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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
130/148

130話 物見遊山する皇と付き合わされる王

幻神歴2961年12月10日


またもシャルマーユ皇国が世界中に驚きの公表をした


シャルマーユ国ルルア在住の発明のカレン・アシュリーによるポーション13点の公的公表


グリスポーション 体の脂肪を1kg減少させる 金貨1枚

タフネスポーション 基礎体力値を少量上昇させる 金貨5枚

ビルドポーション 筋肉を増加させる 金貨5枚

セーフポーション 一定時間武器破壊技での武器の損失を防ぐ 金貨20枚

リードポーション 一定時間最上級までの遺失物の看破が可能 金貨10枚

クリアポーション 状態異常を即時回復させる 金貨4枚

スクラップポーション 服用すると基礎能力値が不規則に上下する 金貨2枚

チェンジポーション 一時的に性別を転換する 銀貨1枚

リミットポーション 一時的に魔力とエーテルの総量の上限を少量上昇させる 販売価格金貨20枚 週100本の月400本、但し1人5本迄の制限

エクストラポーション 一時的に魔力とエーテルの総量の上限を中量上昇させる 販売価格金貨30枚 週100本の月400本、但し1人5本迄の制限

ヒーリングポーション 体力・魔力・エーテルが一定時間持続的に少量回復する 販売価格金貨8枚 週100本の月400本、但し1人5本迄の制限

リジュネレートポーション 体力・魔力・エーテルが一定時間持続的に中量回復する 販売価格金貨15枚 週100本の月400本、但し1人5本迄の制限

ラックポーション 一時的に幸運値を上昇させる 販売価格金貨100枚 週100本の月400本、但し1人5本迄の制限


上記の品は一部公営店での取り扱いと同時にアシュリー工房で販売を開始


またこの功績に対し

白金功労勲章

星シャルマーユ記念章

聖桜記念勲章

黒金宝冠章


上記4つの勲章を授与

報奨金は新紙幣で310万シュリーとする


賢者ルードによる2つの到達点の解明

シナジーポーション 一時的に魔力とエーテルを合算して魔力・エーテル共に相乗効果を得る

インペリアルポーション ありとあらゆる外傷・内傷を癒す万能の薬


賢者ルードへの恩賞については秘匿事項なので伏せるとする


シナジーポーション・インペリアルポーションの扱いについては同盟国フルーラの黄金錬成と同様とする


シャルマーユ国内において金貨に代わって紙幣単位シュリーへと推移する

金貨1枚・10枚・100枚・500枚この4点の紙幣を発行し本日よりシュリーの稼働を認める


シャルマーユ皇国広報部門を設立、週に一度の間隔で公にシャルマーユ皇国発行の新聞を発行する


ロック・フェザスター・シャルマーユの称号を剣聖を撤廃、新たに剣星に改める




寒波の強い昨今

世間は政府公表の情報により益々賑やかになっているが、それにも関わらず今日もアシュリー工房の面子は其々仕事に邁進しており、カレンの部屋ではアリスとシャイタン、それと今日偶々居合わせたロックンの3人でティータイムを満喫している中、ふとシャイタンが前にシド・ガフリィから聞き及んだ情報を会話のネタにと零す


何やらトルネリア大陸がやばいらしい、と


シドはこの機にカレンのポーション類の大口販売にどうかとこの話を切り出したのだが・・・シャイタンは別の見方をしており、アリスに振ったのだが、アリスは特に関心を示さなかったのだが居合わせたロックンは一国の長としては聞き逃せないと2人をせっついてトルネリア大陸に連れて行ってもらうことになった。


別大陸で言語の訛りが酷いのでシャイタンに前もって翻訳の魔法を掛けてもらった


当然浮遊魔法も転移も行使できないロックンはトルネリア大陸の問題となってる箇所の上空に転移するとあってロックンはアリスの腰にしがみついて眼下の光景を目の当たりにする



「――な、なんだこれは・・・」


「ふむ。それは哲学の問いか?」


「違う!! この光景はなんだ!」


「見ての通り愚国同士の戦争だが?」


「うへぇ~ここまで酷いとは・・・うわ、あっちでは子供が凌辱されてるじゃん」


そう、眼下で行われているのは最早戦争ではない。略奪と蛮行だ。

それを指揮しているのは本来兵を指揮する立場にある正規兵なのだが、上官が既に逃げ出したとあって指揮系統も滅茶苦茶で末端の兵が急場で指揮を執っているがまともに機能するわけもなく・・・

徴収された民兵は自暴自棄になって好き勝手暴れていた。


「シャイタン…お前の仕業か!?」


「貴様は馬鹿か? 俺の策謀ならもっと愉快に仕上げて見せる。こんなくだらん有様になる訳無いだろう」


「しかし―――これは・・・戦争状態とは聞いていたが、こんなもの最早戦争でもなんでもないだろう…」


「愚王を革命で御しなかった国民の末路だな。貴様の言う通りこれは最早戦争というより蛮族の略奪と横暴だな」


ここまで堕ちたら最早救いようがない、せめてシャルマーユはこうはならないようにと教訓にいかそうと思った所でロックンが眼下で気になる光景を目の当たりにした


「シャルマーユはこうはなりたくないものだな・・・ん?」


「それは貴様の手腕次第だろう、どうした?」


「いや、ちょっと気になってな。おいアリス、もっと下がれるか?」


「それはいいけど、流石に気付かれるよ?」


「構わん。俺だけ降ろしてくれればいい」


中空辺りまで下降してロックンだけ飛び降りて戦場に立った

アリスは興味ないとまた上空まで上昇してシャイタンと2人して適当にロックンを眺めていた


「ロックンどうしたんだろ」


「さぁ・・・なにか気になる事でもあったのでしょうか? この戦の顛末に興味は無いでしょうし」


「うわ、グラム抜きやがった」


戦場ではグラムの極光が煌めくと同時に音速の斬撃が舞い、ものの数分でこの地に立っているのはロックンだけとなった


「ふむ、この狂争ももう終わりですかね」


シャイタンもあまり関心なく呟く

ただ、戦場でのロックンの威風堂々振りに剣星の称号を与えて正しかったと認識した


あらかた戦場にいた両軍の殲滅も終わりというところでロックンの足元に年端もいかない少女がロックンの鬼神振りにガタガタと震え、腰が抜けたのか小水も漏らしており只管命乞いをしていた

並の人間なら幼い少女の命乞いを聞くだろうが剣星は違った。


少女の手には果物ナイフらしきものが握られており血に濡れていた、付近には少女より更に幼い子供の遺体も幾つかある

それを見逃さなかったロックンは少女に冷徹に言い放った「お前もその手にしたナイフで人を殺めたのだろう? 戦場で人を殺める以上お前も例外なく一兵士だ。殺った以上殺られる覚悟も持て」


そういって慈悲無く少女の首を跳ねた


ロックンだけとなった地に上空へ呼びかけ2人を呼び寄せる


「お~い、アリスとシャイタン。降りて来てくれ」


「ロックンが暴れてどうするのよ」


「大丈夫だ。目撃者はもういないから問題ない」


「はぁ・・・」


他国の皇族が紛争に介入など大問題なのだがロックンの働きによって生存者は零となった

紛争地域となったミルハンド丘は死屍累々となり地形もロックンの斬撃の影響で大きく変わり果てた


「貴様らしくないな。てっきり傍観すると思ったのだが」


「ああ、そのつもりだったんだが少し気になる事があってな」


「ほう」


「これは戦争の在り方が変わるかもしれん切っ掛けを得たぞ」


たった今虐殺したにもかかわらずロックンはウキウキとして2人に話を切り出す


「何々?」


アリスが興味津々とシャイタンも興味深そうにロックンを見つめる中、ロックンは勢いよく上段から下段に素振りする


「見てろ。華楽斬(かがくざん)!」


遥か前方の崖が一刀両断された


「「・・・」」


凄いのは分かるが・・・ロックンなら出来て当たり前の芸当をまじまじと見せつけられても対応に困る


「おい、なんか言えよ」


場の沈黙に耐えらえず意見を求めるロックン


「いや、ちょっと…急に詠唱じみたこと言って素振りされても」


「ふむ、魔法同様に詠唱で威力が増す、という事か?」


アリスには理解されなかったがシャイタンはその行動にいち早く理解を示す

他星ではままある技能だ。むしろこの星になかったのが珍しい程といえる


「そうだ。恐らくこの大陸独自の技術だろうな」


「へぇ~!! ちょっとグラム貸してみ」


「ああ」


ロックンからグラムを受け取ると覚束ない手で見様見真似、先の技を繰り出してみる


「どれどれ―――かがくざん!」


技が発動しない

それどころか振り切ったグラムが地面に刺さりそれを抜くのに四苦八苦している有様だ


「「「・・・」」」


「く、くははっ! おいアリスふざけてるのか?! だぁはっははっ!!!」


魔法の手腕は嫌という程身をもって知っていたがまさか武に関してここまで才能がないとは驚きを通り越して爆笑するロックンだった


「あ、アリス様は剣才はあられないようで・・く、くくくっ」


シャイタンも思わず笑ってしまう程でこれはアリスは魔神にはなれないと笑いが漏れた

魔法師ならいざ知らず魔神ともなれば魔法の技術だけでなく武もある程度修めるものだがアリスには到底無理そうだと1人納得する


「シャイタンまで酷い!? そんなの自覚してるわよ! ちょっと気になっただけなのに・・・」


アリスも自身が剣技の才がない事は理解している。ただ、この技術なら自分でも剣技を扱えるのでは? と淡い期待があったのだが・・・

もろくもその期待は散った


「今の技以外には何がある?」


シャイタンもこの星では初見の剣技に興味が沸き蒐集欲が掻き立てられる


「さっきの紛争で知ったのは今の華楽斬だけだ。もっと他にもあるだろうから知りたいな。興味が沸いてきたぞ」


「興味が沸いたって・・・お前残り皆殺しにしちゃったじゃん」


アリスが指摘するまでもなく辺り一面は死骸の山だ

これが通常の戦争法にのっとった戦争ならまだロックンも手を出さなかった。だがこの丘で開かれていたのは戦争とは程遠い蛮行で戦争のセオリーを無視していた

本来なら自陣の3割も損耗したら撤退するのが決まりだがそれすら無視していた・・・極めつけはこの紛争を終わらせる立場にある指揮者として居る筈の王族もしくは貴族が既に国外逃亡しており終わりなき紛争となり果てていた。


「見るに堪えんでつい…な」


戦争法に従うなら軍の3割減で撤退、または指揮者の王侯貴族を生きたまま捕らえ身代金とともに戦費を請求して戦争は終わるが最早この大陸の3国の王は国外逃亡しており現場に残された末端の兵達が暴走している


「ふむ、そういう事なら丁度いいな。イシエイスから後続軍が来てるからそれで試せ」


此の地に転移と同時にシャイタンは各国の動きを調べる為に眷属を其々配置につかせており、その一部の眷属からの知らせでイシエイスから兵と暴徒凡そ3万がこの地に向かっていると聞き実験として丁度いいと提案する


「おっ丁度いいじゃん。ロックン、どっちが多く技を取得できるか勝負しよっか」


シャイタンの知らせにアリスは発動できないにしても見知る技術は負けないと自負しておりこの大陸独自の剣技を比べようとロックンに勝負をしかける


「魔法なら兎も角剣技なら負けんぞ」


ロックンも余裕でその勝負を受ける


「む、トルネリア方面からも遅れて軍らしきものが此方に向かってるな」


「あ~この機に2国でペルナンサス襲うつもりだな。じゃ私はトルネリア相手にするからロックンはイシエイスね」


アリスの推察通りイシエイス・トルネリア両軍が結託してペルナンサスを完全に滅ぼす布陣を取った

各国の思惑としてはもうこの大陸に国の指揮を取れる代表がいないので1つでも国を減らしておきたいという現場の切なる思いがあった


「ああ、負けんぞ」


「では私奴は上空で審判役を」


両軍が到着するのを待つのも時間の無駄とシャイタンが両軍をまとめてミルハンド丘へ強制転移させ両軍突然の転移に大混乱となった

そこへアリスとロックンが突撃して勝負は始まった


アリスは得意とする古代の上級外法アビュース・スフィアを半壊の兎書片手に乱発して有象無象を減らして技量の立つ剣士を見かけると対峙して着々と剣技を見抜いていく


対してロックンはというとカレン作の各種ポーションを飲み、猪突猛進に突っ込んだ。そこには策などない

前衛兵士は切り捨て、矢や(つぶて)は切り伏せ、遠方から飛んでくる魔法は切る

イシエイスの名のある武人がロックンをシャルマーユ陛下と見抜き前向上を述べていざ、と張り切った所でロックンからしてみれば一兵士と見わけもつかずアッサリ切り捨てた


目的は殲滅ではなく剣技の取得なので半刻ほど掛かったがトルネリア・イシエイス両軍は文字通り全滅した

勝負はロックンの圧勝だったが3国の主だった軍を滅ぼした所でこれどうしようかと2人とも頭を抱えることになった。シャイタンは剣技が気になっただけで国の行く末に興味はなく、ロックンは3国の残った市民の未来を憂い、アリスは名案を閃いた


「3国の国庫漁って出てきたお金をカレンの借金返済に充てましょ」


その非常識振りにロックンはこいつまじかよ・・・と呆然とさせられたが、言うが早くシャイタンが転移で3国の宝物庫に侵入した

其々巡って各々驚愕だった。既に王族によって星金貨は持ち去られており嵩張る金貨500万程しかなく、既に目ざとい盗掘もされたようで国宝すら消えていた


何故金貨だけ残ったのかは既に亡国寸前の貨幣など二束三文で荷物になるだけだ


代わりにドルシア大陸とルギサンド大陸の各国との黒い密約の証書はごろごろ出てきてロックンは不幸中の幸いとポッケナイナイした


思わぬ収穫に嬉々として帰路についたロックンだが皇城に帰って真っ先にシグルトとレイアードにしこたま説教された

そしてトルネリア大陸での顛末を語るとシグルトは呆れつつロックンに進言した


「あの・・・陛下、あの大陸独自の剣技はあの大陸内でしか行使できません。なので重要度は低く議題にすら上がらない程です」


この台詞にロックンは愕然とした


詠唱剣技はトルネリア大陸の地脈が関係しており他の大陸では行使できない

昔シグルトが宰相としてイシエイスに赴いた際に知った事実でシグルトもトルネリア大陸内では幾つか詠唱剣技も修めたがシャルマーユ大陸に帰国してからは発動できず埃の被った剣技となっている


全剣技使用可能とされるロックンの場合、修練場で試しても発動はしたがロックン個人の技量が更に磨きがかかっただけで一般兵に布教できないなら意味ないと見切りをつけた

ロックンは皇の立場で国同士の戦争では前線に出る事はない、最前衛に立つ兵士達にと期待していたのだが・・・


黒い密書については扱いは慎重にと思ったのだがシグルトから名案が出てロックンも乗り気になった


後日、スイを挟んだ呼び出しに応じてフルーラ王がシャルマーユ皇城へ内密に尋ねてロックンにトルネリア大陸での出来事と実情を打ち明けられた


「・・・え? あんたトルネリア大陸の3国の軍滅ぼしたの?」


つい今さっき初めて口にして虜にしたココアを机に零して唖然とするフルーラ王サクラ

気のせいか数本髪が散ったようだった


「まぁ、そうなるな」


サクラの驚き具合を想定していたロックンもココアで喉を潤しながら淡々と告げる


「あんたテリアとパラミスだけでなくトルネリア大陸を支配したいの? ドン引きなんですけど」


ロックンの余りの内容に白い眼を向けてたじろぐサクラだった

この世界においてゼファースを除いて大小関係なく全ての国が軍を規模の差はあれど保有している

そして軍が突如消え失せたらどうなるか、自国で想像するだけで恐ろしい結果になる


「いやいや、属国2つで手一杯だ。だがこのままだとトルネリア大陸は民兵によって終わらぬ内紛に突入するだろ?」


ロックンとアリスによってトルネリア大陸は前火を消しただけで本格的な火消しに至っていない

そもそもの話、トルネリア大陸の3国とも暴動を諫める政府が瓦解しているので無政府状態で混乱の火中だ


「それはまぁ・・・国の舵を取る王侯貴族が国外逃亡してあげくに軍は消滅、国庫は空ならよほど能天気でなければ暴徒による内戦は確実ね」


シグルトにココアのお代わりを淹れてもらい、自前の国宝でもある毒確認の魔道具で確認して再び甘いひと時を味わう

だがサクラの口から出た台詞は酷く残酷的な実情だった


暴挙と化した軍が滅んで市民達が仲良く手を取り合って国営・・・・・なんて夢物語を語るようなシャルマーユ皇帝とフルーラ王ではない

国庫が空な以上市民達の資産の奪い合いとなる血みどろな内紛が現実だ


善皇たるロックンからしたら飛び地とはいえそんな有様の国を見過ごせない。シグルトと協議した結果フルーラの協力前提だがいい案が出た

ロックンがにやりと無骨な表情に似合わない笑顔で切り出す


「そこでだ。シャルマーユとフルーラで共同で大陸事企業統治しないか?」


「―――詳しく」


「前にも言ったがルルアにスキュラ神が居着いてな、なんとか暴れないで欲しいとフラミー神伝手に頼み込んだから現状海はどこの国も安全だろ? まだこのことはシャルマーユとフルーラしか知らないからこれを機に海洋国家のトルネリア大陸で秘密裏に軍艦を建造しようと思ってな。シャルマーユとフルーラで技術者と資金出し合って海軍復権させないか?」


現状、110の星では海はほぼ手付かずになっており、各大陸を経由する小さい連絡船と漁船のみとなっている。それでも船乗りの職は恐れられており中々船乗り、船長が見つからない

理由は幻魔涙戦(げんまきゅうせん)時のスキュラの放った大海星(だいかいせい)により大型船は勿論、規模は問わずにあらゆる民泊船から小型・大型の軍艦が海の底に沈められ、一時海の上には割れた大陸だけとなっていた。


これについては幻魔泣戦から10年以上経った今でもどこの国でも回復の兆しはなく、世界では海軍は既に機能しないということになっている

戦争は終わったが何が原因でスキュラ神の怒りを買うか何処の国も戦々恐々となってしまい大型船の建造すら忌避されている


だが


何の因果かルルアの神域にスキュラが居着き、この星では暴れないという言質を取ったシャルマーユはこの星ではどの国よりも海軍の復権にリードしている。しているのだが、いざ自国で軍艦を建造した場合ドルシアとルギサンドから政治的圧力が掛かるのは目に見えている


そこで飛び地となる別大陸のトルネリア大陸で建造させようという魂胆だ。


「成程。ドルシアやルギサンドへの言い訳はトルネリアの暴走で済ませるのね?」


フルーラ王も朧気ながらロックンの提案の全貌が見え始めた


「ああ、どの国もまさか他国に軍の一翼を任せるとは思わないだろ」


「良いわね。その話乗ったわ」


シャルマーユ大陸で軍艦の建造は政治的に厳しいが、今やルギサンドとドルシアに見捨てられたトルネリアが国家事業で軍艦の建造とは予想だにしない筈だ

しかも両大陸とも見捨てた手前トルネリアに強く出れないのも都合がいい。


海洋国家ともなれば船の建築技師もまだ残ってる筈、そこに内密にシャルマーユとフルーラから巨額の資金と海軍将校を選出して送り出し現地人の人夫を活用すれば景気の回復にもなる

軍艦も1つや10程度ではない、何百と想定しており進展具合では更に規模を大きくする予定だ


そうとなれば国の支配者2人の話は早く、資金は全額フルーラが負担する代わりにレイアードの海軍軍事教練にフルーラの兵も合同で行うことになり、トリネリア大陸の3国は融合して共栄国家トルネリアとして名を遺すことになった。今後のトルネリアの名産は船の建築とし軍艦は勿論のこと豪華客船も作ってしまおうと2人して大いに横道に逸れた。


こうして非公式ながらシャルマーユとフルーラの一大規模の条約が締結した。


締結の明かしとしてロックンはトルネリア大陸からこそっと持ち帰った黒い密約書をフルーラ王にも複製して渡した

信頼の明かしとして渡したのだが・・・


それを1枚1枚熟読したサクラは呆れていた


「ねぇ、これ公にすればドルシアとルギサンドで勝手に争い初めて自滅してくれるんじゃない?」


「それもシグと一考したが、大戦の余波がこっちの大陸にまで確実に及ぶから無しとなった」


2者、シグルドも入れて3者とも呆れ果てる内容ばかりだった


先ず3大陸とも犯罪組織カイロウとのずぶずぶの癒着・宗教国シスの理不尽な寄進の要求・ルギサンドの見目の麗しい少女の奴隷の輸入・ドルシアの幻獣機械化計画等々これらも一部に過ぎない

世界共通の認識でカイロウの撲滅を掲げていたのにシャルマーユ大陸とゼファース以外はカイロウと利権で深く関わっており一部の国では王族にまでカイロウとの取引の証拠まで有った

シスの上辺だけの綺麗事の説教の裏でトリネリアに莫大な寄進を要求しており、またこの書に記されてるのが事実なら大勢の農村から少年を性奴隷として強制で送り込んでいた

この話はルギサンドも絡んでるようで3国の実行犯とみられる行政官の名前も署名されていた。


そして幻獣・召喚獣の機械化。これはもう正気を疑うとしか言いようがない。幾ら獣種への恐怖感から抜けきってない大陸とはいえこんな冒涜、竜の怒りを買うのは明白だ

これについては後日シグルトがこの書類を手にドルシア大陸の問題の国へ向かい、脅してでも止めさせるつもりだ


その話し合い次第ではシャルマーユは軍を率いるか最悪ロックンが単身で乗り込んで問題国の研究機関を根絶やしにする覚悟だが、おそらくシグルトの恫喝で済むだろう


こうしてアリス・シャイタンの暴挙に付き合わされたロックンは共犯者も巻き込んで大いに国益と変えた。

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