49話 掻き回される錬金術師
はぁ? お前私に妹を騙せって言うの? 殺すぞ
嫌々! 騙してないだろう。シャイタンお前なら判るだろ
ふむ・・・成程な。アリス様、これはカレン様の為になるでしょう
それは判るけど・・・カレンに嘘は付きたくないわ!
そうですね。私奴もカレン様に嘘などアリス様の命でも承服致しかねます。―――ですが、嘘を付く必要も無く、良い案があるのですが
本当かっ!?
お前・・・またカレンに意地悪するつもりでしょ
はい。カレン様への些細な意地悪は私奴には愉悦以上の娯楽を超えた生き甲斐ですので
なぁ頼む! 賢者連中も困っててどうしようもないんだ
はぁ・・・分ったわよ。貸しにするわ―――カレンが掠り傷1つでも負ったら私自分を抑える自信無いしその気も無いから
本当か! 助かる!! 護衛は任せろ
その前に剣聖、礼の約束の代価は今どれぐらいある?
ん? ああ、それならカザネの元に馬車10台分満載に積んで停めてある。
今も集めさせてるが何せ広大でな、今は捜索隊も増したから蒐集速度は増すだろうが流石に全土にはまだ遠く及ばん。それと流石に目立ち過ぎるので今回は10台分だが本国に馬車にして凡そ200台分は集まってる。
次来る時にまた10台分持ってくるか、直ぐにあるだけ欲しいならお前が取りに来い。
お前なら一度に全部持っていけるだろ
この様子だと半年あれば全土蒐集できるだろう。
結構、じっくり楽しみたいから急がん。次来る時にまた10台分でいい。くくくっ
こうしてカレンが地下工房で少しでも目的(ドラゴンの素材)の為に資金を稼ごうと魔道具の研究をしてる最中、自室では1羽と1人と1柱が計画を練っていた
そしてその内容をアマネとコボルトにも知らせた所、アマネは純粋にカレンの功績に凄いと称賛してノリノリで、コボルトはカレンの困り様などどうでも良いから正当な評価をと嬉々として結託してリールーの元へ向かい計画と条件を打ち合わせる
リールーはそれは素晴らしいですと悪者顔で承諾した
こんな素晴らしい家族と友人に囲まれカレンはさぞ幸せ者だろう
知らぬは当の本人だけとなっていた・・・・・
幻神歴2960年1月08日
ルルア支部錬金術教導組合
本国から戻ったリールーは真っ先に自分を生贄にした組合長に会いに行き鬼神の如く怒り狂って「詐欺師バージルめっ!」と殴り掛かりバージルの必死な謝罪と弁明そして少なくない賠償でなんとかその場を収め、本国での結果を伝えこの件が済んだら故郷のテスラに移勤するべきだと内心で決心する。この場で伝えなかったのは詐欺師バージルの横槍を警戒しての事だった。
そして
鴨成らぬ兎が嬉々とした顔で鍋の元へやってきた
コボルトからリールーから報酬が決まったと聞いてカレンは即座に錬金組合に駆けつけ、慣れ親しんだリールーを呼びつけわくわくと結果を尋ねる
「それでリールー! 私の提供したのは報酬どれぐらい貰えるの!?」
今回持ち込んだ試作品は魔道具では無いし効果も明らかに異常な物もあった
馬鹿な自分でも判る、此処ルルアで益々ポーションに関して有名になってしまい魔道具専門と世間の風評が掛け離れてしまう
魔道具専門としてるカレンとしてはそれは耐えられないが・・・それでも今回ばかりはそれを飲み込んで少しでもドラゴンの素材の為に資金を稼ぎたい、最低でも星金貨300枚以上等どう考えても有り得ない額を稼がねばならないのだ。手段を選んでられない
今回の報酬とコボルトの部屋の一切合切を売り払い、アマネに土下座してお金を借りて少しでも目標額に近づかないと、と必死なのだ
「その件ですが余りの効能の凄さにとある偉い方が特別に直接会って話したいそうです。報酬についてはそれはもう途方もないでしょうね」
リールーは笑顔ですらすらと述べる
「途方もない・・・うへへぇ♪」
それを聞いたカレンはマスク越しでも判るにやけ顔で空想に耽る。もしかしたら星金貨300枚も夢じゃないかもと
フード内のうさ耳はぴくぴく震えていた
だが、それと同時に聞き逃せない単語も混じっていて現実に戻る
「―――ぇ? 待って。偉い方ってまさかまた領主様じゃないでしょうね!?」
手段は選んでいられないとはいえ以前の受勲式での醜態が過ってその目的すら吹き飛ぶ
リールーには実績提供の際に報酬金だけ欲しいから他は適当に任せると前もって伝えてあるし
同性で信用の置ける友人のリールーには受勲式での醜態を以前に打ち明けもうあんなのは御免だと泣きながら懇願した経緯もある
それを知ってるだけにあのような場を友人が進めるとは思えないが念の為確認する
「いえいえ領主様ではありませんよ。そもそも貴族様ですら有りません」
「そうなの?」
領主ではない、貴族ですらない、ならどこぞの大商人とかが気に入ってくれたのだろうと思い取り敢えず安堵するカレン
「はい。それはもうカレンさんの持ち込んだ品々に絶賛して莫大な報酬を約束してくれました」
「凄い! おっけ~!! いつ会えばいいの?」
「4日後にアシュリー工房に馬車で迎えに行きます。ああ、安心してください。私も終始着いて行きますので」
「おっけ~♪」
リールーも一緒ということはもうあの堅苦しい場は有り得ないと確信して莫大な報酬の約束と聞いて再び目的を思い出しドラゴンの素材に近づくと喜色満面で快諾する
「ああ、それと往復で一週間は掛かるので工房の皆さんにお伝えください」
「・・・は? 一週間? なんで?」
再び目的が吹き飛び訳が分からず疑問をぶつける
ルルアの端から端まで馬車なら往復でも1日もあればできるのに一週間とはどういう事だと
「なんでって、此処ルルアではなく他の町ですから往復で一週間は掛かります」
「待って。ルルアを出るなんて聞いてない!」
「今伝えました」
「一週間って・・・他の町って、その・・・大丈夫? 私の、その、種族・・・」
ルルア領内を出て他の町へ行くなんて予想もしていなかったしそのつもりも一切無い
自分の種族の特性を知ってるだけに人間にばれると酷い目に遭うか文字通り食われると解ってるだけにそんな怖い真似できる訳がない。唯でさえ当時はこの町ルルアへの移住すら決死の覚悟だったのだ。
臆病なカレンが他の町に行くなどあり得ない、偶々ルルアで知り合った人間が皆優しかっただけで他もそうとは限らない
他町に赴くなんて想像もして無かっただけにぼそぼそと戦々恐々とたどたどしくリールーに確認する
「ええ、それは大丈夫です。ルルア以上に厳重な警護で治安も一番優れてるのでむしろ此処以上に安全です」
友人の種族を知ってる受付嬢が治安の悪い所へ連れて行く訳がない。この受付嬢は優しいのだ
何一つ嘘は言ってないしルルアより厳重な警護で治安も優れている、それはもう国内でこれ以上ない程最も優れている
「そう・・・でも一週間も・・・う~ん・・・あれ買うには少しでもお金は欲しいけど・・・でもなぁ・・・怖いし―――あっ!」
リールーから安全とは聞いても種族が種族故にどうしても不安が過る・・・ドラゴンの素材の為に少しでも資金は稼ぎたい・・・だが安全とは言え他の町へ行く等予想もして無かっただけに決めあぐねる
どう考えてもこれは私1人で判断する事では無いしするべきではないだろうと、そこでカレンは閃く
家族と相談しよう! と、全幅の信頼の置ける家族(1人偶に意地悪)に打ち明けどうするか決めようと
「帰って姉様や皆と相談するからどうするか明日返事してもいい?」
「勿論です。アシュリー工房の皆さんと『良く』話し合ってください」
(コボルトさん余裕でしたよ。約束通り嘘は付いてません♪そしてシャイタンさん、葱をお願いしますね♪)
こうして受付嬢は営業スマイルでトボトボと帰宅するカレンを見送る
友人の笑顔? を背に帰宅したカレンは姉妹で腕を振るい料理を作り、夕餉を家族で囲みその場で家族に事情を打ち明け他の町へ行く事になるけどどうしたらいいか相談する
アリスは「安全なのは確かだからカレンの好きなように決めなさい」と自分の意思を尊重してくれた
アマネは「カレンちゃんの凄い発明品なんだから当然行くべきですぅ♪」と称賛と応援をくれた
コボルトは「正当な評価を受け取りに行くだけだから大丈夫だろ」と背中を押してくれた
頼れる姉が安全と言い尊重してくれた、アマネが応援してくれ、コボルトが最後に背中を押してくれた
やっぱり正直に打ち明け相談して正解だったと、カレンは安堵してじゃ一晩じっくり考えようと決心しかけた所で驚きの一言がカレンに掛かる
「私奴も是非行かれるべきかと、カレン様の素晴らしい発明品に相応しい代償を得るべきだと具申致します」
食事中は何故か無言に徹するシャイタンが初めて夕餉の最中にも関わらず言葉を発した
それと同時に他の家族3人は口を閉ざした
もう1人の頼れる家族の言葉だが彼は偶に意地悪なのだ
そんな彼が食事中に言葉を発するなんて嫌な予感しかしないとカレンの頭の中の警告の鐘が鳴り響く
「―――シャイタンさんが食事中に話すなんて初めてでちょっと不気味だわ・・・」
不気味過ぎてうさ耳は前後に激しく揺れていた
アイマスクの奥では疑心の眼をシャイタンに向けるカレン
「これは驚かせてしまい申し訳ありません。私奴は食事の際に言葉を交わす事に慣れて無く、つい無言になってしまうのですが別段、深い意図は有りません」
そう言ってシャイタンは手にした食器を食卓においてにこやかにカレンを見つめる
シャイタンの偶に出る意地悪な時の笑顔だった
疑心が核心に変わってうさ耳は逆立って警戒を促す
「・・・・・そんなシャイタンさんが行くべきなんて言うなら嫌な予感しかしないからやっぱりやめとくわ」
この偶に意地悪なシャイタンに言葉で敵わない、そもそもこの怪しい笑顔の時は言葉を交わす事自体間違いだと散々意地悪を受けたカレンは悟っていた
だから逃げに徹した
「そうですか。カレン様がお決めになったのならそれが宜しいかと。ただ、私見ですが残念です。カレン様は是非行かれるべきだと主に進言したく思うのですが」
そう告げてわざとらしく肩を落として溜息を付くシャイタンにカレンはこれは絶対意地悪をするつもりだと確信して部屋に逃げようとする
「な、何よっ! わ、私はもうシャイタンさんの性格知ってるんだからっ」
「ほう、主に私奴の事を知って頂けるとは光栄です」
「お、脅しとか・・・暴力には屈しないわよ!!」
まだまだ全然シャイタンを理解していないカレンだった
「くくくっ、敬愛するカレン様に暴力や脅しなど例え我が主たるアリス様の命でも私奴がする筈有り得ません」
そういってにこやかな笑顔で懐からとある物を取り出す
それはカレンが喉から手が出るほど欲しかった最希少素材だった。以前錬金組合で要請した所市場に出ないのでそもそも買えないと言われ肩を落とした品が目の前に、シャイタンの手にある
「っ!? ぐっ・・・も、もので釣ろうったってそうは・・・ごくっ・・・そうはいかないわよ!」
と言いつつ思わず生唾を飲み込み視線は素材に、うさ耳もパタパタと正直だった
「主を釣ろう等と畏れ多い。ただ不要な物を処分するだけで御座います」
そう言ってシャイタンは手にした素材を手品かなにかしらで一瞬で燃やし尽くし灰に帰す
「ふぁっ!? な、なんてことをっ!!?」
カレンからしたら金貨の山を炉にくべる暴挙だった
うさ耳は見たこと無いような面妖な動きをしていた
「いえね、以前幾つかこのような素材を偶々手にしたのですが、知っての通り私奴は錬金術には無縁でして。不要なので処分しようかと思いまして」
そう言って又しても次の素材を取り出す
それもカレンが喉から手が出るほど欲しい最希少素材だった
これも錬金組合で以下同文
「やっ、止めてぇ!! それがどれ程希少な物か知ってるの?!」
頭を抱えつつもその素材の価値と希少性をこの場の誰よりも知ってるだけにカレンからしたら星金貨と同等に等しいと理解していた
「浅学な私奴には判り兼ねます」
主の悲痛な訴えも虚しく次なる素材も灰に帰した
「ああっ~~!!!」
大悪神の所業にカレンは頭を抱え悲鳴を上げる
星金貨を炉にくべるなど有り得ない! とかつての自分の所業を棚に上げ混迷する
「なにせ量がありまして嵩張って仕方無いのです」
そして更に次の素材を取り出したシャイタンにカレンが敵う訳も無く・・・
「そ、それはっ!? や、やめてえ!! 判った! 言う通りにするからそれだけはぁ・・・・」
机に身を乗り出し涙目にして這々の体でシャイタンの腕にしがみ付き阻止する
「おや、私奴の進言はお断りすると先程申されたような?」
「なんでもするからそれは燃やさないでぇ!」
大悪神の計略にお馬鹿でか弱い小兎が敵う筈も無く、呆気なく言質を取られる
「なんでも―――で御座いますか?」
「うんうんっ! だからその素材は私に・・・」
「ああ、カレン様はこの素材をご所望でしたか。仰っていただければ幾らでもお譲りしましたのに」
そう言ってシャイタンは懐から素材を机の上に山積みする、収まりきらなかったので床にドサドサ無造作に積んだそれは文字通り山の如くだった
交渉時は言葉の一つ一つが非常に重いものとなる。
言葉尻を捉えて、内容を掻き回したり、有利に運ぶのは鉄則だ。この点、シャイタンの言は何も約束してないし、何よりも時間を稼ぐ事が出来る。シャイタンの所業にカレンは素材を欲しいとは驚きの余り口にする余裕も無かった
主であるカレンが欲しいと言えば即座に献上するのだが・・・・・シャイタンにとってカレンを手玉に取るなど造作も無い娯楽だった
「うへ、うへへぇ♪」
目の前の素材に心を奪われたカレンは最早確認するまでも無く言い成りだった
「所で先程なんでもと仰いましたが進言はご了承頂けるという事で宜しいでしょうか?」
「ふぇ? おっけ~おっけ~。にへへ♪」
もう自分が何を口走ってるのかも蚊帳の外で目の前の素材に首ったけだった
コボルトは呆れた
(こいつ救いようのねぇ阿呆だな)
アマネは益々惚れた
(カレンちゃん、大悪神相手になんでもなんて・・・でもそんな純情なカレンちゃんが好きですよぉ)
アリスは心配した
(カレン・・・ちょろすぎてお姉ちゃん本格的に心配だわ)
その頃とある受付嬢は自宅でほくそ笑んでいた
(精々私と同じ目に有ってください♪)
シャイタンは愉悦と慈しみの入り混じった笑顔で目の前で素材を手に恍惚とするカレンを眺めていた
そして葱に釣られて何かに憑りつかれたかのように上機嫌で魔道具を開発していたカレンに訪れた約束の期日
リールーが素朴ながら幌馬車を1台と衛視2名(2人共何度か自分を捕まえた知り合いだった)を連れて迎えに来た
意地悪な使い魔に釣られていたがいざこの場でやっと正気に戻ったカレン
此処までお膳立てされてシャイタンに言質も取られた以上覚悟は決めたがそれでも往復で一週間となると夜盗や魔獣などの脅威が過り、怖いと涙目でリールーに訴えると警護があるので大丈夫です♪と自信を持って言い張るので友人? を信用しておっかなびっくり幌馬車に乗って渓谷以外の遠路の旅に出た
道中休憩や食事、就寝の合間の都度リールーにその警護って見えないけど本当なのかと恐怖心から尋ねるがリールーは一言安全ですと言い張るだけだった
カレンの心配は当然だがリールーの安全という言葉も当然だった。
なにせカレン以外は知っているが素朴な幌馬車の周囲を視認できない距離から本来陛下の護衛を務める第一近衛団が全力で警護しているのだから・・・
そして一向すら知らないが何故かその第一近衛団に紛れてロックも居るのだ。それはもう第一近衛団の力の入り様が判るものだ。
何よりも安全な警護と言えるだろう、間違いなく
そして当然の如く無事に目的地に辿り着いた一向はカレンの驚き様を無視してあれよあれよと連れて建物内を進む
賢者会議の場
陛下の座する部分には薄い暗幕が掛けられており御姿が朧気にしか観えない
賢者会議の出席者は皆固唾を呑んでいた
そして陛下が厳かに宣言する
「皆も周知の通りこれよりカレン・アシュリーと賢者ジルの話し合いが始まる。余は最後に恩賞を告げるだけで余とジル以外はこの場での当人への言動を慎め。結果次第ではシャルマーユの賢者が代替わりとなる。よって箝口令は敷かぬがこの場でのカレン・アシュリーとリールー・エイシャ2名のあらゆる行動言動に一切の罪を問わぬ」
皆一斉に頷く
賢者ジルは己が崇拝する神を拝め、御言葉が頂けると狂喜に満ち溢れていた
そして賢者ルードは本来の席でなくフードを被り従者の側に紛れていた。今後の計画の為に此処で素性を知られたら困るとの計らいだった(カレン嬢の姿を見るのは久しいのう。健やかかのう)と呑気に考えていた
粛々と場の準備が整い陛下が指示を出そうとした所で場違いな問答が賢者会議の場に届く
「ね、ねぇリールー・・・此処、領主様の城より大きいんだけど・・・」
「ええ、当然ですね」
「嫌な予感がするんだけど・・・そのお礼くれる人ってもしかして貴族じゃないの?」
「いえいえ、貴族様では有りませんよ」
「此処どうみても貴族の城じゃないっ!?」
「当然じゃないですか。ここはシャルマーユ本国の皇城ですから。シャルマーユで一番素晴らしい立派な建造物です」
「・・・は?! 本国? ここ本国なの? 皇城? 陛下? 嘘付きっ!」
「失礼ですね。私は嘘なんて言ってませんよ」
「陛下って貴族じゃない!! お礼くれる人って陛下? ぇ? 陛下に会うの? 冗談じゃないわ!! 帰るわ!!!」
「衛視さんお願いします」
「なっ! ちょ、離して!! こんなの聞いてない!! それにこれあのときの布じゃないっ! まさかまた受勲? いやああああ!!!」
「失礼な・・・布でなく大綬ですよ。恩賞を賜って下さるのは陛下では有りませんよ。賢者様です」
「――へ? なんで皇城に賢者がいるの?」
「なんでって・・・賢者様だから当然じゃないですか」
「賢者って組合長みたいな人でしょ? 組合長でも流石に皇城には入れないんじゃないの?」
「この馬鹿っ!」
バシッ!
「痛いっ! 酷いわっリールー!」
「組合長と賢者様が同格な訳無いでしょう! 賢者様は組合を統べる総帥で実質陛下の次席に値する地位にある御方です! あんな詐欺師組合長なんかと比べるのも烏滸がましいですよっ!」
「な、なによそれっ! 聞いてない! 陛下の次に偉いって貴族じゃない。嘘つきっ! 騙したわね!!」
「賢者様に貴族様の位は有りません。なので貴族様では有りませんし何一つ嘘は言ってませんよ」
「?? 貴族じゃないのに偉いの? じゃあ領主様の部下みたいなもの?」
「馬鹿っ!」
バシッ!
「痛いっ! ぽんぽん叩かないでっ!」
「ルルアの領主様は伯爵の地位ですが賢者様は貴族の位に関係無く陛下の次席なので抑々比べられません!」
「ねぇ伯爵って何?」
「は?」
「え?」
「カレンさん・・・貴族様の爵位の地位がどれ程あるか把握してないのですか?」
「爵位ってなに? 貴族は貴族でしょ? ぇ? 貴族に種類ってあるの?」
「―――もういいです。それは生きて帰れたらあの詐欺師組合長にでも聞いてください。私は無事生きて帰れたらもうテスラに移勤するので。あとはもう好きに珍品作ってあの詐欺師組合長を精々存分に苦しめてください」
「生きてって!? なによそれ! い、いやぁ!! ねぇなんか知らないけどその貴族? と会うんでしょ? もうあんなのごめんよ! 一緒に帰りましょ?」
「ですから賢者様は貴族様ではありませんって。それに私はテスラに帰郷してパパとママの元で平穏に過ごします。貴女とあの詐欺師組合長とルルアに居たら私の人生破綻します。唯でさえ貴女がアマネさん連れてご飯をたかりに入り浸るせいで私ルルアではもうすっかり同性愛者に小児性愛者と勘違いされて結婚処か友人にまで引かれて滅茶苦茶ですよ! もうルルアはご免です。未練も有りません」
「ね、ねぇじゃあ私もそのテスラってとこに一緒に住むから一緒に帰りましょ? 私その偉い人とのマナーとか知らないから、もうあんなの御免よ!」
「大丈夫ですよ。陛下も賢者の皆様もお優しい御方なので領主様との謁見の時の様に聞かれた時だけ答えて後は膝を付て俯いていてください。貴女の馬鹿な発言で貴女の首が飛ぶのは勝手ですが巻き添えはご免ですから」
「な、なによそれ! 賢者の皆様って賢者って1人じゃないの!? それに陛下が居るなんて聞いてない! いやあああ!!!」
「恩賞を賜って下さるのが賢者様で陛下もお立合いになられます。陛下と謁見できるなんて光栄ですね。最も私は詐欺師組合長のお陰で既に経験しましたが」
「もういやああ!!! おねがいかえらせてえ!!! あんなのごめんよ!! 一緒にテスラに逃げましょ!?」
「貴女がいないからテスラに帰郷するんです! 貴女が来るとパパとママにまで被害が及ぶのでルルアで面白可笑しく珍品作って好きに暴れてください!」
「リールー酷い! こんなの聞いてない!!」
「聞かれませんでしたから。それとフード捲ってください。いつ呼ばれるか判りませんから」
「なっ!? 無理に決まってるでしょ! 貴族に玉兎ってばれたら私食べられちゃうわ!!」
「賢者会議の皆様既にご存知ですよ。シャルマーユは亜人差別反対主義国ですよ。陛下も賢者の皆様も亜人差別思想なんて有りませんし食べる訳無いでしょう」
「っ!? 皆にばれてるの? さてはリールー私を陛下に売ったのね!? 友達だと思ってたのに酷い!! 貴族なんて領主様が特別優しいだけで他の貴族なんてどうせ業突く張りで見栄っ張りで市民を虐げてるんでしょ! いやああ姉様たすけてぇええ!!!!!」
「「「「「・・・・・・」」」」」
賢者会議の場は国の政を決める最重要部署だ
当然の如く間諜対策に様々な対策が科されている、防音もその一つだ。そしてそのような最重要部署なのだから外部の音声は遮断する訳も無く・・・問題の2人の珍問答が賢者会議の場に筒抜けだった・・・・・
陛下は又も威厳はあるものの明らかに呆れた声音で告げる
「――――先程の言を一部訂正する。この場で無く、城内での2人のあらゆる行動言動に一切の罪を問わぬ。意図は判るな」
またもや皆無言で一斉に頷く
こうして阿呆の子がまんまとだまされて陛下との謁見が始まる
―――のだが肝心の陛下に一抹の不安が過った
(アリス・・・・これに引っかかる時点でカレンは阿呆の子だと判ったがそれ以前に色々問題あり過ぎるだろこれ・・)




