120話 攫ってしまう錬金術師
幻神歴2961年9月01日
今日も今日とてカレン・アシュリーは朝市で素材を探していた。
だが、今尚物価上昇し続けている市場ではカレンのお目当ての素材を見つけても購入出来ず、歯噛みしていた。
なにせ本日給金日だというのに給金の半分はシャイタンに預け、もう半分は徴税員のミシュラに借金返済と、手元にあるお金はアマネによる内緒のお小遣いの金貨1枚だけだ。
(あっこれいいなぁ―――でも銀貨30枚・・・う~~んどうしよ)
素材を片手に思い悩んでいると2つ隣の露店からなにやら喧騒が聞こえてくる
人だかりができており喧嘩かと思い、巻き込まれないよう早々にその場を立ち去ろうとするカレン。去り際ちらりと喧騒の元が視界に入る
見た。
視線が合った。
見てしまった。
運命の出会いだった。
そこからは意識が曖昧だった
ただ目当ての人物に無我夢中でタックルして叫んでいた事は確かだ。
「確保おおおお~~~!!」
目当ての人物はタックルの勢いで頭でも打ったのか気絶しており、これ幸いとトラブルに巻き込まれていた露店の店主に縄は無いかと尋ね、ドン引きしながらも都合良くあるとのことで譲ってもらい、目当ての人物をグルグル巻きにしてついでに猿轡もしてリリーに積んで早々に連れ去った。この間約3分だった。
カレンによる営利誘拐事件が起こる一刻前・・・・・
ルルア南門では1人の愛らしい幼女が決起し思いを発ち震わせていた。
(そうよアンズ! 此処が第二の故郷になるんだから頑張らないとっ)
自身を奮い立たせ鼓舞すること30分、列が進み自分の番になり衛兵が訪ねる
「ん? お嬢ちゃん1人かい?」
見た所馬車は勿論手荷物も少なく小鞄1つだけだった
なにより幼い子供1人だけの入街に衛兵がいぶかしって保護者は居ないのか尋ねる
「ぁ、アンズ1人だけなのだ!」
今やルルアは観光メッカで少年少女1人での入街も珍しくない、ただ少女にしては一際幼いので衛兵は気になっただけなのだが・・・
「アンズ1人だと駄目なのか・・?」
涙目で見上げるアンズに何故かこれでもかと庇護欲を刺激され、思わず素通りさせてしまいたくなる程だったが、衛兵はプロだった。
「ぐっ・・・え、えっと通行税に銀貨2枚必要なんだがあるかい?」
「お金の事か? お金ならアンズ持ってるのだ」
そう言って古い硬貨袋を引っ繰り返し衛兵の手に様々な硬貨とついでに何故かどんぐりが積み重なる
ただ・・・貨幣はどれも革命以前の古い硬貨だったことに衛兵は驚く
革命以後貨幣は一新されシャルマーユ国内では星金貨を除き現皇帝陛下が刻印されているのだが以前の硬貨にも銀や金は含まれているので一応金としての価値はある。最も含有率は低く換金率は酷いが…
衛兵は手元から古銀貨4枚だけ受け取り残りを硬貨袋に戻しこれで通行税は足りると言い、加えて親切心から換金所で換金を忘れないよう伝えるが、生憎アンズには伝わっていなかった。
こうしてアンズは初めて人間の街に足を踏み入れた
初めて目にする物ばかりでアンズは大興奮だった
何もかも故郷とは違う・・・と思う、街並み、建築様式、人混み、屋台、街を行き交う様々な種族
全てがアンズを魅了してやまない
ぐぅ~
屋台のかぐわしい香りに刺激され空腹感が刺激されたアンズは近くの屋台で謎肉の串焼きを2本注文する
代価に銅貨を求められたのでまたしても硬貨袋を引っ繰り返し店主に渡すが何枚か余分だと返ってくる
かくしてアンズによる無計画な食べ歩きが幕を開けた…
幾つかの屋台で買い食いしてる間に金色なのが金貨・銀色なのが銀貨・銅色なのが銅貨と覚えたアンズはベンチに座ってミートパイをリスの様に頬張りながら食べ、硬貨袋の中身を確認する。金貨19枚に銀貨43枚それと銅貨が残り67枚
これがどれ程の価値なのかは分からないが、大金で当面の生活は大丈夫だと思うぐらい硬貨袋はジャラジャラ唸っていた。
実際は今のルルアでは物価だけでなく、宿泊施設等も高騰しておりアンズの所有している古硬貨では二ヵ月も安宿に泊れば消えてしまう程なのだが生憎アンズは気付けない。
(これだけお金あればきっと大きい塒も買える筈なのだ! だからもっと美味しい物食べるのだ~)
満面の笑みで食べ歩きは続く
7件目の菓子パン屋がアンズの目に留まる
生まれてこの方甘いものなど口にした事の無いアンズは陳列されてるパンに魅了され2つ注文した
代価に銅貨6枚要求されたので硬貨袋から銅貨12枚取り出し店主に渡した
が・・・
「ん? なんだこれ、この国の硬貨じゃないね? 換金して貰わないと困るよ」
中年層なら古硬貨も見慣れているだろうが生憎パン屋の店主は若く、古硬貨を見たことが無かった
他国の通貨と勘違いして換金してから持ってきてくれと伝えるが、アンズは訳が分からず幾度か押し問答をしている間に徐々に周囲の注目を浴びる事になった。
それでもアンズは譲らず古銅貨を渡そうとするが、店主は断固として受け取らず、アンズが歯噛みして悔しそうに周囲を見渡していると変な仮面をつけた妖しい女と視線が合った。
そこでアンズの意識は途絶えた―――
そして今現在
鼻唄を零す程上機嫌のカレンがリリーと共にアシュリー工房へ帰宅していた
リリーの背にはグルグル巻きにされた幼女も一緒だった
罪悪感など欠片も無いカレンはこの先を夢想していた
(まさか、まさかまさか『あの』伝説の種に出会えるなんて! ある意味ユニコーンやドラゴンより遥かに希少だしこれで幾つもの空想上の錬成ができる!! うへへぇ)
自身では気付かないがカレンの様子が可笑しく、一種の状態異常に陥っていた
アシュリー工房に近づいた所で同乗者の扱いについて考える
(工房に連れて行くとコボルトが煩いし、何よりリルルの稲妻が落ちるし・・・閃いた! 森に住んでもらいましょ)
拉致隔離監禁の瞬間である
普段のカレンとは異なるので隠蔽工作にも頭が回っていた。
こうして同乗者と共に森を練り歩き、何処が良いか散策してると湖に行き着いた。
(ん~ここなら水場も有るし近くに果実も豊富にあるしいいかしら)
同乗者を降ろしリリーを自由にさせてまじまじと自分が攫って来た人物を観察する
未だ気を失っているが背丈はアマネより少し小さく、推定8歳程度か、目は瞑っているが顔立ちは年相応に可愛らしく、頭上には灰色の狼の耳と臀部からは狼の尻尾がひょっこり出ている。白のブカブカのシャツに黒のスパッツと装いは珍しく、ぱっと見では狼の獣人だが・・・・・
狼幼女を観察してるとシャイタンとフラミーに出くわした
「おや、カレン様この様な場所で釣りですか?」
シャイタンの問いにカレンは慌てて狼幼女を背に隠すが・・・丸見えだった
「―――カレン様、後ろの子供は?」
「な、な、な、何の事やら、、、子供? し、知らないわ」
フラミーの追随にもとぼけるカレン
うさ耳はせわしなくパタついていた
「「「―――」」」
三者三様しばし沈黙が流れるが口火を切ったのはシャイタンだった
「カレン様、どの様な悪巧みを考えておられるのですか?」
悪を司り、またカレンに全幅を置いてるシャイタンなら本当に悪事だろうと気にもせず手も知恵も貸すつもりでの問いだったが…
「わ、悪巧みなんて人聞きの悪い事言わないでっ!」
未だ意識を失っている幼い子供を庇う様にして反論するカレンだが・・・
実の所シャイタンの言う通り悪さ全開の誘拐だったので上手い事言葉が続かず、冷や汗たらたらであうあうぱにくりながらもカレンは右往左往してしまう
「ではその子供は一体?」
「この子はその、えっと――――リルルやコボルトには内緒にしてくれる?」
ちょっとした悪さを打ち明けるように、もじもじと上目遣いで申し出るカレンにシャイタンは心を射抜かれ、心からの笑顔で返答する
「ええ、勿論ですとも。私奴はカレン様の味方ですから」
「私もですよ」
シャイタンに続いて使い魔たるフラミーも追随して迷い無く返事をする
「実はこの子・・・将狼族なの」
「しょうろうぞく?」
「なんと・・・この女性体が将狼族ですと?」
初耳のシャイタンと違いフラミーはその種族に覚えがあり驚愕を襲っていた
余りの事に気絶している子供をまじまじと見入ってしまう程だ
「フラミーも知ってるのか?」
「ええ、他の星ではワーウルフと混同視されがちですがこの星特有の亜人種族で主に戦闘指揮に特化した希少な戦闘種族です」
将狼族
獣人のワーウルフとよく間違えられるが違い、アンズは将狼族という希少種族の亜人である
将狼族自体は危険視指定されてないのだがその類稀な戦闘能力に加えて統率力・指揮能力を幻魔泣戦で遺憾なく発揮して参戦し、数多くの同胞が命を落とし絶滅危惧認定されている―――のだが、アンズの場合将狼族というだけではない希少さが備わっていた。
将狼族には何故か女性はおらず、子を成す場合他種族と交わうのだが生まれてくる将狼族は男性と決まっており、将狼族の女性は文献で空想上の産物とされており、将狼族の女性体は幻と言われておりその希少性はある種ドラゴンを超える
「ワーウルフだと・・・ふむ、それが女性体とは、成程。そういう事ですか」
この星では将狼族だが他の星ではワーウルフと考えれば目の前で眠っている幼い子供の希少さはシャイタンでも十全に判る
なにせワーウルフも雌は居らず雄だけの種族でワーウルフの雌の血液は万能薬にもなると言われ大変な希少価値があるのだ。シャイタンとフラミーが驚いているとカレンの背後で狼幼女が目を覚ます
「――む? んぅ! むぅ! むう、んう!」
最悪の瞬間で狼幼女が目を覚ました
アンズは身に置かれた状況に理解できず、拘束されているのに驚き、恐怖心から暴れるが猿轡までされており言葉も発せず涙目になって上半身をもんどりうっていた
「ああ~暴れないで、大人しくして、いたっ」
そんな狼幼女をなだめようとカレンがあやすが・・・狼幼女アンズからしたら目が覚めたら拘束されており目の前に不気味なアイマスクをした不審者が居るのだ。不信感も殊更だった。
「んぅ!! む? むぅ! んぅ~~」
ついに恐怖感が振り切り、ギャン泣きするアンズだがその愛らしい瞳から零れた涙にカレンは研究者として見過ごせなかった。
「ああっ! 貴重な標本が~~」
「んぅ!!?!」
狼幼女を押さえつけ、ポーションの空瓶に涙を収集して喜色満面のカレンに狼幼女は更なる恐怖が加わるが、シャイタンとフラミーはカレンが普段とは異なる事に気付き、咄嗟に伝達魔法で相談する
『フラミー、カレン様の様子が可笑しい。あの娘のせいか?』
『今確認しました。あの娘自身に自覚は無いようですが微弱な魅了の魔眼が備わっております。微弱過ぎて殆どの者は無効化するのですが…』
カレンはアンズを直視して直感でワーウルフで無く将狼族を見抜き、またアンズのとある特性でもある魅了も加算されアンズを看破したのだ。
アンズ自身気付いて無いがアンズには微弱な魅了の魔眼が備わっており、これを直視したカレンは抵抗力皆無にして無防備なこともあって十全にアンズの魅了に掛かってしまい誘拐・拉致・監禁・隠蔽まで及んだのだ
『成程な、カレン様の場合体質の影響もあってその手の事には無防備なのか』
『でしょうな、後程あらゆる対策を施した神器でも用意してカレン様に所持してもらいましょう』
「ちょっと、落ち着いて、いたたっ。ああ~もう、これ取るから大人しくして、ね?」
狼幼女の余りの抵抗振りに根負けしたカレンが猿轡だけ外して説得を試みる
体の拘束を解かないのは逃げられたら堪らないとここでもカレンの悪知恵は働いていた
「ぷはっ! はぁはぁ、お姉さん誰なのだ! アンズを誘拐してどうするつもりなのだ」
涙は標本として採取され乾いたが恐怖心から声を震わしながら目の前の不審人物に詰問する
「あ、貴女アンズちゃんって言うのね。私はカレン。カレン・アシュリー、見ての通り玉兎族だけどアンズちゃん、貴女将狼族でしょ?」
カレンの場違いな呑気振りにアンズも毒気を抜かれて拍子抜けし、拘束されたままだが取り敢えず自己紹介を返す
「そ、そうなのだ。アンズは誉れ高い将狼族の族長、の娘。だったのだ・・・」
「ん? だったって、なんで過去系なの?」
「アンズも良く判らないのだ・・・ある日アンズの住んでた隠れ里が滅んでしまったのだ・・・だからアンズ1人里を抜け出して人里に来たのだ」
「滅んだって・・・人間に侵略でもされたの?」
アンズが将狼族とは魅了のブーストもあって見抜けたカレンだが亜人種を取り巻く人間の事情までは把握していない。カレンの玉兎族やシドの九尾狐族と違い将狼族は異端審問官にも異端扱いされずに戦争での活躍ぶりから多大に人権もあるのだが、カレンからしたら同じ希少亜人種なので人間からの害意は見過ごせない。
「判らないのだ。アンズ地下に軟禁されてたから―――」
子供特融のあどけない表情に陰りが入って視線を落としてしまうアンズ
アンズは里では文字通り軟禁されていた。これはアンズの身を守る為の手段でもあったが里でもアンズの扱いに困り果てており、どうしたものか日夜里では会合が開かれていた。アンズの知らない事だが里では時期族長にアンズの嫁入りが決まっていた。
そんな大人の事情を知らないアンズは1人寂しく地下で育った・・・
「軟禁って酷い・・・アンズちゃんの里って何処に有ったの?」
「此処からでも見えるのだ、あの山なのだ」
「・・・・・ぇ?」
「ほう―――くくくっ」
カレンの放心振りに代わってシャイタンは思わず笑みが零れる
但し愉悦の笑みだが…
アンズが指差した先に有るのは――以前魔導船の試し乗りした際にアリスに指示され、カレンも気軽におっけ~とばかりに波動砲を試し打ちした際に穿った山だった。
アリスもカレンも勿論知らない事だったが、波動砲の試し打ちした山の麓に正にアンズ達将狼族の里があり、連日連夜アンズを巡って醜い争いを繰り広げていたのだが其処に天罰と言わんばかりに超長距離からカレンの一発が貫いた。
「お姉さんどうしたのだ? 凄い汗なのだ」
アンズの純粋な眼差しに耐えられず、カレンは里を滅ぼしたと攻められてる様な気持ちになって焦る
「ぁ、あ、あ~――な、なんでもないわ!」
十分考えた結果、カレンはとぼける事にした
実の所アンズからしたらカレンは恩人になる
なにせアンズの父族長は既に殺されており将狼族同士によるアンズを巡っての族長を掛けての骨肉の争いの最中だったのだ。
もしカレンの一撃が無ければアンズは族長たる父を殺した次期族長に嫁ぎ、貴重な将狼族の母体として一生を子を孕まされる標本として終えていただろう
「そうなのか? でも様子が「ま! まぁまぁ」
「んっん! それは置いといて。アンズちゃん1人で何か困ってない? 同じ亜人同士、人生の先輩として困ってるなら何でも言って! 全力で助けるわよ」
今正にアンズは困ってる最中なのだが・・・
里を滅ぼした罪悪感もあってカレンは懇切丁寧にお節介を焼く。
最もそれだけでなく打算も有っての事だが…
ここにきて未だアンズを拘束したままだと気づいたカレンはアンズの拘束を解き、立たせる
「え、急にそんなこと言われても・・・判らないのだ」
「そこを何とか・・・あっそうだ! アンズちゃんルルアに来たばかりなのよね? 住む場所とか困ってない? 力になるわよ!!」
「この町に来たばかりだけどお金ならあるから大丈夫なのだ」
そう言ってアンズは硬貨袋を地面に引っ繰り返し様々な硬貨とどんぐりをばら撒く
それを見てカレンはどんぐりが子供らしいとほっこりするが地面にばら撒かれた硬貨を1枚つかみ取って眺めると見たこと無い硬貨だった。
「何この貨幣、見たこと無いわね、他国のお金? 今のルルア超物価上がりまくってるから金貨20枚程じゃ安い宿でもすぐお金無くなるわよ」
地面に散らばった貨幣を確認してどんぐりと共に硬貨袋に納めてアンズに返しながらも忠告するカレン
「そうなのか? 塒買えないのか?」
「塒? このお金だと家なんてとても無理ね」
「そんなぁ・・・」
しょぼくれるアンズにカレンは此処だとばかりに気を良くしてうさ耳もピンと立たせながら笑顔である提案をする
「そんなアンズちゃんにカレンお姉さんから朗報よ。此処に住まない?」
「――此処って、この森に? 確かに以前の里も森に有ったけど・・・」
「此処なら水場も有るし、美味しい果実も魚も沢山あって困らないわ! ・・・その代わりちょっとお願いがあるんだけど・・・」
「なんなのだ?」
「えっとね、偶にでいいから体液を収集させてほしいの」
アンズの素朴な問いに対しておずおずとカレンは要求を提案する
将狼族の女性体の体液ともなれば最希少なサンプルになるし錬金素材としても非常に有用だ
カレンはまだ知らないが他星では将狼族の代わりのワーウルフの女性体の血は万能薬になると言われる程希少なのでアンズの血が採取できるならこの星でもカレンの技量をもってすれば万能薬に一歩近づけるというものだ。
「体液ってなんなのだ?」
アンズの純粋な問にカレンが当然のように素で返答するが…
「血液や汗・涙、老廃物もだけど、あと小水も欲しいわね」
「しょうすい?」
「まぁおしっこのことね」
呑気に提案するカレンに怖気が走って即逃げだそうとするアンズをすかさずキャプチュードするカレン
「ああ、待ってっ! 逃げないでっ」
「は、離すのだ。お姉さん変態なのだ!」
うら若い幼女の小水を求める等アンズの言う通り変態そのものだが、アンズの場合下手なドラゴンを上回るという被検体として何から何まで余すことなく全てが最希少なサンプルになるのだ
「違うわよ! アンズちゃんにはそれだけの価値があるの! だから、ね? お願いちょっとでいいから、ちょっぴりでいいから!」
鼻息荒くアンズにしがみ付くカレンははたから見れば変態そのものだった
シャイタンとフラミーは内心で笑っていた
「ひぃ~~~――ひぃっ!?」
カレンへの先程までの恐怖とはまた違う気色悪さをアンズが襲い、ドン引きしていた所に間の悪い事にとある神獣、見た目巨象でもある【世界獣】ベヒモスが呑気に間に入ってちぃーすと言わんばかりに神域の湖で喉を潤すがアンズからしたら後ろに変態、前に化物だった。
「こ、こんな怖い所嫌なのだ! ととさま助けて~!!!」
恐怖心に駆られてギャン泣きで亡き父に助けを乞うアンズにカレンは焦って折衷案を切り出しなんとか宥めようと必死だった。
アンズの希少性を一研究者として見過ごせないだけにカレンからしたら無防備なドラゴンを逃して堪るものかとそれはもう必死だった。その必死振りをシャイタンとフラミーは愉快に眺めて放任した。
「わ、解った。じゃ、じゃあこうしましょ」
逃げ惑うアンズの腰に縋り付き、逃すまいと必死になるカレン
その後カレンの提案は尽くアンズに否定される始末だった・・・
このままでは埒が明かないと見て折衷案としてシャイタンが宿で匿う事になった
その後の話し合いで以前カレンとコボルトが世話になったスピカ亭にアンズをシャイタンの費用で囲うと決まり、アンズの正体が世間にばれると第二のカレンが出ると聞いてアンズは一も二も無く耳と尻尾を隠す事に了承する
アンズの衣食住を提供する代わりに週に一度アンズから血の提供がカレンとシャイタンに決まった
カレンは血以外の体液も求めたがアンズの嫌がり様から泣く泣く諦めた。
こうして幼い将狼族の女性の血というドラゴンの血肉よりも最希少な素材が週に一度採取出来る事になった。
余談だがアンズにアイマスクの女性へのトラウマも植え付けられた…




