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二幕 スタートアップ

 小川に程近い森の一角で、キャンプ用のロッキングチェアに深くもたれながら、たき火の上で出来上がりつつあるクリームシチューを眺めていた。


 能力〔アイテムジェネレイト〕で作った結界石のおかげで、焚き火も俺の姿も外から見えないし匂いも漏れない。

 虫よけの香で虫も近寄らないし、快適だ。


 この世界で目覚めて二日目、ようやくこの能力の性能を少しずつ理解して自身のレベルなるものをドーピングしたところだ。


 〔アイテムジェネレイト〕

 検索ワードからアイテムを指定して構築できる。

 能力を使用したいと念じると構築する画面が目の前に現れる。


 画面には完成予定の形を示す部分や、検索画面、細かいパラメータ調整ができる部分がある。全体的にはゲームのカスタマイズ画面と某通販サイトをくっつけたような画面だ。


 ゲームと違う点は構築した物が実際に目の前に現れるという所。


 二日前、気が付くとこの森に居て頭の中に声とも音ともつかない何かが響いた。


 「なんだこれ、言葉じゃない…。でも理解できる」


 ここは元いた世界とは別世界で、自身に特殊な能力が備わっているという事。


 服は仕事帰りのスーツだが確かちょうど風呂に入ろうと思ってネクタイや腕時計を外した所だったはず…。


 能力はというと、もうずっと前から理解していたような感覚があり、すぐに使う事が出来た。

 他にもゲーム画面のように自身のステータスが見る事ができ以下のように表示されていた。


 ・_____

 レベル:1

 年齢:21歳

 職業:旅人

 スキル:〔アイテムジェネレイト〕〔アイテムボックス〕



 「この空白部分は名前か? 空白とはいったい…。好きに名乗っていいのかな、どうしよう。

年齢21歳?! 15歳若返っている…。そういえば腹が出ていない。顔が見たい…」


 ともかく能力を確認していく。これらの能力の事はゲームっぽくスキルと呼ぶ事にした。

 ステータス画面に集中すると、説明画面? に切り替わった。



 ・〔アイテムジェネレイト〕

 検索するとこの世界で生成可能なアイテムが候補として羅列される。

 パラメータを設定し構築する。



「うーん、ゲーム感覚的に考えると凄すぎると思うけど、よくわからん」


 検索ワードに≪手鏡≫と入れてみる。

 色んな候補が出てきた。意識を集中すると選択する事ができ、[美しい装飾の手鏡]というのを選んでみる。

 完成予定? 画面に装飾が施されたアンティークな手鏡が現れたので生成ボタンを押してみる。


 すると目の前に手鏡が現れた。


「ほんとに出てきた…」


 浮いている手鏡をつかんでみると、急に重さを感じた。

 覗き込むと見た事の無い顔が映っている。


「俺の顔じゃない、別人だ…、ちょっと外国人ぽいような? 肌ツルッツルだな!」


 自分の顔ではない細面に少し困惑したが、パーツ一つ一つが整っていて嫌な気はしなかった。


 そして能力のもう一つが [アイテムボックス]

 これは感覚的にジェネレイトに近く単純にリストが表示され、開放したいアイテムを選ぶと手の平やある程度任意の場所に現れる仕組みだ。

 収納する時は念じるだけだ。


 「ともかく人のいる所へ行こう、地図とか出るかな?」


 検索するといわゆる「宝の地図」のような手描きの地図が出てきたが


「どっちが…どっちだ? そもそもここどこだ?」


 地図には方角らしき記号が書いてあるが、現在地がわからず結局役に立たなかった。

 そんな事をしている内に日も傾いてきて、ある不安が頭をよぎった。


「これは…、ここで野宿か?」


 ともかく頼れるものはこのスキルだけだ。

 多分だけど、ここが異世界なら魔物のようなものもワンサカいるに違いない。

 レベル1じゃスライム的なサムシングにもやられてしまうのでは…。まずはレベルを高める必要があった。


「これだけのスキルならもしかして…」


 試しに検索ワードに打ってみる。



 検索≪レベルアップ≫

 ズラリと候補が並ぶ。

 取得経験値が上昇する指輪やらレベルアップ条件を引き下げる秘薬やら、色々あったけどズバリ解決。飲むとレベルが上がる薬を発見。


 選択すると画面に完成予定図? が現れた。

 横にいくつか変更できそうな項目がある。



[命のしずく]

 レベル上昇値:1

 消費:1

 サイズ:100ml

 対象:自分

 取引:可

 売値:0

 効果:飲むとレベルが1上昇する



「ははあ、なるほど…。つまりこれがチートですね?」


 当然の事ながら上昇値を上げてみる。

 項目横の上矢印に集中すると数値が上昇を始めた。

 手ぶらでラクチンだ。


 カウントは99で止まった。

 アイテム的な上限なのか、レベルの上限なのかわからないが効果自体も編集できるようだがとりあえずはこれで。生成。


 恐る恐る飲んでみると、エナジードリンクのような味だった。

 体がぼんやり輝いて、なんだか微妙に力が漲ってくる感じだ。

 ステータスを見るとレベルが100になっていた。


「不思議な感じはしたけど、強くなった実感は無いな…」


 試しにもう一本飲んでみると199になっていた。


「アイテムの設定上限が99なのか、ここで問題ないレベルっていくつぐらいなんだろう…」これは困る。


 199が高いのか低いのかもわからない。

 いきなり自分より何倍もある魔物に出くわすとも限らないじゃないか。


 まずい時の場合を考えて緊急時用のアイテムを模索する。

 その結果用意できたもの以下。



[聖域結界水晶]

 対象:砕いた場所を中心に2m

 効果:一定時間、範囲上に結界を張り使用者以外の干渉を隔絶する

 効果時間::99秒



[上級ポーション]

 対象:使用された者

 効果:激しい外傷を治す。傷口にかけると効果が上がる。長時間経過した傷跡には効果がない。



[麻痺玉]×10

 対象:使用された者

 効果:対象にぶつける事で相手を一定時間麻痺させる



 水晶は地面に投げつけると光の輪が広がった。

 この中にいれば安全なのだろう…。

 麻痺玉は勢いよく木にぶつけると砕けて煙状になったが、あまり弱いと変わらなかった。

 ポーションは試しようがない…。


 これでとりあえず逃げる準備はいいかな。逃げられないようなら結界内にこもってレベルアップするしかない。命のしずくも10個ほど作っておく。


 あとは武器と防具か…。

 お約束だけど≪最強装備≫で検索してみる、するとまあ大仰な名前がずらりと並ぶ。

 うーん、どれにしよう。装備はレベルの確認が済んでからにしようかな。

 あまり大仰な物は持て余すかもしれないし、奪われるような事があったら詰む。


 一応こんなのがあったから生成しておく。



[木の槍]

 攻撃力:15

 付加:麻痺



 効果が付与できたから、麻痺つけといた。

 逃げる前提ね。


 さて、ちょっと徘徊してみるか。

 少し歩くと動物のような姿が見えた。

(よし!ついてる。こっちが先に見つけられた)


 少し近くに行って見てみると、猪に似た形だった。

 本物の猪見た事ないけど。思ったより大きい…。


 よく見るとステータスが見えた。



 ・アングリーブル

 レベル7

 種族:魔獣

 攻撃力:22

 防御力:17

 体力:60

 スキル〔突進〕〔牙攻撃〕



 魔獣…、これは倒した方がいいよね…? 生き物と戦うのは気が引けるけど、安全の為には仕方ない。

 近づくと気配を察知したのか草を食んでいた顔を、むくりと上げこちらを向き直った。


 その表情を見て、安易に近づいた事を後悔した。


「めっちゃアングリーやんけ…」


 そう言うのもつかの間、世にも恐ろしい表情の猪が雄叫びを上げた。


「グゴオオオオォォォォ!!!」


 悲鳴を上げそうなほど全身が縮み上がった。

 と、思ったが心とは裏腹に体は落ち着いていた。


 ともかく手に用意していた麻痺玉3つを投げつける。

 アングリーブルは避けるともなく、大きな体を揺らし足をかき鳴らしていた。

 一つは明後日の方向に行ってしまったが、2つは命中した。


 ………………。

 どうなんだ!? 効いたのか?


 結界水晶を取りだし、踏む準備をしていると、巨体がぐらりと傾き

 その姿勢のまま横転した。

 なんだか大型のスクーターが倒れる様を連想した。


 息をつき、水晶をしまって槍を手にして近づく。

 穂先で突っついてみるが、微小に震えたまま起き上がる気配はない。


「…ふう、なんとか効いたみたいだ。すまないがお命頂戴するよ」


 槍を振り上げ首元めがけて思い切り振り下ろす。

 グサリと刺さるかと思ったが、穂先が触れた瞬間

 大きな衝撃波が起こり首が吹き飛び、地面がえぐれた。


「!? ハァッ?」


 とんでもない力が働いたようだ、槍は麻痺属性のついたただの木の槍なので、これは俺自身の力のせいだろう。

 レベル199は上げ過ぎたかもしれない。

 下げる薬も生成できると思うけど、様子も見て検討しよう。

 早いところ人を見つけたいところだ。


少し書き溜めていたので何話か連投します。

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