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臆病兎の錬金経営譚  作者: 桜月華
118/148

118話 夫婦の創世奇譚 19話 番外0 奴隷の夢は泡沫へ



ある知恵者は言った


奴隷とは罰を負う身分ではなく国の必要悪だ


10人に聞いても10人が概ね奴隷は可哀そうと意見を述べるだろうがそれは大きな間違いだ

乞食と違い管理されてるので最低限の衛生面の保護があり、男の奴隷には最も求められる力仕事のために体力の付く雑事を任され、女の奴隷には殆どが性の手解きを仕込まれる

悪徳な奴隷商人に買われたらそれこそ悲惨な結果になるが・・・往来にして商人は金に目敏く、奴隷商売を後物商品と捉えているのでそのような悪徳、否,この場合3流の商人など極一部だ。






逃走防止用に外側から柵が施された幌付きの馬車に男女8人が押し込まれて運ばれていくがその表情は決して優れていなかった

原因は明らか、8人の手首には奴隷用の手枷が付けられており今まさに商人に運ばれている最中だった。


馬車に乗せられて半日は経ったが商人の目的地には後2日はこの状態が続く

そんな状況に辟易した1人の男の奴隷が女の奴隷に声を掛けた


「おい24番、あんたその容姿だと元貴族か豪商の妾か?」


声をかけられた24番は容姿が整ってるだけでなく農民出の娘特有の荒れた肌とは無縁の上流階級特有の素肌で一目で察することができ、せめてもの暇つぶしにと男が声をかけたが別に返事を期待していたわけではなかったのだが24番はその問いに答える


「・・・・そうよ、レイネス家の次男に攫われて3年ほど囲われて飽きたといってこの様よ」


24番の生気のない声で呟きのように答えるがあいにくと狭い馬車内では全員の耳に入る


「レイネス家か、あそこの悪評は有名だからな。女もかなり囲んでるらしいじゃないか」


最初に声を掛けた35番の男とは別の29番の男が感想を漏らす


「私以外にも12人はいたわね表だけで、ね」


24番の言いたいことはすぐ理解できた

裏で妾としてすら扱われない女もいたのだろう、そしてそんな女の末路は決まっている

商品にすらなれずどこぞの人目の付かない所で死体を晒すだけだ


「裏でないだけ良かったと思うしかないわね、それにその器量なら娼館でも十分やっていけるでしょ。私なんてこの顔のせいで娼館すら無理で代わりに計算を覚えさせられたからどこぞの商人にこき使われるわよ」


そう言った46番の顔には火傷の傷跡がはっきりと見えお世辞にも容姿が良いとは言えなかったが髪の色がこの地域では珍しい黒髪だった。


「その傷は? 元犯罪者かなにかか?」


犯罪者の奴隷堕ちは多い。大抵の領主が犯罪者を処分するぐらいなら奴隷にして使うほうが有益と判断してるからだ。

最も貴族絡みの犯罪者は即処刑して口封じは当たり前だが


「これでも善良な市民よ、異端審問官に目を付けられてこの様よ」


「ああ、そりゃまじで災難だな、大方その髪が原因だろ」


35番の男が両手を広げるような仕草でさもご愁傷様といった様子で煽る


「そうよ、顔の火傷だけならまだ特殊な娼館の道もあったけどあいつらの拷問で焼けた鉄棒を下に・・・ね・・・」


「酷い、、、そこまでするなんて」


46番の想像を絶する言葉に24番がつい同情的な言葉がでてしまった


「あー、屋敷で囲われてたなら知らないだろうが最近のあいつらはかなり過激になってきてるんだぜ。そこの46番のあそこに焼けた棒突っ込んだのも常識で考えりゃ発狂死もんだが、やつら回復の魔法でひたすら拷問を続けるから死ねもしねぇから山賊に捕まるより質がわりいぜ」


今まで会話に混ざらなかったこの馬車内では一番の年配にみえる10番の男が憎々し気に語る


「なんだ、10番もやつらに因縁有りか? やだねぇ、どこもかしこも奴らの噂ばかりだ」


35番の飄々とした台詞を最後に馬車内に沈黙が広がる



そしてその沈黙を破ったのがこれまた会話に混ざらなかった3人目の女の66番だった


「ね、ねぇ、なんで皆そんな呑気に世間話みたいなことできるの? この状況判ってないの?! 逃げようと思わないの?!」


66番の悲壮感にくれた顔での訴えは他の面子の失笑を貰うだけだった


「あ~、、、あんた奴隷堕ちしても間もないのか? 俺たちの手にある枷はただの鉄製じゃなくて主人しか解呪できない魔法が掛かってて逃げたところで逃亡生活に加えて乞食以下の生活する羽目になるぜ」


35番の男がさも常識を説くように66番に教える

奴隷から脱しようと脱走を図ったやつはそれこそ沢山見てきたがその結末は皆悲惨なもので、それは馬車内の66番を除く全員が知っていることだった。


この国の制度では近年法改正があり奴隷の飼い主に認められ10年従事すれば奴隷の身分から撤廃され市民権を得ることができる

だが、手枷のついた逃亡者になり果てた奴隷は匿うことも禁じられており、まともな職どころかまともに衣食住すら得ることができず果ては犯罪者かいかれた貴族に嬲り者になる末路しかない。

おそらく66番はそんな常識さえも知らずに奴隷堕ちしたのだろうと苦笑とともに哀れみも含まれていた


「だったらこれだけの人数いるんだから御者と商人を脅せばなんとでもなるじゃない! ねぇ、皆逃げましょう。私娼館で働く何て嫌よ!!」


66番の訴えに思うところがあったのかはたまた琴線に触れたのか46番が先程とは違い冷淡に反論する


「あんた娼館で働いてる人を下に見てるでしょ? 確かに娼館で働く人の大半は借金や奴隷という理由だけどそれだけじゃない。自分の欲を満たすために店で働く人もいるし立派な職なのよ。娼館がなかったら今頃そこらじゅうで強姦が流行ってるわよ、それに娼館で働くにも容姿だけじゃだめなのよ、きちんと接客業を教え込まれるし上手にやれば下層市民よりまともな生活ができるの。奴隷の中でも娼館に売られるだけまだましなのよ。使い物にならないと判断されたらそれこそ貴族の見世物として悲惨な扱いされるんだから」


娼館で働くことのできない46番のその言葉にはこの場の誰よりも重みがあった。

それを聞いて66番は確かに娼館の女を下に見ていたのだが46番の言葉に反論できなかった。


「そ、それでも皆で商人を脅してこの枷を解かせれば自由の身じゃない! ねぇ、やりましょう!!」


10番の男がどうでもいいような様子で66番に説明する


「やりたきゃやりな。止めはしないがこの場の誰も手を貸さないぜ、この枷には商人の言葉次第で動きを止める効果もあるからまず失敗するぞ、それに、、、お前さんはどうか知らないがこの場のほとんどが学もなければ市民権もない。そもそも貴族だろうがなんだろうが奴隷堕ちの時点で市民権は剥奪されてる。そんな奴らがいきなり自由といわれても犯罪者堕ちになるのは目に見えてる。だから誰もそんな無駄なことはしない、奴隷ってのは最低限の衣食住は保証されてるからな」


10番の言葉は的を得ていた

事実この国では乞食になるぐらいなら奴隷にと自ら奴隷商人を訪ねる者も少なくない

66番は察するにこの手の話とは無縁の生活をしていたのだろう、同情はするがそれがなんの助けにもならない事は承知なのであえて冷たく現実を突きつけた


10番の言葉にようやく現状を理解できたのか66番は嗚咽を漏らし涙ながらに語る


「わ、わたしは、、貴族なんかじゃないけどそれでも普通の一般市民だったのよ・・・それを人攫いに攫われて売られたの、納得できるわけ、、ないじゃない・・・」


珍しい話じゃない、むしろよくある話だ。

まだ少女ともいえる66番には到底納得できる話ではないがこの場の誰もがただ一言、運が悪かっただけと思って諦めろとしか思えなかった。


馬車内の空気が重くなり誰も言葉を発することができず数刻が過ぎた頃


馬の嘶きと同時に馬車が大きく揺れ、御者台からひっ迫した声が聞こえる


「くそっ! 矢で馬がやられた!! クルドの旦那、賊です!」


「なんだと! この峠道は先日盗賊の一団を捕えて安全の筈・・・」


「正面を塞がれました! このままでは殺られますぜっ、積み荷を開放して囮にしてその隙に、、、」


御者の言葉は最後まで続かず喉に矢が突き刺さる

クルドは焦り周囲を見渡すと既に10人ほどに囲まれており、その装備から盗賊ではなく傭兵崩れと判り両手を上にあげ無抵抗なことを示しなんとか命乞いの交渉をする


「わ、わたしは商人だ! 抵抗はしない。積み荷は大人しく渡すからどうか命だけは」


獲物が慈悲を乞う姿を見てならず者達から下卑た笑いが漏れる




「くそっ、まじかよ・・・盗賊に出くわすとか最悪だ・・・」


35番が悪態をつき皆に逃走を促す、盗賊に捕まれば末路は死しかない、男の奴隷はその場で殺され女はアジトに連れていかれて死ぬまで性の捌け口が末路だ。


「馬車は止まってるしまだ後ろは囲まれてないから今の内よ!」


24番もこのままだと自分の末路は嫌でも想像できてしまい、一か八か逃走を決意し外に出ようとしたところで今まで一言も発しなかった一際目立つ大柄な人物から声がかかる。


「待て。傭兵崩れなら盗賊と練度が違う、逃げても包囲から抜けられん」


巨漢の3番が初めて喋ったのを目の当たりにしてこいつ喋れたのかと一瞬皆驚くがその口からでた内容は更に絶望的な台詞だった。


「じゃあこのまま大人しく殺されろってのか!」


「いや、お前達はここから動くな、下手に逃走すれば矢の的で流石に庇い切れん」


そういって3番は7人が唖然としてる間にも1人外に出る





3番が御者台に回ると既に御者が無残な躯になり果てており、商人は身ぐるみを剥がされ、縄で縛られているのを確認する。


口封じに皆殺しが基本のやり口なのに拘束するということは誘拐して更に金を毟ろうとしてるのだと察して一先ず商人は後回しにする


「なんだこの大男、枷してるってことは奴隷商人の荷物か」


「っち、男じゃねえか」


「男はいらん、殺せ」


傭兵の1人が大男といえど枷があれば問題ないとばかりにゆっくりと近づき切りかかろうと図る


だが大男は傭兵の想像を超えた行動に出る


反撃するでもなく馬車を力任せに押し込み、車輪が砕けようがお構いなしに馬の死骸ごと引きずり馬車の背面を峠に押し付けた、傭兵達はその怪力と所業にあっけにとられるが傭兵の内の1人がその行動の意味を理解した


「おい、中にまだ奴隷がいるんじゃないか?」


「なるほど気が触れてるのかとおも・・・


男の台詞は続かず巨体に似合わない速度で迫り大男の両手による上段からの打ち込みで頭が砕かれ絶命する


「くそったれ! おいお前ら、迂闊に近づくなよ、弓で殺れ!」


状況判断力といい指示を飛ばしてることからこいつがリーダーと理解した大男は無防備に迫りリーダーを潰そうと図る

狙われた男は焦って剣を構え切りかかるが大男の枷で塞がれそのまま先の男のように上段からの打ち込みで絶命する

それと同時に2本の矢が大男の腹と腕に刺さるが筋肉の壁に阻まれ貫通には至らなかった

そして弓使いに狙いを付けた大男は今しがた殺した男の持っていた剣を持ち構えがむしゃらに奮闘する





馬車の側面が塞がれ外の状況が分からない馬車内の奴隷達は困惑して右往左往するが暫くすると外から争いの音が無くなってる事に気づくと先程と同じように馬車が引き戻される。


「片付いたぞ」


そこには全身傷だらけの3番が不愛想に佇んでいた。





傭兵崩れに襲われた場所から30分掛けて森林部を進み、そこで一向は休憩していた

深夜を森林の中で過ごすのは危険だが賊の後続を警戒しての決死の行動だった、奴隷8人に加え商人と9人が雑多に地面に座り込んでいる。

賊を追い払った後に3番が気絶したので10番と29番と35番の男3人でなんとか3番を支えながらの移動だったから襲撃地からあまり離れる事はできなかった。

商人は拘束はそのままで連れてこられておりここまで一言も発しなかった。


「3番の傷がやばい、足は兎も角脇腹の血を止めないと死んじまう、だれか応急処置でもそこらの草でも使ってなんとかできないか?」


10番のひっ迫した呼びかけに39番の女が答える

助けてもらった恩もあるが善意だけの行動ではなく、この後に移動することを考えて3番がいると心強いと判断しての行動だ


「薬草は無理でも止血だけなら止血効果のある草が多分この辺りなら群生してると思うわ、誰か男の人付いて来てくれない?」


39番の提案に29番が答え2人はさらに奥へと進んでいく


46番が襤褸切れでなんとか3番の傷口を塞ごうと四苦八苦していると66番が商人に殴り掛かった。

口を塞がれたままの商人は行動を止める事もできず為すがままに殴られる


「さっさと枷を外してよっ!」


一心不乱に商人に襲い掛かるが誰も止めようとしない

他の4人もどうするべきか悩んでいるのだ、このような状況など誰も予想できなかった。

ここで商人を殺しても枷を付けたまま逃亡などどだい無理だ、しかし商人に枷を外させる手段が無い。

先程の賊の身包みを剥いだから武器はあるが剣を喉元に突きつけ枷の解呪をさせようにも抑止の声がかけられたらそれまでだ。


八方塞がりだった。


やがて66番も疲れ果て商人から距離を取り肩で息をつく。おそらく人を殴るといった行為に無縁だった66番の凶行は短い間で終わった、一方的に殴るだけでも力任せにやれば素人は直ぐに息を切らせてしまうのは当然だった。

商人の顔は痣と血で見るも無残な様だが唸るしかできなかった




しばらくして39番と29番が目当ての草を見つけて戻ってきたのでなんとか3番の止血処置を施して改めて気絶してる3番を除いた7人と地面に横たわってる商人で今後について話し合う


この峠道は盗賊が度々現れるので通行者は少なく助けは期待できない、目的地の町まで馬車なら2日だが満身創痍のこの状況で徒歩となると一週間以上かかる。そうなれば盗賊に襲われる可能性が非常に高くなる

かといって森林を抜けて反対側の町に向かうのはもっと無謀でまず生き残れない、この辺りは危険な魔獣が生息してるのは子供でも知らされているほどだ。

7人で意見を飛ばし合うが結論は出ない、しかしこの状況で商人が奴隷の行動を制限しても誰も得にならないという意見は一致したので商人の猿轡は外す事にする。


鼻の骨が折れて息苦しかったのか口を開放された商人は口内の血を吐き散らしながら深く呼吸を繰り返す。

7人の奴隷の視線を一身に浴びるも商人は口を噤んだままだ。


奴隷達が今の状況に困惑してるように商人、クルドも現状に活路を見いだせておらず頭の中でどうするべきか頭痛に耐えて必死に思考を巡らせていた。


奴隷達以上に今のこの状況はクルドにとって不利なのだ。

奴隷達は自分を殺そうが殺すまいが逃げるという選択肢があるがクルドには万が一この場で殺されずとも1人で生き残る術は無い、奴隷の逃走防止の為、奴隷の腕に装着されてる枷には主人の静止の強制力がある魔法が掛かってるがそれはあくまで動きを封じるだけで自由に支配できるわけではない。

唯一の救いが奴隷達が自棄になって口を塞がれてる間に剣を向けない事だったが・・・


「なぁ、あんた、確かクルドだったか? 商人なら賢いだろうから今の状況理解できるよな? 一先ずこの枷を外してくれないか? ここでみんな仲良く魔獣の腹の中に納まるより皆で移動したほうが助かる確率は高いだろ?」


10番からの意を決してのだめ元での提案だった。

ここでクルドが奴隷達の枷を外すというのが部の悪い賭けなのは承知しているが他に良い案が浮かばなかったのだ。

クルドからしてみればここで枷を外して奴隷達と協力して無事に町に辿り着いてもそこで奴隷に殺される可能性が非常に高いのだ。

いくら枷が無いとはいえ商人が脱走犯と触れ回れば奴隷達はそれまでだ。

商人と市民権のない者、誰の言葉を信じるかなど語るまでもない


「ちっ」


クルドからなんの回答も得られず苛立ちを募らせる10番だが代わって39番がクルドと交渉する


「クルドさん、では取引しませんか? 私たち7人の枷はそのままで構いません、その代わり3番の枷だけ今この場で外してください。そして皆で町へ向かうまでの護衛を3番にお願いするのです、成功報酬は我々7人の枷を外して貰うだけで構いません」


10番の突拍子の無い申し出に他の6人が慌てて抗議するが10番はそれを無視して商人を見据える。


「・・・・・枷は町の中、守衛の前で外すという条件でならいいだろう」


暫くして商人が初めて口を開く

10番の提案は的を得た互いにメリットのある取引でこの案に乗るしか助かる道はないと判断しての決断だ

3番の枷を外すというのも納得できるしいい落としどころだった。3番が自分に殺意があれば既に死んでいる

しかし結果は自分含めて他の奴隷も無事に窮地を脱する事ができた。3番のその性根からして安全だと判る

取引なら書面上にして正式に交わせば相手が奴隷だろうと有効なので町に着いたら自分を殺す意味も無いのだ。


「それで構いません、先程の賊の討伐報酬は貴方に譲るので先の賊の遺品は全て我々で分配します、それもいいですね?」


「ああ、それで構わない。町へ向かうなら森林を抜けるより本来の峠道を進んだほうが安全だ、傭兵崩れに襲われたばかりだが元々あの道に出没していた盗賊は先日討伐されたから森林の魔獣相手にするよりは助かる確率は高い」


クルドの話を聞いて青ざめていた周りも活路を見出し段々と騒がしくなる

そんな騒ぎの中3番が意識を取り戻して起き上がり周りが3番に状況を説明し取引についても2つ返事で納得してその場で3番は枷を外された。






深夜、疲労が達していたのと3番の傷を考慮して危険を承知で火を焚きこの日は森林で野宿となった


焚火の前では3番が番をしており賊の遺品の剣を手に取り眺めていた


「お前さん確かプレセアの出だったな、兵士か傭兵でもしていたのか?」


「いいや、生まれはプレセアだと思うが物心着いた頃から奴隷だったから正確な事はわからん」


「なるほどな、1つ聞かせてくれ。なぜ俺を殺さなかったんだ?」


「お前を殺す必要があるのか?」


「・・・枷があったとしても奴隷の道からは逃れられるだろう、それに枷も無い今なら俺を殺して他の連中を置き去りにして自分だけ逃げれば自由だぞ」


「奴隷の生活しか知らないんだ―――文字も碌に読めん俺には他の生き方など無理だろうよ」


「そうか・・・無事町へ辿り着いたら辺鄙な村だが知り合いがいる、紹介するからそこで世話になるといい。辺境の農村だから市民権が無くてもなんとかやっていけるだろう」


「農業か・・・自信がないな」


「なにを言ってる。その力を活かして猟師なりなどなんとでもなるだろう」


「・・・剣を握ったのは今日初めだったんだ」


「丁度いいじゃないか、何もない空っぽならがむしゃらに剣を振り回して強さを求めるのもいいんじゃないか? 俺は商売人で剣のことは門外だがその体と力は有利なのは俺でもわかるぞ」


「そうか、それもいいかもしれんな。・・・・最も無事町に辿り着ければの話だがな」



とある奴隷が魔女に出会う5年前のお話

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