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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第2章 学園の支配者

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第24話 狩り場

 スルティアに会いに行った翌日の放課後、学園の森の中にある大岩の上に座ってオレはアカシャと念話をしていた。



『情報を整理しよう。まず、オレの目標というか目的は学園生活を、ひいては人生を楽しむということだ』


『はい。友人作りは成功。国際大会代表となることは破棄。現在の短期的目標は新ダンジョン攻略と1軍昇格ということでよろしいでしょうか』


『そうだな。どちらも、あいつらと一緒にって条件でやりたい』



 大岩の下では、アレクとネリーとミニドラ、そしてベイラが、5匹のモンスターと戦っていた。


 5匹とも小型の肉食恐竜みたいな見た目のCランクモンスターだ。


 アレクが爆裂魔法で5匹を座標爆破し、モンスター達にダメージを与え怯ませる。


 怯んだところで、ベイラが風魔法で竜巻を作り、切り刻みながら1ヶ所にまとめる。


 最後に、ネリーの火魔法とミニドラのブレスのコラボファイアが撃ち込まれ、炎の竜巻となってモンスター達を燃やし尽くした。


 あいつら1人1人じゃCランクモンスターの確殺かくさつはまだ不可能だけど、こうやって連携すれば自分達より頭数が多くても確殺可能となる。


 うんうん。良い感じに連携できてきたな。



「はぁ。はぁ。セイ! 今の見たの! 完璧に倒ちたの!」



 ベイラがミニドラの頭に降りたって休憩しつつ、上にいるオレに対して自慢気に叫んだ。



「ああ。ナイス連携だった! スルティア、おかわりだ」


『了解じゃ!』



 さっきまでは綺麗に1撃で倒せてなかったからな。


 オレはいい連携だったことを褒め、スルティアにもう一度モンスターを出すように頼んだ。


 アカシャがスルティアの音声を中継してくれて、元気な返事が聞こえてくる。


 ここはスルティアが作り出したダンジョン。

 魔力さえあればモンスターも作り放題だ。


 学園七不思議『おかしな魔物達』は野生のモンスターとスルティア産モンスターの差違さいの結果である。



「えぇ…。セイ、まさか、またかい?」



 アレクが苦笑しながら上を見上げて聞いてきた。



「ふん。いい加減、もう慣れたわ」



 ネリーが舌なめずりをする。



「そうさ。今日はかつてないペースでレベル上げだ。どんどん行こう! ってかスルティア、モンスター達を倒した直後に次のモンスター出しちゃっていいから。魔力はどんどん持ってけ」


『おお、そうか! じゃあ、どんどん行くぞー』



 話を待っていてくれていたらしいスルティアが、オレの魔力を使い新たなモンスターを作り出す。


 スルティアはダンジョンにいる者の魔力を吸い上げることができる。

 といっても、普通は魔力抵抗があるせいで微々(びび)たるものだ。


 だが、わざと魔力抵抗を限界まで下げ許可を出せば、多量の魔力のやりとりも可能である。


 オレの魔力とスルティアの魔力を自然回復分まで合わせれば、Cランクのモンスターなら無尽蔵と言ってもいいくらい出せる。


 地面からさっきと同じ小型恐竜っぽいモンスターが湧き出てきた。



「セ、セイはスパルタすぎるのー!」



 ベイラが叫びながらモンスターに向けて手をかざした。

 "限定"の構えだ。


 文句を言いつつも、やることはちゃんとやるのがベイラの良いところだな。


 下でさっきと同じように魔法が炸裂し始めるのを見て、オレは満足して笑った。


 レベル上げの時に最も時間がかかるのは、モンスターを探すことだ。


 全てのモンスターがどこにいるか分かっていたとしても、距離や湧きの問題が出てくる。


 結局、討伐演習で()()()()()()()()()狩れなかったのはこの問題のせいである。


 スルティアの協力のおかげで、この問題が解決した。


 任意のタイミングでモンスターが無限湧きする狩り場。


 世界で最も効率がいい狩り場となったのだ。


 スルティアの意思1つで死体をダンジョンに取り込むことができるのも最高だ。



 ガンガン倒されていくモンスター達を眺めながら、オレはアカシャとの会話の続きをすることにした。



『さて、情報整理の続きだ。これからのイベントとしては1ヶ月後の学園闘技大会。これは国際大会の最後の選考でもある。その後夏休みを挟んで、3ヶ月後に国際大会と新ダンジョンの出現だな』


『1学年末に1軍に昇格することを考えると、国際大会の少し前にある前期期末試験と冬休み前の後期中間試験、そして来年の学年末試験も大きなイベントとなります』



 ネリーの学力問題がヤバすぎて、アカシャさんが筆記試験を大きなイベントと言っちゃったよ…。



『ま、まぁ、それはこの前の中間試験みたいに頑張って何とかしようぜ。ヘニル国はまだ本格的には仕掛けてこないのか?』



 隣国ヘニルは、このスルト国に戦争を仕掛ける予定である。

 すでに一触即発の状態であり、いつ始まってもおかしくない。



『現状の予定では、戦争は2学年に上がってすぐとなるでしょう』


『そうか。じゃあ、想定外がなければ今年のイベントに集中できるな。新ダンジョンはこのペースでレベル上げしてれば問題ないだろ』


『はい。ご主人様は元より、他の者も最下層のボス以外は問題なく倒せるようになるでしょう。新ダンジョンについては、攻略そのものよりも攻略後が問題です』



 今回の新ダンジョンは、世界に散らばるダンジョンでも特殊だからな。


 攻略後の管理次第では、それが戦争の火種になるほどに。



『うん。管理はしっかりやろう。最悪の場合でも、ダンジョンは解放すればいいから、どうにかなるだろ』


『となれば、目下もっか問題となるのは闘技大会のみです』


『やっぱり、そうなるよな。どうするかな…』



 情報を整理した上で、やはり対応を決めきれないのは闘技大会だけだと確認できた。


 国際大会を辞退することになったので、闘技大会も辞退する予定となっていた。


 名目作りのためにもそれがベストだという教頭の意見に従ったからだ。


 しかし、今日になっておかしなことになり始めた。


 ミカエルと学園長と『大賢者』が、オレ達を参加させろと言い始めたのだ。


 オレ達を参加させたくない教頭と第2王子ノバクと協議するらしい。


 オレ達の意見は完全に無視して。


 あいつらはともかく、オレは大賢者と戦う可能性があるなら参加したくないんだが。


 各学年の優勝者は大賢者と模擬戦をできる権利を得られる、今年だけの特別な副賞ってなんだよ。


 大賢者がオレで遊びたくて作った賞じゃねぇか。



『手段を選ばず絶対に出ないという手もありますが』



 アカシャが最も確実に大賢者と戦わなくて済む方法を提案してくれる。



『それやっちゃうと学園生活に影響出そうだからなぁ。ひとまず協議の結果を待とう。その後、あらゆる可能性を全力で検討するってことで』


『かしこまりました。ご主人様、そろそろです』


『了解』



 現状での対応を決めて、アカシャとの会話を終える。


 そろそろ、あいつらの魔力切れだ。



「お疲れ様! 次から交代しよう!」



 大岩から立ち上がり下に飛び降りて、みんなにオレとの交代を告げる。



「いつも図ったように限界までやるよね…」



 アレクが疲れた顔で笑って言う。



「でも、確実に強くなってるわ…」



 ネリーも疲れた顔だ。



「今日のご飯は、あたちの好物を要求するの」



 ベイラは達成感あふれる顔である。



「もうメシの話かよ。いいぞ。でも、今日はまだまだ終わりじゃないからな」



 効率が良くなった分、休んで魔力を回復して再び狩る時間ができる。

 1度魔力が切れたら終わりじゃ、今までと対して変わらない。



「「「え゛っ!?」」」



 3人の声が重なる。



「岩の上で休んでてくれ。できれば寝るといい。通常時の4倍、安静時の倍の速さで回復する。言ってくれれば、睡眠魔法かけるぞ」


「そ、そこまでしなくてもいいの…」



 ベイラが狼狽うろたえた感じの声を出し、アレクとネリーもコクコクと首を縦に振っている。



「そっか。まぁ、いいけど…」



 まだ上手く魔力抵抗を下げられないであろうみんなに睡眠魔法をかけるとスゲー魔力食っちゃうから別にいいけど、なんだか解せぬ。



「さて、スルティア。さっきの要領で、一度に出せる最大の数のAランクモンスターを出してくれ。オレの魔力が切れるまでガンガンいこうぜ」



 昨日、こっそりスルティアを連れ出してAランクモンスターを狩ってきた。

 今までBランクモンスターまでしか出せなかったスルティアが、Aランクモンスターも出せるようにするためだ。



『最大!? 50体はいけるぞ! 大丈夫なのか!?』


「大丈夫。魔力がなくなりそうになったら声かけるよ」


『どうなっても知らんぞ! マズくなったら、早めに言うんじゃぞ!』



 スルティアは心配性だなぁ。


 スルティアが1度に出せる最大数は()()()()

 倒すのも、魔力も問題ない。



『アカシャ、サポートは頼んだ』


『かしこまりました』



 切り札までは必要ない。

 魔物の位置情報が頭の中に出てくる。


 正面にうじゃうじゃと湧いてきたモンスターに向かって、右の手のひらを向けた。


 レーダーに照準を合わせるように、アレクと同じ爆裂魔法のターゲットをとって行く。



「"一斉爆破"」



 "宣誓"をして、向けた手のひらを握りこむ。


 50体のモンスターの頭が一斉に弾けて、地面に吸収されていく。



『分かっていたつもりじゃったが、とんでもないヤツじゃな…』



 スルティアのつぶやきをアカシャが拾った。



「さぁ、おかわりだ。どんどん頼むぞ」



 音も、光も情報である。


 オレ達がここでやっていることの情報は、完璧に封鎖済みだ。


 どれだけ頑張っても『大賢者』に近日中に追い付くのは無理だが、できる限りのことは全てやっておく。



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― 新着の感想 ―
[一言] 「各学年の優勝者は大賢者と模擬戦をできる権利を得られる、今年だけの特別な副賞ってなんだよ」 権利なのに模擬線が義務に様変わりするのかな?
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