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第40話 一騎討ち

 轟音と閃光とともに、虹色の剣の上に出した金属の塊が雷を纏った一筋の光となって射出される。


 電磁加速砲(レールガン)とは言ったものの、正確には電磁加速砲(レールガン)っぽい魔法だ。


 前世の電磁加速砲(レールガン)の原理なんて正確には知らないからな。


 でも、切り札を使っていることによって、魔法で似たようなことが可能なこと、そして実現方法は分かっていた。



「がっ…!!」



 電磁加速砲(レールガン)の光がボズの胸に突き刺さった。

 ボズがくぐもった声をあげる。


 さすがに、ちょっと胸を強く打って一瞬呼吸が詰まるくらいのことは起こったらしい。

 ダメージとも言えないようなことではあるけど。


 空中でなすすべなく弾丸の直撃を受けたボズは、そのまま弾丸とともに光の筋となって彼方へと飛んでいく。


 さっき出した金属の塊の成分はほぼ鉄で、約8トンもある。


 踏ん張りの効かない空中では、いかにボズとて簡単に吹っ飛ばせる。


 これでボズと一騎討ちの条件は整ったな。


 みんなは盗賊達に楽勝できるだろうけど、そう簡単には追ってこれないはずだ。


 空中から眼下を見下ろすと、村のみんなと盗賊達が揃って唖然とした表情でこちらを見上げていた。



「父ちゃん! みんな! あとは任せた! オレはアイツを追う!」



 村のみんなに向けて声をかけると、時が止まったように静止していた状態から父ちゃんが最初に再起動して、声を返してきた。



「ああ、こっちは任された! すぐにこいつら全滅させて追い付くからな!」



 すぐに追い付かれても困るけど、頼もしい父ちゃんの言葉に口角を上げる。


 たぶん、いや間違いなく厳しいけど、何とかみんなが追い付いてくるまでにボズを倒したいところだ。


 20キロほど先の岩山に突き刺さったボズを確認して、オレは雷動を使った。






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 オレの息子のセイはとんでもねぇ。


 赤ん坊の頃から変わった子供だとは思ってた。


 すぐに神様に愛されてることには気付いた。


 最近になって、セイ自身の口からどんなことができるか、どんなことをしようとしているのかを聞いた。


 身体強化の魔法も教えてもらった。

 魔法なんてほぼ貴族ぐらいしか使えないもので、オレには一生縁がないと思ってた。


 盗賊団への対策も、ほとんどセイが魔法でやってくれた。


 オレ達大人の下らねぇ意地で命がけの戦いをさせちまってるのに文句の1つも言わず、親として情けねぇと思ってしまう。


 アルやジルも良くできた息子だが、セイは別格だ。

 神様に愛された者ってのはみんなこうなのだろうか?


 いや、さすがにこんな5歳児は世界中探してもいないだろう。



 盗賊団との遭遇後は、想像をはるかに越える出来事の連続だった。


 セイが立てた作戦は聞いていたはずだった。

 だが、こんな規模で、こんな速さで起こるとは思っても見なかった。


 盗賊団を待ち伏せしていた草むらから、セイを追って飛び出したと思ったら、突然まだかなり先にいる盗賊団までの道が消えた。


 落とし穴? これが? 作戦を聞いたとき、セイに掘るのを手伝うかと聞いたら、魔法で簡単にできるからいいと言われて想像してたのとは全く違った。


 落とし穴に驚いたのも束の間、セイが気合いを入れるような声を上げ、直後にセイに雷が落ちた。


 オレもアルもジルも、突然の出来事に声を上げたが、雷の轟音でかき消された。


 セイから自分に雷が落ちても、わざとだから気にするなと聞いてはいたが、こんなでかい雷が直撃するのを見て気にしないなんてできるわけねぇだろ。


 セイの安否を確認しようとしたとき、すでにそこにセイはいなかった。


 いつの間にか盗賊のボスらしきゴリラが空中に打ち上げられ、その横には紫色の雷を纏ったセイがいて、なにやら凄まじい魔法でゴリラを撃ったようだった。


 後には轟音と光の尾だけが残っている。


 一瞬のうちに起こったことに唖然としていると、上からセイがこっちは任せたと伝えてきた。


 急いで任されたと返した。



 すげえすげえと思ってきたセイだが、実際に戦っているところを見ると、すげえなんてもんじゃねぇことが良く分かった。


 それでもセイはオレの息子だ。


 たとえ肉壁くらいの役割しかできなかったとしても、すぐに追い付いて手伝ってやりてぇ。


 落とし穴の底で怯えた顔で空を見上げて固まってる盗賊共、覚悟しろ。

 すぐに全滅させてやる。


 オレはセイに教えてもらった身体強化を全開にし、鍛冶屋に借りたミスリルの剣を握りしめて走り出した。






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 崩れた岩山から予想通り無傷でい出してきたボズと相対したオレは、数分も戦わないうちにすでに血だらけだった。


 もちろん直撃は1度も許していないが、ほんの少しかすっただけでも擦りむいたり、肉が削がれたりするからだ。



「くく。掴まえれば終わり。分かってんじゃねぇか」



 ボズの言うとおり、掴まえられるのだけは絶対に避けて立ち回っている。


 攻撃のために多少のダメージを負うリスクは犯しているが、直撃と掴まえられるのは絶対にダメだ。



「余裕だね。ダメージは確実に入り始めてるのに、にぶくて気付かないのかな?」



 またあおっておく。怒りで単調な大振りになってくれれば嬉しいからな。



「変なパンチしやがって…。だがあの程度なら100回くらっても俺様は倒せねえ」


「だったら200回叩き込むだけさ」



 オレは再び構える。


 正確にはあと144回だ。


 はっきり言って厳しい。


 ボクシングの試合をテレビで観たことはあるが、格上相手に格下が1度も直撃を許さずに勝つ試合は観たことはない。


 もちろん、条件は全く違うけれど。



 切り札の副作用の頭痛が酷くなってきた…。



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