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十五幕 亜人街

 商人ギルドは〈酒場、兼、宿〉のような冒険者ギルドと違って洋館屋敷のような優雅さがあった。


「いらっしゃいませ。」


 目を見張るほど美人な受付嬢に、経緯を話して入国許可証を渡す。


「かしこまりました、では再発行によるお手数料として、銀貨5枚を頂きます。」


 思ったより高いな…。手持ちの銀貨が足りなかったので金貨で支払う。

 でもこれでやっとこの世界での身分証を手にできる…。


「ではこちらの登録器に血を一滴落としてください。」


 掌がすっぽり収まるくらいの大きさの鉄製の板に、何やら魔方陣やら文字やらが刻まれている。

 鉄でできたカードのような板が乗っていて魔方陣と溝で繋がっている。

 渡された針で指先を刺し、血が滴るように指先を絞ると、ちょうど魔方陣の中心に一滴落ちた。魔方陣が輝き溝をたどってカードが輝きだす。


「はい、これで完了ですね、どうぞ。」


 輝きの収まった板からカードを外し手渡された。


「再発行ですので、アイアンランクになりますが、変更は行いますか?」


「えっと…、ランクってどんな感じでしたっけ??」


「どんな感じと、申されますと…?」


 形の良い眉を歪めて怪訝な目で見られた。


「レンジ殿なら今はそのままでいいのでは?お国元に店があるか、こちらで店を構えるおつもりならその時に、ランクを上げる必要がありますが。」


 言い淀んでいると、ジスタールが助け船を出してくれた。

 さすがです。俺の中ではジスタールさんは神です。


「はい! すみませんこのままで大丈夫です。」


「かしこまりました。」


 素敵な笑顔でそう言って会釈した、ジスタール神に。


「終わりましたな、私は少し商会の用事があるのでこちらで処理していきます。」


「わかりました、本当に色々とお世話になりました。奥方様にも宜しくお伝えください。」


 握手をしてジスタールと別れ、冒険者ギルドに向かう。


 身分証という存在は案外馬鹿にできないもので、これまで知らないお家に招かれたお客さんのような浮き足立った気持ちが嘘のように消え、まるでこの街に、異世界に受け入れられたかのような、そんな安心感があった。

 失くさないようにアイテムボックスにしまっておく。

 ランクについては気になるけど、また変更する事があったらまた聞いてみよう。


「みんな! おまたせ。」


 冒険者ギルドに戻ると歓談しているアリシア達がいた。


「じゃあ行こうか。途中で服を買いたいんだけどいいかな?」


「いいよ! その格好じゃあね。」と、リズ。


「西街に行くには窮屈ですね、よければ私が見繕いますわ。」と、ミイナ。


「そういえばそれじゃまずいかも、ね。」と、アリシア。


 三者三様。


 ギルドを出て少し歩くと入口門付近の喧騒が聞こえてくる。

 服を売っている店はそう多くなかったが、西街へ向かう道すがらにあった店に入った。


「レンジさんはどんな服がいいの?」


「うーん、正直あまり服には頓着がなくてね、アリシア。」


「これなんかどうかしら、スリムなレンジさんにきっとよく似合いますわ。これなら下の服も隠れて今のままでいいですし。」


 ミイナが持ってきてくれた服はウィルソンやマロイが着ていたチュニックの様なものに似ていた確かに今のボトムと合いそうだ。


「冒険者ぽいね。いいんじゃないの。これもつけたら?」


 リズがトゲの付いたヒャッハーな肩当てを手に取っている。


「…それにするよ。肩当てはカッコいいけど重そうだからやめとくね。」


「そっかあ、かっこいいのになあ、アタシ買おうかな。」


 冗談じゃなかったようで本気で迷っている。


 ミイナの選んでくれた服の代金を支払って店を後にした。

 しばらく歩くと縁日のような雰囲気が出てきて、肉肉しい匂いが漂ってくる。

 

 ふと店の脇に目を向けると通りに面した脇道に何人か座り込んでいる。

 頭の辺りから動物の耳がのぞいている。


「あ、あれってもしかして…、亜人?!」


 路地に座り込んでいる猫人の姿を目にして驚く。


「そうだよ、どうして驚いてるの?」


「そっか、レンジさんは西街は初めてだから知らないんだね、ここは亜人達の住処だよ、彼らは解雇された奴隷達だね。」


「解雇? どういう事?」


「そのままの意味だよ。怪我や違反をして雇用主から奴隷商に返却された奴等のことさ。」


「で、でも奴隷の雇用主には確か最低限の生活の保障が義務付けられてるはずじゃあ……。」


「…うん、最低限の、ね…。奴隷商の所にいても食事も寝床も最低らしいからね。良い主人が自分を買うまでは自分の自由にしてた方がマシってわけ。」


「なんだよ、それ…。」


 法整備で奴隷商を締め付けても、結局の所、割りを食うのは奴隷達ということか。


「……この西街にはどれくらいの亜人がいるんだろ?」


「うーん、だいたい100人はいるんじゃない?」


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