131話 剣と宰相
幻神歴2961年12月15日
ドルシア大陸北西部にある越境国クラン。そこの東部にある廃棄された街跡に秘密裏に国内最高機密機関ドキシスが居を構えており今日もいつもと変わらず公にはできない禁忌・違法な実験が繰り広げられていた。
国内のあらゆる分野において関与している為、国からの支援も防衛費も潤沢でドキシスが設立されてから侵入被害は未だ零と異常なほど徹底的な警備体制だ
今日の違法な実験の成果も上々で研究者達は上機嫌で研究成果を纏めていると突如部屋が閃光したかと思うと次の瞬間、耳をつんざく巨大な爆発音が研究所内を支配した
な・・・なんだ、第2部門の暴発か!?
おいっ! こっちに人が埋まっているっ助けてくれ
デクルスの間者による破壊工作か!?
警備部門はなにをしているの!? 至急救護班の手配をっ
お、おい・・・あれ、嘘だろ・・・なんだよあれ
なんだあれは――飛行船などドルシアでもまだ開発されていないぞ!!
研究所内は蟻の巣を突いた騒ぎとなっており、死傷者も膨大で皆右往左往しているが天井に空いた大穴から空の様子が伺え、そこにはかつてドルシアで考案されたがまだまだ技術が足りてないと棄却された空飛ぶ船が鎮座していた―――
ドキシス施設前方500m程の距離にて上空から施設の倒壊振りを確認する2人、シャルマーユの宰相シグルトと賢者ルード
以前のシャルマーユ陛下の独断で偶々入手した情報から一刻を争うと判断された獣種の機械化計画、これの根本を絶ちに陛下から今回の作戦の全権を任されたシグルトはその作戦内容から関わる人物を極力を抑え、かつ壊滅的な一手を打ちたいとルードの魔導船による強襲を作戦に組み込んだ。
「ふむ、エーテル波動砲の稼働に問題なし。目標にも命中したようじゃな」
シグルトの指示もあったが今しがた大虐殺を行ったルードだったがそこに罪悪感は欠片も無い
あるのは幻魔涙戦の二の舞を防げた事実への清々しささえあった
「お見事ですルード様。もう2射放って私を降ろして頂けますか?」
「了解じゃ、シグルト卿。施設内から逃げ出した輩にはエーテル機関砲をお見舞いしてくれるわい」
普段温厚なルードも今回の作戦を聞いて久々に怒りをあらわにしている
これはお国柄ともいえるのだがシャルマーユは幻獣や召喚獣への感謝の念が尽きない間柄で日々を獣種と手を取り合って互いに切磋琢磨して暮らしている
そんなシャルマーユの国人が今回の作戦内容を聞かされれば誰でも怒りを禁じえないものだった
施設から研究者と思しき人物も警備の者も皆が上空というどうしようもない相手に逃げの一手で蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げだしていたが・・・魔導船に搭載されたエーテル機関砲の命中精度により皆肉塊へと飛散していく・・・・・
それから更に2発エーテル波動砲を施設に向けて放った後、下降してシグルトが飛び降り、研究所に単騎掛けしていく。その背をルードは心配などなく見届ける
ドキシスは地上2階地下5階という広さで地下の広さに至っては街の半分程となっており、地上は魔導船の攻撃によって粗方かたはついたが地下は未だ逃げ遅れた人々で溢れ返っていた
非常口は先の一手で潰しており正面入り口からシグルトが堂々と剣を構え地上からしらみつぶしに出会う者たちを問答無用で切り伏せていく
陛下に任されたのは獣種への非道な計画の阻止で関係者の殲滅ではなかったのだがシグルトは今回のような計画を打ち立てる者は逃がしても囲っても火種にしかならないとはなから殲滅と打って出た
作戦開始から40分後、地下5階の一際厳重な部屋を見つけ、扉の鍵を難なく斬鉄で切り捨て侵入するシグルト。室内は今まで制圧したどの部屋よりも広く、また目的の場所だと一目で判明する
幾つかの獣種の死骸がホルマリン漬けとなって並んでいた
「くっ・・・なんて愚かなことを――」
惨状を直に目の当たりにして益々怒りを露わにするシグルトだが、逃げ遅れ・・・いや、研究内容の隠蔽に躍起になっていた女性研究者数名を斬撃で腕を落とす。
そのうち責任者と思しき者を含む2人はショック死で絶命したが最後の1人は地面を転げまわりながらも悲鳴を上げている
「そこの女、答えろ。この施設で行われていた獣種の機械化研究は国の何処まで浸透している?」
シグルトの問いに息も絶え絶えながら女性研究者は思考が乱れていた
諜報合戦をしていたデクルスの間者ではなくなぜ別大陸の、それもシャルマーユの宰相が乗り込んでくるのか? シャルマーユはドルシアを差し置いて飛行船の開発に成功していたのか? 自分は無事生き残れるか? どこまで情報を流していいか? 痛みと恐怖で朦朧とする意識の中、あまりの出来事に密かに意中だったシャルマーユの貴公子とこのような形で会うとは予想だにせず、研究者はシグルトに命乞いをしようと懇願の姿勢をとる
そして
シグルトと視線が合うと研究者は益々恐怖心が肥大してあまりの恐ろしさからがくがくと歯を鳴らす程だった
シグルトの眼、それは自分も今まで散々向けてきた実験動植物に向けるそれで同情の余地が無いと嫌でも悟ってしまい、命からがら情報の漏洩など頭にもなく正直に問いに答える
「・・・・・幻召改造は進展がなくて未だ国に報告してません―――」
研究者の息も絶え絶えの台詞にシグルトは懐に忍ばせた魔導具ファクトを確認する
ベルが鳴らない。効果範囲は5m程だが今この場合なら不都合はない。それでシグルトは一安心をついた。これでベルが鳴っていたら本格的にクラン国本土を攻め滅ぼす事になるのだから
事実幻召改造計画は着手したものの全く見込みがなく、悪戯に幻召の死骸を増やすだけで人と違い幻召は入手手段も限られており、契約者が戦闘で幻召を死に至らしめた場合の死骸を秘密裏に買い取るしか入手法がなく、試行錯誤も難しい
それでもドルシア大陸に属する国なら幻召への恐怖感はぬぐい切れず、幻召改造計画は強硬的に推し進められた。
かつては巨大な1つの大陸だったものの、竜とスキュラによって4つの大陸に分断されたが最も呪われた獣種による被害が大きかったのがドルシア大陸だった、それゆえの蛮行だった
シグルトが一息ついたのを勘違いした研究者が必至に命乞いをかける
「あ、あの・・・シャルマーユのシグルト様ですよね!? 此処での研究成果は全て提供します! シャルマーユに亡命もします!! なので命だけは・・・」
よく観察すれば女性はまだ10代そこらの若手だ
この年で非合理とはいえ秘密機関を携わるとなれば万年人材不足のシャルマーユとしては嬉しい申出だ
が・・・
「貴様らのような害悪、どれだけ優秀だろうとシャルマーユが必要とする事ない。散れ」
剣撃一線、研究者の首が落ちる
これで施設内の生存者は全て始末した。胸糞悪い作戦も漸く終わりだと、早く帰ってお気に入りの砂糖たっぷりの珈琲で一息つきたいと安堵しかけた所でシグルトを呼び止める声が響いた
「いや~お兄さん凄い実力者だねぇ」
その場違いな幼い女性の声による呼びかけに虚を突かれたシグルトは改めて警戒し、室内を慌てて見渡すが人影が見当たらない、どういうことかと訝しげにしていると更に声が掛かる
「こっちこっち、お兄さんこっちだよ~」
改めて声のするほうへ慎重に歩を進めると壁に幾つか飾られていた剣から声が聞こえ、その中から一際異質に感じた一振りを手に取ってみる
「剣? 通信の魔法か何かか?」
シグルト自身半信半疑ながら自問自答してしまう。中級魔法で送受に魔力が必要で魔力次第でその距離が延びる伝達の魔法があるが信憑性が低く、余り浸透していないがその存在は知っており何度か術者の伝達魔法を受けたこともあるシグルトだが伝達魔法特融の魔力の流れがなかったので何事かと首を傾げて手にある剣を眺める
それなりの剣術師を自負しているシグルトはこれまでに様々な刀剣類を見てきたが今手元にある剣は外見は変哲のない数打物の剣だがその内包された力が異常で自身の師でもあるシャルマーユ皇帝陛下の愛剣のグラムのように不思議な力が感じられ一種の魅了にシグルトは憑りつかれた
「違うよ~魔法じゃなくて私自身の声。私知性武器だよ」
修羅場の現場には不釣り合いに場違いな幼い甘ったるい声が剣から発せられる
声にも違和感を感じたが聞きなれない知性武器というものに更に首を傾げてしまう
「―――ちせいぶき・・・? もしや貴殿は妖精や精霊の類で?」
過分にしてシグルトは剣類が意思を持つなど聞いたことがない。知性武器への理解がないので当てずっぽうに何かしらが宿ったのかと考え、上位者の可能性もあると踏まえ言葉遣いを丁寧に問い返す
「そうだね~。この剣に宿った精霊かな。それよりお兄さん、ちょっと助けてくれない?」
「と仰いますと?」
「お兄さん程のイケメンで実力者なら私の担い手に十分だから私を救い出して♪ なんちゃって」
なんとも気の抜ける要望だったがシグルトは悩まされてしまう
この施設にある以上クランの、もしくは秘密裏に他国から入手したと思われる異質な剣、もしかしたら国宝のおそれもあると考え素直に承諾できなかった
折角こうして災いの種を消しに来ておいて更に新たな災いの種を持ち込むようなものだと剣を眺めながら熟考するが「ねぇ、お願いお願い」「損はさせないよ~」「久しぶりに外の空気吸いたいなぁ」「ねっいいでしょ♪」と剣からの熱烈なアピールに根負けして妥協案を提案する
「ううむ・・・この施設は崩壊させるので一時我が国で預かる。という事で宜しいですか? 流石に精霊種を私の一存でどうこうはできませんので」
「いいよいいよ~」
その後愚か者たちの死骸は無視して獣種の死骸だけ丁重に確保し埋葬を済ませシグルト也に供養をした
こうしてシグルトの奇妙な手土産が加わり、世界の火種を秘密裏に処理するという任務は無事終えた
帰り際に魔導船の甲板上で気づいたのだが剣の声はルードには聞こえていないらしく、剣に尋ねた所どうやら一定の剣術師でないと剣の声は聞こえず、また剣の本領も発揮されないという
剣と会話している所をルードに胡乱げな表情で眺められているのに気づき慌てて弁明した
シャルマーユ皇城-執務室-
「陛下、ただいま戻りました。失礼します」
部屋主に声を掛け、入室するといつも通り陛下が執務机で政務を行っていた
「ああ、ご苦労」
「陛下、ご命令にあった任務は無事終え「あああああああ!!!!!!」
報告を告げようとしたところで思わぬ第三者の奇声が割って入り陛下もシグルトも驚く
「「!?」」
「姉さん、こんな所で会うとは・・・ここで会ったが100年目、お兄さん今がチャンスだよ! 姉さんが寝ている隙に斬ろう!!」
1人、いや、一振りが勝手に盛り上がってはいるが身に覚えのない2人は間の抜けた顔になってしまいしばし呆然となる
「いや・・・え? なんだ――意味が分からんが何か? 仕事押し付けた俺への嫌がらせか? いつの間に声音まで変える腹話術なんて身につけたんだ」
陛下は遠回しなシグルトによる働きづめへの訴えかと勘違いして話を進めるがシグルトからしたらたまったものではない
「い、いえ・・・違います。この声はこの剣からでして、やはり陛下もこの声が届きますか」
「へ? 剣?」
シグルトが抜刀して片膝をつき両手でかいがいしく見せてきたのはシグルトの愛剣とは似ても似つかぬ地味ではあるものの、内包された力に陛下も威圧されるほどだった
「はい。ドキシスの施設内に保管されていた剣でして・・・どうやら精霊種が宿っているようです。剣殿、此方は私の上司にしてシャルマーユ皇国の皇帝陛下です」
「っふんだ! 姉さんの担い手なんかに自己紹介する義理はないよ!」
「えっと・・・姉さんとはひょっとしてこのグラムの事で?」
陛下の愛剣のグラムはその昔レギン神から賜った神器で後にシャルマーユの国宝となっている
陛下はグラムを賜った際に姉妹剣については一切聞かされていなかったので目の前の愉快な剣について慎重な態度を取る。精霊種が宿っているだけで既に上位存在なのにもしかして神に纏わる神器なのでは? と固唾を飲んで伺う
「ふんっ、お兄さん。姉さんより私のほうが優秀だから今の内に斬っちゃおうよ」
「い、いや、それは・・・」
「いやいや、国宝を黙って斬られる訳には行きませんよ・・・姉さん、という事はもしやグラムの縁者で?」
「ぷい」
「「・・・・・」」
場を完全にかき乱して支配していた剣が沈黙してしまい、残された2人はどうしたものか視線で交わすがシグルトが折れて剣に伺う
「あの、せめて名を聞かせて頂けないだろうか?」
「・・・姉さんよりずっとずっと凄いエクスカリバーちゃんだよ」
「エクスカリバー? ・・・殿? もしやグラムにも其方のように意思があるので?」
初耳の剣名に2人して首を傾げるが、陛下はある種の危機を覚えて恐る恐るエクスカリバーに尋ねる
今まで意識したことはなかったがグラムにもエクスカリバーのような意思があるのだとしたらなにかと困ってしまう、エクスカリバーとの遭遇でグラムにも挨拶されたら非常に困惑していしまう、と焦っていた
「・・・」
「どうやら俺は嫌われたようだな―――シグ。新たな命令だ。その剣、エクスカリバー殿について調べあげろ。勿論秘密裏にな」
「はっ」
こうして帰宅早々にシグルトは新たな任務を言い渡された
自分が持ち込んだ事柄なのでシグルトも乗り気だったが結果は二進も三進もいかない
エクスカリバーについての来歴が無いのではない、むしろ逆にあり過ぎてどれが真実なのか皆目見当もつかないのだ。
エクスカリバー自身に尋ねても自身の出生については無口になり日夜口を開けば「姉さんを斬ろう」「おはよう! 今日もいい天気だねっ姉さんの命日にいい日だよっ」「ねぇねぇお兄さん、姉さんいつになったら斬るの~?」とこればかりだった。
エクスカリバーからの鬱陶しい要望を押しのけ、なんとかエクスカリバーについての記述のある書物を読み漁るがどれも眉唾すぎて目頭を押さえるものだった
曰く
その剣は王の選定を担う宝剣
曰く
その剣は湖の精に与えられた清浄なもの
曰く
その剣は王に結末をもたらす
ここまではまだいい。問題はこれ以外だ
なんでも・・・
エクスカリバーはその斬撃の凄まじさから竜種すら圧倒せしめる絶剣である。湖の乙女に託された聖剣である。妖精の貴種を斬った魔剣である。精霊の加護が宿った精霊剣である。騎士の英霊が宿った霊剣である。唸る獣の怨念が込められた呪剣である。所有者に国を授ける宝剣である。等々、あげたらキリがない
これだけ逸話があるのに神々に纏わる記述はない。
記述の多さからおそらくエクスカリバーの出自は旧大陸の北方に存在していた騎士の逸話の多かったブリテン国だろうとはあたりはついた
しかしグラムとの関係性については一切記述がなく、シグルトは皇国大図書館にある資料を片っ端に読み漁り、同時に国お抱えの口の堅い鍛冶師達にも尋ねたがエクスカリバーが伝説の剣というのは幾人かが聞きかじっていたがやはりグラムとの関与は不明だった。
資料漁りの片手間にエクスカリバーの性能を確かめようと幾つもの的を相手に振るってみたが正に逸話通りで師でもある陛下にまだ及ばないシグルトでも陛下に届きうる斬撃と切れ味を叩き出していた
「エクスカリバーちゃん、いい加減貴女の出自を教えて頂けませんか?」
ちゃん呼びはエクスカリバーたっての要望で始めシグルトはエクスカリバー殿呼びしていたのだがあまりにしつこく、夜も煩くて眠れないので根負けして恥ずかしくはあるがちゃん呼びとなった
「いいよ~」
「本当ですか!?」
「姉さん斬った後にね♪」
「・・・・」
これである。暖簾に腕押しだった。
国宝でもありまた技量的な問題からもエクスカリバーを手にしたとて師の振るうグラムに打ち勝てるとは思えない
よしんばその可能性があったとしてもグラムの消失は国の大損害だ。軍ではなく陛下単独の戦力が落ちるのだが、単純に戦力低下だけでなくグラムの背景から神から賜った神剣を人間の手で損なうなどあってはならない事だ。
問題はそれだけでは無かった
エクスカリバーが何をとち狂ったのかシグルトの愛剣に嫉妬して愛剣を処分しろと言い出したのだ
シグルトの愛用している剣は元々はシャルマーユのさる大貴族が家宝としていた宝飾剣でもあるのだが切れ味も素晴らしく、お家取り潰しの際にシグルトが引き取り、長年シグルトは愛用しているのだがエクスカリバーに比べたら流石に何段も見劣りしてしまう。それでも長年愛用していた剣を手放すのは抵抗があり、そもそもエクスカリバーをシグルトが扱うかどうかもまだ未定なので毎夜エクスカリバーの不満のはけ口にされていた。
このままではたまったものではないと、シグルトは遂に観念してエクスカリバーについて詳細を知りえる人物に書簡を送った
本来ならシグルトの大嫌いな人物でこんな形で力を借りたくなかったのだが・・・年明けまでこの騒ぎを持ち越したくないということで泣く泣くの決断だった
幻神歴2961年12月28日
シグルト宛に一通の書が届いた。以前送った書簡に同封していた返信用の書でシグルトはこの騒動から解放されると同時に借りを作ってしまったと苦虫を嚙み潰したような表情で書を開いた
剣星ならともかく貴様から連絡が来るとは意外だったぞ
本来なら神前の準備をさせてから用件を伺うのに手紙で済ますとは不遜ではあるが内容が面白いので答えてやる
端的に答えると貴様の推察通りエクスカリバーはグラムの姉妹剣で神器になりそこねた魔神器だ
性能はグラムに引けを取らないがレギンはグラムを愛用してエクスカリバーはその昔に手放した剣だ
恐らく人の手によってインテリジェンスウェポン、この星では知性武器か? に昇華させたはいいものの扱いきれず埃を被っていたのだろう
貴様の書に記されていたエクスカリバーの逸話も殆ど事実なので王を選定する剣にはふさわしいが剣星はすでにグラムを所有しているので貴様が所持するのが妥協点といえるだろう
間違っても他国に渡るような下手は打つなよ? 魔神器なので扱いきれないというなら俺が引き取ってもいいが蔵で埃を被らせるよりは貴様が実用したほうがエクスカリバーも喜ぶ筈だ
最後に懸念していたグラムの意思についてだが、とある手順を踏めばグラムもエクスカリバーのように知性武器に昇華は可能だがこの星の人の在り方からして知性武器は扱いきれないだろう? 必要なら俺が昇華させてやってもいいと剣星に伝えろ
貸しにしといてやる。今度はカレン様の工房に直接来い
シャイタンからの書に新たな難事に頭を抱える羽目になったシグルトだった
確かに他の星ではこの知性武器は有用に取り扱えるのだろうが・・・我々にとっては剣に意思などなんの意味があるのか首を傾げるものだ
人器一体とはよく言われるがこの知性武器なら更に踏み込んだ一体化が可能なのだろうがやはり武器に意思を宿すより担い手自身を鍛え上げて昇華させるほうが合理的と判断せざるを得ない
お気に入りの砂糖多めの珈琲で一息つくと書を陛下にも見てもらおうと懐に忍ばせ腰に差してたエクスカリバーを眼前に持ち上げる
エクスカリバーからは「これからよろしくね♪」と愛嬌のある声が室内に響き、色々と観念したシグルトは今まで長年愛用していた剣を手放す事にし、官営オークションに流すことにした。
陛下からの任務について報告しようと陛下を尋ねたら・・・書を一瞥した後に苦笑されて師弟にして姉妹剣の所有者とは奇縁だなと零された。




