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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
23/148

23話 閃く錬金術師

幻神歴2959年02月04日


竜との会合から翌朝、今頃竜の腹の中と思っていたコボルトと相対し感動の再会




―――――になる訳も無く・・・





カレンはしこたまコボルトにぼこられ、ギャン泣きしながらも今の魔道具の研究が済んだら一ヵ月魔道具の研究を自粛し只管ポーションマシーンになりその月の売り上げはコボルトとアマネの半々。

そして向こう1年間カレンの自腹でご飯の品数一品追加で漸くコボルトに許してもらったカレン


自分でも気づいてないし知っても口には出さないだろうが家族との再会に喜び、安堵したので懸念をぶつける


「あんたもしかして逃げて来たの? それならあの竜様が怒りそうだから戻ってほしいんですけど」


カレン以外の3人が唖然とするがコボルトがまたもやぶち切れ飛び掛かるがアマネが宥め、同じ幻獣で顔見知りみたいな仲だったのでお願いしたら返してくれましたぁと伝え、場を収める


そして竜との問答でカレンが亜人とシドに知られ、恐る恐る正体を明かしたがシドは綺麗な耳だと褒めるだけで口外しないと約束してくれた

それでも旅の道中は念の為フードを被っている


―――最もシドは初対面の日には既に素性看破できていたのだがカレンの場合幾らフードを被ろうとその感情豊かなうさ耳は正直隠す気があるのか怪しい程目立っているのだが・・・


「アマネがいなかったら今頃どうなってたことか・・・本当おめぇら姉妹碌でもねぇわ」


コボルトはあの竜の正体を知っていた

直接目にするのは初めてだったしまさかその竜に咥えられるとは思わず、気絶したが目が覚めたら竜は居らずアマネが傍にいた。あの竜がどういった者かも判るがそれと同時にアマネが本当に上級なのだと改めて認識して感謝した

そんなコボルトの畏敬も知らずにアマネはカレンに苦笑していた


流石のアマネもこの愚痴にはカレンを庇い切れず苦笑いを浮かべるだけになってしまう


「ほ、ほらっ結果良ければすべて良しよ。お陰で4人とも無事だったし」


カレンのご機嫌取りもコボルトに通じず、いくら結果が良くても手段があれでは流石に居た堪れないとシドが空気を換えるように話を切り替える


「手段は兎も角・・あの竜を前に無事だったのは奇跡なのは確かだな。あれは最上級かもしくはそれ以上の竜だろうな」


「最上級の上なんてあるんですか?」


魔獣とはいえ国によっては一部の魔獣は食用に捕縛されたり魔獣ではなく唯の害獣と認知されている国もあるがそれでも世界共通で何処の国でも魔獣と言えば下級・中級・上級・最上級と区分けされている


区分けの設定は強さでは無く害意で決められている

基本は位が上がる程力も増し脅威も増すが中級でも縄張りから離れず殆ど実害の無い魔獣も居れば只管に見境なく暴れ回る下級も居るので一概に魔獣のランクだけで判断するのは難しい


「区分けとしてはない。最上級が最高だがそれでも最上級の中でも飛び抜けた一部の例外が存在するが正しくあれがそうだろうな」


正確には最上級以前に幻獣や召喚獣の区分けに入らない上位存在、まさにアマネのようなものがいるがシドはおそらくあの竜もその類と察していた


「あれ組合に報告したほうがいいのかしら? 私的にはなんかあったら忠誠誓っておいてふざけるな~とかいって竜様の怒り買いそうで怖いんですけど」


「その不安も解るが報告は必須だろう、むしろ報告せずに無用な人がこの渓谷に来るほうが確実に事故になるだろうしあれ程の存在隠匿すればなにかしらの罰則があるかもしれん」


竜の存在なんて想定外で4人は対応に困っていたが結論としては報告と戦闘職のシドによる危険度の通達ということで結論が付いた。


「しかしおめぇ、びびったのは俺っちも同じだがよく素材を前に我慢できたな、おめぇならシドの旦那に頼んで竜様の素材欲しがると思ったぜ」


竜の素材となれば市場に先ず流れない。そして特権階級の間で言い値で売買される最希少素材を超えた家宝級だが流石のカレンもあの状況でその考えは沸かなかった


「あの状況で素材とか流石に・・・竜様の素材・・・うぅ・・・」


コボルトの問いで今になってその最希少素材を思い出し欲が沸くがかといってシドでも太刀打ちできない、思い浮かべるだけでも恐ろしいあの出鱈目な竜の討伐なんて手段が・・・


「あ! 閃いた! どうせ報告するなら組合に竜様の討伐募集依頼だして素材回収するってどうかしら?」


忠誠を誓っておいてその発想はどうなのかと疑いたくなるがシドはもうカレンはこういう人柄なのだと聞き流す

それに畏れ多い話ではあるが確かに竜やドラゴンの素材は戦闘職でも研究職、商人は言うまでも無く欲する品だけにその願望は判る・・・


「討伐ねぇ」


コボルトだけが空耳で聞き流していた

アマネはカレンの横で終始ニコニコしていた


(あの竜様を討伐とか不可能なんだが・・・・・こいつに言ってもこの目は何言っても無駄だな)


竜やらドラゴンの素材は錬金術師に取っては何をしてでも欲しい一品だ。当然カレンの眼は未知の素材に魅かれていた

その眼を見て最早慣れ疲れてたコボルトは無視した


「ああ・・・・・カレン嬢、生憎だがそれは不可能だぞ。間違いなくあれを討伐となったら陛下筆頭のシャルマーユ軍総出の騒ぎになるんじゃないか? 規格外すぎて想像付かんがそもそも竜の討伐なんて依頼、出せたとしても星金貨云千枚の規模になるんじゃないか?」


前例が無いので想像の話になってしまうがと付け加えるがそれを聞いて流石にカレンも諦めがついた


戦闘職に携わる以上シドもドラゴンの噂話や討伐の話は耳にしたことがあるがそれでも自分には無縁の馬鹿げた規模の徒党と莫大な資金を投入しての結果だ。

勿論見返りは金に換算できない程の栄誉があるがそれでもドラゴンですらそれぐらいの規模で竜ともなれば最早想像も追い付かない


こうしてまたしてもルルア渓谷への採集の旅は珍事に巻き来れる事となりはしたものの無事帰還しトレハン組合で報告を済ませシドと別れる。


実力者のシドと巷で有名な錬金術師のカレンの報告という事も有って竜の話題は一瞬でルルア中に広まったが当初懸念していた竜の部位素材や財宝、竜殺しの名誉目当ての連中の跋扈・・・は起らずそれどころかルルア渓谷へ向かうものがまったく皆無になってしまった。

どれだけの猛者でも竜に挑む者などいる筈も無く、一部の欲深い商人が金を積んで素材収集の交渉はあったが受ける者は皆無でその商人らは後に組合より罰則が下った


報告を受けた各組合は緊急会議を設け領主の決定により一時ルルア渓谷への出入りを禁止しシャルマーユ軍の調査結果待ちとなった


そんな巷の騒ぎなど関係無しにカレンは工房に籠って研究していたがやはり難航しガスタル結晶の在庫が尽き掛ける直前に何とか成功した。その出来に久々に満足のいく会心の出来となり夕餉の際にコボルトとアマネへの報告が楽しみで夕飯作りに勤しんでいた


「2人とも聞いてっ! 遂に完成したわ!!」


今か今かと待ちわびていた夕餉。コボルトとアマネが舌鼓を打つ中カレンはうさ耳をピンッと立たせて満足気に胸を張って遂にお披露目と2人の前に30㎝四方の箱を公開する


「おぉ~おめでとうございますぅ♪ カレンちゃんならきっとできると信じてましたぁ!」


「ガラクタ作成お疲れさん。工房吹っ飛んでなくてよかったぜ。で、どんなガラクタなんだ?」


毎度の反応だった、アマネはいつも完成品のお披露目には称賛しコボルトは毎度お馴染みの台詞だったがカレンは今回は力作とさぞ自慢気に効果を説明する

うさ耳も目に見えてドヤッとしてるかのようにピンと立って揺れている


「ふふん! 流石のコボルトもこれには驚くわよっ。なんとね~これは雪を降らせる事が出来るのっ」


素材が戦術級魔法の副産物の副産物だけあって効果も飛び抜けていた


「――へ? ゆき? 雪ってあの雪か?」


毎度カレンの出鱈目な魔道具を嫌々みせられるコボルトだが予想外の効果に興味を持った


「そうよ! その雪よ。テンゲン大樹海では雪があったけどここルルアでは雪は滅多に降らないらしいじゃない? だから久々に雪見たいなぁと思ってこれが出来たのよ」


パラミスでもテンゲン大樹海のある地方は寒冷地で年中雪が降る事もあるがシャルマーユは全土気候が安定しており特に此処ルルアでは冬でも気温が温かく稀に霧が発生しても雪景色は先ずお目に掛れない


「雪を降らすなんて凄いですぅ!」


「まぁ凄いな。で、デメリットはなんだ? また爆発か?」


雪を降らす魔道具

一見すれば奇抜で凄そうな代物だがコボルトは全く信用しておらず副作用を尋ねる


ルルアに移住してカレンは錬金術の安定した研究の場が整って錬成品の数は凄まじい数になっているがその9割8部が組合に強制没収されその殆どが副作用で爆発が生じる、稀に2部だけカレンとしては失敗なのに組合からこれぐらいならなんとか・・・と店先での販売を許可されるがそれでカレンが満足する訳がない


「爆弾作ってるんじゃないんだからそんな訳ないでしょ。・・・偶にそうなるだけよ。今回はなんとデメリット無く完成したわ!」


自慢気に声を大に言い張るカレンだが其処で初めてコボルトは食事の手を止め箱を観察する


「ん? ちょい待てデメリット無く雪を降らせられるのか?」


「ええ。魔力もエーテルも不要で誰でも作動させられるわ。・・・ただ一週間しか降らせられないけど」


カレンのガラクタ作成で慣れ切ったコボルトは珍しくまともな魔道具とみて目の前の箱を眺めて関心を示す


「ほう。副作用無しで誰でも作動できるとなっちゃ成功じゃねぇか! おめぇの魔道具で初めてまともなのできたな」


珍しい事にまともな魔道具を作成したカレンに久々に称賛を送りこれなら売れそうだと観て値段の予想をカレンとしている最中、聡いアマネだけその使い道を悟って珍しく称賛ではなく焦りを見せてカレンに告げる


「あ、あのぉカレンちゃんそれは組合に報告するんですかぁ?」


「ええ。勿論よ! これなら自信をもって報告できるわ」


「…どれぐらいの範囲降らせられるんですかぁ?」


「国中! って言いたいところだけど流石にそれは無理で・・・そうねぇ、、、ルルア全域ぐらいかしら」


「おう、それなら取り上げられずに値段付きそうだな。組合も驚くだろうぜ」


カレンもコボルトも懐かしの雪がまた見れる程度の気持ちで談笑しあってるがアマネは警告するべきか迷った結果今回は警告せず組合報告が無難と判断し黙した。


2人は楽観視してるがアマネだけ別の結果を読み解き複雑な気持ちで夕餉を終えた


翌日お馴染みの錬金組合にて


「あら、リールー帰ってきてたの?」


「ええ、誰かさんの竜発見報告の騒動で休暇返上になりました。有難う御座います」


受付嬢に相応しくない苛ついた顔で出迎えるリールーにカレンは照れ顔で答える


「いえいえ気にしないで、当然の事よ」


リールーの嫌味を素直な感謝と勘違いして受け取ったカレン

そんなカレンを見て溜息をつくリールーだが、そんなリールーに自信をもって発明品を披露する


「世紀の大発明に間に合ってよかったわね! 戦術級魔道具の完成品持ってきたわ!」


「え? もう済んだんですか? それで何処の区画消失させたんですか?」


冗談のように聞こえるが割と本気で尋ねていた


「貴女私をなんだと思ってんの?」


憤慨とばかりにフードの中でもうさ耳はパタパタと抗議していた


「だって、ねぇ・・・まぁこうして素直に報告に来た事は褒めておきます」


「褒めるところが違うわよ! ああもう、いいわよっ。はいこれ」


リールーの対応にやきもきして魔道具と錬成資料をリールーの前に並べる


「箱? それで、どんな副作用なんですか?」


カレンの魔道具に慣れ切ったリールーはどうせ今回も取り上げと鼻から掛かって先に副作用を問いただす


「ねぇ。コボルトといいリールーといいなんでそんな副作用から聞くの?」


「この一年魔道具取り上げ続けてる私に言わせたいですか?」


目の前の阿呆の子ことカレンは魔道具の才能の偏りが捻じれているのだ

まず副作用で爆発ならまだ無能と判断して適切な罰則を科して終わりだがカレンの魔道具の殆どが錬成台で実現不可能な違法兵器の山々なのだからリールーもカレンが馬鹿なのか天才なのか判断できなかった

胡乱な目でそんな厄介を持ち込むカレンを覗き込む・・・そんな視線に耐え切れずカレンが目を反らす


「い、いえ。いいわ、っ、うんっ! 聞いて驚け! なんと今回は副作用無しでエーテルも魔力も不要で発動できて雪を降らすことができるのよ!」


「ゆき? 雪ってあの空から降る雪ですか?」


生まれ育った故郷がテスラでパラミスの寒冷地に隣接していたので降雪は間々経験があるがルルアに移住してからは雪なんてお目に掛った事が無いので副作用が無いと聞いて興味を示し魔道具をまじまじと観察する


「そうその雪よ!」


「へぇ~。副作用無しで誰でも雪を降らせるなんて凄いじゃないですか」


「あ。リールーがでれた。初めてじゃない?」


カレンの魔道具を始めて素直に褒めるリールーにカレンは益々上機嫌になる


「でれとかじゃありません! それで、具体的な範囲や期間はどれぐらいなんですか?」


「国中と言いたい所だけど・・・流石にまだそこまでは無理でまだルルア全域ぐらいで期間は一週間よ」


「それは凄いですね! カレンさんおめでとうございます。初めてまともな魔道具完成させましたねっ」


「感謝は嬉しいけど初めてって・・・」


リールーの素直な感想に複雑な気持ちになってしまうカレンだったが今回は名品と思いリールーも初めてカレンのまともな魔道具の公表ができると内心喜んでいる


「まぁまぁ。それじゃ完成品と錬成資料お預かりして当組合で検討しますね」


「ええ。それは間違いなく売れるだろうから値段も決めておいてね」


魔道具は製作者の好きに値段を付ける事が出来る

抑々製作者の一品物なので相場が存在しないのだがカレンの場合価値基準が不明で当初許可の下りた魔道具に明らかなぼったくり価格を付けてコボルトに駄目だしされて2人して悩む事になった。既製品ならコボルトも相場は判断できるが一品物、しかもカレンの際物魔道具の値段等解り様も無いのでアマネの助言によりリールーに一任する事になった






「あのカレンさんがねぇ。これはアシュリー工房初めての珍しい魔道具誕生ですかね」


カレンの魔道具への拘りを痛感してるだけにこの快挙にリールーも素直に称賛を送り自信をもって組合長に報告する


「組合長。カレンさんの戦術級魔道具の完成品と錬成資料お持ちしました」


「うむ、ご苦労。それで、有りかね? 無しかね?」


「初めてです。有りです」


カレンの魔道具と聞いて最早慣れ切った2人は最初に有無を問い無駄を省いていた


「ほう、どれどれ」


錬成資料を閲覧し実物を確認し当初はカレンの魔道具としては初快挙に喜んだものの暫くしてある事に察してしまい、バージルは初めての隠蔽工作をするか悩んだ。


3日悩んだ末正直に領主交えてのお馴染みの会合を開いた。

いつもの面子も当初はまた珍品が視れると期待していたがバージルの告白で危険性を理解しこの会合は一週間続いた…

3人とも愛国心のある有識者なので悩みに悩んだ末、領主の書状付きで本国へ提出した。



シャルマーユ皇国 緊急賢者会議


定例会議と異なり今回は賢者達の荒ただしい意見が飛び交う中更に異例の事態が起きた

皇帝陛下の登場


シャルマーユ皇帝ロック・フェザスター・シャルマーユ

剣聖と謳われる偉人で元々貴族の出ではないので貴族名はないがシャルマーユの皇帝にして剣技の逸脱者

偉丈夫で武骨な武人だが文武共に秀でており剣聖といわれる所以は神から神剣を賜った唯一の存在だ。

公使を使い分け側近に気兼ねなく接する為政者で市井の出だけあって市井を大事にする善皇

シャルマーユ、否この世界で間違いなく最強の1人なのだが意外と茶目っ気があり近衛をよく困られることも多々有り以前敵国の威力偵察に皇国軍派兵する前に軍備勿体ないという建て前を付けて久々に暴れようと1人で敵国の大隊を殲滅し、後にレーランドに叱られるという茶目っ気溢れすぎる逸脱者だ

齢42と皇としては若輩だが統率力は世界でもトップクラスなのだが支配者として致命的な欠点が1つだけあり独身なのだ


会議場の皆慌てて膝をつくが皇帝は「楽にせよ、それどころではあるまい」と状況を理解し颯爽と会議を仕切る


・・・・・

・・・・

・・・

・・


「魔力もエーテルも不要で代償無く一都市に雪を降らせる魔道具か・・・シグ、お前ならこれになんと名前を付ける」


シグルト・ヴェナント・アル・レンド

皇帝の弟子にして現皇帝直属護衛団筆頭頭、皇帝の護衛を務める識者で皇帝に次ぐ武人

箔付けの為に軍に加入させられた大貴族の嫡男だったがその天賦に当時の兵士長だった現皇帝に見込まれ直属の部下となり己の才覚を磨き上げ革命時には腐敗した貴族粛清時に自家も粛清した公平な武人で皇帝の武骨とは変わって均整の取れた眉目秀麗な35歳ということもあって皇国でも女性の憧れとして噂されている


「そうですな。さしずめ気象兵器といった所ですかな」


アマネの予想通りになってしまった


「当の本人は景観を楽しむために造っただろうに。誠に残念な事だな、余も同じ意見だが皆はどうだ?」


「残念ながら儂も同意見ですな、これは兵器です」


「それも軍備も不要で敵国を落とせる程の兵器です」


そう、カレンが雪を楽しむ為に造ったこの魔道具

敵国をほぼノーリスクで落とせてしまうほどの強大な兵器になりうる

敵国の農産地でこれを使い続けるだけで軍備を削ぎ、物資も市場価格も荒らす事のできるほどに…


「其方達の意見は察しておる、大方これを公表するかどうかだろう。先に行っておく。ルード、すまんが公表はせん、そして緘口令も敷く」


会議の荒れた原因はこれを公表するかどうかだが研究職、特にルード以外全員が公表は無しでルードを筆頭に研究職に携わる者だけが公表するべきと反対していたのだ

危険性も十分理解した上で同じ錬金術師である以上成果は認めたいのだ

だが陛下が決めた以上止む無しと認めた。胸の中で製法者に謝罪をしつつ


「当然販売も禁止ですな。このようなもの製法どころか実物だけでも他国に知れ渡れば兵器改革の始まりですぞ」


気象を操る大魔法や召喚獣・幻獣は居るが莫大な代償が必要でそれでも精々2.3日小雨を降らす程度で軍事利用には現実的では無い。

しかしこの魔道具はその莫大な代償を無視して一都市に雪を降らせる

このような気象を操作する魔道具など存在しない。

誰も着目してなかったのでそのような物は今までなかったがこれを機に知恵者が之を手にしたら予想通り兵器改革が起きてしまうだろう


「うむ。だが製作者の想いが判るだけに今回の結果は余も胸が痛む。なにか案はないか?」


俗物な王ならここで製作者を殺害して口封じが定石だがシャルマーユ皇帝にそのような気は毛頭無くむしろこの場でその様な意見を出すような者がいれば嗜めるだろう。

むしろ今回の決断に胸を痛める優しさも備えているので臣下からの信用も信頼も厚い


「陛下、宜しいでしょうか?」


「申せ」


「一般販売禁止は当然として本国のみ製法事買い取るというのは如何でしょうか? 勿論想いも汲んで相応の価格を付けてです」


ルードの精一杯の製法者への礼を込めての意見


「ふむ・・・それが妥当だな。其方には納得いかんだろうがこれだけは耐えてくれ。其方も製作者を希代の大量殺戮兵器の考案者として名を遺す事になるのは遺憾だろう。代わりに価格は其方に任せよう、それと名前も好きに付けよ」


魔道具の商品名は重要で誰が付けたかで箔が付く

それを皇国錬研の総帥ルードが付けるなど本来なら数年振りの祝い事なのだが表にならない以上それは製法者の慰めにしかならない…


「最後にルルア領主シャナードの書状の件についてだが不問とする。誰かて軍需転用可能な魔道具の公表など悩む。ましてやこれほどとなるとな」


領主の書状には正直にカレン・アシュリーの魔道具錬成資料提供から数日、錬金組合長・薬学組合長・領主の3名が国への公表に悩んだことを陳謝する旨が綴ってあった


「「「異議なし」」」


かくしてカレン渾身の魔道具は日の目を見る事は無くなった





天災の妹は天才かと思ったのだが・・・やはり天災も持ち合わせていたか


皇帝の呟きは隣に居るシグルト以外誰にも聞こえなかった

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