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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
33/148

33話 幕間 カザネの癒し

幻神歴2959年07月07日



ルルアの市民区画にある隠密警護宅にて家主のカザネは茫然としていた


「・・・・・」


シャイタンなる不気味な魔神だか幻獣が消えて漸く一息ついたカザネ


難題が1つ消えたと思ったら更なる難題が3,4つと押し寄せて来た


「これなんて報告したらいいのよ・・・ってか使い魔ってなによ! 居なくなってるし私にどうしろってのよ!! あ~折角ルード様の無理難題が解決したと思ったのに益々厄介な事になった・・・これは流石にレイアード様に直に報告・・あれ報告していいのかしら? 私は殺され様ともレイアード様まで巻き込む訳には・・・」


賢者ルードからのカレンへの素材の贈り物は済んだ、確定では無いがあの様子ならまず事実だろう

だがそうなると余計に厄介な事になった

先ずカレンの姉など知らない、カレンの性格からして姉の素性は一旦保留にしてその使役してる使い魔? と名乗るあのシャイタンが拙過ぎる、敵対はしなかったが自分で推し量れない程の強者、それも陛下と同等かそれ以上という化物

そして此方の素性も警護もお見通しだった、当然緊急事態だから報告すべきだがあれ程不気味な相手を報告して恩人にして慕うレイアードに危険が及ばないか、カザネには測れず頭を抱えて蹲って声を上げて癇癪を起す・・・


『カザネ様、お呼び下されば姿を現します』


「え!? 何々! またあいつ?!」


聴覚ではない、恐らく頭? に直接、カザネは行使出来ないしその様な魔法があるのかも不明だが声が届く

又も驚き入り口に視線を送るが部屋内に誰も居ない


『驚かせてすみません。先にお目見えしたストラスと申します、これは思念伝達で御座います。お困りの様なので先ずは御呼び頂ければ私とマルバスが影から出て詳しくお話いたします故』


そうだった・・・此処に来て使い魔を貰ったと思い出したがカザネが使役系の知識が皆無なので使い魔など門外漢でそもそもどう呼べばいいのか、それ以前に本当に契約? できてるのかも不明で此方が襲われるのかもしれない

カザネとしては不安もあるが不安を抱えたままより解決したほうがいいと半ば自棄に声に出して丁寧に呼んでみる


「・・・えっと、じゃ、じゃあストラスさんとマルバスさん出てきてもらえますか?」


「「はっ」」


影と言っていたがカザネの正面に2匹の、大型の梟と獅子が現れる

2匹とも魔力も戦力も自分を遥かに凌ぐ強者だ、だが可愛い・・・


「くっ可愛い・・嫌々! えっと、その・・・さっきのシャイタンとかいう化物は論外として、その・・・貴方達も私から見ても明らかに足元にも及ばない強者なのは判るけど・・・まず襲ってきたりしないかな? と言うか出来れば襲わないで欲しいのですが・・・・・」


襲うなら既に襲ってるだろうから大丈夫だとは思うが一応確認というかお願いする

あの化物を前に自害で情報漏洩を塞ごうとしたが別にカザネは命を軽んじてる訳では無い


「俺は言葉が苦手だ。ストラス、頼む」


獅子のマルバスが王者の様な風格の威厳のある雄の声を発するがその外見はライオンでカザネからしたらやはり可愛い


「了解、まずカザネ様。主である貴女様に危害など例えカザネ様に命じられようとも致しませんのでご安心ください」


梟のストラスが雌? なのか耳障りの良い透き通った女性の声で答える

ストラスは現れてから直立不動だがマルバスが前足で顔を掻いている


(何あの仕草、私を魅了するつもり!? なら成功してるよ!! めっちゃ可愛いなぁ!)


2匹に抱き着きたい衝動を抑えストラスの台詞で取り敢えずカザネは安堵する

出会ったばかりなので信用云々ではないが此方を騙す必要が無いと判断したのだ、そしてここで初めてカザネは警戒を解く


「―――そ、そう? それは助かったわ・・・それで、えっと、ストラスさん、その、使い魔? というのは私専門外でさっぱり解らないので先ずその辺りを説明して欲しいのですが」


まず気になるのがそれだ。自分はその辺の知識を修めてないが使い魔と言えば魔法師が何かしらの代償を経て使役するぐらいしか知らない。カザネからしたら貰ったと言うか、押し付けられたと言うか、良く解らないが後で何か必要とか言われても困るので真っ先に其処を確認する


「私とマルバスに敬称は不要です、どうぞ部下のように気軽に何なりとお命じ下さい。そうですね・・・まず使い魔というのは必要な儀式を手順通り行い、その代価に相応しい者が召喚され双方が合意で正式に契約を交わすのですが、私とマルバスは上位者であるシャイタン様に命じられてその手順も代価も無視してカザネ様。貴女を主として仕える事になってます」


ストラスが頭を左右にプルプルしている

カザネは思った、この子ら私を魅了させる夢魔とかの類なのでは? と


そして夢想してる間に手順も代価も無視と聞いて取り敢えず問題ない様だと胸を落ち着かせる


「はぁ・・・えっとじゃ、じゃあマルバスちゃんと呼んでいいのかな?」


「ええ、お好きに、下僕として何なりとお申し付けください。ただシャイタン様も仰られた様にシャイタン様の仕える主姉妹への害意となるような命令は致しかねますのでその点は御了承ください。それ以外でしたら自害を命じられても実行します故」


使い魔とやらはこんな忠実な物なのだろうか?

人間の部下や弟子でも自害を命じてもまず実行しない、するほうが可笑しい

だが目の前の2匹はそれを当然の様に言ってのける


「大好きなカレンちゃんに危害とか命じられても有り得ないからそれは大丈夫だけど・・・じゃ、じゃあその・・・2人? 2匹? とも撫でてもいい?」


取り敢えず安堵したからには欲求が抑えられない、嫌、もう抑える気も無い


「ええ、勿論」


カザネは2匹に飛びついて思う存分満喫する


可愛い!


ふっかふか


いいなぁ♪


癒される~


「・・・俺が可愛いとは変わった主だな」


「愉快な主ですね」


愛玩されてる間に使い魔2匹は感想を口にするが、梟は兎も角、獅子はこの国では珍しいものの、当然熊同様に猛獣で一般人ならその容姿を見ただけで逃げ出すがカザネの技量からしたらただの獅子など大きい猫に過ぎない


「はぁ~満喫した! コボルトちゃんも可愛いけど2匹も可愛いしこれからもよろしくねっ」


カザネからしたら2匹は良く解らない使い魔? で魔力も戦力も自分を上回る強者ではあるが自分に襲ってこないなら可愛い動物だった


「ええ、お好きなように」


「俺も悪い気はせんから構わん」


使い魔2匹は驚きはしたが本当に面白い主だと思った


カザネは一通りもふもふできて精神安定したので次の問題に取り掛かる

当然目の前の使い魔を渡したシャイタンとカレンの姉について、だ


「―――さて・・・とりあえずさっきのあいつの事と言い、君達2匹も直接上司に報告したいんだけど、その、上司に襲い掛かったりしないよね?」


「先程申した様にカザネ様の危機以外にカザネ様の命令でも無い限り勝手に力を行使したり姿を見せる事は有りませんのでご安心ください」


「そう・・・とりあえず大丈夫かな。あいつに眼の事聞きたかったけど・・・・・正直おっかないしなぁ」


シャイタンとの問答で見抜かれた自身の左目、シャルマーユ国では金髪金瞳が平均だがカザネは左目だけ眼光が赤い

この眼が原因で凄惨な目にあったし元凶を凄惨な目に合わせて皇国軍と命懸けの逃亡劇を経て恩人に救われた


「眼と申しますとカザネ様のその左目の魔眼の事ですか?」


ストラスがさも当たり前の様に問う、この2匹からしたらその瞳は人間以上に詳しいものだ


「!? ストラスちゃん知ってるのっ!?」


あのシャイタンは不明点が多すぎて接触が怖いが此処に以外にもこの眼を知ってる梟が居た

カザネが驚いて膝を付いて梟を抱き上げ詰問する


「その魔眼はこの地ではどう言われてるのか判りませんが正確には必滅の破眼と言われており視認した相手の抵抗力が低いと即死させる魔眼の一種です。どうやらカザネ様は御自身で制御できないようで感情の昂ぶりで任意ではなく勝手に発動させてしまう様ですね」


持って生まれた物で大貴族の出にしてカレン・アシュリー同様に欠陥種族、それも自身への害で無く他者に害を及ぼす致命的な欠陥種族で幼少の頃は喜怒哀楽で使用人を死なせてしまい親族に忌み嫌われ地下に軟禁されていた、そして乳母に救われ、その乳母を殺した実家を郎党皆殺しにして皇国軍に目をつけられ今に至る


影ながらの護衛でアシュリー工房を任された時、別に店に訪れる必要は無かった

唯、暇だったのでどんな奴なのかと気まぐれで覗いてみただけだった、そして可愛い店員のコボルトが自分のこの欠陥の証明の眼を見て「お客様のオッドアイ、綺麗ですね」と貴族の出だけにおべっかもお世辞も慣れていたがそれが素の声だと察してカザネは嬉しかった。そして後に工房でカレンと会った時に「うわ、お人形みたい、綺麗」と言ってくれた

疑うまでも無く無垢なカレンの素の声だった


周りは皆自分を嫌煙する、部下ですら怖がる

カザネにとってアシュリー工房は本当に掛け替えのない憩いなのだ


「――必滅の破眼・・・・これを消すか制御させる方法知ってる!?」


藁にも縋る思いだった、かつてはこの瞳を消す為に目を抉ろうとしたが右目に移っては意味がない

だから徹底的に調べた、非道な手段も沢山取った。それほどこの瞳が憎かった


「その魔眼を消すのは余りに惜しいのですが・・・お困りの様なので。まず制御させる術は存在しません、本来その眼は特定の体質が有り、魔に見込まれた者が授かる魔眼で制御する必要が無いのですが、どういう訳かカザネ様は体質が合わないようで幾ら公使し、鍛え上げても恐らくカザネ様の寿命が尽きるまでには到底制御は無理でしょう」


ストラスとしては主の命ならと答えるが本当に残念だと思った

なにせその眼は本来超常の者に縋って手に入れる魔眼なのだから、カザネ以上にその価値を知ってるだけに惜しいとは思うが、主が困ってるのは明白なので正直に語る


「そっか・・・」


自分は魔に魅入られたのだろうか? 魔法系統は並程度だし精々が上級魔法が幾つか限界だからそんな事は有り得ない。何よりそれなら体質も合わせるか抑々魅入らないで欲しい

カザネにとってこの瞳は全く使えない厄災でしかない、戦闘職に身を置くなら使えるのでは、と鍛錬もしたが抑々任意で発動できない時点で致命的だった


対集団での交戦という最中、極度の感情が揺れるので敵も味方も区別なく発動してしまいそれが原因で集団行動から外された


「そしてその魔眼を消す、というよりは無効化する術は存じております。但しそれを行うには相応の、この地の人間で例えるなら2000人の生贄が必要でしょう。ご命令頂ければ術は御教え致しますし2000人の生贄も此方で用意しますが、如何致しますか?」


梟は主に仕えてまだ間もない、1日も経ってないのだから、それでも主が何を求めるかは解っていた


そしてその答えを聞いてカザネは・・・・・





諦めた




「2000人・・・ははっ。昔の私なら迷い無くやっただろうけど今はそれが許されない、いえ、レイアード様に迷惑が掛かるから論外ね。名前が分かっただけでも良しとする―――術は教えないで、知ったら迷いが出るかもしれないから」


正直今でもその術とやらを試したい、どうせ屑なんて2000人所が2万でも幾らでもいるのだから

でも今の立場でそれを行うと上司であり恩人であり、慕うレイアードの名を汚す事になる

それだけは耐えられない


「畏まりました」


「さて・・・部下に後任を任せて本国に一旦報告に戻らないと。ストラスちゃん、マルバスちゃん、えっと、影? に戻ってくれるかな」


「「はっ」」


そして返事と同時に2匹は消えた・・・が、カザネとしては抑々影に戻るってどういう意味だと疑問だった

自分の影は光源の関係で背後にあるのに眼前に出て、消えたのだからカザネとしては使い魔とやらについても勉強しないとなぁ・・・と思いつつ部下に後任を任せ本国へ戻る



レーランド様、第二近衛団のカザネ様が緊急の報告があるとの事でお見えです


「なに? 直ぐに人払いして通せ」


レーランドは手にしていた書類を机に降ろして即座に対応する

カザネには自分の崇拝する神とその寵愛を授かった者の警護に付かせていた、それが緊急報告・・・

時間が惜しいと自分から距離を詰める


「レーランド様、定時報告で無く緊急の来訪申し訳ありません」


「素でいい、それで緊急とはなんだ、アマネ様とアシュリー嬢に何かあったのか!?」


「それが・・・その、取り敢えず危険は無いと思うのですが・・・カレンちゃんの姉? の使い魔を自称するシャイタンという者が突如現れて此方の素性と警護がばれました。私には力量差があり過ぎて測れませんが恐らく陛下と同等、もしくはそれ以上かもしれない人の容姿でしたが魔神か幻獣の類かと思われます。彼我の戦力差から謀る理由も無いと勝手に判断してルード様から預かっていた素材を渡した所警護と素材の礼に、と使い魔を2匹譲り受けました。すみません、詳細を調べるべきなのでしょうが相手が余りにも不明でまずは報告に、と伺いました」


カザネとしては職務失敗のようなものでいつも人の眼がない時は素だが現状ではとてもそんな気分になれずに重々しくルルアの隠し拠点での一部始終を述べる


カザネの重い表情と声音とは対照にレーランドは険しい顔から気の抜けた表情に変わる


「―――ああ、すまんな。お前への報告がまだだった。その者については心配せんでいい、アシュリー嬢の姉、アリスの存在もその使い魔なるシャイタンの実力もお前の報告通り事実だ。その者2名については後ほど詳細を伝えるが他言無用ぞ」


本来なら関係者になるカザネにも直ぐに知らせるべきだったのだが信奉するアマネを知って即座に飛び出したレーランドはそれが抜け落ち、そして件の2名については緘口令が敷かれたというのもあるがそれ以前にあの2名については秘匿事項なのでカザネまで連絡が未だ届かなかったのだ、これはカザネの失敗ではなく、誰の失敗でもない。

あえて挙げるならレーランドだが・・・レーランドはアマネ第一なので失敗とは思ってない


「・・・はぁ・・・了解で~す。しっかしあれ使い魔とか、そのアリスちゃんとやらは凄い魔法師なんですね」


レーランドの様子と返事から真実と、そして直ちに脅威は無いと理解して漸くカザネは安堵して素を露わにするがそうなると未だ未知のカレンの姉が気になる。


魔法師しか使い魔と契約できないのか知らないがあれ程の存在を使役できるとなれば魔法の技量は自分では想像もつかない、恐らくはシャルマーユの賢者ですら敵わないのでは? と思うが魔法の比べなどカザネは知らないので適当に感想を口に出す


「あれは正確には魔法師では無い、手の焼ける悪童だ・・・」


レーランドは机に戻り椅子に掛けると思い出したくもない悪童との初接敵時を思い出す・・・・・


戦略や戦術を無視する通用しない化物は今まで出会った中では自分が鍛えたロックと竜とあの悪童、そして神の方々ぐらいだ


幻魔涙戦時に不幸な行き違いでアリスと遭遇戦となりレーランド率いる部隊がほぼ壊滅、後にロックを主軸にした殲滅部隊を率いて索敵討伐に赴きアリスと2日掛けて交戦。そしてロックがその異質振りに翻弄されつつもなんとか無力化に成功して捕縛できたので尋問しようとしたところでアマネ、まだ当時ミューズが神と知りアリスがどういう訳か怒り狂い、アマネを殺しかけた所でレーランドは情報の収集を捨て即座に対象の抹殺に切り替えたがそこからはもう自分の出る幕は無かった・・・


アリスの有り得ない戦術に自分はおろかミューズですら困惑し、結果ロックに任せて自陣は後退した


ロックとアマネの数日に及ぶ命懸けの説得でなんとか落ち着いたが当然レーランドはアマネに害成したと処刑しようとしたのだがどういう訳かアマネから助命を乞われたのでレーランドは怒りを収めたが・・・それからと言うもの、ある意味竜との戦闘より色々な意味で苦労した思い出だ


当時を思い出して思わずレーランドは机に肘をついて溜息を零す


「悪童? はぁ・・・」


「して使い魔だと? あのシャイタンの事だから造作も無いだろうがどんな者だ?」


「えっと、ストラスちゃん、マルバスちゃんおいで~」


「「はっ」」


カザネの呼びかけに応じでカザネとの合間に現れたのは梟と獅子だった

使い魔自体はかなりの数を目にしたが目の前の2匹は今までの使いと異なり言葉を解する完全な動物体でレーランドは奇異の眼を向ける


本来使い魔と言うのは一般の動植物や一部の高位の魔獣を使役させるのだが極一部悪魔種に代償を払い契約する事もあるがその場合使い魔になるのは獣人のような人に近しい姿の者や言葉を介さない念話の類で契約主とだけ意思疎通のできる超常の生物を指すのだがその容姿は見たことの無い魔獣に近しい異形の者だ


シャイタンの寄越した使い魔というからには相当な異形の者かと思いきや予想外にも見知った梟と獅子にどういう事かと困惑しつつ魔力感知を公使するとその答えが解った


「・・・梟に、獅子? 魔力が凄まじいのは判るが儂は力量を見抜く類は知らん。どれ程なのだ?」


凄まじいというかどう見ても魔法師の賢者と並ぶ程の規格外だった


「えっと2匹とも私が足元にも及ばない程強者です、あとすっごく可愛いっ!」


「・・・ふむ、お前を凌ぐほどの強者か、ストラスとマルバスといったか? 俺も使い魔の類は詳しくは知らんからな、魔法師も召喚師も今研究に出払っておるし丁度陛下が政務で居られるから取り敢えず報告して見よう、待っていろ」


眼前の無口な梟と獅子を眺めつつ思案する

レーランドは職務上使い魔が魔法師以外でも条件を満たせば契約できることは知っている

戦力を考慮して部隊を展開させる以上個々の戦力の把握は当然の事だ、生憎自分は武芸の才が欠片も無いので魔力感知で魔力を測る事は出来ても戦力の看破は推し量れないがカザネを超えるというのがどれ程異質なのかは嫌でも理解できる


知らないまま無暗に使い魔を使うのは悪手と判断して最も適切な相手に判断を仰ぐ


一番適したのは信仰形に通じた者だろうが万が一を考慮するとそれも拙い


「は~い」


レーランドが戻ってくるまでの間2匹を呑気に撫でて待っていると傍仕えが直ぐ様カザネを呼び出しなぜか陛下に直に報告となった


武芸者として陛下に崇敬の念はあるが謁見となると緊張するのが当たり前だがカザネにそれは無い、レーランド以外誰だろうと、それこそ大貴族や陛下といえど立場は弁えるが固まらずに接する

そして謁見の間ではなく陛下の執務室に呼ばれた事からカザネは内密、だが火急の内容柄と悟る


「カザネ・シャーロット。この場は非公式だ、構わんから楽にせよ」


「はい」


室内に呼ばれ入室するとやはり人払いされてるようで政務机に陛下とその両隣に護衛のシグルトとレイアードが控えており机越しに陛下の対面で膝を付く


「レイアードから報告は聞いている。先ずはその使い魔とやらを見せてくれ」


「畏まりました。ストラスちゃん、マルバスちゃんおいで~」


「「はっ」」


カザネの呼び声で現れた梟と獅子

その禍々しい魔力と力を察知してシグルトが自然と腰の剣に手を添え臨戦態勢を取る

カザネもレイアードも気付いて無い様だが陛下とシグルトは見抜くまでも無く、その力量を知らされその存在に気付く

そして陛下は・・・素の声で切れた


「・・・・・それの何処が使い魔だっ!」


「ひっ! ぇ!? も、申し訳ありません!!」


「ああ~いや、すまん。もういい・・・まさかあの馬鹿、こんなのばら撒いて無いだろうな・・・」


予想を遥かに超えた難事に陛下が公の立場もすっ飛び素になって頭を抱えてしまう


「陛下、それほどの?」


「――俺なら勝てるがシグなら2匹同時だと勝てるか解らん。抑々これ使い魔というかどう見ても悪魔だろ、それもかなりの」


「そうですな・・・護衛を放棄して相打ち覚悟で恐らくなんとかなるかどうか、というところでしょうな。最も立場がなければそれ以前に逃げ出しますが」


「「「「・・・・・」」」」


シャルマーユ、否恐らくこの世界で最強各たる一位二位の最強の武人の感想に場は沈黙に包まれる


「カザネ・シャーロット。拷問や死罪の確定した者以外には当然だが特に市井でそれらを連れてる所を絶対見せるな。これは命令でもあるがお前の為でもある。そんなの使い魔にしてるとかあのいかれた宗教国に知られてみろ、あそこを筆頭に悪魔崇拝教団がそれこそ死に物狂いで襲ってきてお前火炙りにされるぞ」


悪魔は幻魔涙戦(げんまきゅうせん)で介入した事で存在が露わになったが神や幻獣や召喚獣と違い世界で存在が隠匿されている

なにせ代価を支払うだけで非人道的な超常の力を得る事ができるのだから当然の差配だった

だがその存在を危険視する国もあればその魔に魅入られた教団は複数ある


そんな悪魔が使い魔として使役されている、己が神を使役されてると知ればそれはもう語るまでも無い宗教戦争が待っている


なにせ悪魔崇拝者の狂信振りは常軌を逸しているのは何処の国でも頭を抱えてる問題になっている程だ


ましてや世界一の宗教国が耳障りの良い説法と経典を掲げているのだが、悪魔等人に害成す存在を現人神に仇名す敵と見無し見境なく執行官を送り込んではた迷惑な騒ぎを起こしている


「か、畏まりました!」


「はぁ・・・それで、お前らどんな能力持ってるんだ?」


「「・・・」」


陛下の問いに2匹は無言で返す

陛下の問いを無視するなど不敬極まりない事だがストラスとマルバスからしたら主の許可なしに主以外に手の内を明かす訳も無く当然の事だった。ロックもそういう事かと思い当たり視線を2匹からカザネに向ける


「あ、ストラスちゃん、マルバスちゃん。陛下に正確に御報告をお願い」


「ストラス、頼む」


「了解、ロック・フェザスター・シャルマーユ殿。私はストラス、天文学・薬草学・宝石の知識を主に授けます。配下は上位悪魔2万、最上位悪魔5千です。隣のマルバスは疫病とそれを癒す治癒を主に授けます。あくまで知識であって加護とは異なります。配下は私と同様です。下位と中位の悪魔については多すぎて正確な数は今すぐにはお答え致しかねます」


知識を授ける事は勿論可能で本来なら加護も与えられるのだがこの星では加護は禁止されている

これは上位者のシャイタンの命であろうと加護は与えられない。なにせ神界の総意なのだからそれを破れば仕える主は勿論の事シャイタンにすら神罰が下る可能性がある


主に詳細を聞かれたら伝えるが今この場でそれを掘り下げる必要も無いとストラスは淡々と戦力と能力を告げる


「「「「・・・・・」」」」


馬鹿げた配下の規模だが物量は陛下とシグルトなら何とでもなる、だがマルバスの疫病が致命的だ

物量に物を言わせマルバスの疫病を行使してマルバスとストラスを相手取る・・・


「・・・陛下。前言撤回です、勝てません」


「俺も自信が無い・・・カザネ頼むからその力無暗に使うなよ」


「勿論です!」


「あの馬鹿何考えてんだ・・・それでお前ら悪魔なのは判るが、まぁあいつのことだからもうそれはいいとして、本来お前らを召喚しようとしたらどうなるんだ? その力を行使するのに何か代償がいるのか?」


之が他の者から譲られたなら間者の類を疑い契約破棄か偽情報を流すなどの逆手を取る必要があるが相手がシャイタンならその心配、否この場合その必要が先ず無いと判断して使い道を考慮する


「代償は不要です。我々を使い魔にですか・・・そうですね・・・正規の手順なら恐らくこの世界でいうなら3つの国を生贄にして主の魂を死後縛る契約になるかと。各々で。一時的に知識を授けるだけなら――ふむ、この国の此処、本国を生贄にすれば可能かと」


「「「「・・・」」」」


「ルードの馬鹿の素材の礼だったか? お前とんでもないの貰ったな・・・・」


規模も出鱈目だがストラスの言い様から抑々自身らが使い魔になる事等考えられない物言いだったので確実に高位の悪魔と解ってしまう一向


「今自分でもそう思ってます・・・でも可愛いですよ」


カザネとしては規模がでか過ぎて現実味がないので正直に今の感想を述べる


レイアード以外の陛下とシグルトはその感想に梟は兎も角として獅子が可愛いとはどういう事だと別の意味で頭を悩ませる


「全く・・・それで、もうあいつのことだから色々飛ばして契約主はカザネということでいいんだな?」


「ええ、シャイタン様の命によりかの御方が仕える主姉妹への害意以外なら如何な命でもカザネ様に従います―――それこそこの場でロック・フェザスター・シャルマーユ殿、貴方を襲えと命じられたら即座に。彼我の戦力差から我らが滅ぶのは判ってますがそれでも実行します」


つまり自滅の命すら迷わずやってのけるという意思表示だ


「「「・・・」」」


「ストラスちゃんもマルバスちゃんもお願いでも命令でもなんでもいいから陛下は勿論レイアード様にそんな事したら絶対駄目だからねっ!」


「了解致しました」


「心得た」


「―――はぁ。因みに聞くがそこのカザネがサタン、ああ、シャイタンだったか。そのシャイタンを襲えと命じた場合どうなる? 負けるのは判ってるがどっちの命令権が優先されるのか、という意味だ」


陛下としては厄介事を押し付けられたというしかないがカザネの職務上折角の貴重な戦力を無駄には出来ない

軍に限らずシャルマーユは致命的に人手不足なのだからこの際悪魔ということは目を瞑って仕事に関わらせて良いのか確認する


シャイタンを襲うつもりは欠片も無い、というか襲いようが無いのでそれは諦めてるが重要な仕事中にシャイタンの命があればどちらを優先させるのか? その確認が第一だ


「カザネ様の命ならシャイタン様であろうとも牙を向けますが、勝敗以前にかの御方は我々への絶対命令権を有しているので契約を破棄して無効にするでしょう。もっともかの御方からしたら我々は雑兵に過ぎないのでその様な事より即座に首を刎ねるでしょうが、何分かの御方は部下『想い』なのでなんとも言えませんね」


悪魔が部下思いというのはどうなんだと思うが人間で推し量れる水準では無いと各々思考放棄した


「・・・はぁ。取り敢えず分かった。あの姉妹には恩もあるし友人でもある、そんな命令公使ともに俺の名にかけて有り得ん。取り敢えずカザネ・シャーロット。引き続きルルアにて警護の任を頼む」


ロックとシグルトとレイアードが天災振りを発揮してるシャイタンをどうするか頭を悩ませるものの、その厄災を押し付けられた張本人のカザネはどうやら満更でも無い様で陽気だった


「畏まりました!」


ストラスちゃん、マルバスちゃん戻るよ~


カザネが呑気に退出するも残った一向が無言で視線で交わすも先程の繰り返しのように又も一向の前に先の使い魔のマルバスが現れ言葉を発す


「人の皇よ。俺は言葉が苦手なので端的に言う。主を介して貴様がどう使おうが勝手だが主に何かあれば俺はシャイタン様の周囲を除くこの国にありとあらゆる疫病を振り撒く。努々忘れるな」


言うだけ言ってまた消えたがその警告にいっそ悪魔は下手な部下より忠義の熱い奴なのだと感心した陛下

そして頭を抱えつつシグルトが妥協案を発す


「取り敢えずあの者はこれまで通りで、陛下、レイアード様、今はあれに時間を割く余裕は有りません」


こうして後回しにする事になった

礼として贈ったのにそれで国を困らせるだけにシャイタンの天災振りが解る物だ




そして後にアリスとシャイタンの詳細を知らされたカザネは・・・


なにこれ? 昔の伝承の英雄とかそんなのかな


と、出鱈目な数々が記載されたその書類を秘匿事項との記載通り頭の中に封印して忘れる事にする


(うん。とりあえず今日もあの子達を愛でよう!)

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