そ、そうなの?」


「はい! 此方の品については前例も無く検討もつかないので買取分預からせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「じゃあ残り179本全部預けるわ」


「畏まりました、それと通常の下級や中級のポーションも作成できますよね?」


「ええ、今回作ってこなかったけど下級は間違いなくできるし中級も恐らく錬成可能よ」


「了解しました、ではこちらのエーテルポーションについては組合長と要検討しますので数日お時間をください」


カレンとしては少し捻りを加えたポーションを錬成した程度の実感だったがリールーに鬼気迫る勢いで説明され漸く結構凄いポーション作れたのかしら程度には理解できた。

最もこのポーションが後に複数の組合を混乱に陥れる羽目になるとはカレンもリールーも想像だにしていなかった。


「分ったわ。それじゃ次だけど・・・コボルト曰くあまり需要無いらしいけど売れるかしら? 香水なのだけど」


原石や水薬とは打って変わって先程より気弱に商品を広げるカレン、事前にコボルトに需要が無いと釘を刺されてたので余り見込みの無い品だが、それでも自信をもって錬成した物に変わりは無いのだから恐る恐るリールーに伺う


「!? 香水ですかっ! 確かに嗜好品なので需要は分かれますがそれでも好事家や富裕層の女性には大人気ですよ!」


先程のポーションとはまた違うベクトルで驚くリールー、ここはやはり同じ女性特有身嗜みに関する商品なのでリールー個人的にも興味はあるのだろうと判断しカレンはサプライズを思いつく。


「そうなの? 一応全部持ってきたけどデイジーが3個・ジャスミンが5個・ローズが3個・ラベンダーが6個。それと他国の僻地から仕入れた植物で錬成した伽羅・百合が其々2個ね」


「す、凄いですね。これだけ大量の香水なんて初めてお目にかかれました」


香水は錬成の難度が高い上に需要も少ないのであまり錬成する錬金術師も居らずこれだけのまとまった量の香水を目にするのは初めてだった。

そんなリールーの様子にカレンは満足気にある提案をする。


「ねぇリールー、よかったら1つ貰って」


「え、いいんですか?!」


カレンの提案に驚きつつもその誘惑に抗えず目の前の香水に目移りしてしまうリールー


「ええ、お近づきの印ってやつよ」


「わわっ、有難うございます! それじゃあ・・・この百合という香りの香水を頂いていいでしょうか?」


「あら、気が合いそうね。同じ地で抽出した伽羅が私のお気に入りなのだけど百合の香りも好きだわ」


てっきりラベンダーかローズ辺りを選ぶと思ったが、自分と同じ香りが薄い割りに良い香りのする別大陸の植物の百合を選んだことで頃更親近感が沸き上がり、そこから暫くどの花が好きでどのような香りが良いかと話が逸れ「また香水の新作ができたら内緒であげるね」と女性2人姦しく話し合っていたが先にリールーが審査の途中だったことを思い出し話を戻す。


「あ、有難うございます! それで此方の香水も買取でよろしいのでしょうか?」


「ええ、お願い」


買取という事で目録書を捲りながら香水の項目に目を通し1つ1つ値段を確認する。

そんなリールーの作業を見ていてその目録書に興味の引かれたカレンは「それって販売してるの?」と尋ねるととんでもない! と組合の秘匿情報なので閲覧すら出来ませんよと言われ、益々興味を持ったカレンがどうにか覗き込めないかと体を不自然に動かし盗み見ようとするがリールーに察知され目録書を膝元に置いてしまいカレンは溜息をついてしまう


「ええっと、香水の項目はっ、と。え~容器が大きいのでこの容器ですと1つで2つ分の値段になりますね。其々単価がデイジーが金貨2枚と銀貨14枚・ジャスミンが金貨2枚と銀貨9枚・ローズが金貨2枚・ラベンダーが金貨2枚と銀貨3枚。伽羅と百合は未確認なので希少性を考慮して金貨3枚で如何でしょうか?」


「ええ、十分よ。それも全部買取お願いね」


「畏まりました、此方の硬貨の比率は如何致しますか?」


「そうね――金貨40枚と残り銀貨で」


「承りました、此方金貨40枚と銀貨205枚になります」


香水の代金も硬貨袋に収めるといよいよ待ちに待ったお手製の魔道具の査定となりこれまでにないドヤドヤ顔で机の上に魔道具の数々を並べて予め予習していた宣伝文句を始める。



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カレンが錬成品の審査を受けてる最中、コボルトは市場を駆け回りより安い店を求めて品定めをしていた。

大抵の買い物予定の品は見定めたが購入は後にしてまずは土地屋で話が先だ。

現状の一向でも土地の購入が可能、もしくは手が届きそうな額なら買い物の内容も大きく変わるし土地の購入が不可能、または想像以上の高値で手が届きそうも無ければそれはそれで買い物の内容もまた変わるのでまずは土地屋だ。


土地屋ともなれば何処の誰に聞いても分かるようなものなので腹ごしらえも兼ねて先程から腹の虫を刺激する肉の焼ける匂いを放つ屋台に注文がてら尋ねる事にする。


「おっちゃん、串焼き2本貰えますかい?」


「毎度! あんた召喚獣かい?」


「いやいや、幻獣のコボルトでさ」


「そうかそうか、どっちでもいいさね。銅貨3枚にまけとくよ!」


頭部が禿げ上がり太陽光を反射させるがそれを隠しもせずに鉢巻きを巻いた浅黒い肌の体付きの大きい店主は気前よくサービスしてくれたので代金を払い串焼きをそのまま2本受け取り2本同時に齧りつき丸飲みすると主目的を切り出す


「ありがてぇ、今度この町で相棒が工房を開く予定なんでよかったら覗いてくだせぇ」


「へぇ、工房っつうと魔法師か召喚師かい?」


「錬金術師でさ。それで店を建てる為に土地を確認したいんですがね、この町で土地を買うとなったら何処に行けばいいか教えてほしんでさ」


「ああ、それなら向こうに時計塔があるだろ、その左の建物で代官が土地管理してるから行ってみな」


「助かりまさ、ついでに串焼きもう2本頂きますぜ」


主人の指差した所にはルルア一番の高さの時計塔がありこれ以上無い程の特徴であっさりと目的地も判った事で景気付けに更に追加注文して腹を満たしておく事にした。







「こりゃ店ってより貴族様の屋敷まんまじゃねぇか」


目的地には着いたもののそれは屋号等無い豪奢な建物で門こそ無いものの一階建てではあるが貴族の屋敷そのものな家が時計塔の隣に堂々と佇んでいた。


(これどう見ても事前に予約とか必要なんじゃないか? このまま入ったら問題になるんじゃねぇか?)


屋敷の前で踏ん切りが着かず20分ほど右往左往していると丁度その屋敷から2人の男が出てきて握手を交わして別れ1人は自分が来た方向に、もう1人は屋敷に戻ろうとしたのでこれを機に声を掛ける。


「ちょいとすみません、ここで土地の管理をしてると聞いてきたんですが予約とか必要ですかね?」


「いえいえ、予約の有無関係無く当店ではいつでも歓迎しております。どうぞ中へ」


明らかに上質で仕立ての良いスーツを着こなした貴族然とした初老の紳士でコボルトにも先程の客? 同様礼儀正しく接してくれ、コボルトも人物評価を上げる。


「こりゃどうも」


家内に入るとそのまま客間へと通されたがやはり貴族の屋敷を彷彿とさせる装飾品や調度品で彩り良く飾られており主人に促されて椅子に座ると見計らったかのように使用人が果実水を2人分机に用意して下がってゆく。


「ようこそ。この地を治める領主、シャナード・ガル・ルルア・ゲイツ様より代官を命じられたレントン・ハッセが構える土地整理屋で私はルナード・スイランと申します。本日はどのようなご用向きでしょうか?」


予想はしてたがやはり貴族の直系の店と知り改めて畏まりできるだけ言葉遣いをコボルトなりに正す事に注意して要件を話す


「ご丁寧にどうも。あっしは先日相棒の錬金術師と共にルルアに越してきたコボルトでさ。実はその相棒がこのルルアで工房を持ちたいと考えてましてね、今は組合で色々手続き中でその間にあっしが土地の目星をと思いまして寄らせてもらいました」


「なるほど。ルルア在住の組合員でしたら土地の販売や賃貸は勿論可能で御座います。―――ただ、工房となりますと建築場所に幾つか制限があるので、まずは此方の空き地の一覧をご覧ください」


ルナードが背面の書棚から書類を取り出し机に広げるとルルアを上空から丸写ししたかのような正確な製図を正面に置き隣に複数の書類を並べる。

制限については当初から計算の内なので問題は無い、工房ともなれば危険も視野に入れなければならないので何処でも好きに建設できる訳は無く、予め定められた範囲の中で建てる予定だ。


「こりゃ見事な製図ですな」


町とはいえ正確な製図となると中々お目にかかれず、これ程の製図ともなれば作成に相当な労力と費用が掛かってる訳で、これだけで貴族の力が窺い知れる。


「此方の地図には商業区画・貴族屋敷区画・一般居住区画・農産区画・その他主要区画とありますが工房が建てられるのはこの内の商業区画と一般居住区画のみですね。それらの空き地は・・・此方になります」


「商業区画は空きが2つしかないんですかい・・・一般居住区画は結構あるが、そもそも一般居住区に建てるのも問題になるんでは?」


隣の書類をコボルトに差し出し製図と照らし合わせながら丁寧に説明してくれるが想像以上に空き家が少なく、一般居住区には結構な数の空き家があるが、そもそも一般居住区で工房など建てようものなら問題になるのではと尋ねる


「ええ、法的に一般居住区画に工房を建てるのは問題無いのですが、実際は音や異臭等で近隣トラブルの元になるのでお勧めはできませんが、その・・・この様な工房を持つ方の中には偏屈な方もおりまして・・・」


「なるほど、安心してくだせぇ。うちの相棒はその辺弁えてるので商業区画内で店を構えますぜ。―――といっても空きが2つしかない上にその内の1つは区画内でも辺境もいいところですな。一応其々の良し悪しと値段を教えて貰えますかい?」


値段にもよるがなるべく賃貸ではなく買取で契約を結びたいので此処での選択が大事と気を引き締めルナードの説明に注視する。


「はい。ですがその前に工房と聞きまして是非お勧めが御座いまして。元は召喚師の工房なのですが商業区画のやや北にありまして近隣に建築物は無く土地内に花壇も有り、地下も有り工房内に召喚獣用の大きい浴場もあるのですが・・・・」


「へぇ~! そいつはいいじゃないですかっ。なにか難点が?」


出鼻から掘り出し物を見つけたような面持ちで話を聞くが言葉尻が弱くなっていく所から訳アリ物件と察したコボルトはその訳アリを問う


「ええ、その・・・実は前の持ち主の召喚師が禁術に手を出したとかで捕えられ処刑されまして・・・正直住民も気味悪がって近づかず、工房もまだ当時のまま手付かずなんですよ」


訳アリ処か爆弾物件だった。

職業問わず商売をする者は大なり小なり縁起を担ぐ者でこのような爆弾物件で店を構えるなど論外である。

どれだけ安かろうとその工房は除外するとして形式として一応値段を尋ねる


「うへぁ~・・・ちなみにその土地の値段は?」


「諸々の事情込みで金貨280枚です・・・本来なら金貨350枚が相場なのですが・・・建物内に生活用品や家具など雑貨がそのまま残っておりまして処分代等も考慮しての値段となっております」


(まじかよ。建物付きかつ生活用品そのままとか最高じゃねぇか。訳アリじゃなけじゃ飛びつきたい物件だが。残念でしょうがねぇ)


「りょ、了解でさ。空きの説明をお願ぇします」


「はい。まず此方の農産区画に程なく隣接された土地ですと近隣に建物が無いので土地をフル活用した中規模の工房が建てられます。そしてなにかと必要になる植物の輸入が直で入手できますし、水車も近くにあるので水の確保が容易で建築次第で風呂も建てられます。なにより周りが農業区域なので夕方になる頃には人気は無いので殆ど音や匂い等気にせず作業に専念できるかと。難点はやはり商業区域から遠いので植物以外の輸入が難点かと、此方の土地は金貨350枚になります」


「ふむ、この土地の広さだとどれ位の建物が建築可能ですかね?」


「そうですね、錬金術教導組合と同等の大きさの建築物が建てられますね」


ルナードに進められ果実水で口を潤し熟考する


近隣に住民が居ないのは+ポイント

水場が近く風呂も建てれるというのも大きく+ポイント

農産地が近くて植物の仕入れが捗るのも+ポイント


逆に


商業区から離れてるせいで植物以外の仕入れが難点なのが-ポイント


(-点が1つだがこの1つが大きいな・・・)


「う~む、もう1つのほうも説明してもらえますかい?」


「承知致しました。此方は商業区画の中央に位置するお勧め物件で、去年此方の商店が移転により空いた空き地で商業区画の中央だけあって必要な物は大抵の物は揃えられるでしょう。更にお勧めなのが店がまだそのまま残ってますのでそのまま工房に活用できるかと、そうなれば改築費用だけで済むので建築費用を大きく抑える事が出来るでしょう」


「なるほど、店がそのままってのは有難いですな」


「ええ、店の大きさは先の土地よりは狭くなりますがそれでも錬金術教導組合の半分程の大きさになります。難点としては精々が建物がそのままあるぐらいで、お気に召さない場合取り壊し作業の費用が掛かるぐらいかと。此方の土地は金貨470枚になります」


(建築費用まで浮かせられるなら多少の店の恰好など我慢できるし立地も問題無い、こりゃ決まりだな)


此方の土地なら店付きで金貨470枚とカレンとコボルトにとって好都合な事この上ないので此方を一押しとしてカレンと相談して決める事にする。


「どっちも一長一短ですなぁ、しかし二ヵ所しか空きが無いってのは選択肢としては痛いですなぁ、それだけ活性化してるって証明でもあるんでしょうが」


此処からは世間話に移行させ相手のご機嫌伺いに移る

貴族相手でも抜け目のないコボルトだった。


「ええ、幻魔泣戦(げんまきゅうせん)からの復興に領主様が尽力し、移民を受け入れ住民と移民が一致団結して復興に励んだお陰です。――選択肢といえば一応もう1つ在りまして既に店を構えてる店主に直交渉して土地を譲ってもらうというのがりますが当然空き地を買うより値段は跳ね上がりますし、なにより店を閉める事を視野に入れた店主を探すのも一苦労ですので相当な時間を要しますね」


「直交渉も視野に入れてたんですがやっぱ難しいですかねぇ」


「シャルマーユ全体が好景気で此処ルルアも漏れずに全体的に景気が良くて何処も移転以外にはどうしても・・・」


「了解でさ、とりあえずその3つの候補から相棒と相談してみます。それで本契約となった場合必要な手続きは何があります?」


「そうですね、買取でしたら土地の代金と書類等の手数料で金貨5枚必要経費となります。組合員でしたら他の諸々の手続きは此方で直接組合へと済ませますので当日に契約書に記入して頂くだけで問題有りません。賃貸となると組合の保証が必要になるので組合の者を交えて賃貸料の相談になります」


「わかりやした。それじゃ今日はこのまま案件持ち帰って相棒と相談するんでこの3つの見取り図預かってもいいですかね?」


「ええ、構いません。是非またのお越しをお待ちしております」



土地屋を後にしたコボルトは先に見定めていた当面必要な物資を購入し錬金術教導組合へとカレンを迎えに馬車を走行させていた。


(中々の収穫だったな。金貨470枚か・・・あいつの錬成品の売値次第だがこの土地は抑えたいところだな・・・っと)


錬金術教導組合に近づくにつれ異様な光景がコボルトを出迎える

否、理解はできるがしたくない光景だった、カレンが錬金術教導組合の扉の前で(うずくま)り子供かと見間違う様なギャン泣きしていた・・・・・

子供ならまだ理解できるがいい大人が大衆の面前で晒すには同情を通り越して痛ましい有様だった…


当然周辺に物見遊山で人混みもできておりあそこに割って入るのはご免と踵を返そうとしたところでカレンと顔が合い此方に飛びついてくる


「うわあああん!! ごぼるどぉ~錬成品どられぢゃっだぁ~~!!!」


周囲の目も気にせず涙と鼻水を擦り付けながら涙声で訴える内容に


「・・・はぁ?」


これしか返せなかった。


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