107話 融解姫と兎姫
「あああああ!! お姉様お会いしたかったですわ! 昔と寸分も変わらない御姿でっ、珠の音の様なお声に愛らしいその姿! そして悩ましい着物まで一緒なんて!! 昔のお姉様通りで最高ですわ! ああお姉様お姉様お姉様ぁ!」
そんな狂言と同時にベッドに飛び込まれ、大好きホールドされたアリス・アシュリーだが身に覚えのない女性に恐怖感しか沸かなかった
「ちょっ! は、離せっ、何こいつ。ってか誰よお前!! 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!」
アリスからしたら第二のヘカーティアも同然だった
「まぁ! お姉様お忘れですか!? お姉様の妹分のティアラですっ」
「知らない知らない! 私の妹は可愛いカレンだけよっ」
名も知らない女性は益々盛んになってアリスに密着してすりすりと頬擦りを交わし吐息も乱れてくる
「そんなっ、竜塚で百合咲き乱れる姉妹の契りを交わしたではありませんか。ああお姉様ぁ」
「おい、お前は知らないけど姉妹の契りってのは嘘だろ」
マリアの言う竜塚とは、幻魔泣戦時に竜と共に襲って来たとある竜種が言葉通り眠っており終戦後から今までのその年月から塚となっているが、勿論危険種指定されており誰であろうと立ち入り禁止区画となっている
そんな物騒な所で姉妹の契りなど正気の沙汰では無いとアリスは突っ込む
「ぎくっ、お姉様そんな所だけ覚えてるなんてあんまりですわ」
「そろそろ落ち着けマリア」
「は~い」
シャイタンの静止の声でなんとか場は収まり、謎の女性は部屋に備え付けの椅子に座り、アリスも何事かと乱れた着衣を正し対面に座る。シャイタンもアリスの隣に座るが客なら茶菓子の1つでも出すが推定謎の人物にそんな気を回す気もなく、にこにこ笑顔の客に対しアリスは不遜な態度だった。
「で、お前誰よ」
アリスの問いにマリアは立ち上がり、スカートの裾を摘まんで一礼しながら明かす
その所作は一朝一夕でできるような雑なものでなく、洗練されたものだった。
年はまだ20台かそこらで顔は眼鏡を掛けているもののあどけなさの残る顔立ちでショートカットぱっつんのさらさらの金髪が目立つ女性で体格は殊更小柄なアリスより若干上ぐらいの145㎝あるかどうかといった小柄だが、身に纏っている豪奢な赤のローブで服は見えないが顔立ち、所作からは気品さを感じ取れる女性だ。
「今はマリアを名乗ってますが、以前はイル=ザード第9魔法大連隊局長のティアラとしてお姉様と剣聖達と一緒に幻魔泣戦を乗り越えたではありませんか」
「ん~・・・イル=ザード―――ティアラ・・・・」
マリアの説明を受けたがアリスはそれでも身に覚えがなく、頭に指をあて必死に思い出そうとするが…駄目だった
幻魔泣戦の殆どは既に忘却の彼方だ
「アリス様。融解姫の通り名で御座います」
シャイタンの追加説明で朧気な記憶から思い出し、一気に当時の記憶が呼び起こされるアリス
「ああっ! 融解。思い出したお前あの時の融解魔法の担い手の子供かぁ」
胸の前で気持ちよく手をポンと叩き漸く思い出したアリスは目の前の謎の人物を思い出した
うさ耳も迷いが晴れたのか通常の中折れに戻る
幻魔泣戦時まだ13歳と子供にも関わらず既に魔法の技量は逸脱しており、この星の魔法を行使できないアリスにとっては関心した人物だ。
「そうですわお姉様! ついでに姉妹として活動していたのも思い出してください!」
マリアが興奮気味にグイッと机に前のめりになってせがむが当のアリスは呆れ気味だった
「ああ~~。活動ってか、あれはお前が勝手にお姉様お姉様と慕ってただけでしょ―――てかお前視力悪かったっけ?」
幻魔泣戦中期、同じ魔法師という事で一時期寝食を共にしたのだがアリスの外法に魅了され、元々1人っ子で姉妹が欲しかったマリアは(外見上は)同い年のアリスにべったりとまとわりついていた
「ああ、いえ。これは使い魔と契約して魔眼を手に入れたのでその制御に掛けてるだけで視力は問題有りません」
「そっかそっか」
「ほう、どの使い魔と契約したのだ」
「イランドという影の悪魔です」
「イランドか。という事は外元の魔眼か」
「はい。融解魔法と相性がいいので古文書からなんとか召喚陣を読み取りイランドを召喚できました」
イランドとは最上位悪魔から名が付けられたばかりの新参に類する悪魔だがその力は契約者に外元の魔眼を授ける。
外元とは各位階魔法を融合させる一際珍しい能力だが闘争魔法にとっては強力な能力で戦術級魔法2つを融合させ一段上の厄災級の魔法となる。
この星では人の限界は戦術級なので外元の魔眼を手に入れたマリアはこの星ではアリスを除き唯一厄災級の魔法を使える人物でもある
「お前の融解魔法えぐいからなぁ・・・更にブーストまで掛かるとか勤勉な事ね」
アリスがうへぇとげんなりしながらマリアの必殺の融解魔法を思い出す
隔世遺伝による賜物で原初の戦術級魔法融解は各位階魔法を変質させ通常の魔法の理から外れ対抗魔法が極めて少ない。
例えるなら攻撃魔法でも融解を発動させ付与した場合、それに対する結界魔法・抵抗魔法・回復魔法・反撃魔法等々どれもが原初の融解封じの魔法が必要でこの星では原初の魔法の担い手はアリスしかいないのでアリス以外には十全に発揮するという対魔法師泣かせのえげつない魔法だ。
ちなみにこの融解魔法で拷問された可愛い部下は患部の治療が通常の手段では出来ず、患部の周囲を抉り取り治療に当たった……
「お姉様には負けますわ! 信奉するシャイタン様にも会えましたし、こうしてお姉様にも会えたことですし一緒に魔法の深淵を追求しましょう!」
机にダイブしてアリスに抱き着き歓喜を示すマリアだが対してアリスは気乗りのしない態度だった
魔法の深淵に片足突っ込んだマリアと違い、深淵から創造されたアリスにとって深淵など興味も無く…賢人の残した魔導書を時折眺めるだけでマリア程の知的欲求は皆無だった
「え~―――私は常日頃ベッドで惰眠を貪る仕事に忙しくて魔法の追及なんてしてないわよ」
マリアの顔をぐいぐい押し退けながら辞退するアリス
「そ、そんなっ! お姉様の叡智を磨かないなんて世界の損失ですわ!!!」
潜在能力と蒐集力だけで言うならマリアの言う通りなのだが、肝心のアリスが怠け者で折角の外なる魔法への第六感を超えた能力を生かし切れていなかった。
その後もマリアとアリスによる魔法への追及へと押し問答をしていると問題児が市場から帰宅してくる
「ただいま~」
「あ、カレン帰って来た」
愛妹の帰宅にこの無駄な押し問答にもやっと解放されるとうさ耳をピンっと立たせたアリスが出迎えるがマリアは初耳の人物に誰か問う
「カレンとは?」
「私の実の妹よ。超可愛いけど手出すなよ」
カレン・アシュリーはシャルマーユでもなにかと話題に出る名前なのだがマリアが知らないのも理由がある
カレンが地下工房に籠り切りなの同様にマリアは賢者にも関わらず自室の研究所に籠り切りで公の場に一切顔を出しておらず、またマリアとアリス・シャイタンの関係性からマリアの耳に入れば面倒な事になると賢者会議で全会一致でマリアへの秘匿が決められていた。
「という事は私にとって第二のお姉様ですねっ。是非ご紹介をっ」
アリスに抱き着きながらもカレンも紹介をとねだるマリアにアリスは当然拒否反応を示す
「ええ~~・・・・」
「あれ、お客さん? あっ」
カレンが自室へ戻ると一瞬場面が硬直する
姉に抱き着いてる初対面の女性にカレンが困惑するがそれ以上に頭上のうさ耳が丸出しだったので胸一杯の錬金素材を落として咄嗟にフードを被るが…ロックンの時同様既に手遅れだった。
「あ~カレン大丈夫よ、こいつもロックン同様私達が玉兎だと知ってるから」
「そうなの?」
「カレンお姉様! 初めまして、私マリアと申します。以後お見知りおきを」
マリアが太陽の様な朗らかな笑顔でカレンに挨拶する
「え、お、お姉様って・・?」
が・・・マリアの挨拶口上で気になる点があり其方に意識が集中してしまうカレン
マリアの頭上にうさ耳はないがもしかして自分には知らない妹が居たのか気になってしまい思わず問う
「アリス様は私の姉に値する御方、ならその実妹のカレン様も私にとって姉に当たりますわ。宜しくカレンお姉様っ」
そういってカレンの両手を優しく握り又も笑顔を振るうマリア
「私が姉様・・・ふへへぇ、いいかも」
今迄妹の立場だったカレンに突如できた妹分だがカレンは悪い気はしなかった。むしろ自分が姉というのに高揚していた
その後マリアと幾つか挨拶を交わし、アリスと久々に会えたと聞いて折角の再開の邪魔は良くないとカレン也に気を利かせて市場で仕入れた錬金素材を胸に地下工房へ向かった。
「――――あの方、エーテルは吐出してますが魔力はありませんね。何か御病気で?」
カレンが地下工房へ降りたと同時にマリアが疑問点を切り出す
魔力感知などという失礼な真似をするまでも無く、魔眼の影響で魔力の有無が解ってしまいその結果にマリアは困惑していた。術具で魔力を抑える事はあっても完璧に消す方法はない筈でマリアは寡聞にして聞いたことが無い。
「・・・ええ、先天性の魔力欠乏よ」
アリスは身内の恥をマリアにも明かす、ロックンと違い今の今までマリアの存在を忘れていたのだが昔の記憶も思い出し、あれ程自分を慕うマリアなら悪い結果にはならないだろうと期待も込めて
「そんな病気があるなんて初耳ですわ」
「欠陥種族言うなよ」
そんなアリスの警告にマリアは何を当たり前のことをと言わんばかりに頷いて再びアリスに抱き着き、カレンの存在を目にして以前から気になっていた事を切り出す。
「勿論ですわお姉様。それに私はルルアの各種ポーションをコボルト製作と聞かされていましたが、あの方を見て直感しましたわ。マジックポーションやミストポーション等はカレンお姉様の手製では?」
カレン・アリス・シャイタンの存在を秘匿されていたマリアにはカレンの制作した各種ポーションから賢者会議を賑わせた魔導具は全てルルアに居着いた変わり種のコボルトの作品だと聞かされており、マリアは変わったコボルトが居たもんだと特に気にせずミストポーションやマルチポーションを常飲していた。
「ええ、そうよ」
「やっぱり!! 素晴らしい発明品に感服致しますわ。それにあれだけエーテルが吐出していればエーテル技もさぞ冴えているでしょうし」
アリスだけでなくカレンにも尊敬の眼差しを向け、瞳をキラキラさせるマリアだがその推察の違いをアリスは正す
「あの子はエーテル技1つも取得してないしさせるつもりも無いわよ」
「え?」
「アリス様。私奴も気になってたのですが、カレン様は何故エーテル技を会得されていないのでしょうか?」
2人の会話に入らないよう気を使っていたシャイタンだがここにきて前から気になっていた話題になったのでシャイタンも問う
「そうね――犬は知っているし2人にも伝えとくわ」
そう言ってアリスは2人にお茶を煎れながら明かす
別段隠してる訳では無い。だが言いふらす事でも無かっただけの事
魔法は九属性あるがエーテル技は五属性と魔法と根本的に異なる。エーテル技には火・水・風・地・無属性とあり、魔力と違いエーテルを消費して放つのだが魔法に比べてエーテル技は極端に少ない。それに加えて威力も魔法に比べたら秀でているとは決して言えるものでは無い。つまり世間ではエーテル技は魔法の劣化版と言われておりアリスはカレンにエーテル技の師事を行わなかった。
ただカレンが寝てる際にカレンのエーテル属性の確認だけしたら無属性だった。
「魔力同様何かしら不備がおありで?」
「いえ、エーテル技は会得できる筈だけど、あの子にエーテル技は不要よ」
此処まで頑なにエーテル技を拒絶するのも勿論アリス也の訳がある
威力は兎も角、対応技の1つでも取得していればいざ狼か魔獣に襲われた時にそれに頼ってしまい、逃げるという選択肢が遠のいてしまう。カレン・アシュリーはエーテルが洗練されてるとは言え逸脱者とまではいかない。そんなカレンに中途半端にエーテル技を叩き込むよりいざという時は即座に逃げに徹するようアリスは教え込んだ。その方が生存率が高いからだ。
この話を聞いたシャイタンもマリアも強者に位置するが、弱者の生存戦略と思えば成程と納得させられる話だった。
その後、とりとめのない会話が続いたがマリアは一向に帰る気配がなく、夕餉となったがマリアは久々にお姉様の手料理が食べたいと言い、アリスも不承不承ながらも承諾しカレンと姉妹揃っての手料理をマリアに振舞った。
マリアは姉妹の渾身の手料理に感涙し美味しい美味しいと涙ながらに食べていた
皇城で食べる料理より遥かに美味しいしなにより温かい、これがマリアの胃袋を掴んだ一手だった
陛下も言わずもがなだが、賢者のマリアでさえ皇城で食べる料理は毒見役がおり温かい料理も冷めてしまうのだ
だが、此処アシュリー工房ではそんな毒の心配も無く安心して美味しく温かい料理が敬愛する方達に囲まれて沢山食べられる
感激して食べていると会話の流れでコボルトからロックンも偶に来ると聞いてマリアは内心怒り心頭になった
アリスやシャイタンの隠匿だけに限らずこんな美味しい料理を自分だけ口にしていたのかと、次に会ったら説教と決めたのだが…その次の機会は直ぐにやってくる
夕餉も楽しく終わりアリスのそろそろ帰れという飾り気のない要望にマリアは抗い、なんと此処に住むと言い出した……
当然アリスは追い出そうとするがカレンが可愛い妹分の頼みとあって快諾してしまう
之には流石に困ったアリスだがシャイタンの「立場上直ぐ皇城に連れ戻されるでしょう」という台詞に一過性のものと諦めアリスも渋々承諾した。
妖しい目付きで観察されるお風呂もなんとか終わり、就寝となったが流石に姉妹と女神のベッドにマリアは入れずコボルトのベッドでコボルトと一緒に寝る事となった。
余談だがマリアは存在が秘匿されてるとはいえその容姿・出自から皇城では隠れファンが多い。なにせ亡国とはいえ正統な姫なのだから。そんなマリアと寝食を共にしたとなるとコボルトは嫉妬に晒されるだろう―――ちなみにマリアのファンは男性もだが何故か女性のファンが多い。マリアはその性格から異性より同性に好かれる体質だった。
尚カレンの眼の届かない所でアリス自身もシャイタンも魔法は使えない、そしてシャイタンの正体は伏せるよう厳命も忘れなかった。
翌日
朝餉も済んで各々仕事に移るがアリスだけカレンの自室で微睡んでいた、そんな怠惰を見逃す筈も無くマリアが入室しアリスにともに魔法の研鑽をとせがむ
「さぁお姉様! 朝日も健やかな今日、共に深淵を追求しましょう!」
「ぃやだ~~~」
そう言ってアリスは布団を被って亀の子の様に引き籠ってしまうが・・・シャイタンと違い相手が悪かった
なんとマリアも布団の中に侵入してきた
「ちょ!? やめろ気持ち悪い!」
「いいえ止めませんわ! さぁ共に魔法の深淵を! ああお姉様の香り最高ですわ」
そう宣ってクンカクンカするマリアに遂にアリスも折れる
「分った分ったわよもう・・・はぁ」
「やる気になりましたかお姉様!」
遂に観念して乱れた着衣を正し、机に座りマリアも対面に座ると思いきやちゃっかり隣に座った
溜息を付いたアリスがお茶と茶菓子を用意して再び座ると要を切り出す。
「そもそもさぁ、お前深淵深淵って言うけど深淵が何か知ってるの?」
アリスの問いにマリアは眼鏡をクイっと掛け直し心意気新たに熱く語る
「試験ですね!? 勿論存じてますわ。深淵とは魔法の更に上位互換に位置する究極存在で現代・古代・原初の天災級魔導を取得したら開かれる門を潜った先に存在するありとあらゆる魔法、それこそ禁忌すら含まれる叡智に至れると言われていますわ!」
魔法師の到達点、深淵――それは魔法への飽くなき執念の賜物だが古代と原初の魔法が潰えた現代では先ず深淵へと繋がる入り口すら誤認されている
アリスがそんな間違いを指摘する
うさ耳も器用にバッテンを示していた
「はい、不正解。正確には古代・原初の天災級魔導を各5個ずつ取得したら開かれる門ね。ちなみに門を潜った先にあるのは叡智在る神に接続できる。ね」
深淵へ至った場合魔を司る神へ接続でき、その魔の神の頂点がヘカーティアとエキドナだ
「―――その物言い、も、もしやお姉様は既に深淵に至ったので?」
マリアが震える声で確認する。魔法師の到達点に至っているとなれば世紀の祝い事だ
「まぁ、そうとも言えるわね」
アリスの場合誕生からして既に超越者カレンの片割れとして、魔の祖の片割れとして深淵の叡智が授かっていた
魔導の数だけで言うなら既に魔神級だがアリスに神格は無い。加えて言うならアリスは神への接続を一方的に破棄した…
幼い頃に離れ離れになった愛妹を探し求めて外法を追求したが、アリス自身は別に魔法・外法にそれほど関心はない。どれだけ才能があろうと当時の価値観でいう高貴の出のものにとって魔法は下賤の術と目されていたのでアリスもそういうものだと認識がされていた。ただ手段として必要だったので効率重視で我流で学んだに過ぎない。今では過去の蒐集で手に入れた魔導書や古文書を暇つぶしに眺める程度だ。
「凄い! 素晴らしいですわ!!」
慕う姉が深淵に至っていると聞き、益々歓喜してアリスに飛びつき抱きしめるマリア
アリスの言を疑う余地も無い、幻魔泣戦時にアリスは数々の古代・原初の魔導を披露してのけたのだから
「ああもう、だから私はもういいから、そうねぇ・・・お前に相応しい冥属性から古代と原初の魔導書5冊ずつあげるから後は自力で深淵に至りなさい」
グイグイ顔を押し付けるマリアを押し退け、時空掌握から10冊の魔導書を取り出しマリアに譲渡する
既に10冊とも習熟した魔導だがマリアはその魔導書の価値を十全に理解してるので本当に頂いていいのか躊躇してしまうが、アリスはあっさり興味無さげに「良いわよ、私はもう覚えたから」とマリアに押し付ける
古代の魔導書もそうだが原初の魔導書はそれ以上に希少価値があり尚且つ一際珍しい冥属性となると一冊で大城が買える程に値する。
こうしてアリスとマリア2人して平日の昼間はカレンのベッドで2人して仲良く横になりながら魔導書を読み耽った
だが・・・そんな充実した日が続く訳も無く――
2日後
皇帝陛下ロックがマリアを迎えに来た
が・・・
マリアは頑なに帰城を拒否した。それ処か剣聖だけアシュリー工房の料理を味わっていた事に説教する始末だった…
皇国魔法教導研究所の損失が凄い事になってるのでロックはもう平身低頭平謝りしてなんとか帰ってきてほしいと縋るが、マリアはシャイタンとアリスの傍を離れる気はない、むしろ此処アシュリー工房に住むと言い出す始末でロックはしまいには呆れてしまった。
呆れはしたもののはいそうですか、と納得できる話では無いので折衷案として賢者ルードのように偶に通っていいのでなんとか皇国魔法教導研究所に戻って機能回復してくれと頼み込んだ所、渋々承諾してくれマリアはロックに連れられ本国に帰って行った。
こうして嵐の如く去っていったマリアだが、これを機にアシュリー工房には陛下をはじめ賢者ルード・賢者レイアードに続いて賢者マリアまで通う事となり下手な貴族ご用達店舗より悪目立ちする羽目になった。




