39話 幕間 姉兎の素材蒐集の旅 中編
とある辺境の国の市場をうろついて目ぼしい物を探していると背後で物騒なやり取りを聴覚の優れたアリスが聞き取る
(はぁ・・・またか)
「おいあれ! 玉兎じゃねぇか?」
「うへっまじかよ。しかも雌の超上玉じゃねぇか」
「あいつの着てる服、見慣れないがさぞ高価なもんだろうぜ。どこぞの貴族の愛玩奴隷か?」
「なんで玉兎が素性を隠しもせずに街中うろついてんだ?」
「あの村から追い出されたはぐれもんだろ。先月奴隷共売ってまだ懐もあるしあいつは俺らで楽しもうぜ」
「おい、念の為アジトの仲間呼んで来い。女とはいえ玉兎といや魔法やエーテル技に優れたやつだろうから数揃えろ」
最早聞き慣れて、飽きたやり取りで、怒りすら沸いてこないアリスだが
(これだから人間界うろつくの面倒なのよねぇ。どうせ返り討ちにしても碌なもん持ってないだろうし・・・けど――『あの村』ねぇ―――あっ、丁度いいから貯蔵しとこ)
アリスは腰に巻いた腰布とスリットの合間から一冊の魔導書を取り出す
正確にはそれは魔導書では無く異界書に分類される代物だった
擬似奇跡・転換呪魂
生後3000日以内の魔法を習得していない純粋な魔力を所有した幼子を99人生贄にして魂を物質化・固定化させ極度の呪いが付与された魔道具を作成
この呪法によって精製されたのがアリスの手元にある異界書であり効果は生贄と呪いにまつわるだけあって人道を逸した代物だ
対象物:擬似奇跡・転換呪魂による産物
対象範囲:使用者本人
対象効果:保存されている魂の消費量に応じて魔力増幅が可能
※この力を行使して発動した魔法は属性に問わず呪いの付加が確定
魂の収納方法:対象物を手にした状態で生物の活動を停止させるとその魂が蓄積される
注意事項:呪われた魂を扱う以上所有者にも呪いの反動が発生、所有者の力量に応じて反動は4段階に分かれる
1段階 反動を押さえ意図すれば魂の叫びを耳にする事ができる
2段階 所有者の意図に関わらず常時魂の叫びが聞こえ常に恐慌状態に陥る
3段階 所有者の魂を序所に呪い、使用する度に呪いが侵攻し、完全に呪われると所有者の魂は蓄積され以前の所有者の手に戻る
4段階 所有して99時間後に所有者は呪殺され所有者の魂は蓄積され以前の所有者の手に戻る
※どの段階でも蓄積された魂を使い切ると所有者の魂を蓄積し、以前の所有者に所有権が移譲
1譲渡には双方の合意が必要
2破棄は不可能※浄化による消化は可能だが擬似奇跡級による聖属性の浄化魔法が要
3対象物に名を付ける事で専属化が可能
※3を発動した場合1 2 が不可能になる代わりに更に呪いの強度が増し抵抗を緩和させる事が可能
アリスはこの異界書に迷い無く、壊れた兎という意味を込めて『半壊の兎書』と名を付けて異界書との繋がりを確認して専属化させてある。
この異界書を手にして発動させる魔法は全て『アビュース』という呪いの一文が必要とされ発動させた魔法は全て極度呪いが付与される。
そして―――
『半壊の兎書』に貯蔵されてる魂は9桁を超えていた……
後ろの連中に振り返り悠然と近づいて危機感など欠片も無く話し掛ける
「おい塵共。見逃してやるから今話してた村とやらについて教えろ」
4人のごろつき連中は思わぬ玉兎の行動に歯噛みしてどう出るか迷う
人間の女ならそのまま力尽くで攫えば済むが玉兎ともなれば魔法やエーテル技に秀でており、このように面と向かって立ち向かうとなるとその技量も余程の物と攻めあぐねる。
「ちっ。逃げりゃいいものを、まだ合流できてね バシュッ!!
ごろつきの1人が台詞の途中で消えた
魔法や魔道具で殺された等で無く、文字通り一瞬にして姿が掻き消えた
「・・・は?」
「あ? なんだ? 消えた?」
「おい、今の何だ?! てめぇなにしやが バシュッ!!
またしても1人が先程同様に掻き消えた
「ま、魔法か?! 街中で魔法とかてめぇとち狂ってんのかっ?!」
ごろつきがなにを宣うかと疑問を浮かべる台詞だがこの国に限らず大抵の国では街中での魔法の行使は禁止されており緊急時や非常時の防衛による魔法の行使以外は発覚すれば重罪に問われる
「お、おいっ! こいつなんか変だぜっ、やべぇ、逃げようぜ」
仲間の不自然な消失に魔法としか考えられず、また街中で平然と魔法を行使する異質な玉兎に恐れを抱いた1人が及び腰になる
「あ~お前らじゃ理解できなくてそうなるか、本当塵処理は手間が掛かるわね」
小声でアビュースを付け加えて古代の上級外法の即死魔法と厄災級の物質転移魔法を多重行使しただけだ
ごろつきは痛みを感じる間も無く単に天獄の例の煉獄に転移させられただけだ。
・・・・・最もあの煉獄に至っては死ねずに永劫苦痛に苛まれるので死という開放の術も無い末路を辿る事になるのだが
アリスにはこのごろつき共には目に見える外法じゃないと意味を成さないと至って手頃な外法を行使した
本来無詠唱で行使できるのだが手にした異界書の効果の為に魔法名を口にする
アビュース・スフィア
呪いの付加により暗転した月の光を乱反射させる古代中級外法
正攻法では威力は低い代わりに速射と効果範囲が広いのだが呪いの付加とアリスの魔力も相まって古代最上級外法に匹敵する使い勝手のよい魔法でアリスの得意とする外法
残ったごろつき2人の太腿を光の速さで貫く。
魔力次第で2人を蒸発させる事も容易だが目的は殺す事では無く気になる事を問いただす事だからこれでいい
「あ、ああああああぁあ!!! 足がぁ! 足があぁ!!」
「いでえぇえええ!!」
ごろつきの悲痛な訴えも気にせずアリスは淡々と告げる。
「あのね。私はお前ら下種を殺すのは慣れてるけどさ、こう何て言うの? 尋問とか拷問とかは苦手なのよ、加減出来なくて殺しちゃうから。次は指を順番に飛ばして無くなったら腕を細切れにしていくけど失敗しちゃうかもしれないから早く村について話せ」
悍ましい台詞を口にするも玉兎の表情は狂気でも愉悦でも無く無感情にも見える義務感からの作業に見えるようだった。
それがごろつき達には余計に恐ろしかった
「ぁ。あ。ひ、ひいいいぃ!!」
「あぎゃっ!! ま、まって、まってっ! 話します! 話しま、いぎゃああああ!!!!」
「ぇ? あ、喋るつもりだった? ほらさっさと話せ」
加減など滅多にしないアリスが細心の注意を払って指を一本一本蒸発させている合間に誰かが何か口走ったので行使を止める
「あひぃ、ひぃっ。あ、話すから命は――あああぁあああ!!」
「誰が命乞いしろと言った? さっさと村について話せ」
「っ に、西だっ! 西門から30㎞程の森に玉兎の連中が潜んでる村があるんだ!!」
「へぇ~。で? なんでお前ら村の存在知ってて襲わないの? お前ら塵からしたら玉兎の村なんて金脈でしょ」
「―――」
問い質してるのに返事が無い。また外法を行使しようと思いきやごろつきが痛みのあまりショック死していた
「あれ、こいつ死んじゃったじゃん、つっかえねぇ。まぁいいや、お前、続き話せ」
興味が失せ、残ったもう1人に視線を向ける
「! っひぃっ、ぁ―――あの村、玉兎が強すぎて、っぐぅっ、傭兵集団でも手が出せない・・・です げほっ!―」
「ふ~ん。お前らの仲間全員でも狩れないの?」
「む、無理だ・・・2年前に貴族の雇った衛視隊も皆殺しにされたっ。あ、あんたあの村の住人だろ? ・・・村には関わらないから見逃して・・・」
玉兎の魔法の練度は誰よりも熟知しているが所詮は多勢に無勢、人間の物量には敵わない
それを返り討ちにしたという事で益々アリスの興味が増す
「いやいや。そこはむしろ積極的に狩りなさいよ」
「――へ?」
目の前の玉兎に命乞いが通じるか賭けだったが返ってきた予想外の台詞に思わず戸惑うごろつきだった
「まぁいいや。お前らじゃ狩れないんでしょ? 衛視を返り討ちにしたなら次は順当に行けば暗部か国軍だろうけど2年経ってまだ無事ってことは放任されてるの? う~ん。とりあえず行ってみよっ」
残ったごろつきを無視して去ろうとするアリス
「―ぁ、見逃して――くれるのか?」
「お前私を快楽殺人鬼かなにかと勘違いしてない? 聞きたいこと聞けたしもう興味ないから、そのまま野垂死にしようが回復してどこぞで玉兎でも女でも攫うなり好きにしろ」
周囲を囲んでいた野次馬は消え失せていた……
アリスは転移して目当ての場所へと飛行した
そして目当ての場所が見つかった。村としては小規模で見つけにくいが貼られた結界が異常ですぐさまアリスは気付いた。
「あそこかぁ」
(隠れ里のようなものだと思ったけど本当に村じゃない。400…450人ぐらいか? 結構な規模ね。―――それにしても見事な結界式ね。村全体と周囲に範囲結界で網羅して其々の結界に最上級の探査妨害魔法が張り巡らせてある。熟練者の探査魔法でもない限り結界の確認すら不可能ね。更に探査妨害の奥に最上級の行動阻害と魔力阻害の結界が張られてるし探査妨害の看破だけではこれに掛かるって訳ね。質が悪いのが其々の妨害魔法が強者であるほど効果が顕著になる術式ってとこか、そしてそれを見越して中央の広場に結界の隙間がある。ここまで見越した奴らをその広場で包囲殲滅って訳かぁ・・・隙間には妨害魔法が無い代わりに攻性防壁の魔法が4重に渡って重ね掛け…)
魔法については徹底的に頭に知識を叩き込んだアリスで一目見て特性とどのような魔法か看破できたが行使できるのは外法だけで眼下の見事な結界を破る術はアリスには無かった
「あの攻性防壁は流石に割れないなぁ――この結界式の組み方、明らかに夜盗程度じゃなくて戦争規模での対集団戦闘に慣れてる奴ね。当然複数居るとみるべきね。う~ん・・・・・面倒だからこれでいくかぁ、目立つけど別にいっか。どうせ目撃者はいなくなるし」
古代厄災級召喚外導 狂信者招来:殉教者
ローブを纏った女性を召喚する召喚外法でローブの隙間から見える素肌には全身に魔術紋様が刻まれてるのが見て取れる、召喚者に狂信しておりその身を捧げることで強力な魔法を発動する。ローブの色が黒の場合は任意の対象に耐性貫通の感覚機能の五感を永続で封じる状態にし一時的に自身の第六感とそれを超えた先にある第七の感覚を大幅強化させ、ローブの色が白の場合は一時的に自身の魔力大幅強化に疑似神性を付与させる
召喚魔法に属するがこの世界では行使できない外法に当たる召喚だ
今回発動された殉教者は白のローブを纏っておりアリスの前で祈りを捧げている
「私の為に死ね」
殉教者は神の信託に喜んで自らの心臓を貫き絶命し、己が神に疑似神性を付与させる
「さてと、準備は整ったっ」
疑似神性を纏ったアリスは極大外法を複数同時展開させる
「よっし。お姉ちゃんカレンの為にお掃除頑張るよ~!」
古代戦術級外法 限壊突破
一時的に対象者の全能力を全壊にするが代償に効果が切れると元の能力が失われる
古代戦術級外法 結界貫通
自身を除く対象者の力量で読み解ける魔法のあらゆる制約を解き無効化する
古代戦術級外導 最狂化
対象の頭脳を作り替え攻撃性に全特化させるが言葉すら解せなくなる
古代天災級外導 人罰
神への信仰を無くし神を嫌悪するようになり神の加護を得られなくなる変わりに神からの干渉を防ぐ
「―――おっと、いけない忘れるとこだったわ」
原初厄災級外導 蝕ム者
同族しか食せなくなる変わりに食した同族の力を取り込む
そして・・・
アリスの編み出した魔導が発動する―――――『半壊の兎書』の効果を込めて
原初天災級外導 アビュース・死兎
死兎
アリスの編み出した魔導で天災級外法に値する
玉兎の力を編み込んだ魔導故に魔を司る神ですら模倣できず称賛された魔導
神の加護を一時的に授かるリリースブレスを改変した魔導でアリスの消費魔力に応じて指定範囲の存在全てを世界の不要物と認定させアリスの所有物とする
洗脳魔法の一種だが世界から不要物と認定されてるためこれを解くのは創造神以外には不可能
疑似奇跡に値するので発動には一時的な神性が必要
そして
アビュースにより呪われた所有物と成る
物を扱うは所有者、故に所有者のアリスは物に1つの言葉を贈る
「壊れるまでこの世界のお前達の元同胞を手当たり次第食し回れ」
こうして名も、顔も知らぬ玉兎の村に住んでいた400名余りの玉兎の住人は自らが異端となり世界の不要物と堕ち、世界中を掛け回り元同胞を殺しては死骸を貪り更に力を増して回る哀れな道具と成り果てた・・・
あっさりと大量虐殺をやってのけたアリスだがなんら思う所は無い、むしろ塵掃除した自分偉いと薄い胸を張ってえへんと思っていた。
そして眼下の村で1人だけわざと効果を外した者を視認する。
「よしっ! ―――まぁ期待してないんだけどね」
村中阿鼻叫喚・・・とならずに皆変貌して幽鬼の如く村を去っていく
そんな中で1人の幼い子供が泣き喚いている所にアリスが降り立つ。
「おいお前」
行動阻害と魔力阻害の影響でアリスに夥しい倦怠感が襲うが別に今更魔法を行使する訳でも無いのでなんとか耐えられる範囲だ
「ひいぃっ! お姉ちゃん誰?! 助けてっ! 村の皆がおかしいのっ!!」
幼い少女は見慣れない同族の中でも一際容姿の整った少女の同族に困惑するものの村の同族の変貌振りにパニックとなって初見の少女に必死に助けを求める
玉兎の結束は強く同族は助け合うのが当然なのだから
「助ける前に1つ答えろ。この村に移住したがってる玉兎が私以外にも居るんだけど助けてくれる?」
「・・ぇ? こんな時に何言ってるのお姉ちゃんっ! ―――玉兎は助け合うのが当たり前でしょ」
この答えは予想通りだった
「そっかそっか。その子は生まれつき魔力が無いけど玉兎なら関係無く助けてくれる?」
少女の台詞に何を当たり前な事をと言わんばかりに返答する
素直に、無邪気に
「? 魔力が無いって・・お姉ちゃんそれは玉兎じゃなくて欠陥種族だよ。欠陥種族は壊れ者だから駆除するのが常識なんだよ? そんな塵より皆が急に変になっちゃったのっ! お父さんとお母さんを助けてっ!!」
・・・・・これも予想通りだった
判っていた、判り切っていたのだ・・・
「―――畜生にも劣る下郎がっ」
眼の前の幼い少女に殺意をなんとか収めるもそれでも憎々し気に睨みつける
殺意だけで殺せてしまうのは判っていたからだ
「ぇ?」
「貴様らは2000年前から何も変わってない、期待していなかった。期待していなかったけど、―――本当に貴様らは私を逆撫でするのが得意な劣等種族ね」
「ど、どうしたのお姉ちゃん? 怖いよ・・・」
愛妹を欠陥種族と、駆除と、宣った目の前の幼い少女を、頭上の白い耳を恐怖でしなだらせる下郎をどうしてやろうかと考え抜き
支配下に置いた人形の中から幼い少女の両親を認識してこの場に呼び戻す
「ああ、お前の親はこれか。呼んでやったから親に食われて愉快に死ね、汚物が」
古来より人間は「物語」という形で自分たちの悪性を社会の外部に固定していた
それが出来なくなったとき、悪性は人間たちの社会に内包されることになった。
それまで外部の虚像へと向いていた悪性に対する無害な嫌悪は、
その時から同胞を傷つける危険な矛となった。
ましてやその人間に食われ、犯される玉兎族はそれが顕著だった・・・
塵掃除のつもりが思わぬ苛立ちに襲われ気分を害したアリスは次の目的を決めあぐねていた
「なんであんなのが玉兎を名乗るのかなぁ・・・ほんと、私とカレン以外滅べばいいのに。人間同様狩っても狩っても沸くからもうお姉ちゃん疲れるよ~」
それでも何故繰り返すのか、同族の友を求めているからだ
自分ではなく愛妹へと。敬愛するお父様がかついて言った1000人に1人を期待して、何度も繰り返す。
(あ~あ。人間界もそこそこ土産集めたし気分転換に神界でも行くかなぁ・・・いやいや、やっぱ気分転換にならないわ―――はぁ・・・あの方達何処か別の地に行ってくれてると助かるんだけどなぁ)
三千世界の中心 ~神界~
その名の通り誰もが知る大神から無名の小神が住まう神聖にして聖上の世界
実際は神だけでなく悪魔や魔神、神格のある生物やそれらに仕える元人間でもある聖人の従者も存在する
無限に広がる世界から神格者が集う唯一つの世界だけあって、桃源郷や寝物語で聞かされる広大で神聖な場所・・・・・かと思いきや実際はそれとはかけ離れた異界ともいえる場所
所狭しと建造された建築物は古今東西のありとあらゆる和洋折衷様々で行き交う者達からは神格は感じられるが商人との交渉に熱中してる者から出店の前で酔いつぶれて寝てる者もいれば諍いがあったのか往来の中で殴り合いをしてる者もいる
大通りには幾つもの店が並んでおり店を冷かしたり店主との値切り交渉に白熱してる所もある
この星そのものが神格を発しており神威があちこちから感じられ、行き交う殆どの者がアリスを歯牙にもかけない強者ばかりである
(相変わらずこの世界は混沌としてるわね)
初めて神界に来た当初は名前の通り壮言で厳かな場所かと思ったが、いざ来てみれば人間の国より混沌としており賑やかな情景で毎日が祭りかの様な騒ぎであることに驚かされた。
(さて、どうやって珍しい物を集めるかな)
(神界の通貨なんて無いから先ずは手持ちの道具適当に売ってお金用意しよ)
神界の通貨は神界だけに流通している神お手製の神器により作成された神器通貨なので偽造も模倣も不可能だ
そして通貨に関心の無いアリスが神界の通貨等所持してる訳も無いので適当に手持ちの物を売って通貨を得ようと企てる
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「さっすが神界ねっ! 露店だけで最希少素材が沢山手に入るなんて素敵だわっ。取り敢えず暫くは露店と店巡りするとして・・・珍しい物についてはどうしよ・・・」
幾つか手放した道具と頭髪で手にした神界の通貨で買えるだけ珍しい物を片っ端から購入した
なにせあらゆる世界の珍しい者から聖遺物や神器まで普通に売られているのだ
うさ耳も上機嫌とパタパタ揺れていた
(この世界では私なんて最弱の存在だからなぁ。下手に目を付けられたら其処等の見回りの巡回兵にすら問答無用で殺されるから慎重に・・・閃いた! こそっと盗めばいいのよ!!)
卑下ではなく数多くいる巡回兵ですら神格のある戦神で揉めたら問答無用で一刀の元切り捨てられる
なにせここ神界では喧嘩は絶えないものの、争いはまず起きない
一撃で幾億の生命や星を亡ぼす神々がいる世界で暴れる者がいる筈も無い
という事で派手な事は避けてこそっと盗むという馬鹿な結論に至った姉兎は早速と有言実行に移った。
それからというもの、この姉兎は励みに励んだ。それはもう仕事だとばかりに勤しんだ。
とある神殿からは神器や聖遺物等、自分でも良く解らない物を取り敢えず手あたり次第に拝借した。
一際目立つ不気味な建造物に侵入しては竜の宝物殿に匹敵する程の宝物殿らしきところを見つけたが中に収められているのがどれも全く用途も不明だったので取り敢えず近くの物を適当に頂いた。
休憩がてら適当に散策していると極小規模の農園を見つけ、そこに実った果実を味見すると美味しかったので果実を全部頂こうと思ったが収穫が面倒なので樹を一本丸ごと持ち去った。
こうして姉兎は愛する妹兎の為に文字通り命懸けの仕事に勤しんだ。
励むこと二ヵ月程経った頃、今日は何処へ行こうかと思案していると派手な建造物が目に付いた
(ん~今日はあの宮殿へ行ってみよっ! なんか装飾過多な宮殿だし高飛車な神の家かなんかだろうから面白いものありそう!!)
後に兎はこの選択を後悔する羽目になる
自業自得とは言え余りにも悲惨な目に・・・
「ん~~なにこれ? 魔道具ですらないわね・・・この家主は相当変神なのね」
大きい宮殿の割に使用人や従者すら誰一人居ない無神で適当に部屋を物色するも装飾品は興味が無いので小道具などを幾つか手にするが見たことも無い、魔道具ですらないそれらに興味も沸かずぞんざいに放り捨てる
床に転がったそれは苦悩の梨と言われる女性用の拷問具だった・・・
興味の惹かれる物は無いと次の部屋に不用心に侵入する
「此処は・・・寝室? 此処も殆ど物が無いわね、なによ。見栄えだけの宮殿じゃない。つっかえない神ねぇ。きっと見栄っ張りの無能な神が・・・ん?」
盗人猛々しい発言だがなんの成果も無いのは如何なものかとせめてベットに敷かれた極上の絹のシーツでも頂いて行こうと近づいて足が止まる
(この部屋・・・というかこのベット。物凄く見覚えが―――なんだろ。ん~)
ベットを目にしてから何か得も言われぬ感覚がアリスを襲っていた
うさ耳がこれでもかと逆立ち、震え、警告を促しているのに当人は気付かない
「なんだろ、この・・・既視感? 不安? 恐怖? というかなんか頭痛がしてきた・・・よくわかんないけどなんか嫌な予感するから退散し・・・っ?!」
此処に至ってかつての封印していた忌まわしい出来事が蘇る
(私の馬鹿っ!! ここあいつの家ってかもろあの時の部屋じゃないっ!! やばいやばい、今すぐ逃げ)
此処に居たら非常に拙いと悟ったアリスは一目散に逃げ出そうとするが一足遅かった・・・
抑々この宮殿に侵入した時点で手遅れだった
「あらあら。私の屋敷に闖入者なんて神生初めてだから誰かと思ったら随分可愛らしい小兎ちゃんだこと」
入り口には美しい声音の女性が立っていた
「ぅひゃっ! ぁ、あ、あ―――へ、ヘカーティア様・・・」
最も出会いたくない奴と遭遇して腰を抜かしてじりじりと後ずさるアリス
うさ耳は最早警戒すら無意味と悟ったのか逆立ちすらせずにかつてないほどしおれていた・・・
ヘカーティア
死と魔を司る大神であまりの信仰振りから数多の異名が掲げられる女神
死者の女王 無敵の女王等々…
黒の清楚なドレスを纏っており黒髪を後頭部で一つにまとめて垂らした容姿も美の女神に引けを取らない程の絶世の美女で体付きは肉欲的であらゆる男神を虜にする
魔を司る大神だけあって外法使いのアリス等足元にも及ばない存在だが別にアリスは彼女の実力に恐れているのでは無い
「あらまぁ。私の家と知っての闖入者なの? 可愛いだけでなく勇気もあるのね」
その微笑は男なら誰もが虜になる魔性の笑みだった
「ぁ、ぁう、ぁうぁう。。。あ、あの、ご、ごめんなしゃ・・「謝らなくていいのよ、どうせこの後ベッドで矯正しか鳴けないようにするから。ねぇ、ア・リ・ス・ちゃん♪」
恐怖の余り真面に発音すら出来ずにいるアリスに食い気味で台詞を被せる、が・・・先程の魔性の笑みから徐々に情欲に迸った瞳をアリスにぶつける
「!? ひっ、ひいぃっ!」
転移で逃げる発想すら浮かぶ余地すら無く涙目になるアリス
竜等の自身より明らかな強者にも恐れず立ち向かうアリスだがヘカーティアともう1柱だけは例外だ
なにせ過去に身心共に心をぽっきぽきに圧し折られ恥辱と屈辱の限りを尽くされたのだ・・・
~~~~~
数年前、某神視点
退屈な会議も終わって見眼麗しい女神と夢魔を多数従え往来を堂々と歩む
誰もが自分を見ては道を開ける
「はぁ・・・今回の会議も苦痛だったわ」
「2日もの間ご苦労様でしたヘカーティア様」
神々の会議は不定期ではあるものの開催されたら数日掛かりとなる
「ありがと、今日はお前と遊んであげるわ」
「は、はいっ! 光栄ですっ」
ヘカーティアに頬を撫でられた美しい女神が高揚して歓喜する
(けどこうも退屈だと暇ねぇ、あの星は苛ついて滅ぼしちゃったし他の支配星でも覗いて・・・あら)
前方を進む見掛けない後ろ姿の種族に少し興味が惹かれた
(あれは・・・神獣かしら? 見掛けない種族ね・・・あら? 神格無いじゃない、どこぞの神の従者の聖人にしてもあんなの見たこと無いし)
聖人なら多種多様の種族がいてもおかしくないが自分の地位的に知らない聖人は有り得ないので取り敢えず本人に直接訪ねる事にする
「そこのお前、私が許すわ。名乗りなさい」
ぞんざいな態度だが本来ヘカーティア程の大神の前で名乗るのは非常に光栄な事だ
背後の従者達ですら数名しか名前を知られていない程だ
嫉妬の余り従者達が相手を睨む程だ
「はぁ? 何言ってんのおま、ぇ・・・っ!?」
初めての神界観光に当初の目的の暴れるつもりだったものが興味津々で適当にぶらついていたら後ろから馬鹿な台詞が聞こえたので振り返ると化物が居た
失礼な物言いに背後に仕える夢魔や女神が窘めようとするも不埒者の容姿を見て背筋が凍って一部の者は卒倒した
アリスは振り返った神物を一目見て尋常じゃない神威と魔力を内包する途轍もない強者と悟って焦った、そこら中に自分を上回る強者がいるが目の前の神物は一際飛び抜けていた
が、それ以上に声を掛けたヘカーティアは生きた心地がしなかった
有ろうことか自分が崇拝し焦がれる御方に失礼な口を聞いてしまったのだ。即座に土下座して謝罪しようとしたものの目の前の人物の困惑振りにふと疑惑が過る
(あの御方じゃない!? で、でもあの御方の魔力に容姿・・・獣の耳があるけどあの御方なら容姿の変化など造作も無いわよね、でも魔力は同じで素質も確かだけど未熟すぎる・・・)
疑念が尽きないが取り敢えず対等に接する事にした
ヘカーティアから名乗る等神界きっての珍事だ。周囲が騒めくが皆アリスの容姿を見て困惑して一目散に逃げ出すか極一部の者は熱い視線を送っていた
ヘカーティアの背後の従者達はその珍事すら気にする余裕も無く、偉大な御方に失礼な気持ちをぶつけた事に皆蒼褪めていた
「―――え~と。私はヘカーティアよ、貴女名前は?」
自分が敵わない化物とは見抜いたが名前を聞いて更にアリスは焦る
魔法を行使する者にとってヘカーティアの名前は信者でなくても耳にする程の大神だ
「うげっ! ヘカーティア・・・・ぁ、私はアリス・アシュリーよ。それじゃ・・・」
絶対トラブルになると兎の危機感が予知してさっさと離れようとするが・・・
(おの御方ならどれだけ容姿や身分を変えようと御名は変えない筈、別人なのは確定ね。縁者・・・はあの御三方だけだから、、、この娘なに?)
「まぁ待ちなさいな。貴女見掛けないけどどこかの神の従者? それとも神獣? その割には神格は無い様だけど」
トラブルはご免と逃げるつもりだったが背後から掛けられた台詞がアリスの癇に障ったのでつい本音をぶつける
「は? 従者? なんで私が神なんかの従者になんなきゃいけないのよ。神獣でも無いし神格なんて願い下げよ、私は玉兎族よ。この可愛いうさ耳で分かるでしょ」
うさ耳を逆立たせ威嚇するアリスにヘカーティアは益々興味を魅かれる
(ぎょくとぞく? 聞いたこと無いわね。それにこの物言い、誰ぞの神の息が掛かってないわね・・・こんな逸材を見つけられるなんて素敵だわっ!!)
目の前の素性は不明だがこれ程の逸材が誰の手にも掛かってないとは奇跡としか言いようがない
「そう、そのぎょくとぞくとやらは知らないけど私の弟子にしてあげるわ。光栄に思いなさい―――――それにあの御方と瓜二つで可愛らしい容姿・・・ふふ」
ヘカーティアに師事を乞える
魔を行使する者にとっては到達点たる深淵へ至る以上の至上の祝事だがアリスからしたら願い下げの申し出だった
何より・・・台詞の半分は意味不明だがヘカーティアの自分を見る眼が同性なのになんか途轍もなくいやらしくて不気味だった。
「お前・・なんか気持ち悪いわね・・・弟子なんてごめんよ、じゃあね・・・ぇ、あれ、転移が、なんで!?・・・」
転移で去ろうとするもなぜか行使できなかった。他の移動手段も試したが全て駄目だった
アリスは理解出来なかったが魔法の行使の度にヘカーティアが強制介入して詠唱破棄という奇業を無詠唱で即応してのけていた
そして未熟ながらも憧れの御方の魔力を有する素質十分な御方に瓜二つの美少女。おまけに自分にへりくだるどころか生意気な態度を取り弟子への誘いを跳ねのける調教のし甲斐のある可愛い可愛い小兎。ヘカーティアの琴線にこれでもかと触れる逸材だった
「私の弟子への誘いを断られるなんて神生初めてだわ。ふふっ・・・素養も十分だしたっぷり躾けてあげる♪」
「ちょっ、お前なにし、っひゃっ!」
アリスの返事等お構いなしに正面から抱き着き体をまさぐる
「本当にあの御方そっくりね・・・ふひ♪ あら可愛いうさ耳だけじゃなくて尻尾まで・・・」
尻尾と聞いて慌ててアリスが止めようと懇願するも遅かった
「ま、待ってっ ―――― ひゃぅ///」
「っ!?」
玉兎にとってうさ耳は聴覚はあくまで副次器官に過ぎず、魔力とエーテルを内包する重要な器官だが尻尾はというと・・・恥部同様の性感帯そのもので子を成す為に性的欲求を刺激する器官だった
ヘカーティアがアリスの尻尾を撫でた瞬間先程までの生意気な態度が一変してアリスの嬌声と色香がヘカーティアを襲う
気が付いたら自室のベッドにアリスを転移で連れ去って無理やり襲っていた
最初の2日間は変態だの、気持ち悪いだの、散々悪態を付いて抵抗していたものの屈服させようと責め続けた
3日目には涙目で止めてと乞う姿に加虐心が刺激され更に増した
4日目には調教の成果が表れ涙目でお姉様止めてくださいとぎゃん泣きして益々加虐心が刺激された
そして我を取り戻したら一週間が過ぎていた
お互い疲労困憊でベッドや互いの体は酷い有様で室内は様々な淫靡な匂いが立ち込めていた
アリスを改めて観察すると完全に心が圧し折られ震えて怯えた目を向けていた
その様を見て再び興奮して体を清めて続きをと思い入浴していたらその隙に逃げられた
~~~~~
初めて神界に訪れた際に降り掛かった過去のトラウマが遮り再発を防ごうと懸命に逃れる術を探る
「全くもう。この小兎ちゃんときたら、私が折角弟子に誘ってるのに全然応じてくれないし、挙句に私の寝室に忍び込むなんて、―――以前の調教が足りなかったのかしら? そ・れ・に、私の事はお姉様と呼ぶように躾けた筈よ」
そう・・・この大神たる魔を司る女神は同性愛を拗らせた異常者で加虐嗜好も兼ねた神界でも悪名轟く問題児だった
過去にアリスもその毒牙にかけられた哀れな被害兎だった。
「ぃ、いやぁ・・・こ、こないでくださいぃ・・・・」
恐怖の余りパチクリした大きい瞳は涙目で潤んで首を左右に嫌々と振るアリスだがそれが余計にヘカーティアを刺激する
既に壁にぶつかってこれ以上逃げ場はない。ここにきて漸く転移で逃げればいいと思い至ったが行使しても発動しなかった・・・
目の前の女神からしたら小兎の外法を封じる等造作も無ければ行使に強制介入して破棄も余裕で可能だった
「あっ、それともまた調教して欲しくなったの? あれ程激しく愛し合ったのに流石兎ちゃん、性欲旺盛なのね」
男なら美しい女神たるヘカーティアに迫られたら全てを差し出して喜んで飛び込むのだろうが被害兎たるアリスからしたらお願いだから返ってと神に願う他無かった
最もその神の家が此処なのだが
「・・ち、ちがっ「それとも~? 私の寵愛してる小兎ちゃんはまさかとは思うけど盗みに入った・・・なんて事はないわよね? それだと私悲しいわ。悲しくて、そうね。思わず見栄っ張りでつかえない無能な変神らしく折檻しないといけないわね。それはもう身心共に、永劫に、苦痛と快楽だけを、ふひ♪」
わざとらしい文言だが最後には抑えきれず邪悪な笑みを浮かべていた
「身の丈に合わぬ欲で偉大で美しい女神様でもあられるお姉様の私物を欲してしまいました。愚かな兎にご慈悲を」
恥も外見も無い、死ねない自分にとっては正に拷問なそれを目の前の気狂い女神は本気でやってのける。というかのりのりでやるのを過去の忌まわしい事から痛感しているので勢い良く綺麗な土下座を遂行して許しを請う
「っ?! やだもう~! アリスちゃんったら正直者ねぇ! 私が愛するアリスちゃんにそんな酷い事する訳ないでしょう? まずは師弟の契約ね!! それから100年ほどベッドで可愛がって上げるから♪」
変わらないよ化物がっ! と心の中で悪態を付くが試行錯誤してなんとか言い繕う
「っ?! いえいえ!! 私のような愚か者がお姉様に師事するなど畏れ多いです。ましてや寵愛等もっての外で「なに? 私に逆らうの? そんな事あり得ないわよね? この間開発した魔導で夢魔の魅了を最狂化したのがあるんだけどまずはそれから教えてあげる! まだ未調整で淫紋を下腹部に描くんだけど食欲も睡眠欲も無効化して只管性欲だけ極限上昇させるんだけど私達なら平気よね? ちゃんと教えてあげるわ、勿論実技で♪」
絶望の宣告を情欲の眼を滾らせ目の前の哀れに震え上がる小兎に向けて言い放ち徐々に距離を詰める
一瞬で距離を詰める事等造作も無いが敢えて徐々に詰め寄る当たり加虐姓が垣間見える。
「この色好魔神めっ! くたばれっ!!」
アリスは最早後が無いと悟りせめてもの足掻きに悪態を付くがそれが益々ヘカーティアを刺激させる
うさ耳も最後のあがきと言わんばかりにピンッと立って威嚇の様に逆立っている
「ふひ♪ 従順なアリスちゃんもいいけどやっぱりそっちのアリスちゃんのほうが素敵だわ♪ 本当、調教のし甲斐がある・・・夢魔だろうが女神だろうが私が誘えば従順になるけどアリスちゃんは別。そのアリスちゃんを屈服させて従順な愛玩兎に、ふひひ――――――ちょっと、なんであんたが居るのよ」
目の前の可愛い小兎を脳内であられもない姿にしてると背後に見知った気配を察知して妄想を掻き消し敵意を剥き出しにして睨む
「この性欲魔女め。アリスは妾の弟子にすると言ったであろう」
誰でもいいから助けてと願ってはいたがまさかの助けではなく更なる追い打ちにアリスは僅かな希望が打ち砕かれた
「―――ぁ・・・な、なんで?」
「安心せい。この性獣から守ってやるから妾の元へ来るがよい」
(性獣から狂獣の元なんて誰か行きたがるかっ! おのれぇ・・・神界で会いたくない奴一位と二位に挟まれるとかなにこれ? いたいけな兎にとことん意地悪な神だなっ!! ―――っていうかこいつら神じゃん)
どうやら神々は玉兎、というよりアリス個人をとことん苛め抜きたいらしい
「ちょっとエキドナ、アリスちゃんの所有権はまだ決まってないでしょ」
目の前の童女、エキドナ
魔と蛇を司る大悪神
薄桃色の天衣と羽衣を纏い肌の露出は殆ど無いものの天衣と同じ薄桃の肩までの鮮やかな髪色と童女と娘の合間特有の幼さと女性を垣間見せるヘカーティアとは別種の艶やかな女神だが・・・ヘカーティア同様外見と中身の落差が酷い大悪神だった
ヘカーティア同様魔を司る大神で蛇も司るだけあって蛇の如く執念深く、ヘカーティア同様にアリスを付け狙い弟子へと付け狙う厄介極まりない神である
ヘカーティアが性で問題ならエキドナは魔への執念で問題があった
只管に魔にしか興味が無く、魔導の探求の為なら非人道的な事もお構いなしに迷い無くやってのけるし魔導の試しとばかりに星々や神々ですら困らせる問題児だ
そして神界におけるヘカーティアに続いてエキドナもアリスにトラウマを植え付けた問題児だった
「戯けっ! アリスの類稀なる才能は純粋に伸ばして魔神として昇華させるべきであろうが。それを貴様というものは性欲に走りおって・・・大体女同士では子もできんのになに考えておるんじゃ?」
「相変わらず頭が固いわねぇ。これでも大神の自覚があるんだから純潔を易々と散らす訳にはいかないでしょ? 勿論アリスちゃんも純潔のままよ? この子は清いままで神の座に就いたら私とアリスちゃん交互に性転換して互いの子を孕む予定なんだから♪」
暴論だが性に寛容で産めよ増やせよが当たり前の神界では当たり前の行いだった。
最もヘカーティアのいう純潔とやらは守ってるがそれ以上の痴態を晒している時点で論点がずれているのだが…
「性転換とはまた珍妙な物を思いついたのう。・・・いやいや、そこは別に処女や純潔を司る訳じゃないんだから其処等の男神でも捕まえて孕めばよかろう。ほんに貴様の思考は理解できんの」
友神にして宿敵の好敵手でもある目の前の同じ魔を司る大神の困った性癖にエキドナは呆れる
「あんたも大概よ? 魔導の教練とかいって神獣の群れにアリスちゃんを素っ裸にして放り込んで襲わせるとか、明らかに殺しに掛かってるじゃない」
自身が全力でも足元にも及ばない神獣が数十匹群れを成して襲い掛かった時は死を覚悟した
逃げようにも転移や移動系の術は抑止されていたのでアリスにとっては教練という名の処刑にしか思えなかった
盛大に漏らして意識を手放した
気が付いたらヘカーティアの胸元だったので全く危機を脱していなかった事にアリスは涙目になってお姉様にこのはしたない姿は見られたくないので清めて来ますと言って入浴にかこつけて逃げ出した経緯があった。
「妾の弟子ならあの程度の雑種軽く一蹴してもらわねばな」
「間一髪救出できたからよかったものの、あんたのその鬼畜教練に誰も付いていけるわけないでしょ。あんたに弟子入りした幾万の子達み~んな天獄にいるじゃない」
ヘカーティア同様に魔を司る大悪神だけあって信奉者も凄まじく、弟子志望はあらゆる種族や聖人、小神ですら後を絶たないが皆数年もしないで居亡くなった・・・
「アリスは特別じゃ、貴様も判っておろう。分ったら大人しく引き渡せ、そして適当な男神に腰でも振っとれ」
「―――なに? 6億年振りに術比べする?」
大神と大悪神の神威がぶつかり合い最早異空間と成り果てたその部屋にか弱い小兎のアリスが耐えきれる筈も無く、無心かつ這う這うの体で逃げ出していた。恥ずかしい事に小水が漏れていたがそんな事気にしていられなかった
「望む所じゃ。色呆けに堕ちた貴様など余裕で・・・おい、アリスはどこ行った?」
「え? あ~!! あんたが絡んでくるから逃がしちゃったじゃない!」
「ふむ・・・残念じゃ。またの機会かのう」
2柱にとっては今のも些細な喧嘩に過ぎなかった
「あ~もうっ! アリスちゃんのいけず~~♪」
頬を両手で抑え体をくねらせる友神に呆れつつも話を続ける
「しかし・・・先の話をぶり返すがあやつの素質は貴様も十分知っておろう? なぜ性欲に耽る?」
「素質なんて魔を司る私達なら嫌でも理解できるわよ『あの御方の片割れ』なんだから。けどそうねぇ、あんた玉兎の特性知ってるの?」
「・・・あやつの魔力と魔法の腕に興味があるだけで種族には関心がないからのう。確か人間より魔力が高いとかじゃったか?」
ヘカーティアが魔力と体目当てならエキドナは魔力と魔法目当てにアリスを囲おうと必死だ
唯一の救いが2柱が大神で役職上とその凄まじい神威故に人間界においそれと来れない事だけだった。
「正確には魔力とあの星特有のエーテルという感能力が人間より優れている、ね。それと玉兎の肉を食せば幸運の加護が授かるなんて迷信もあって結構酷い目にあってるわね」
自分で言ってて愚かな迷信だと飽きれる
「はぁ? ふざけた迷信じゃな。そんな世迷言をその星の人間共は信じておるのか? 幸運の加護など人間には大儀式で一国を生贄に捧げてやっと授かれるかどうかという代物じゃろう」
そもそも幸運の加護は儀式と生贄を用意してもその人の人徳次第で滅多に与えられるものでは無い。神々ですら中々授かれない程稀有な加護なのだから
それ程幸運の加護は人生と周囲の人々に多大に影響を与える代物だ
「本当愚かよねぇ。そんな愚かな連中にあの子は酷い目にあったから監禁、じゃなくて保護したいんだけど。実は玉兎の特質はもう1つあってね」
ヘカーティアの本音は当初は弟子として後継者にと目論んでいたがアリスとの睦言を味わってからというもの魔法より睦言に重きを置いていた。というかもう魔法の教練の時間すら惜しくてずっと愛でたいと思っている。
「貴様少しは本音を隠す努力せい」
「まぁまぁ、それは置いといて。実はこれが肝心なんだけど玉兎との性行為って物凄く快楽が凄まじいのよ」
「・・・はぁ? 変わった体質じゃが・・・貴様サキュバス侍らせとるじゃろう? 幾ら凄いとはいえサキュバスとは比べられんじゃろ」
友神の悪癖は知っているが・・・目を掛けているアリスのその体質は初耳だが、夢魔を知ってるだけに別に珍しいとは思わなかった。
「あ~あの娘ら? シキ以外とっくに追い払ったわよ。アリスちゃんと交わったらもうサキュバスなんてなんとも感じないっていうか、比べるのも烏滸がましい程よ」
サキュバスに限らずアリスに出会う前は見眼麗しい女神を何十と侍らせていたがアリスとの一時を味わったヘカーティアには最早アリス以外に関心が失せ、他では満足出来なくなっていた。
「夢魔でもあるサキュバスより凄いとな? それは流石に信じられんのう」
夢魔、インキュバスやサキュバスの事で性を司る悪魔で性行為で己の力を蓄える
当然性行為の快楽も凄まじく夢魔と性行為をしようものなら魅了され意のままになり人間なら死ぬまで絞り尽くされる
「私も最初そう思ってたわよ。アリスちゃんは可愛いけどその手の睦言は初心だって。でもちょっと軽い気持ちでちょっかい出したら・・・気が付いたらこの部屋に居てベッドの上で一週間過ぎてたわ・・・それはもう、お互い凄い有様だったわよ」
当時の事後を思い出し互いのあられの無い痴態を思い出すだけで下腹部が疼く…
その顔はエキドナでも目にしたことの無いほど情欲に塗れており、流石にエキドナも友神のその姿を目の当たりにして事実と受け取る。
「貴様が我を失う程だと? 事実なら男神連中がほっとかんじゃろうて・・・ふむ、ちと拙いな」
此処に至りエキドナは怪訝な顔から思案顔に変わり問題に頭を悩ませる
「そうなのよっ! サキュバスで快楽を尽くしたこの私があの小兎ちゃんに魅了されて我を失うほどよ! 人間は夢魔や女神との性行為の経験が殆ど無いから比べられずに唯の人間の女より凄い程度の認識だけど男神がこれを知ったら非常に拙いのよ―――そ・こ・で♪ 協定を結ばない?」
「―――神の座に就くまで、じゃな?」
「そうそう♪」
本人の預かり知らぬ所でアリスは神格を得る事が決められていた
「よかろう。あやつの才能を男神の欲に埋もれさせるには魔を司る者としては余りにも惜しいからな」
「流石エキドナね。話が早くて助かるわ」
「しかし、人間界に居る間は兎も角、神界におると危ないのう。万が一その特性が知れ渡れば流石に庇い切れんぞ? 特にあの性欲の権化ともいえる最高神なんか真っ先に手を出すじゃろ? あれは我々総がかりでもどうにもならんぞ」
性欲と言えば真っ先にとある神が思い浮かぶが並の大神ならこの2柱なら力でねじ伏せられるがその神は神界でもトップクラス、というか頂点に位置する程の戦闘力を有するだけあって手の打ちようが無い
「それなら既に手は打ってあるわ」
「ほう。なんじゃ?」
「あくまで予防策程度だけどね、人間界で玉兎の娘を大量に保護してるからいざとなったら神界にばらまくわ」
「あ奴以外の玉兎がどうなろうがどうでもいいが、我々は兎も角あ奴は同類士の観点から気を悪くせんか?」
大神と大悪神の非情な会話だがそもそも神々にとって数ある星の中の1つの星の生物の生死や倫理等無関心だ
「それなら平気♪ というかむしろ感謝されるわよ。あの子同族への憎しみがちょっと引くぐらい凄まじいから」
「なら良い。憎しみ云々にも興味無い―――所で玉兎の娘捕まえておるならそ奴らで遊べばよかろう?」
「何人か試したけど駄目ね。玉兎の老若男女問わず配下の男神や女神にも試させたけど多少の差はあれど夢魔には数段劣る程度だったわ。やっぱりあの娘だけが特別なのよ・・・はっ! これが愛かしら?! アリスちゃんの初体験も私だったし神命の出会いね♪」
友神の色呆けも極まっており最早手遅れと匙を投げるがとある事に思い至り興味が沸く
「愛のう・・・そんなに凄いのか―――妾には無縁じゃが貴様とあ奴の子ならさぞ立派な魔神になろうぞ」
「何よ。散々馬鹿にしておいて結局はあんたもその気になってんじゃないのよ」
「貴様とあ奴との子ならさぞ素晴らしい魔神が生まれるのは明らかじゃからのう」
「・・・本当に魔への追及一筋ね。其処まで行くと感心するわ」
こうしてアリスはなんとか魔の手を逃れたがその背景で恐ろしい企てが進んでいた




