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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第1章 ゴードン村での幼少期

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第48話 最後の勝負

祝3万PV!


ありがとうございます!



 くそっ。速すぎる!


 追ってくる大男との距離が縮まっていく。


 途中で林の中に逃げ込んだが、ほとんど時間も稼げずに見付かってしまった。


 このままでは、近いうちに追い付かれてしまうだろう。




 オレ達はセイの加勢をするか退しりぞくかでめかけていた。


 だが結果的には揉めることはなく、全員の意思が『逃げなくてはならない』ということで統一された。


 盗賊団のボスと思われる大男がこちらに向かって走り始め、セイが必死な声で逃げろと叫んで来たからだ。


 セイの声は今まで一度も聞いたことがないほどに焦りが含まれていて、切実だった。


 オレ達全員が、すでに足を引っ張っていることを確信するほどに。




「父ちゃん! どうする!? このままじゃ追い付かれる!」



 右側を走っていたアルが指摘してきた。



「分かってる! アル、ジル、お前達は別々に逃げろ! アイツはオレを追ってきてるみてぇだからな」



 オレ達とは別の方向に逃げた者もいたが、大男は迷うことなくこちらを追ってきた。


 目線は常にオレに固定されている。


 なぜかは知らんが、コイツらが狙われるよりマシだ。



「でも…」



 左側を走っているジルが迷ったように呟く。



「いいから早くしろ! 追い付かれてからじゃおせぇんだ!」



 追い付かれれば最後、コイツらだけ逃げ出す隙などないだろう。



「ちくしょう!!」



 ジルが悪態をつき、アルは悔しげにうなずいて、左右に別れて走っていった。


 やはり大男は2人には目もくれずにオレを追ってくる。


 これでいい…。



 しばしの間さらに逃げ続けたが、もはやこれ以上逃げても時間稼ぎにもならないほど接近されてしまった。


 オレは覚悟を決めて止まり、剣を構えて振り返る。


 大男も、嫌らしいニヤニヤ笑いを浮かべながら止まった。



「ぎゃははは! やっぱり近くで見ると似てるなぁ! お前がクソガキの父ちゃんだな」



 人質…。


 想像はしてたが、大男の言葉でオレを追ってきた理由わけが察せられた。


 髪の色以外は似ているとよく言われる。


 息子と似てるって言われるのはオレの誇りだが、初めて少しだけ似てなきゃ良かったって思っちまったぜ。


 すまねぇ、セイ。


 足、引っ張っちまった。



「…。これ以上、息子の足手まといにはなれねぇ」



 余裕こいて止まったこと、後悔しやがれ。


 右手に持つミスリルの剣を逆手に持ち変える。


 左手を剣身に添え、首に剣を持っていく。


 人質になってセイの足を引っ張るくらいなら、オレは自害を選ぶ。


 さすがに足は震えるが、躊躇ちゅうちょはない。


 オレは自分以上に、家族を愛しているから。



「あっ。コラ! てめぇ!! めろ!」



 ミスを悟った大男が焦って止めようとしてくる。


 不意を付いたおかげで、オレの方が速い。


 そう思って安心して目を瞑ったとき…。



「待った!!! ありがとう、父ちゃん。おかげで助かった。あとはオレが何とかするよ」



 雷のような轟音ごうおんと共に、愛する末の息子の声がはっきりと聞こえた。





 ------------------------------------------------





 足が完治したオレは、雷動を使ってピンチになっている父ちゃんとボズの間に割り込んだ。


 ギリギリ間に合いこそしなかったけれど、父ちゃんの()()には非常に助けられた。


 もちろん父ちゃんを見捨てる選択肢は有り得ないから、いくら間に合わせたいからといって、父ちゃんのピンチを見過ごすことはない。


 アカシャが確実に間に合うって言ってた足の完治だけは待ったけれど。


 父ちゃんの方も想像以上にギリギリだったらしい。


 切り札の範囲に父ちゃんも入ってたなら、もうちょっと早く駆けつけたんだけどな。



「バカな…。クソガキぃ! てめぇ、足はどうした!?」



 ボズはオレの足が再生してることに納得がいかない様子だ。



「だから言ったろ? あの時がオレを殺す最後のチャンスだったんだ」



 できるだけ、余裕があるようによそおって言葉を投げかける。


 本当は、次が最後のチャンスだ。


 でも、ここで退いてくれるなら、それで終わりだ。


 時間はオレの味方。


 ボズの反応を待つ。


 そのボズは少し周りを見回した後、口を開いた。



「気味の悪いガキめ。だが、強がりだな。あの足の速いガキももういねぇ。後ろの父ちゃんをかばいながら、どこまで持つだろうなぁ?」



 嫌らしい笑いを浮かべたボズは、低くて野太いダミ声で挑発するように語る。


 カチャっと、後ろの父ちゃんが剣を握り直す音が聞こえた。



「父ちゃん! 大丈夫。信じて…」



 早まったことはしないように釘を刺しておく。


 父ちゃんなら、こう言えば絶対に信じてくれる。



「すまねぇ…。任せた」



 父ちゃんの申し訳なさそうな声が聞こえた。


 オレは思わず笑みを浮かべる。


 家族に恵まれた。


 そう心から思う。



「来いよ、ボズ。最後の勝負だ」



 ミスリルの短剣を構え、左手で手招きをして挑発する。


 ボズは、額に青筋を浮かべてぶるぶると震えた。



「ぬかせ、クソガキがぁ!! 父親ごと殴り殺してやる!!」



 ボズが怒りに任せて殴りかかってくる。


 ボズは最後の勝負だとは思っていないだろう。


 まだボズには余裕があるのだから。


 そう仕向けた。


 ずっと。


 初めてボズを襲撃したときから、そう勘違いするように動いてきた。


 できれば、この勝負の前に間に合って欲しかったけど、泣いても笑っても、これが間違いなく最後の勝負だ。


 絶対に勝つ。


 切り札が、ボズの一挙手一投足を見逃すことなく教えてくれる。


 父ちゃんが後ろにいるから、さっきまでの戦いのように避ける訳にはいかない。


 とはいえ、ボズの攻撃をまともに受ける訳にもいかない。


 ずっとアカシャと考え練習してきた、オレの能力を生かした近接格闘術の理想。


 失敗するとリスクが高すぎることから、ボズには試す気すら起きなかったが、この状況であれば使うしかない。


 ミスリルの短剣を手放し両手をフリーにする。


 この一度だけでいい。


 動きが鈍くなっている体を完璧に把握し、正確無比に動かす!


 思考強化で体感時間が引き延ばされた状態で、刹那せつなのズレも許されない最適解をなぞる。


 ボズの攻撃は、打ち下ろしの右ストレート。


 ボクシングならチョッピングライトと言われるパンチだ。


 目がまともに見えないことで、逆に切り札の情報にのみ集中できる。


 人体には仕組みがある。


 それと物理法則を上手く利用して、信じがたいほどの効果を生み出す格闘術が存在する。


 合気道だ。


 残念ながらオレは合気道をよく知らないが、合気道の概念は何となくだけどイメージするものがあった。


 そしてそれは切り札との相性が最高に良いだろうと考え、アカシャに相談し、練習していた。


 合気道もどきではあるが、理論上の最適解が切り札を使ったオレには分かる。


 完全完璧なタイミングと力加減、力の方向(ベクトル)


 オレの体をどう動かし、ボズにどう当てれば良いか。


 それらの情報が全て、アカシャのおかげで分かる。


 その通りに動きさえすれば、オレでもボズのパンチの軌道をズラすくらいは可能だ。


 その通りに動くことこそが難しいのだが、何よりも体の動かし方を優先して練習したのは、このような時のため。



「おおおおっ!!」



 全ての集中力を持って、理想通りに体を動かす。


 脳がオーバーヒートしそうだ。


 切り札の副作用もあり、鼻血が垂れてくる。


 切り札に新たに情報が入ってきた。


 ほんの少しだけタイミングと力の方向を修正。


 ボズの左足の地面が、僅かに隆起し始めた。


 兄ちゃん達が、ベイラをここまで誘導したのだ。


 この上ない援軍。


 ボズもすぐに気付き修正しようとしているが、パンチはわずかに外側にズレている。


 一切ズレが許されなかった全ての事象が、ほんの僅かくらいであれば許されるようになった。


 オレの左手が、ボズの右腕の内側に触れる。


 ボズの右腕に外側に流れる力を加えながら、パンチの流れに逆らわずに左手を引きながらクルリと半回転する。


 可能であればこのまま一本背負いしたいような体勢だけど、それは不可能らしい。


 ただ、ボズの右腕を流れに逆らわずに外側にずらして、父ちゃんの少し左の地面に着弾させる。


 それだけでいい。


 ボズが驚愕の表情を浮かべて、何もない地面を殴る。


 岩場より柔らかい林の地面にボズの拳が突き刺さった。


 オレはボズの追撃が来る前に、目の前の父ちゃんに体当たりするかのように飛び付き、抱えて離脱する。



「うおっ!」



 できるだけ雷纏の電撃が父ちゃんに当たらないようにはしたけれど、やはり少し感電したのだろう。


 父ちゃんのうめき声が聞こえた。


 離脱して父ちゃんを下ろしたオレは、ボズに向き直る。



「ガキぃ…。最後の勝負じゃなかったのかぁ!? また変なことしやがって」



 ボズとしては、こんなにパンチがズレるほど何かをされたとは思わなかったんだろうな。



「最後の勝負さ。オレの勝ちだ。ボズ」



 オレは勝利を宣言する。


 ついにここまで来た。


 今度こそ間に合った。


 今、ボズへの勝率が100%になったんだ。



「ああ!? 何言ってやがる!! 俺様はまだまだ余裕だ! ふざけ…」



 オレの言葉に怒ったボズが、急に静かになる。


 そして、徐々に青ざめていく。


 ボズの目に常に輝いていた魔法陣は、もうない。


 気付いたか。


 もう遅いけどな。


 襲撃も、あおりも、衝撃魔法を当て続けたのも、ダメージを与えられない短剣での攻撃も、何もかも全てはこの時のために。



「魔力切れだ。初めてだろう?」



 ボズの青ざめた顔から、滝のように汗が流れ始める。



「身体強化でも魔力が切れることがあるって、知らなかったのがお前の敗因だ」



 ボズに気付かれずに魔力切れを引き起こさせる。


 それが、オレとアカシャで立てた作戦だった。






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― 新着の感想 ―
[一言] アカシャいなくても考えつくぞ、むしろ最初に思いつく方法だろ
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