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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月姫


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13話 困惑する錬金術師

幻神歴2958年03月21日


「あれって‥‥‥シドさんちょっと待ってもらえますか?」


ルルア渓谷に足を踏み入れて一週間が過ぎ、最初の採集品レミス草に続き他にも4種の採集が無事に済んだ

魔獣はおろか今の所狼にも遭遇せずに済んでるのは幸いで来た道とは違う道を通って帰路に進み始めた所である種がカレンの目に留まり馬車を停めて並走しているシドにも止まってもらう


「了解」


「どした?」


「あれ、カプル草なんだけど――」


「カラフルな花だな、あれもなにかに使えるのか?」


色彩豊かな花なのだが需要が殆ど無いからか、地形図には載っていない植物である材料を作れるのだが・・・


「カプル草は着色材に使えますがムラが出てしまうのでシェード草の劣化品扱いされてますよぉ~」


アマネの言う通り着色剤としては上位互換のシェード草があり、更に言うと着色剤自体高価な品ではないので劣化品のカプル草は殆ど雑草扱いされている。

そんなカプル草でカレンは何か閃いたのかコボルトとアマネに相談する


「スピカ亭で話してた一般層向けの商品について思いついたんだけど、――――こんなのはどうかしら?」


「成程、、、面白い発想だな、それを作るのに他に材料必要か? 材料次第じゃ高値になっちまうぞ」


カレンの奇抜なアイデアにコボルトは頭の中で商品になるかどうか判断する


「カプル草だけで錬成できるから実質タダ同然だから銅貨数枚で売っても損は無いけど…需要あるのかしら?」


「突飛すぎて判断できねぇな、アマネはどう思うよ」


「銅貨で販売するなら間違いなく売れますよ~、ただ商品の性質上組合の許可が下りるかはわからないですぅ」


全く着目したことの無い品なのでコボルトにも想像できずアマネに判断を仰ぐ

アマネはカレンの着眼点に関心しながらも気になる点も指摘する


「よし、なら取り敢えずこれも採集しちまおう」


「これも採集するのか? 手伝おう、、、っとどうやら狼のお出ましだ」


依頼主の商売話に口を挟むつもりは無いので採集と決まった所でシドも手伝いを申し出るがシドの危機察知で狼の接近を察知して皆に伝える


「え?! どこ?! どうしよっ?」


「俺っちもわからねぇっ」


突然の狼の知らせにカレンはパニックになり右往左往しながらも抱えていたカプル草を放り出し御者台に乗り込み、コボルトは自身でも察知できないという恐怖から手綱を掴みシドの合図次第でいつでも馬車を出せるように備える


「大丈夫だ、どうやら群れからはぐれた狼みたいで3匹だけだ、すぐ片付ける」


一向の焦りを他所に矢も携帯していないのに弓を上空に構える

すると魔法なのか3本光の矢が弓に備えられ即座に同時に射る


「片付いたぞ、肉になるだろうし運んでくる」


数秒して呆けている一向に狼の対処が済んだと言い残し颯爽と狼の回収に森林の奥に潜っていく


「え―――コボルト今の判った?」


シドの後ろ姿が見えなくなった所で放心から立ち直りコボルトに確認するが・・・


「狼の位置も矢が当たったのかどうかすら判んねぇよ」


コボルトにも知覚外の出来事でお手上げと両手を上げ、アマネのとりあえずシドさんを待ちましょうとの一言で3人はカプル草の採集を再開する


暫くするとシドが戻り両脇に狼を抱えており一向の前に下ろす

狙ったのか偶然なのか3匹とも額に矢に穿たれた後があり3匹ともシドが放った一発で仕留めたと理解させられた


「ほれ、多少肉付きは悪いがカレン嬢なら調理できるんじゃないか?」


「え、ええ。狼も調理できるけど、その、凄いわね」


「全くだ、シドの旦那すげぇぜ。弓って直線状に見える的に当てるもんじゃないのか」


さも当然のように話を進めるシドに一向は素直に思ったことを口にだし称賛を送る


「これでも弓兵だからな。1㎞程度なら鷹の眼と危機察知で手に取るように判る、そもそも弓ってのは直線状なんて当てて当たり前で上空への曲射で如何に相手に命中させるかが肝心だ」


「「「凄い(ですぅ)」」」


3人の感想に流石に照れたのか咳払いをして自身もカプル草の採集に取り掛かる


「これでも予備武器が不要な程度の技量は持ち合わせてるつもりだからな」


弓兵等の遠距離職でも接近用にダガーやショートソード等のサブウェポンの携帯は必須だがそれは3流、2流の話で1流となると速射を修めサブウェポンは不要となる。

腰のダガーを抜き、切りつける動作より弓を構えて放つ動作のほうが早くなる為である

だがしかし、それはシドの装備してる弓のように魔法を込められた弓の携帯が前提の話で弓兵の一流への足掛かりはまずこれを手にすることから始まる



その日の晩御飯はシドの成果のお陰で一週間振りの新鮮な肉を満喫できた

3匹の狼の肉の殆どをコボルトとシドで平らげ、狼の毛皮と臓器も剥ぎ取り無駄無く活用するカレンだった


狼の退治から更に3日が経ち、目当ての採集品も残り1つとなり2つの荷台は採集品でほぼ埋まっていた


「ん~、後はこの先にあるセナの木の樹液を採集して今回の採集は終わりね」


シドという頼もしい護衛がいるので道中は安心だが今やもう野宿になれてないカレンはテントでの就寝に慣れず2週間と短い期間にも関わらず早くもベッドが恋しくなっていた


「了解ですぅ」


「やっと終わりか、早く鉱山に戻りてぇ」


既にコボルトの中では鉱山がホームになってるようでカレンが突っ込もうとした所で隣のシドから静止の声が掛かった


「!? 止まってくれっ」


シドに応じて馬車を停めるとシドは地面に伏せ聞き耳を立てる


「ど、どうしたんで?」


狼が出た時ですら飄々としていたシドの真剣振りに一向も緊張し、コボルトが代表して何事か尋ねる


「魔獣のお出ましだ、ランドベアーだ」


「「魔獣?!」」


一向は完全に恐怖で竦んでしまうがシドの落ち着き振りのお陰で錯乱とまではならずに済んだが魔獣となると狼や熊の比ではない。

そんな一向を安心させるようにシドは堂々と言い放つ


「土の中を自由に移動する大型の熊といったところだ、馬車を動かさず音を立てないでくれ、こいつも対処できるから任せてくれ」


シドが一向に動かぬよう呼びかけ馬車から10m程前に出た所で軽快にジャンプを繰り返す

最初はその行動が不明だったが直ぐにそれが音でおびき寄せていると気づき、シドの正面を見据えると凄まじい勢いで土を盛り上げ木々を薙ぎ倒しシドに迫り、直前まで来たところで土中から2mはあるシドの巨体を更に大きく上回る3m程の熊らしき化物が姿を見せ周囲の木々が震える程の雄たけびを上げる


「「ひぃっ!」」


「ぎゃあああ!」


御者台に居た3人がランドベアーの凶悪な風貌と雄たけびに悲鳴を上げた時には決着は着いていた

3人は気付かなかったがランドベアーが地表に現れ雄たけびを上げた瞬間にはシドがバックステップを取り5本の矢を射て両目と心臓辺りに3本と見事に射抜いていた。

属性付与で矢に貫通性のある氷を付与させていたので5本ともランドベアーを軽々と射抜き奥の木を数本薙ぎ倒す程の威力を必中させたのだ。

余りの早業に3人からすれば地表から馬鹿でかい化物が血の涙を流し雄たけびを上げる姿を目にするという3人にとってトラウマ確定の光景だった……


「な、なんだこの化物! でかすぎだろっ」


「こ、怖かった…」


「ひえぇ~驚きましたぁ」


「討伐証明は耳でいいか、組合に出す討伐部位に耳は切り取るが残りはどうするかね? 錬金術師ならなにかしら活用できるのでは?」


魔獣の討伐証明に各組合に魔獣の体の一部を持っていくと討伐数にカウントされる

部位は特に決まってないので魔獣の血液さえ付着していればどこの部位でもいい。

最も首を丸ごと持ち込もうものなら組合の受付員の顰蹙を買う事になるが極稀に新参が自慢のつもりか血の滴る首を持ち込むことがあり組合の笑いの種になっていた


目の前の巨大な魔獣の死骸を前に狼を狩った時同様の気軽さで御者台の3人に声を掛ける


「――え、えっと。普通の熊なら毛皮に臓器は薬と色々使えるけど、魔獣も同じなのかしら?」


「そこまでは流石に俺も判らんな、魔獣は討伐部位以外は基本焼却処分だからな」


魔獣の死骸は放置して置くとそれに釣られて更に魔獣が寄ってくるので討伐後は焼却するか魔法で跡形もなく消し去るのが鉄則だ。


「そ、そいつ完全に死んでるの?」


「ああ安心してくれ、しかし狼はまだしもランドベアーが安全地帯に現れるのは妙だな」


カレンの心配を払拭させるとシドはこの魔獣の出現について考える


(魔獣の中でも縄張りから出ないこいつがなぜ安全地帯に…?)


「取り敢えず熊と同様に剥ぎ取りましょ、コボルト手伝って」


「お、おう。こんなでけぇバケモンなんだ、中級ぐらいの魔獣じゃねぇか?」


死骸と判れば安心してランドベアーの躯を観察し始める一向


「いや、ランドベアーは下級の中でも低いほうだぞ」


「「これで下級・・・」」


判ってはいたがやはり自分達では魔獣は対処できないと痛感し、今後の採集にも護衛は必須と心に刻む






「ところで魔獣のお肉ってどうなのかしら?」


毛皮や臓器の剥ぎ取りのついでにいつもの癖で肉も切り分けてはみたものの、外見は通常の熊肉と変化は見られないが先のトラウマな光景を思い出しとても口にしたいとは思えないのだ


「毒があったり食ったら体が変貌しそうだな」


当然カレンもコボルトも魔獣の討伐なんてこれが初めてなので過去に魔獣の肉を扱ったことなどない


…扱ったことは無いのだが、2人は知らないだけで昔魔獣の肉を姉の手料理として常食していた事があった


「魔獣の肉か、想像も着かんな。今まで食料として見たこと無いからな、どこかの国では食料としてるところもあるらしいが…」


流石に魔獣と関わりの深いシドでも魔獣の肉など考慮したことも無かったし仲間からもそんな話は聞いたことが無いのでなんとも言えない所だが…


魔獣の肉の扱いについてはお国柄に寄って異なり、シャルマーユ等の食料が比較的安価で安定供給される国では食料として見る事は無く、市場に出ても魔獣という肩書に忌避感が沸き誰も手に取らない。


一方、食料の供給が不安定な国では魔獣は食料として当たり前のように食卓に並ぶ事もざらだ。

魔獣の肉の大半は毒があったり、食えなくないが不味すぎるなど不評だが一部の貧国では調理法も確立されている


「この魔獣のお肉は食べられない事は無いですよぉ~」


アマネの一声にとりあえず試しにと一食分だけ残して他は焼却する事にした


そして不安がよぎる晩御飯


「……一応調理はできたんだけど、味は美味しいわ、、」


「た、確かにうめぇがなんていうか、魔獣を食ってると思うと、なんだかなぁ・・・」


「カレン嬢の調理のお陰だろうな、俺はいけるぞ」


流石のコボルトも魔獣の肉は抵抗があるらしく、あまり食は進まなかったがシドは平然と平らげ、結局魔獣の肉は殆どシド1人の胃袋に納まった




採集も全て終え、明後日にはルルア渓谷を出てルルアに帰郷予定と、狼や魔獣の襲撃があったものの順調に旅路は進み帰路についていた一向。


昼食も兼ねて休める場所を探していた所で野生の花が群生する場所を見つけたので此処で休息をとる事にして各々体をほぐしていた。


「綺麗な花々ですぅ~」


「そうね、ここで休憩しましょう」


カレンお手製の燻製肉と乾燥豆、山菜といった昼餉を終え食後の充足感から其々自由行動をとり、コボルトは周りの花は素材になるかとカレンと話し合い、ただの鑑賞用の花と聞き興味を無くして寝転がり、シドは持ち物の手入れ、カレンは食器の片づけと積み荷の確認をしているとアマネの歌声が森に響き渡る


「確かに天上の音色だな、芸術に疎い俺でも聞き惚れる」


「手伝いも進んでやってくれるしいい後輩ですぜ」


アマネの詩に手入れの手を止めて聞き入るシドにコボルトが後輩自慢をしていると森のあちこちから鳥や動物達がアマネの美声に釣られて集まりだす

そんな集まった動物の中でカレンが気になる動物を見つけシドに尋ねる


「あ、あの~シドさん。これってもしかしなくても兎ですか?」


容姿は兎だが大きさが尋常では無く大型犬並にあり、そんな異質な兎を始めてみるカレンとコボルトは集まってきた6羽の大型兎を観察する


「見ての通り兎だな、ああ初めて見るんだったな。ルルアの兎は皆その様な大きさだ」


「これは脂も乗ってるし美味しそうね、コボルト2,3羽絞めるわよ」


大樹海でサバイバルをしていたカレンに動物を愛でるなんて発想がある筈も無く、そこにはただ食料として見る捕食者がいた


「え?! カレン嬢こいつら食う気か?」


「ええ、兎は美味しいですよ。あっ、もしかしてルルアの兎は毒があったりします?」


「…いや、毒は無いが」


違う、そこじゃないとシドは心の中で突っ込みを入れる

カレンはシドの種族に気付いていないがシドは行動を共にし始めて数日後には看破しており玉兎のカレンが兎を食べるというのにショックを受ける


(俺は狐を食えないが玉兎は親近感とか無いのか)


「おい、俺は構わねぇがこんな大きい兎でもおめぇは食うのかよ?」


「なによ大樹海にいた時は兎なんて御馳走だーって喜んであんた狩ってたじゃない」


「いや、けどよぉ・・・こんな大きいともはや犬みたいなもんで罪悪感が」


被捕食者の兎を捕食者の狼が窘めるという異様な光景がアマネの歌声を背景に繰り広げられていた


「何言ってんのよ。大きさが変わろうと貴重なお肉に―――」


―――ツレテッテ―――


「え?」


突如4人とは異なる別人の声が聞こえ慌てて周囲を見渡すカレンだが何処にも人はおろか危険な生物すら見当たらず首を傾げる


「どした?」


「今声が…」


―――イッショニイタイノ―――


気のせいで済まそうとした所に再び声が届き改めて周囲を見渡すと足元のルルア兎と目が合い、そんな筈は、と思いつつも自分でも馬鹿馬鹿しいと考えながらもしゃがんでルルア兎に問う


「ま・・・まさかこの声あんた?」


―――ウン―――


目の前の不思議生物で間違いなかった。

そして今の声で気づいたがどうやら耳では無く頭の中に直接テレパシーのように声が届いていた


「おめぇなにぶつくさいってんだ?」


「それが……どうやらこの兎の声が聞こえるみたいで、連れてけとか言ってるわ」


食べようとしてたら今度は兎の声が聞こえると言い出したカレンをコボルトは何とも言えない渋い表情で覗き込む


「その可哀想な人見るような目やめてよ、本当に頭の中に声が聞こえるのよ」


コボルトはシドにルルア兎ってのはテレパシーだか念話の類が使えるんですかい?

と確認するがシドもそのような稀有な話聞いたことが無いと言う。


「へぇ――で、どうすんだ? 捌くのか?」


「あんた私をなんだと思ってんのっ、流石に意思疎通まで出来たら食べれる訳ないでしょっ!」


兎に対して仲間意識は欠片も無いカレンだが会話が成立する相手を食料として見る気は起らず、興味も失せたので適当にあしらう事にした


「えっと、私達はお仕事で街から来たの、だからもうすぐ街に帰るから一緒には行けないわ」


―――オシゴト? テツダウ、ダメ?―――


「え、ええぇ~・・・ちょっと、どうしよ。なんか仕事手伝うとか言ってるわよ」


更に予想外の提案をルルア兎からされて困惑しコボルトに助け舟を出す


「なに? ―――ふむ、二足歩行で簡単な物運んだりできるか聞いてくれ」


「あなた立って荷物とか運べる?」


―――ウン―――


ルルア兎は立ち上がるとカレンの周りをぴょこぴょこと跳ね回る


「できるって」


カレンの周りをぴょこぴょこ二足立ちで跳ねる巨大兎を目にしてコボルトは閃く


「これから忙しくなるんだ、働き手は幾つあっても困らねぇから連れてっちまえ。それに兎ってのが都合がいい、勢いで工房のヘルメスの硝子に兎の耳足しちまったがシンボルの兎関連が無いと怪しいだろ」


コボルトの懸念にカレンも今になって気付き工房を開く前に気付けて良かったとルルア兎に感謝し、要望に応えようとシドに確認を取る


「それもそうねぇ、、、シドさん、この兎って街に連れ帰っても大丈夫ですか?」


「ああ。魔獣や禁制動植物でも無いから連れ帰っても平気だ、ルルアでも愛玩動物としてルルア兎は人気だぞ」


「じゃあ、あんた。仕事手伝って」


―――ガンバル―――


―――ワタシモ―――


―――ボクモ―――


「え、皆来る気なのっ?!」


会話から外れていた残りの5匹も周囲に集まりだして6匹全員から声が届き皆付いてくる気と知り驚くがコボルトの後押しもあって腹を括るカレン


「構わねぇ、連れて帰ろうぜ。掃除に商品の搬入と猫の手、、、じゃねぇか。兎の手も借りたい程だ」


「はぁ、こうなったら全員面倒みるわ!」


こうして野生のルルア兎との会合は雑用係として採用する事になり、今後の応対についてカレンとコボルトが話し合う

そんな中カレンがふとしたことが気になりシドにルルアの兎の餌はなんなのか尋ねる、これほど体格が大きいと肉食の可能性も考慮しての疑問だったが答えは普通で、通常の兎と変わらなかった。ただし量は通常の5倍程らしいが牧草なら無限にあるので全く問題ない。


「ルルア兎は警戒心が強いんだが、いやはや。アマネの美声は凄まじいな」


「そうですねぇ、見掛けない動物もわんさかいるし、馬まで…って! あれ! あれユニコーンじゃないの?!」


何処にいたのか突っ込みたくなるような動物まで集まってきてるがその中に数頭の馬に紛れて一頭だけ額から角が生えた純白の馬が居た


「はぁ? うぉっ、まじかよ。角生えてる」


「これは驚いた―――俺も初めて目にする。そうか、あのランドベアーはこいつを狙ってたのか」


聖獣は魔獣にとって極上の餌で聖獣を捕食すると魔獣より遥かに力が増すと言われている


「角・・・角・・・ふへへぇ♪」


カレンでなくとも錬金術師ならユニコーンの角を前にして正気で居られる訳も無く、期待を込めてシドに振り向くがシドの先制のほうが早かった


「あ~、カレン嬢。先に断っておくが害意の無い聖獣を狩れなんて無茶な注文は受けれんぞ。できるできない以前に聖獣に手を掛けたなんて知られたら街を追い出されるからな」


魔獣の対となる聖獣は吉兆を運び、清浄を司るとされ討伐も捕獲も厳禁の神聖な生物だ。

当然その存在価値は凄まじく、好事家の間では途方もない額で生態や素材が暗部でやり取りされているが聖獣を手に掛けたと知られたら犯罪にこそ問われないものの、まず全組合を敵に回すことになるしそれ以前に市民権剥奪されて追放間違いなしだ


「っぐぅ…でもでもぉ~はっ、そうだ!」


そんな事情を知らないカレンは目の前の妙薬の材料となるユニコーンの角を諦められる訳も無く


「あの~アマネさんアマネさん」


普段は滅多に出さない猫なで声+低姿勢でアマネに擦り寄る


「はいぃ?」


「そこにいるユニコーン様の角すこぉしでいいので削っていいか頼めないかしら?」


困った時のアマネ頼みだった


「ん~ちょっと待ってくださいねぇ」


「私やカレンちゃんにならちょっとならいいそうですよぉ」


ユニコーンは純潔な乙女を好む性質で純潔の女神のアマネにメロメロになるのも当然でその女神のお願いを快諾する


「ひゃっほ~!! あのユニコーンの角が手に入るなんて夢にも思わなかったわっ! アマネお願いできる?」


剥ぎ取り用のナイフをアマネに渡しカレンはその光景を息を荒げて観察する

アマネに任せた理由は角で突かれたら怖いといった情けない理由だった


「任せてくださいぃ~」



かくして初めてのルルア渓谷採集の旅は想定していた採集品に加えてルルア兎の働き手とユニコーンの角の粉末という最希少素材が手に入り大満足の結果となった。


帰路の途中にシドにユニコーンの角の粉末の希少性を具体的な額で教わったコボルトが売り払おうとやっきになり、カレンと言い争いながらの帰宅だったのは御愛嬌

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